上田 健太郎 mplusplus Co., Ltd. エンジニア |
キーワード
ウェアラブルコンピューティング | Smart clothing | HCI |
[背景]入力や状況認識などの機能を有する衣服(Smart clothing)の開発
[問題]衣服の柔軟性などの特性を生かしきれていない
[貢献]衣服の変形の入力,出力,状況認識機能への応用の可能性を示唆
本研究では,衣服の変形を利用したコンピュータとのインタラクション技術の確立を目指し,衣服の変形を使用したコンピューティングシステムの構築を行った.ユーザがコンピュータを身につけて生活するウェアラブルコンピューティングという分野はその特徴から,人々が日々身に着けている衣服との相性が良く,Smart clothingやE-textileと呼ばれるコンピューティングに必要な機能を有する衣服の研究領域が確立されている.衣服にさまざまな機能を搭載することで,ユーザは衣服を着用するだけで必要な機能を使うことができ,また,ユーザがほぼ一日中常に身に着けている衣服によってユーザの情報の常時計測が容易となる.従来のマウスやキーボードに代わる入力インタフェースとして衣服を利用したテキスタイルインタフェースやセンサを統合した衣服によるユーザのデータの常時測定や状況認識手法などが研究されている.これまでに提案されているテキスタイルインタフェースは,布の柔軟性を生かし,布をつまむなどの変形させるインタラクションにより触覚刺激のある操作ができるが,ユーザが入力面から情報を得ることができず,ディスプレイなどの情報提示デバイスが必要になる.一方,先行研究から衣服の変形による情報出力機能の可能性が示唆されている.先行研究では,形状記憶合金を組み込んだドレスを開発,その使用方法を提案しており,ドレスの変形の情報提示への利用を検討している.布の変形とテキスタイルインタフェースを組み合わせ,衣服の変形によりユーザに情報を提示することで,ユーザが入力面からの情報を取得して操作ができる.また,呼吸などのユーザの動作に伴う衣服の変形からユーザの状況を認識することができる.
このように,衣服の変形は入力,出力,状況認識などの機能に対して非常に有用であり,衣服の変形の実用性を検討することで新たな衣服を利用したコンピューティングスタイルの礎となる.そこで本研究では,入力要求時に布にシワを生成する入力インタフェース,ユーザの体に沿って布を締め付けるフィードバック手法,胸部の動きを衣服の変形から検出する呼吸測定手法の提案と衣服のシワを用いた入力操作の特性評価を行った.これらの研究では,提案手法の性能評価のみならず,ユーザの操作性や着用時の見た目を考慮した操作位置,入力操作の精度や速度に影響する要因などの日常生活での使用を考慮した評価も行い,これらの評価結果から衣服の変形の入力,出力,状況認識機能への応用の実現可能性を示した.
衣服の変形をユーザからだけでなく,コンピュータからのインタラクションにも用いることで,ディスプレイを必要としない入力インタフェース,ユーザをイライラさせない触覚フィードバック,ユーザの精神的,生理的状態を常時計測機能などの機能が実現できると考えており,服を着るだけでこれらの機能を利用できるようになる未来を想像している.
[貢献]衣服の変形の入力,出力,状況認識機能への応用の可能性を示唆
本研究では,衣服の変形を利用したコンピュータとのインタラクション技術の確立を目指し,衣服の変形を使用したコンピューティングシステムの構築を行った.ユーザがコンピュータを身につけて生活するウェアラブルコンピューティングという分野はその特徴から,人々が日々身に着けている衣服との相性が良く,Smart clothingやE-textileと呼ばれるコンピューティングに必要な機能を有する衣服の研究領域が確立されている.衣服にさまざまな機能を搭載することで,ユーザは衣服を着用するだけで必要な機能を使うことができ,また,ユーザがほぼ一日中常に身に着けている衣服によってユーザの情報の常時計測が容易となる.従来のマウスやキーボードに代わる入力インタフェースとして衣服を利用したテキスタイルインタフェースやセンサを統合した衣服によるユーザのデータの常時測定や状況認識手法などが研究されている.これまでに提案されているテキスタイルインタフェースは,布の柔軟性を生かし,布をつまむなどの変形させるインタラクションにより触覚刺激のある操作ができるが,ユーザが入力面から情報を得ることができず,ディスプレイなどの情報提示デバイスが必要になる.一方,先行研究から衣服の変形による情報出力機能の可能性が示唆されている.先行研究では,形状記憶合金を組み込んだドレスを開発,その使用方法を提案しており,ドレスの変形の情報提示への利用を検討している.布の変形とテキスタイルインタフェースを組み合わせ,衣服の変形によりユーザに情報を提示することで,ユーザが入力面からの情報を取得して操作ができる.また,呼吸などのユーザの動作に伴う衣服の変形からユーザの状況を認識することができる.
このように,衣服の変形は入力,出力,状況認識などの機能に対して非常に有用であり,衣服の変形の実用性を検討することで新たな衣服を利用したコンピューティングスタイルの礎となる.そこで本研究では,入力要求時に布にシワを生成する入力インタフェース,ユーザの体に沿って布を締め付けるフィードバック手法,胸部の動きを衣服の変形から検出する呼吸測定手法の提案と衣服のシワを用いた入力操作の特性評価を行った.これらの研究では,提案手法の性能評価のみならず,ユーザの操作性や着用時の見た目を考慮した操作位置,入力操作の精度や速度に影響する要因などの日常生活での使用を考慮した評価も行い,これらの評価結果から衣服の変形の入力,出力,状況認識機能への応用の実現可能性を示した.
衣服の変形をユーザからだけでなく,コンピュータからのインタラクションにも用いることで,ディスプレイを必要としない入力インタフェース,ユーザをイライラさせない触覚フィードバック,ユーザの精神的,生理的状態を常時計測機能などの機能が実現できると考えており,服を着るだけでこれらの機能を利用できるようになる未来を想像している.
(2020年5月29日受付)