連続セミナー2024「情報技術の新たな地平:AIと量子が導く社会変革」
第12回【12月20日(金)13:00~16:00】
知能化した情報環境における共生インタラクションの未来
AI、ロボット、機械学習技術との共生が社会の一部ですでに始まっています。AI、ロボット、メタバース、情報システムを初めとする環境知能と、インタラクション技術によって様々な認知・判断・行動能力が拡張された人間とが共存する未来社会をデザインし構築することを念頭に実施してきたJST CREST「人間と情報環境の共生インタラクション基盤技術の創出と展開」領域の研究成果から、未来の共棲社会の課題解決にむけた最新科学技術の取組と成果についてご紹介します。近い将来、街角環境で働くであろうロボットのインタラクション技術、音声生成AIがもたらす音声インタラクション支援技術とその社会課題、認知症を抱える高齢者とのコミュニケーションを支援する技術について、本CRESTの課題代表者に技術動向と研究成果を発表していただきます。
※本セミナーは、配布資料とアーカイブ配信をご提供いたします。
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[13:00-13:15]オープニング
間瀬 健二(名古屋大学 名誉教授 数理・データ科学教育研究センター 特任教授)
【略歴】1981年名古屋大学大学院工学研究科修士課程修了。博士(工学)。
NTT研究所、MITメディアラボ客員研究員、ATRメディア情報科学研究所研究室長等を経て2002年より名古屋大学教授。2022年より名古屋大学数理・データ科学教育研究センター特任教授。名古屋大学名誉教授。
マルチモーダルインタラクション、ウェアラブルコンピュータ、IoT、ユビキタスコンピューティング、コミュニケーション支援、表情認識、体験共有、技の伝承、e-コーチング、医療介護支援など、実社会に役に立つ人間支援の知的メディア技術の実現を目指す研究に従事。第24期・第25期日本学術会議連携会員、電子情報通信学会フェロー。人工知能学会1999年度論文賞、同2013年功労賞、2015年ACM ICMI Community Service Award、2019年東海総合通信局長賞など受賞。 -
[13:15-14:00]Session1「街角環境でのロボットとの共生インタラクション」
街角環境において日常的に活動するような社会的ロボットの実現が近づきつつありますが、この実現のためにはインタラクションに関して多くの課題を解く必要があることが分かってきています。私たちはRobovieとよばれる社会的ロボットを、ショッピングモールなどの街角環境で活用するための方法を研究してきました。歩行者の位置を追跡するセンサーネットワークを1つの技術基盤として、ロボットが歩行者の行動を理解できるようにし、そこでロボットがサービス提供するような知能化した情報環境を実現しました。また、この情報環境のために、現実世界での様々な人間とロボットのインタラクションを研究しました。その中で、人々と調和して行動するような共生インタラクションを行う必要性が明らかになってきました。本講演では、このような街角環境での社会的ロボットの実現にむけたいくつかの研究事例を紹介します。
神田 崇行(京都大学情報学研究科 教授)
【略歴】1998年京都大学工学部情報工学科卒業,2000年京都大学情報学研究科社会情報学専攻修士課程 修了,2003年同大学院博士課程修了.博士(情報学).
2003年よりATR知能ロボティクス研究所研究員,上級研究員をへて,研究室長. 2018年京都大学情報学研究科社会情報学専攻教授.
ATRにおけるコミュニケーションロボットプロジェクト 開始時のメンバーの一人で,日常生活の場で人とコミュニケーションすることにより,情報提供, 案内等のサービスを行うコミュニケーションロボット「ロボビー」の研究開発に取り組んでいる.
ヒューマンロボットインタラクション,特にロボットの自律対話機構や社会的能力,人型ロボット の身体を利用した対話,日常生活の場面への応用に関心をもつ. -
[14:00-14:10]休憩
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[14:10-14:55]Session2「音声生成AIの最新動向と悪用対策」
本講演ではまず劇的な進化を遂げている音声生成AIモデルの最新動向を紹介する。ボイスクローニングと呼ばれる話者性を再現する技術や、音声入力や音声出力を大規模言語モデル(LLM)において活用するための音声トークナイザー等を紹介し、どの様な音声インタラクションが現在研究されているか最新動向を紹介する。
その後、音声生成AIの悪用対策についても解説する。まず生成モデルによる人工的な音声か人間の音声かを見極めるディープフェイク検知技術に触れ、検知モデルの学習・評価用の大規模音声データベース、複数の検知モデルの劣悪条件下における分析結果を紹介する。最後に、音声生成AIのモデル重みを加工し、その音声出力に自動的に透かしを埋め込むNeural watermarkingについても紹介し、その有用性および限界についても紹介する。山岸 順一(大学共同利用機関法人情報・システム研究機構国立情報学研究所 コンテンツ科学研究系 教授)
【略歴】2006年東京工業大学大学院博士課程修了. 2007年〜2011年英国エジンバラ大学Research Fellow. 2011年〜2013年同大学EPSRC Career Acceleration Fellow.2013年〜2019年国立情報学研究所(NII)コンテンツ科学研究系准教授(及びエジンバラ大学Senior Research Fellow兼任). 2019年より国立情報学研究所(NII)コンテンツ科学研究系教授. 2020年エジンバラ大学よりHonorary Professorの称号付与. 現在に至る
2010年日本音響学会板倉記念研究賞、2014年文部科学省大臣表彰 若手科学者賞、2016年日本学術振興会賞、2017年IEEE International Workshop on Information Forensics and Security ベスト論文賞、2018年ドコモ・モバイル・サイエンス賞先端技術部門優秀賞、2019年ISCA Speech Synthesis Workshop Test-of-time Award、2022年度電子情報通信学会論文賞、2023年 IEEE BTAS/IJCB 5-Year Highest Impact Award等受賞 -
[14:55-15:05]休憩
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[15:05-15:50]Session3「認知症の理解に基づいたコミュニケーションスキルの情報学的展開」
認知症は世界的な社会課題である.特に日本では高齢化とともに高齢化率が高まり,どのように社会の中で共生するかが求められている.我々は,ケアにおけるコミュニケーションを適切にすることで,認知症の人とよりよく共生できるというアイデアに基づき,「良い」ケア手法の特に非言語スキルに着目し,それを計測・解析・定量化することで暗黙知であったスキルを抽出,それを実装したXRを開発することでケアコミュニケーショントレーニングとして社会に波及する活動を行っている.本研究は認知症ケアにとどまらず,ASDなどの疾患やプロフェッショナル・一般のコミュニケーションにも適用が可能でありその有効性も示している.
中澤 篤志(岡山大学大学院ヘルスシステム統合科学研究科 教授)
【略歴】 2001年大阪大学基礎工学研究科博士取得退学
2001年 東京大学生産技術研究所 ,2003年~2013年 大阪大学サイバーメディアセンター講師.
2007年、ジョージア工科大学客員研究員,2010年 JSTさきがけ「情報環境と人」研究員.
2013年、京都大学大学院情報学研究科准教授、2023年より現職.
画像認識、人のイメージング、視線検出、介護インタラクションの解析にかかわる研究に従事.
2017年10月よりJST CREST 人間と情報環境の共生インタラクション基盤技術の創出と展開領域(間瀬健二総括) 「優しい介護」インタラクションの計算的・脳科学的解明 研究代表. -
[15:50-16:00]クロージング
間瀬 健二(名古屋大学 名誉教授 数理・データ科学教育研究センター 特任教授)