連続セミナー2024「情報技術の新たな地平:AIと量子が導く社会変革」
第3回【7月3日(水) 13:00~16:40】
産業界での生成AI開発/活用
ChatGPTの登場から1年を過ぎたが、生成AIへの注目はますます高まっており、グローバルな大手企業からスタートアップまで、様々な企業から新たな取組みやサービスが続々と発表されている。これらの多くは多言語対応のモデルに基づいており、そのまま使うという選択肢もあるが、一方で、社会実装、とくに、産業界での応用を進めていく上で、日本語の処理能力向上、ユースケースの開拓など、ローカルな取り組みの活性化は重要度を増している。本セミナーでは、国内の主要企業の生成AIに関連する取り組み事例を共有し、生成AIの社会実装の展望を議論する。
※本セミナーは、配布資料とアーカイブ配信をご提供いたします。
参加された方々の声
- 日本の産業界で生成AIに関して最先端の現場で牽引されている方々の活動内容をお聞きできて貴重でした。
- 産業界での生成AIの導入状況や課題状況が確認できて役に立ちました。
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[13:00-13:10]オープニング
田島 玲(LINEヤフー株式会社 LINEヤフー研究所 所長)
【略歴】1992年東京大学工学系研究科修士課程修了。博士(理学)。日本アイ・ビー・エム(株)東京基礎研究所(1992-2002年、2005-2011年)、A. T. カーニー(2002-2005年)を経て2011年ヤフー入社。2012年よりYahoo! JAPAN研究所 所長。2023年に会社合併を経てLINEヤフー研究所 所長。データ利活用にかかわる研究開発および現場での展開に従事。本会理事(2018-2019年度)。2023年より本会副会長。 -
[13:10-13:45]Session1「SB Intuitionsにおける大規模言語モデル開発」
SoftBank株式会社およびそのグループでは、AIトランスフォーメーション時代のインフラ構築のために多大な計算機投資を実施している。同時に、それらの計算機を活用して独自性の高い国産の基盤モデルの構築も目指しており、その目的のためにSB Intuitions株式会社を設立した。そこに、グループ内から早期より大規模言語モデル開発を手掛けてきたチームを集めつつ、開発力を強化してきている。加えて、言語のみならず、音声・画像と言語をつなぐマルチモーダル基盤モデルの開発も進め、多様な顧客ニーズに応える技術体系を独自の計算基盤上に構築中である。本講演では、これらを取り巻く技術動向を振り返るとともに、SB Intuitionsにおける基盤モデル開発について紹介する。
井尻 善久(SB Intuitions株式会社 R&D本部 取締役 兼 CRO兼 R&D本部長/LINEヤフー株式会社 データサイエンス統括本部4本部 本部長)
【略歴】SB Intuitions株式会社およびLINEヤフー株式会社に所属。20年以上にわたり、AI・画像処理・ロボティクスの最新技術に関する研究およびその実装・ビジネス化に従事。 著書に、「統計的機械学習の基礎」「大規模計算時代の統計推論」「深層強化学 習入門」「コンピュータビジョン最前線」(季刊誌)。 その他、学会・教育活動等に従事。 -
[13:45-13:55]休憩
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[13:55-14:30]Session2「NEC cotomi core - グローバル水準の大規模言語モデルを開発し、運用する」
NEC では cotomi と呼ばれる生成AIブランドの元でLLMを複数、開発してきた。最新のモデルシリーズである cotomi core はグローバルのトップモデルに比肩する高い性能を持ちつつも非常に高速に動作し、既にさまざまな企業でご活用を頂いている。こうした LLM を開発する上で一貫しているのは「事業で使えるモデルを作る」ことと「モデルは生き物であり、プロダクトである」という考え方である。作って終わり、公開して終わり、ベンチマークで1位をとっておわり、とならないよう、開発をすすめている。本講演では cotomi core に関して概要をご紹介し、「事業で使えるLLM」をどのような考えでどうデザインし開発しているのか、についてお話しする。
小山田 昌史(日本電気株式会社 データサイエンスラボラトリー・生成AIセンター 主席研究員 兼 ディレクター)
【略歴】NECデータサイエンスラボラトリー、主席研究員 兼 生成AI基盤グループディレクター。博士 (工学)。NECにおける大規模言語モデルの研究開発を主導。専門領域は構造データ・非構造データへの機械学習・確率モデリング的アプローチ。人工知能学会 全国大会優秀賞 (2016)、情報処理学会 山下賞 (2019)、情報処理学会論文誌 データベース 優秀論文賞 (2021) など受賞。 -
[14:30-14:40]休憩
