連続セミナー2026「実世界に広がるAI:情報技術の融合と社会展開」
第7回【9月29日(火) 13:30~ 16:05】 ※オンライン開催(Zoomウェビナー)
宇宙×情報処理技術 ~ 宇宙開発現場における情報処理技術活用の現状と課題
近年、宇宙分野は科学研究にとどまらず、社会基盤を支える産業として急成長しており、衛星、輸送、探査のすべての領域において、高効率・低コストで高付加価値なシステムやサービスの実現が求められています。その鍵となるのが、AI・データ処理・最適設計・シミュレーションなど、情報処理技術の高度化です。本セミナーでは、衛星システム設計、衛星データ利用、ロケット設計シミュレーション、宇宙探査といった最前線で活用される情報処理技術の現状を紹介し、将来の課題と展望を俯瞰します。講演後の質疑を通じ、情報処理分野の専門家の知見を宇宙開発へ橋渡しし、「宇宙×情報処理技術」を加速する契機となることを期待しています。
※本セミナーは、配布資料とアーカイブ配信をご提供予定です。
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[13:30-13:35]オープニング
渡辺 重哉(宇宙航空研究開発機構(JAXA) 宇宙戦略基金事業部 ゼネラルプロデューサー)
【略歴】1987年 東京大学大学院 工学系研究科 航空学専門課程 修士課程修了。同年、科学技術庁 航空宇宙技術研究所(現宇宙航空研究開発機構:JAXA) 入所。JAXA研究開発本部 風洞技術開発センター長、チーフエンジニア(航空担当)、航空技術部門 次世代航空イノベーションハブ長、理事補佐兼航空技術部門長代理を経て、2025年より現職。専門分野は、空気力学全般、風洞試験計測技術(PIV, PSP等)、EFD(実験流体力学)/CFD(数値流体力学)融合技術、空力抵抗低減技術等。 -
[13:35-14:05]Session1「インテリジェンス機能を持った人工衛星」
石濱 直樹(宇宙航空研究開発機構(JAXA) 研究開発部門 第三研究ユニット 研究開発マネージャ)
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[14:05-14:15]休憩
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[14:15-14:45]Session2「地球観測データ利用の課題から生成AI連携までの取り組みについて」

JAXAでは現在9基の地球観測衛星を運用しており、得られたデータは地球科学分野の研究用途のみならず、防災や国土管理、農業、漁業などの幅広い分野で活用されている。近年関心が高まっている宇宙ビジネスや気候変動対策と言った分野においても新たな活用の期待が大きい。一方で、衛星やデータセットごとにデータ形式が異なっていたり、データ量が膨大であったりするために、異分野ユーザーにとっては取り扱いが難しいという課題もある。JAXA地球観測研究センターでは、それらのギャップを埋めるためにAPI(Application Programming Interface)によるデータ提供方法を開発して公開している。APIによりプログラミング環境上に直接、必要なデータのみを数値配列として取り込むことが可能な仕組みとしているため、近年急速に発展している生成AIとも親和性が高い。MCP(Model Context Protocol)やAgent Skillsによる地球観測データ×生成AI連携の事例紹介や、地球デジタルツインのような将来構想について紹介する。
河村 耕平(宇宙航空研究開発機構(JAXA) 第一宇宙技術部門 地球観測研究センター 主任研究開発員)
【略歴】名古屋大学大学院工学研究科航空宇宙工学専攻修士課程修了。2007年に国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)に入社し、種子島宇宙センターにてH-IIA・H-IIBロケット射点設備維持管理運用等を担当。その後、地球観測衛星用地上システム(データ処理システム、受信管制局)の開発等を経て、2018年より地球観測研究センターで衛星データ利用促進や情報化基盤開発、計算機システム開発維持管理等の業務に従事。日本航空宇宙学会に所属。
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[14:45-14:55]休憩
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[14:55-15:25]Session3「情報・計算工学が招くロケット開発の革新」

科学技術における方法論は,実験と理論に加え,20世紀後半に数値解析を中核とする計算科学が「第三の柱」として確立した.さらに2000年代以降は,大規模データから知識や規則性を抽出するデータ駆動型アプローチが「第四の柱」として定着し,その主要技術としてAI/機械学習が広く活用されている.
本講演では,High Performance Computing(HPC)を用いた計算科学によりロケットの設計開発を行った事例を,開発現場での実例に基づき紹介する.また,再使用ロケットの実現に向けて,機体・エンジンの健全性予測と管理を効率化するAI/機械学習の研究開発事例を紹介する.最後に,これまでの取り組みを通じて明らかになった課題と,今後の展望について議論する.
堤 誠司(宇宙航空研究開発機構(JAXA) 研究開発部門 第三研究ユニット 研究開発マネージャ)
【略歴】
2006年3月 東京大学大学院工学系研究科 航空宇宙工学専攻 博士課程修了2006年4月1日 ~ 現在 JAXA2026年1月1日 ~ 現在 筑波大学 システム情報系, 教授 (連携大学院) -
[15:25-15:35]休憩
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[15:35-16:05]Session4「小型月着陸実証機SLIMの画像航法」

小型月着陸実証機SLIMは、2024年1月20日未明に世界初となる月面へのピンポイント着陸を達成した。GPSなどのGNSS測位を利用できない月着陸において100m級の高精度着陸を実現するためには、月面の地形情報を参照・照合する航法が必須であり、SLIMでは大学等の有識者と協働し、ロバスト性や搭載性に優れたクレータベースの光学画像航法を開発した。オンボードの計算リソースの制約下において、月着陸という究極のワンチャンス運用を確実に成立させるため、地上試験では可能な限り‘Test as you fly’を目指して各レベルでの検証を重ねた。実際の運用では画像航法は全て成功裏に動作し、事前に評定としていた着陸直前のホバリング高度において、概ね10m程度以下の航法誘導制御を実現した(最終的な着陸地点は目標から60m付近)。本講演では、SLIM画像航法の研究開発を振り返りつつ,実データを交えて着陸運用の成果を紹介する。
福田 盛介(宇宙航空研究開発機構(JAXA) 宇宙科学研究所 教授)
【略歴】1995年東京大学工学部電子工学科卒業.2000年同大学院工学系研究科電子工学専攻博士課程修了,博士(工学).同年文部科学省宇宙科学研究所助手.現在,宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所教授.東京大学大学院工学系研究科電気系工学専攻教授を兼担.科学衛星・探査機システムの開発や,信号処理・画像処理等の研究に従事.SLIMプロジェクトではシステムマネージャを務めつつ,画像航法や着陸レーダの研究開発を担当.

