連続セミナー2022「その先へ 情報技術が貢献できること」

第4回【7月19日(火) 15:00~17:45】

あるべき世界を見る・デザインするための社会シミュレーションへの期待〜COVID-19 AI・シミュレーションプロジェクトを通して〜


コロナ禍以前でさえ先がなかなか見通せない社会状況であったものが、コロナ禍による激震の2年間を経てようやくAfterコロナ禍に向かい始めた矢先、さらに世界を混沌化させる軍事侵攻が勃発し、先が真っ暗になってしまった現状において、如何にして先を見据えた政策や行動を決定すればよいのか?1つの可能性として注目され始めているのが社会シミュレーションである。我々が生きる実世界は様々な要因が複雑に影響し合う大規模複雑系であり未来を知り、あるべき社会とするためにはデータからの学習に基づく予測と、社会シミュレーションとの両輪が必須である。今回は、この2年間活動を続けてきた内閣官房COVID-19・AIシミュレーションプロジェクトに焦点を当て、それぞれユニークな取り組みをされている4名の研究者から、社会シミュレーションの最新活用事例を紹介しつつ、技術の中身を概説するとともに、現在の社会シミュレーション技術に足りないもの、そして、今後どのように発展していくのかについて議論する。
  • [15:00-15:05]オープニング

    栗原 聡
    栗原 聡(慶應義塾大学理工学部 教授/慶應義塾大学共生知能創発社会研究センター センター長)

    【略歴】慶應義塾大学大学院理工学研究科修了。博士(工学)。NTT 基礎研究所、大阪大学、電気通信大学を経て、2018年から慶應義塾大学理工学部教。2021年4月より慶應義塾大学共生知能創発社会研究センター・センター長、本学会理事・編集委員長などを歴任。マルチエージェント、複雑ネットワーク科学、群知能などの研究に従事。著書「AI兵器と未来社会キラーロボットの正体」(朝日新書,2019)、編集「人工知能学事典」(共立出版,2017)など多数。
  • [15:05-15:40]Session1「今を理解し未来をデザインするための技法」

    栗原 聡

    COVID-19感染シミュレーションの対象は、単に新規感染者数・重症者数の予測に止まらず、人流抑制政策である緊急事態宣言や蔓延防止措置、そして経済活性化政策であるGOTOキャンペーンやワクチン検査パッケージなどの各種政策の実施開始・解除時期と効果の推定、そして有効なワクチン接種スケジュールの推定と感染防止効果の予測など多岐に渡る。感染は人と人の接触で拡散する。そのためには人の行動や移動の本質を捉えたシミュレータが必要であり,「冪乗則に従う人の行動様式」と「複雑ネットワークとして構築した移動ネットワーク」に基づくシミュレーションを提案・構築した。本講演では、政策の決定に具体的に寄与した本シミュレーターの紹介を通して、シミュレーションが現実を理解するためのツールとして、そして、未来をデザインするためのツールとしても重要な技術としての社会シミュレーションについて考察する。

    栗原 聡(慶應義塾大学理工学部 教授/慶應義塾大学共生知能創発社会研究センター センター長)
  • [15:40-15:45]休憩

  • [15:45-16:20]Session2「COVID-19感染推定のための多層社会システムモデル」

    倉橋 節也

    新型コロナウイルス感染が現代社会に与えた影響は、感染症という医学的な側面に加えて、国や自治体、企業、学校、家庭などのさまざまなレベルでの保健衛生や社会経済活動に関わる意思決定が問われたことにある。これまでの感染症対策は、主に医療関係者によって立案され実施が決定されてきたが、OVID-19という地球規模のパンデミックに対しては、社会のさまざまなレベルでの対策を問われることとなり、多数の研究者や専門家が取り組みを行ってきた。感染症という、人と人との関係を包含した社会現象を解明するためには、相互作用を伴いながら動的に発展する現象を扱うことのできる多層社会システムを考える必要がある。このような中、我々が取り組んできたシミュレーションモデルを用いて、店舗、家庭、地域、都市といった異なる階層と粒度における感染現象を推定するモデルから導出された予防策について本講演で紹介する。

    倉橋 節也(筑波大学 ビジネス科学研究群 教授)

    【略歴】計測・制御システム関連の民間企業に勤務しながら、1995年放送大学教養学部産業と技術専攻卒業。2002年筑波大学大学院経営・政策科学研究科修了 博士(システムズ・マネジメント)。2006年から筑波大学大学院ビジネス科学研究科助教授。現在、ビジネスサイエンス系教授。社会シミュレーション、感染症、経営情報、ゲーミング&シミュレーション、進化的機械学習などの研究に従事。
  • [16:20-16:25]休憩

  • [16:25-17:00]Session3「機械学習による新型コロナウィルス新規陽性者数の予測」

    平田 晃正

    新型コロナウィルス感染症による新規陽性者数、重症者数のプロジェクションには各種手法が用いられてきた。一般に、人流、各種活動、気象条件など様々な因子と関連があるとされるものの、各因子間との関連も無視できない。また、第5波以降のワクチン接種による感染予防効果も相まってその解析はより複雑になった。本発表では、前処理として、ワクチン接種による感染予防効果の推定方法を述べる。また機械学習(長・短期記憶)を用いて予測する手法について概説するとともに、各因子の関連について説明する。特に、第5波および第6波の収束における各因子の寄与度について分析した事例を紹介する。

    平田 晃正(名古屋工業大学 先端医用物理・情報工学研究センター センター長(教授))

    【略歴】2000年大阪大学大学院工学研究科博士課程了。博士(工学)。大阪大学工学部助手、名古屋工業大学准教授を経て、現在、同大学先端医用物理・情報工学研究センター長(教授)。生体複合物理解析、公衆衛生工学などに関する研究に従事。WHOエキスパート、国際非電離放射線防護委員会理事および小委員会委員長などを務める。日本オープンイノベーション大賞(2022)、日本学士院学術奨励賞(2018)、IEEE EMC-S業績賞など受賞、IEEE、英国物理学会フェロー。
  • [17:00-17:05]休憩

  • [17:05-17:40]Session4「感染対策と社会経済活動の両立」

    仲田 泰祐

    感染対策と社会経済活動の両立に関する数理モデル分析を幾つか紹介。

    仲田 泰祐(東京大学 経済学研究科 准教授)

    【略歴】米連邦準備理事会(FRB)の主任エコノミストを務めた金融政策とマクロ経済のプロフェッショナル。2020年に日本に活動拠点を移した後、新型コロナの感染と経済影響に関する試算で注目を集める。1980年生まれ、2003年シカゴ大学経済学部卒業。カンザスシティ連銀調査部からキャリアを始め、12年にニューヨーク大博士(経済学)。「社会に役立つ分析」を掲げる実践派経済学者の代表選手。
  • [17:40-17:45]クロージング

    栗原 聡
    栗原 聡(慶應義塾大学理工学部 教授/慶應義塾大学共生知能創発社会研究センター センター長)