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[14:40-15:00]Session3「AI Allianceの今後の展開」
2022年から現在に至るまでの基盤モデルに基づく生成AIの進歩は、人間の生産性を大きく改善する可能性を秘めている。一方で、社会は強力だが不透明なAIによるリスクに晒されることとなった。これまでのIT技術の目覚ましい発展は、オープンコラボレーションやオープンリサーチによって支えられてきた。The AI Allianceは、AI技術も同様にオープンに技術開発することによって、その恩恵を全ての人に開かれたものにすべきであるという理念のもと、IBMとMetaが主導して設立した団体である。発足して半年ほどが経つこのAllianceの活動とこれまでの成果を紹介する。
福田 剛志(日本アイ・ビー・エム株式会社 IBM東京基礎研究所 執行役員 IBM東京基礎研究所 所長)
【略歴】1991年早稲田大学大学院理工学研究科修士修了後、日本アイ・ビー・エム株式会社入社。東京基礎研究所にてオブジェクト指向データベース、データマイニング、機械学習、バイオインフォマティクスなどの研究に従事。1999年早稲田大学より博士号(情報科学)取得。2004年ソフトウェア開発研究所へ異動しデータベース関連ソフトウェアの開発に従事。2012年ソフトウェア製品開発担当理事としてソフトウェア製品開発を担当。2015年5月より東京基礎研究所所長。2021年より同社執行役員。 -
[15:00-15:10]休憩
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[15:10-15:45]Session4「PFNグループの生成AIへの取り組み」
PFNグループは、マルチモーダル基盤モデルの開発および提供を進めている。特に経済産業省が主導して国産の生成AI開発を強化するプロジェクト「GENIAC」を通じてパラメータ数が1000億からなるテキスト、画像、音声を扱えるマルチモーダル基盤モデルと、1兆からなる大規模言語モデルの開発に取り組んでいる。
これらの基盤モデルの開発と並行して、実際の業務やサービスで活用するためのソリューション開発を進めている。
こうした開発や提供には様々な課題が存在する。学習や評価に使うデータをどのように収集、選択し、整備するのか、モデルのアーキテクチャや学習手法、推論手法をどのように設計し、採用するのかなどである。
本講演ではこれらの開発過程で得られた知見や直面した課題について解説する。また開発中のモデル状況についても共有する。岡野原 大輔(株式会社Preferred Networks 代表取締役 最高研究責任者)
【略歴】東京大学大学院在学中に、西川徹等とPreferred Infrastructureを創業。2014年に深層学習の実用化を加速するためPreferred Networksを創業。現在は最高研究責任者として基盤モデルの研究開発に取り組む。汎用原子レベルシミュレータMatlantisの販売を行うPreferred Computational Chemistry、マルチモーダル基盤モデルの開発を行うPreferred Elementsの代表取締役社長を兼任。情報理工学博士。 -
[15:45-15:55]休憩
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[15:55-16:30]Session5「エンジニアリングへの生成AIのインパクト」
生成AIの産業応用検討が盛んになっています。講演者は社内でのソフトウェア開発における生成AIの研究開発をリードしており、そこではソースコードやテストコードの生成だけでなく、ソリューションの提案やシステム設計、品質保証など、幅広いタスクへの生成AIの適用が検討しいます。また、ソフトウェアに限らず、ハードウェア設計やシステム運用など、エンジニアリング領域での生成AIの可能性が広がっています。生成AIには人を代替する作業の省力化だけでなく、人とAIの関わり方を変え、新たな価値を生み出すことが期待されています。本講演では、企業におけるエンジニアリングに焦点を当て、現在検討が進められているユースケースや、生成AIの活用における技術的な工夫点、そして生成AIが普及した世界での可能性について議論します。
小川 秀人(株式会社日立製作所 研究開発グループ サービスシステムイノベーションセンタ 主管研究長)
【略歴】1996年名古屋大学大学院博士前期課程修了。同年日立製作所入社。2015年JAIST博士後期課程修了、博士(情報科学)。現在、日立製作所研究開発グループにてソフトウェア工学と生成AI活用の研究開発を推進。JAISTインダストリアルアドバイザ/産学連携客員教授、東京大学非常勤講師。共著書に「AIソフトウェアのテスト 答のない答え合わせ」「土台からしっかり学ぶ ソフトウェアテストのセオリー」「実践 生成AIの教科書」(リックテレコム)。 -
[16:30-16:40]クロージング
田島 玲(LINEヤフー株式会社 LINEヤフー研究所 所長)