第2回
情報技術のポストコロナ社会への貢献(2)

日時:2021年6月9日(水) 15:00~17:55
会場:オンライン開催

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、コロナ禍が発生する前の社会が抱えていた問題を拡大・顕在化させたとともに、これまでのオンラインでの活動を支援する技術の改良と進歩が急激に加速された。ポストコロナの社会産業活動は、単なる情報化ではなく、空間的制約を大幅に緩和する情報技術をさまざまな形で活用することで、これまでとは根本的に異なる新たな社会の姿を模索しなければならならない。本セミナーでは、東京大学大学院情報理工学系研究科として2020年6月に提言した「情報技術のポストコロナ社会への貢献」の再点検と今後の方向性を2回に分けて議論展望する。
  • [15:00-15:05]「オープニング」 江崎 浩(東京大学)
  • [15:05-15:40]「ポストコロナ未来社会におけるシステム情報学」 永原 正章(北九州市立大学)
  • [15:50-16:25]「サイバー空間と実世界を結ぶ - ポストコロナを支えるロボット,AI,VR」 岡田 慧(東京大学大学院)
  • [16:35-17:10]「データのガバナンスと価値創造」 橋田 浩一(東京大学)
  • [17:20-17:55]「第6期 科学技術・イノベーション基本計画との関係」 江崎 浩(東京大学)
  • オープニング[15:00-15:05]

    コーディネータ:江崎 浩

    東京大学 大学院情報理工学系研究科 教授

    【略歴】1987年 九州大学電子工学修士了。同年4月 (株)東芝 入社。1990年米国ベルコア社、1994年米国コロンビア大学にて客員研究員。1998年10月東京大学大型計算機センター助教授、2001年4月より東京大学 情報理工学系研究科助教授。2005年4月より現職。WIDEプロジェクト代表。 MPLS-JAPAN代表、JPNIC副理事長、東大グリーンICTプロジェクト代表、日本データセンター協会 理事/運営委員会委員長。工学博士(東京大学)。

    セッション1[15:05-15:40]

    ポストコロナ未来社会におけるシステム情報学

    計測自動制御学会 (SICE) ポストコロナ未来社会ワーキンググループでは、新型コロナウィルスの感染拡大に伴い明らかになった社会問題や技術課題について、特にシステム情報学の観点から議論を行い、6回のワークショップを開催してきた。具体的には、パンデミック抑制、サイバーフィジカルシステム、制御理論・AI・行動経済学の接点、ヴァーチャルリアリティ、モビリティ、ソフトロボティックスのそれぞれのテーマについて、システム情報学およびその周辺分野の専門家による講演とパネルディスカッションを行った。本講演では、これらのワークショップの概要の紹介と、ポストコロナ未来社会へ向けた提案を行う。

    講師:永原 正章

    北九州市立大学 環境技術研究所 教授

    【略歴】2003年、京都大学大学院情報学研究科博士課程修了。博士(情報学)。現在、北九州市立大学環境技術研究所教授およびインド工科大学客員教授。IEEE制御システム部門より国際賞である Transition to Practice Award(2012年)および George S. Axelby Outstanding Paper Award(2018年)をそれぞれ受賞。計測自動制御学会 (SICE) 「ポストコロナ未来社会ワーキンググループ」主査。著書に Sparsity Methods for Systems and Control (Now Publishers) や「スパースモデリング」(コロナ社)などがある。専門は制御理論と機械学習。

    セッション2[15:50-16:25]

