第11回
デジタル社会におけるトラストサービス(2)

日時:2021年11月11日(木) 13:00~15:05
会場:オンライン開催

Society5.0の中核となるデータ駆動型社会(Data-driven society)やデジタルトランス・フォーメーション(DX)では、良質、最新、正確かつ豊富なリアルデータが価値の源泉となり、経済社会活動を支える最も重要な糧となることが見込まれる。これは、とりもなおさず、経済社会を支える中核的な要素としてのデータの重要性が飛躍的に増大することを意味する。このような様々な可能性を秘めるデータ駆動型社会においては、そのバックボーンとなるデータの真正性やデータ流通基盤の信頼性を確保することが極めて大切となる。そのためには、インターネット上における人・組織・データ等の正当性を確認し、改ざんや送信元のなりすまし等を防止する仕組み(トラストサービス)の実現に向けて、包括的な検討を加えることが必要となってくる。EUでは、デジタル・シングル・マーケットを創設するために、その基盤を支える包括的なトラストサービスの法制化が進められており、このような国際的な動向も見据えながら、我が国におけるトラストサービスの在り方を検討することが必要である。
オープニング[13:00~13:05]

コーディネータ:手塚 悟

慶應義塾大学 環境情報学部 教授

【略歴】政府関連では、デジタル・ガバメント閣僚会議データ戦略タスクフォース構成員、個人情報保護委員会委員,総務省トラストサービスに関する研究会座長等。民間関連では、デジタルトラスト協議会会長、トラストサービス推進フォーラム代表,日本トラストテクノロジー協議会代表,日本セキュリティ監査協会会長等。

セッション1[13:05-13:40]

eIDAS規則の概要

欧州で2014年に施行されたeIDAS規則は電子署名やeシール、タイムスタンプを始めとしたトラストサービスの包括的な法制度となっています。我が国でもトラストに関する包括的な枠組みが検討されていますが、先行事例として、欧州における各トラストサービスの定義及び法的効力をはじめ、監査のフレームワークや、トラステッドリスト及びトラストサービス関連技術基準から最新動向まで、eIDAS規則を理解する上で重要なポイントを中心に解説します。

講師:濱口 総志

株式会社コスモス・コーポレイション 慶應義塾大学SFC研究所 上席所員 上席所員

【略歴】慶應義塾大学SFC研究所上席所員、株式会社 コスモス・コーポレイションITセキュリティ部責任者、一般財団法人日本情報経済社会推進協会 客員研究員。工学博士。eIDAS規則草案時から欧州のトラストサービス動向に注目し、業界団体や政府機関にeIDAS規則の解説を実施。総務省「組織が発行するデータの信頼性を確保する制度に関する検討会」構成員。

セッション2[13:45-14:20]

法的効力の概要

本講演では、トラストサービスの関与により作成される情報(例えば電子証明書、電子署名データ、タイムスタンプなど)の法的効力について2つの側面から述べる。第1の側面は、紛争における証明力である。EUのeIDAS規則はタイムスタンプ、eシール等による推定効を定めているのに対し、わが国では、一定の条件を満たす電子署名には、真正な成立(本人の意思に基づく本人による作成)の推定効があるものの、多くのトラストサービスには効力が法定されていない。第2の側面は文書としての通用性である。米国法やEUのeIDAS規則には、電子的であることだけを理由に文書の法的効力や証拠としての許容性を否定してはならない旨の規定があるが、わが国にはこのような包括的な規定はない。また、公的申請等には使用可能な電子証明書の種類を限定しているものがあり、かかる限定は統一的なものとしては規定されていない。本講演では、こうした法的効力の現状を踏まえつつ、今後の方向性を海外との比較を通じて展望する。

講師:宮内 宏

宮内・水町IT法律事務所 弁護士

【略歴】東京大学工学部電子工学科及び同修士課程卒業後、1985年に日本電気株式会社に入社し、コンピュータグラフィクス、AI、情報セキュリティの研究等に従事。日本電気株式会社では、政府認証基盤GPKIの構築等に参画した。東京大学法科大学院を経て2008年に第二東京弁護士会に弁護士登録。2011年に宮内宏法律事務所(現 宮内・水町IT法律事務所)を設立し、IT関連の法分野で活動している。内閣官房、総務省、経済産業省、地方公共団体、日本弁護士連合会などの委員会委員に多数就任。著書に「電子契約の教科書 3訂版」(日本法令 2021年)などがある。

セッション3[14:25-15:00]

トラストサービスの国際相互運用について(欧州での例)

2020年7月17日に閣議決定された「統合イノベーション戦略2020」で欧米とのデータ流通に向けたトラストサービスの相互認証の確立に向けて取組み、日欧共同パイロットプロジェクト(※)を立ち上げることが示されました。このプロジェクトは、官民の様々なオンライン手続や業務プロセスの中で流れるデータの信頼性を確保するために用いるトラストサービスの相互運用性を確保しアプリケーション間で信頼あるデータを相互に連携可能とすることを国内外で実証する試みとなります。本講演では、日欧共同パイロットプロジェクトの内容を中心に、欧州とのトラストサービスの相互承認に必要な4つの観点「法的同等性」、「監督・監査」、「技術標準」、「トラストアンカーの公表」での同等性について解説し、日欧トラストサービスの相互運用の技術実証で実施した内容をご紹介します。
※ 「SIP第2期/ビッグデータ・AIを活用したサイバー空間基盤技術/分野間データ連携基盤技術(開発テーマ5:国際的な相互連携実現に向けた取り組み)」(管理法人:国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)

講師:西山 晃

フューチャー・トラスト・ラボ 代表

【略歴】1979年セコム(株)入社、1982年米国Case Western Reserve Universityシステム工学科修士修了、2001年セコムトラストシステムズ(株)トラストサービスの企画推進等に従事。2008年日本で最初のリモート署名サービスを考案。デジタルトラスト協議会(JDTF)発足メンバー、電子認証局会議(CAC)理事、トラストサービス推進フォーラム(TSF) 幹事、公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)電子取引委員長、データ戦略タスクフォース トラストに関するワーキングチーム構成員。

クロージング[15:00~15:05]

コーディネータ:手塚 悟

慶應義塾大学 環境情報学部 教授

【略歴】政府関連では、デジタル・ガバメント閣僚会議データ戦略タスクフォース構成員、個人情報保護委員会委員,総務省トラストサービスに関する研究会座長等。民間関連では、デジタルトラスト協議会会長、トラストサービス推進フォーラム代表,日本トラストテクノロジー協議会代表,日本セキュリティ監査協会会長等。