第8回
AI×ロボティクス(2) AIとロボットの共進化

日時:2021年10月14日(木) 15:00~17:00
会場:オンライン開催

2020年度より内閣府ムーンショット目標3において、「一人に一台一生寄り添うスマートロボットAIREC」のプロジェクトがスタートした。本プログラムでは、"Embodied AIによって初めて実用化につながるロボットハードウェアの進化"、そして、その"革新的ロボットハードウェアが促進するEmbodied AIの進化"という、「AIとロボットの共進化」を目指す。本セミナーでは本プロジェクトで推進するEmbodied AIの概念、概要について、認知科学を背景とした理論的側面、実用化を目指した評価、を含めて紹介する。
  • [15:00-15:10]「ムーンショットAIREC (AI-driven Robot for Embrace and Care) プロジェクト概要説明」 尾形 哲也(早稲田大学/国立研究開発法人産業技術総合研究所)
  • [15:10-15:45]「スマートロボットによる環境との柔軟なインタラクションの実現」 尾形 哲也(早稲田大学/国立研究開発法人産業技術総合研究所)
  • [15:50-16:25]「スマートロボットの経験拡張のための基盤整備と実証」 堂前 幸康(国立研究開発法人産業技術総合研究所)
  • [16:25-17:00]「スマートロボットにおけるAIに関する数理的アプローチ」 山下 祐一(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター)
  • ムーンショットAIREC (AI-driven Robot for Embrace and Care) プロジェクト概要説明[15:00~15:10]

    コーディネータ:尾形 哲也

    早稲田大学/国立研究開発法人産業技術総合研究所

    【略歴】1993年早稲田大学理工学部卒業。日本学術振興会特別研究員、早稲田大学理工学部助手、理化学研究所脳科学総合研究センター研究員、京都大学大学院情報学研究科講師、同准教授を経て、2012年より早稲田大学理工学術院教授。博士(工学)。2009-2015年JSTさきがけ領域研究員。2017年より産業総合技術研究所人工知能研究センター特定フェロー。2017年より日本ディープラーニング協会理事.2020年より早稲田大学AIロボット研究所所長。

    セッション1[15:10-15:45]

    スマートロボットによる環境との柔軟なインタラクションの実現

    本講演では、我々が目指す汎用型のスマートロボットに利用する「深層予測学習」の概要と応用事例、また今後の展望について紹介する。この学習法では、実時間で高次元の感覚運動の変化を予測し、その予測誤差を最小化するように予測の修正と動作生成、さらに学習を行うモデルである。このモデルを用いた複数企業と共同研究事例を紹介するとともに、JST Moonshot型研究開発課題「一人に一台一生寄り添うスマートロボットAIREC」において挑戦する課題やマイルストーンについて紹介する。

    講師:尾形 哲也

    早稲田大学/国立研究開発法人産業技術総合研究所

    【略歴】1993年早稲田大学理工学部卒業。日本学術振興会特別研究員、早稲田大学理工学部助手、理化学研究所脳科学総合研究センター研究員、京都大学大学院情報学研究科講師、同准教授を経て、2012年より早稲田大学理工学術院教授。博士(工学)。2009-2015年JSTさきがけ領域研究員。2017年より産業総合技術研究所人工知能研究センター特定フェロー。2017年より日本ディープラーニング協会理事.2020年より早稲田大学AIロボット研究所所長。

    セッション2[15:50-16:25]

    スマートロボットの経験拡張のための基盤整備と実証

    ロボットの行動経験をいかに増やしていくかは重要な課題である。産総研のサイバーフィジカルシステム研究棟では、組立工場、小規模店舗などの様々な模擬環境において、サイバー空間と実空間が連動したデジタルツインの構築を進めている。デジタルツインに基づく経験の蓄積がスマートロボットにどのようなメリットをもたらすかについて、基盤の整備状況や現在の研究成果をもとに紹介していく。またJST Moonshot型研究開発課題「一人に一台一生寄り添うスマートロボット」において、上記取り組みをもとに、スマートロボットの経験をいかに拡張していくか。現在・今後の取り組みについて紹介していく。

    講師:堂前 幸康

    国立研究開発法人産業技術総合研究所 インダストリアルCPS研究センター、人工知能研究センター 研究チーム長

    【略歴】三菱電機株式会社先端技術総合研究所主席研究員を経て、産業技術総合研究所に入所。現在インダストリアルCPS研究センター オートメーション研究チーム長。同所人工知能研究センター付き、大阪大学招へい教授、奈良先端科学技術大学客員教授を兼務。パタン認識やロボティクスの産業応用に関する研究開発に従事、米国R&D100賞、情報処理学会喜安記念業績賞など受賞。博士(情報科学、北海道大学)。

    セッション3[16:25-17:00]

    スマートロボットにおけるAIに関する数理的アプローチ

    “予測情報処理”理論(予測符号化・自由エネルギー原理などとしても言及される)によると、脳とは予測装置であり、予測と予測誤差最小化が、人の柔軟で多様な認知・行動を可能にする脳の一般的計算原理であるとされる。この理論は、人のみならず、ロボットを含むエージェントの適応的行動生成の動作原理となりうると目されている。多くの場合、予測情報処理の理論は、変分ベイズ推論として定式化され、抽象度の高い数値シミュレーションを中心に議論が行われている。我々の研究グループでは、予測情報処理の理論を、実環境で動作するロボットにおけるリアルタイムでの感覚・運動統合システムとして実装可能な力学系モデルとして定式化することを試みている。本講演では、特に、予測情報処理の計算理論と脳神経科学・認知科学・精神医学の知見との対照・照合を意識しながら、スマートロボット制御に求められる階層的な内部表現の獲得・学習プロセスの理論的検討などについて報告する。

    講師:山下 祐一

    国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 疾病研究第七部 室長

    【略歴】平成10年、東北大学医学部医学科卒業。 同大学附属病院神経精神科にて初期研修の後、東京都立松沢病院精神科・医員として臨床に従事。平成18年より、独立行政法人理化学研究所脳科学総合研究センター動的認知行動研究チームにて、谷淳氏の指導の下、神経回路モデルとヒューマノイドロボットを用いて高次認知機能・精神疾患の計算モデル研究に従事。平成25年から、国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター神経研究所疾病研究第七部・室長として勤務。