連続セミナー2025「AIが拓く次世代イノベーション」
第9回【11月7日(金)開催 13時00分開始】 ※オンライン開催(Zoomウェビナー)
量子ソフトウェアスタックの現在
主要国は、量子コンピュータの研究開発を国家の科学技術戦略の中核に位置付け、重点領域のひとつとしてこれを推進しており、その範囲はハードウェアのみならずソフトウェアスタックやユースケースを包含し、社会実装を見据えたものとなっている。日本においても、内閣府・経済産業省・文部科学省のもとで複数の国家プロジェクトが展開されており、それぞれが異なる側面から量子技術の発展を支えている。本セミナーでは、量子ソフトウェアスタックに焦点を当て、3つのプロジェクトのテクニカルリーダーを講演者に迎え、現在地を探り未来を展望してみたい。
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[13:00-13:05]オープニング
小野寺 民也(国立研究開発法人理化学研究所 計算科学研究センター量子HPC連携プラットフォーム部門 副部門長)
【略歴】1988年東京大学大学院理学系研究科情報科学専門課程博士課程修了。理学博士。同年日本アイ・ビー・エム(株)入社。同社東京基礎研究所にて基盤ソフトウェア等の研究開発に従事し、同研究所副所長、同社技術理事、Quantum Japan R&D担当部長等を歴任。2025年4月より理化学研究所 計算科学研究センター 量子HPC連携プラットフォーム部門 副部門長。2024年度より情報処理学会量子ソフトウェア研究会主査。情報処理学会第41回(平成2年後期)全国大会学術奨励賞、同平成7年度山下記念研究賞、同平成16年度論文賞、同平成16年度業績賞、同2023年度コンピュータサイエンス領域功績賞、日本ソフトウェア科学会2022年度基礎研究賞、各受賞。ACM (Association of Computing Machinery) Distinguished Scientist、日本ソフトウェア科学会フェロー。 -
[13:05-13:45]Session1「ABCI-Qと量子ソフトウェアスタックの実装」
量子ソフトウェアスタックの高度化に向けては、量子ハードウェアの多様性に対応しつつ、AIやHPCとの連携を前提とした開発環境の整備が不可欠である。本講演では、産総研が開発する量子・AIハイブリッド計算基盤「ABCI-Q」を題材に、量子ソフトウェアスタックの実装と社会実装に向けた取り組みを紹介する。ABCI-Qは、GPUベースのHPCシステムと、超伝導・中性原子・フォトニクスによる複数のQPUを統合した先進的な量子計算環境であり、各種SDKを活用したプログラミング、量子回路シミュレータと実機QPUの統合運用、さらにAIによる量子エラー訂正など、実験的かつ実践的な利用が可能である。ABCI-Qは「量子技術を試せる場」として、ユーザコミュニティの形成を通じて量子技術の社会実装を加速するオープンな基盤を目指す。
高野 了成(国立研究開発法人産業技術総合研究所 インテリジェントプラットフォーム研究部門/(兼)量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター 総括研究主幹)
【略歴】2005年東京農工大学博士後期課程単位取得退学。2003年(株)アックス入社、2008年産業技術総合研究所入所。現在、同インテリジェントプラットフォーム研究部門総括研究主幹。博士(工学) 。システムソフトウェアを中心に、量子・AIハイブリッドコンピューティングに関する研究開発に従事。 -
[13:45-13:55]休憩
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[13:55-14:35]Session2「量子コンピュータを「IT化」するOSSの基盤ソフトウェア「OQTOPUS」の開発と運用」
2023年以降、国産量子コンピュータのクラウドサービスが本格化し、国内における量子ソフトウェアスタックの整備と運用が進んできました。本講演では、大阪大学が開発・運用する量子コンピュータの基盤ソフトウェアOQTOPUS(オクトパス)を中心に、量子ソフトウェアスタックの現状と課題を紹介します。ITシステムとしての量子コンピュータに注目し、可用性や耐障害性の観点から、実際の運用事例を交えて課題と取り組みを共有します。また、OQTOPUSの活動を通じて、量子ソフトウェアのコミュニティを形成する意義についてもご紹介します。さらに、ユーザ事例に加え、大阪・関西万博に向けた取り組みや、実機を活用したハンズオンなど、教育・普及に関する取り組みについてもご説明します。
束野 仁政(国立大学法人大阪大学 量子情報・量子生命研究センター 特任研究員)
【略歴】量子技術と無縁の学生時代を経てソフトウェアエンジニアとして就職。2019年より量子コンピュータのソフトウェア開発に従事し、2022年より大阪大学量子情報・量子生命研究センター特任研究員。2021年IPA未踏ターゲット事業に「オープンソースの量子コンピュータ・クラウド基盤開発」を提案し、採択される。OQTOPUSチームの一員として、量子コンピュータの基盤ソフトウェア開発・運用を行っている。一般向けの活動も行っており、著書に「量子コンピュータの頭の中」などがある。 -
[14:35-14:45]休憩
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[14:45-15:25]Session3「量子HPC連携プラットフォームのソフトウェア」
富岳をはじめとする複数のスーパーコンピュータと量子コンピュータを連携させる量子HPC連携プラットフォームの概要とこれを実現するためのソフトウエアについて紹介する。異なるコンピュータを効果的に利用するための調整の仕組みを紹介するとともに、運営ポリシーの異なるスーパーコンピュータ、量子コンピュータのユーザをどのように管理しているかについても述べる。
辻 美和子(筑波大学計算科学研究センター教授/理化学研究所計算科学研究センターユニットリーダ )
【略歴】北海道大学大学院情報科学研究科博士課程修了。博士(情報科学)。北海道大学、東京大学、筑波大学、ベルサイユ大学を経て理化学研究所計算科学研究センター。現在は、同センター量子HPCソフトウェア環境開発ユニットユニットリーダ、および筑波大学研究センター教授を務める。 -
[15:25-15:35]休憩
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[15:35-16:25]パネルディスカッション「ヘビーユーザー、大いに語る(仮題)」
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[16:25-16:30]クロージング
小野寺 民也(国立研究開発法人理化学研究所 計算科学研究センター量子HPC連携プラットフォーム部門 副部門長)