    サイバー空間と実世界を結ぶ - ポストコロナを支えるロボット,AI,VR

    新型コロナウィルス感染症の広まりと共に,オンライン会議システムに代表されるサイバー空間サービスの情報基盤の社会インフラとしての重要性や有効性が再確認されるとともに,エッセンシャルワークと呼ばれる社会機能維持に必要不可欠なフィジカル業務の支援基盤の必要性が改めて浮き彫りになった。知能機械情報学専攻で取り組んでいるロボットに代表さるAI,VR技術は,サイバー空間と実世界を繋げる技術である。本講演では,従来の定型的な繰り返し作業の高速化・自動化が求められる産業用ロボットと異なり,様々なフィジカル業務支援のための支援や代替するロボットを紹介し,現在のような急激な社会情勢の変化に対応するために必要となる,アジャイルに実現できるロボットとそれを実現する情報基盤,さらには,開発するエンジニアとそれを支援するコミュニティの取り組みについて概観する。

    講師:岡田 慧

    東京大学 大学院情報理工学系研究科 教授

    【略歴】1997年京都大学工学部情報工学科卒業。2002年東京大学大学院工学系研究科情報工学専攻博士課程修了。博士(工学)。2002年東京大学大学院情報理工学系研究科科学技術振興特任教員。2006年同特任講師。2009年同准教授,2018年同教授となり現在に至る。ヒューマノイド統合システム,オープンソースロボティクス,長期記憶双腕ロボットシステム,学習認識双腕マニピュレーションに興味を持つ。

    セッション3[16:35-17:10]

    データのガバナンスと価値創造

    個人や企業に関する情報を含むデータが生み出す価値を最大化するにはデータ主体自身(に属するAIなど)がそのデータをフル活用する必要がある。一方、データ主体のメリットに必ずしも直結しない目的(感染症の接触追跡やビッグデータ分析)でのデータ活用は他者が行なう必要があるだろう。そのためにも各データ主体にそのデータが集約され名寄せされて価値が高まっていることが望ましいが、その際にプライバシや企業秘密を守る必要がある。このようなデータ最小化(データへのアクセスを必要な範囲に限定すること)を満たす安価で安全なデータ共有の仕組みが分散PDSと考えられる。ほとんどの情報システムが担うほとんどのタスクは個票データの処理だから、その基盤として分散PDSを用いることによって安全性と経済性と利便性を高め、データ活用による価値創造を最大化できる可能性がある。そのいくつかの事例を紹介し、今後の展望を論ずる。

    講師:橋田 浩一

    東京大学 大学院情報理工学系研究科 教授

    【略歴】1981年東京大学理学部情報科学科卒業。1986年同大学院理学系研究科博士課程修了。理学博士。1986年電子技術総合研究所入所。1988年から1992年まで(財)新世代コンピュータ技術開発機構に出向。2001年から産業技術総合研究所。2013年より現職。2017年より理化学研究所革新知能統合研究センターのチームリーダーを兼務。専門は自然言語処理、人工知能、認知科学。最近の主な研究テーマはパーソナルデータの分散管理とそれに基づく人工知能。

    セッション4[17:20-17:55]

    第6期 科学技術・イノベーション基本計画との関係

    令和3年度から起動される「第6期科学技術・イノベーション基本計画」の議論は、第5期に打ち出された情報技術基盤の活用を前提にした「Society 5.0」に続く5年間の科学技術政策の方向性を示すものである。この議論・検討の期間中にコロナ禍が発生し、改めてSociety5.0の重要性が再認識されるとともに、問題点の洗い出しが行われ、その高度化と必達が最重要な方向性であることが認識・確認された。「第6期科学技術・イノベーション基本計画」に包含された情報技術とポストコロナ社会への期待と責任を議論する。

    講師:江崎 浩

    東京大学 大学院情報理工学系研究科 教授

    【略歴】1987年 九州大学電子工学修士了。同年4月 (株)東芝 入社。1990年米国ベルコア社、1994年米国コロンビア大学にて客員研究員。1998年10月東京大学大型計算機センター助教授、2001年4月より東京大学 情報理工学系研究科助教授。2005年4月より現職。WIDEプロジェクト代表。 MPLS-JAPAN代表、JPNIC副理事長、東大グリーンICTプロジェクト代表、日本データセンター協会 理事/運営委員会委員長。工学博士(東京大学)。