編集にあたって

松崎公紀(高知工科大学)
 
 情報処理学会誌では,学生の学位論文の成果を迅速に社会に紹介することを推進している.「研究会推薦博士論文速報」は,情報処理の各研究分野をカバーする約40研究会の主査の推薦により,優れた博士論文の成果を読者に紹介するものである.本特集では,2015年4月から2016年3月までの博士論文を対象として,各研究会の主査より推薦された合計36本の優れた博士論文について,その研究内容を紹介する.コンピュータサイエンス領域から15本,情報環境領域から8本,メディア知能情報領域から13本の論文がそれぞれ推薦された.

 会誌本体には,まず,本特集において推薦された論文を1ページにリストした表を示す.さらに各論文について,論文タイトル,著者の情報,研究会からの推薦文を掲載する.

 今回,各研究会から推薦された博士論文の著者について,編集者による独断でその状況を見てみたい.まず,博士を取得した大学について見てみると,国公立大学26に対して私立大学が10であり,国公立大学での博士が多く推薦されている.大学ごとに見ると,東京大学が9件で最も多く,続いて慶應義塾大学4件,早稲田大学と奈良先端科学技術大学院大学が3件となっている.正確性には少し欠けるが,本記事に掲載されている情報から博士取得後の進路について見てみると,大学・独立行政法人等に進んだ人が21人で過半数(うち,教員ポストについている人が11名,ポスドク等の研究職が10名),企業に進んだ人が15名(うち,研究職が7名)となっている.創作童話「博士(はくし)が100にんいるむら」では博士号取得者の悲惨な状況が言われたが,少なくとも推薦されるような優秀な博士論文を書いた方々はあまり問題がないようだ.

 最後に,本特集の速報性を高めるため比較的短い時間での推薦のご支援をいただいた各研究会の主査の方々,またご執筆いただいた著者の方々に厚くお礼を申し上げたい.

(2016年7月15日)