連続セミナー2022「その先へ 情報技術が貢献できること」

第7回【10月13日(木) 14:00~17:00】

生体信号処理とAIで作るプログラム医療機器


診断・治療等を目的としたプログラム(ソフトウェア)をプログラム医療機器(Software as a Medical Device; SaMD)と呼び、近年では機械学習・AI技術を活用したSaMD、つまり医療AIも深層学習の登場を契機に登場してきました。しかし、医療AIではCT画像やMRI画像などに対する画像診断の事例が大半であり、それに比して心電図や脳波など生体信号への活用は取り残されています。これには、対象信号の時空間パターンが複雑・非定常的で、対象現象の表現が特定困難であること、サンプルとして取得できる生体信号の量が限定的であること、様々なアーチファクトが混入すること、個人差が強く対象者間での汎化が難しいこと、など機械学習における様々な課題が凝縮されているためだと考えられます。しかしながら、近年の各種ウェアラブルセンサの開発は、サンプル取得の自動化・効率化によって、生体信号を活用した医療AI開発への転換点をもたらす可能性があります。本セミナでは、生体計測のためのセンサ技術と、生体信号処理のためのAI、そして医療機器実用化の上で避けて通れない薬事について、最新の話題を議論します。
  • [14:00-14:05]オープニング

    藤原 幸一
    藤原 幸一 (名古屋大学 大学院工学研究科 准教授)

    【略歴】2004年京都大学工学部卒業、2009年京都大学大学院工学研究科化学工学専攻博士後期課程修了、博士(工学)。日本学術振興会特別研究員DC2・PD、豪カーティン大学研究員、NTTコミュニケーション科学基礎研究所、京都大学大学院情報学研究科助教を経て、現在、名古屋大学大学院工学研究科准教授。機械学習、生体信号処理、医療AIの研究開発に従事。近著に『スモールデータ解析と機械学習』(オーム社)がある。
  • [14:05-14:50]Session1「医療AI向けの生体計測機器の開発と評価」

    山川 俊貴

    薬機法上の医療機器プログラムに分類される医療AIにおいては、その性能(感度・特異度等)を定量および標榜する上で、入力データとなる計測・検査機器の性能は極めて重要である。通常その入力元の機器は医療機器とされることが多い一方、Apple Watchを用いた心電図アプリ(薬機法上の一般的名称:家庭用心電計プログラム)や不規則心拍検出アプリ(一般的名称:家庭用心拍数モニタプログラム)のように非医療機器を入力とする医療機器プログラムも承認・販売されている。ただし、医療機器プログラムの性能の担保と責任分界点の明確化のためには、その機器の検証方法の明確化および性能の定量化は、開発プロセスにおいても薬事プロセスにおいても不可欠である。そこで本セミナーでは、医療機器プログラムへの入力となる、もしくは医療機器そのものとなる生体計測機器について、その開発および検証プロセスとその応用について、講演者の研究事例や先行研究等を紹介しつつ議論する。

    山川 俊貴(国立大学法人 熊本大学 大学院先端科学研究部 准教授)

    【略歴】平成15年3月熊本大学工学部電気システム工学科卒業、平成17年3月熊本大学大学院自然科学研究科博士前期、平成20年3月同博士後期課程修了、博士(工学)。平成20年4月より静岡大学工学部助教、平成26年4月より熊本大学大学院先導機構助教、平成31年4月より現職。滋賀医科大学医学部 客員准教授、東京医科歯科大学大学院 非常勤講師、AMI株式会社 顧問、Quadlytics株式会社 共同創業者・取締役を兼任。
  • [14:50-15:00]休憩

  • [15:00-15:45]Session2「生の体と人工の知能、対極の両者を結ぶには?」

    久保 孝富

    人工知能を用いてプログラム医療機器を開発する際、生体の信号をいかに計測・処理するかが要点となる。生体システムは多くの場合ブラックボックスであり、生体信号を扱う上で人工知能を用いるのは妥当な選択であると考えられる。しかし、生体計測のためには生体内で生じている現象を十分に考慮しないと、所望の情報を適切に得ることは期待し難い。また、人工知能を学習させるには大規模なデータセットを要することが多いが、生体信号の計測や、その信号に対するラベル付与を大規模に行うのは容易ではない。加えて既存データを利用できるケースも限られる。これらの障壁を乗り越えて生体と人工知能を結ぶことが、人工知能を用いたプログラム医療機器開発には求められる。本セミナーでは、講演者の生体信号処理に関する研究事例や関連情報を踏まえ、生体と人工知能を円滑に接続する上でどのようなことに留意すべきか私見を述べる。

    久保 孝富(奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 情報科学領域 准教授)

    【略歴】2002年大阪大学医学部医学科卒業、医師免許取得。以後2007年まで医師として神経内科診療に従事。2012年奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士後期課程修了、博士(工学)取得。2012年より奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科にて助教、2017年より同所属にて特任准教授(2018年より改組のため同大学先端科学技術研究科情報科学領域特任准教授)。2022年より奈良先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科准教授となり、現在に至る。
  • [15:45-15:55]休憩

  • [15:55-16:40]Session3「プログラム医療機器の薬事規制」

    桐山 瑶子

    2014年に法改正された医薬品医療機器等法。この法改正により日本においても医療機器に該当するプログラム製品が様々流通している。2019年からはAIを活用したプログラム医療機器も出現し、国内でプログラム医療機器を開発する企業も増えてきている。プログラム製品はハードウェア医療機器に比べて開発のハードルが低いことが期待されているが、そうはいっても医療機器である以上規制対象となるため、法律に基づいた開発が必要となる。プログラム医療機器における薬事規制について議論する。

    桐山 瑶子(株式会社MICIN Regulatory Affairs)

    【略歴】京都大学医学部医学科を卒業後、国立国際医療研究センター病院にて初期研修及び後期研修(救命センター)を修了した。2013年〜2019年、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)の医療機器審査部にて、救急医療やデジタルヘルス関連の医療機器開発支援及び審査に携わる。2019年より株式会社MICINにて、デジタルヘルス製品の社会実装に挑戦中。また、法改正以降、様々なステークホルダーが参入するデジタルヘルス産業界において、社会実装の上での課題が表出してきており、国内外の事例や制度の動向を調査しながら民間の立場から情報発信を行っている。
  • [16:40-17:00]Q&A