編集にあたって

水野 加寿代(ヤフー(株))
 
 情報処理学会誌では,学生の学位論文の成果を迅速に社会に紹介することを推進している.「研究会推薦博士論文速報」は,情報処理の各研究分野をカバーする約40研究会の主査の推薦により,優れた博士論文の成果を読者に紹介するものであり,2011年度より開始した.本特集では,2019年4月から2020年3月までの博士論文を対象として,各研究会の主査より推薦された合計36本の優れた博士論文について,その研究内容を紹介する.コンピュータサイエンス領域から13本,情報環境領域から10本,メディア知能情報領域から13本の論文がそれぞれ推薦された.会誌本体には,まず,本特集において推薦された論文を1ページにリストした表を示す.さらに各論文について概要を掲載する.概要には,研究タイトル・著者情報・推薦文の基本情報に加えて,研究キーワード・サムネイル画像・キーフレーズ・関連URL・顔写真を掲載し,研究内容を一見して理解しやすい形式にしている.各研究会から推薦された博士論文のテーマは多岐にわたる一方で,「量子コンピュータ」「セキュリティ」など大きな分類で見ると共通の課題に取り組んでいる論文もある.個人的に,この特集の編集を通じて,情報科学全体のその年の研究動向をそれとなく感じることができるのを楽しみにしている.

 読者の皆様には,まずは会誌の概要で研究内容を気軽に眺めていただき,今年の論文の傾向を感じていただくことをお薦めしたい.その後,皆様の興味関心に応じてWeb版や関連URLをチェックしていただければ幸いである.Web版では,博論のテーマに取り組んだきっかけや研究中の苦労など,研究生活について各著者に書いていただいている.著者らのメッセージからは多様性に富んだ博士課程学生の研究生活を垣間見ることができ,特に博士課程への進学を検討している読者にはぜひ読んでいただきたい内容となっている.最後に,本特集の速報性を高めるため比較的短い時間での推薦のご支援をいただいた各研究会の主査の方々,またご執筆いただいた著者の方々に厚くお礼を申し上げたい.
 
(2020年7月13日)