連続セミナー2024「情報技術の新たな地平:AIと量子が導く社会変革」

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第7回【10月9日(水) 13:00~ 15:30】

メタバース① 〜仮想空間を活用した身体・知覚・認知の拡張〜


メタバースを活用した人間拡張の研究を中心に、それらがもたらす社会、産業変化を展望する。第1回はメタバースと人間拡張にフォーカスし、メタバース空間を活用して身体や認知を拡張する研究を紹介する。コーディネーターである持丸から概論を述べた上で、東京大学の前川和純先生から身体の拡張、東京大学の鳴海拓志先生から知覚と認知の拡張について最新の研究をご紹介いただく。第2回はインターバースとバーチャルエコノミーにフォーカスする。インターバースはメタバースと実空間(ユニバース)を相互に繋ぐ技術を指し、メタバースで拡張した価値を実空間に環流することで新しい市場(バーチャルエコノミー)の拡大を目指すものである。持丸から概論を述べた上で、琉球大学玉城絵美先生から身体固有感覚の共有、竹中工務店の安藤邦明さまから仮想の街を使った体験価値の向上に関する研究の取り組みを紹介いただく。 
  • [13:00-13:20]オープニング、Session1「メタバースと人間拡張」

    持丸 正明

    人間拡張とは、人にセンサやデバイスが寄り添うことで、人の身体・感覚・認知・コミュニケーションの能力を一時的、恒常的に向上させる技術のことである。実世界(ユニバース)でロボット技術を適用することで発揮力を増やすような技術だけでなく、人が仮想空間(メタバース)に出入りすることで機能を遠隔化したり、その効果規模を拡大するようなものも含まれる。講演では、産総研・人間拡張研究センターで進められている人間拡張の要素技術とそれらを用いた拡張体験事例を紹介するほか、メタバースを活用した遠隔介護サービス、VR業務トレーニング、VRによる遠隔機器操作のスキルトレーニングなどの事例を紹介する。その上で、高齢化、少子化時代に、労働者の能力を拡張することがHR-Techの一部として、どのように産業と社会に貢献するかを展望する。

    持丸 正明(国立研究開発法人産業技術総合研究所 フェロー 兼 人間拡張研究センター 研究センター長 )

    【略歴】1993年、慶應義塾大学大学院博士課程 生体医工学専攻修了。博士(工学)。同年、工業技術院生命工学工業技術研究所 入所。2001年、改組により、産業技術総合研究所 デジタルヒューマン研究ラボ 副ラボ長。2018年より、人間拡張研究センター長。2023年にフェロー。専門は人間工学、バイオメカニクス、サービス工学。現在、ISO TC 324および PC329国際議長。消費者安全調査委員会・委員長代理。
  • [13:20-13:30]休憩

  • [13:30-14:10]Session2「拡張自己実現:身体能力の拡張を通した心の支援を目指して」

    前川 和純

    
技術の進化に伴い、人間はこれを駆使して自らの能力を拡張してきた。より最近では、製造技術の革新やセンサー、アクチュエータの入手性の向上によって、ものづくりの民主化が進み、従来の大量生産機械から、個々人の特性やニーズ、個別の事象に合わせてカスタマイズされた技術・機械の設計が可能になった。加えて、計算機やAIの発達は、単純な機械に対してより高度な振る舞いやインタラクションを付与することを可能にしつつある。このような背景のもと、本講演では、身体や運動能力を拡張する際に考慮すべき基本的な要素に関して概観する。特に、個人の身体近傍で行われるダイナミックな運動に焦点をあて、その拡張技術の実践例を紹介する。さらに、この講演では、身体の拡張がもたらす直接的な効果だけでなく、それが人の心にどのような影響を与えるかについても考察する。

    前川 和純(東京大学 先端科学技術研究センター 身体情報学分野 特任講師)

    【略歴】2021年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。博士(工学)。同年より東京大学先端科学技術研究センター特任助教、同大学助教を経て、2023年11月より同大学特任講師、現在に至る。生物と人工物の境界に焦点をあて、学術と表現領域を横断した作品制作や研究活動、展示発表を行う。主な受賞歴に文化庁メディア芸術祭新人賞やACM CHI Honorable Mentionなど。
  • [14:10-14:20]休憩

  • [14:20-15:00]Session3「アバターが拡張する自己:知覚・認知の拡張から人生の意味の編集まで」

    鳴海 拓志

    バーチャルリアリティやメタバースでは,バーチャル空間における身体であるアバタを,その外見だけでなく身体構造や機能まで自由に設定することができる.こうした実際の身体とはかけ離れた特性を持ったアバタを操る新しい体験は,自分自身に対する認識を変容させ,感覚,行動,そして発揮能力や思考までをも変容させることが明らかになってきた.講演者は,そのような身体変容体験に伴って現れるこころや自己認識への影響を積極的に活用することで自在なこころのあり方を支援する技術を「ゴーストエンジニアリング」と呼び,研究を進めてきた.本講演では,その研究事例を紹介するとともに,技術やサービスによって自らのこころや能力を即時的に拡張できることと長期的視座から形成される人生の物語(物語的自己)の関係を探る研究についても紹介し,この種の技術が人間や社会に与える影響を議論する.

    鳴海 拓志(東京大学 大学院情報理工学系研究科 准教授)

    【略歴】2006年東京大学工学部システム創成学科卒業.2008年東京大学大学院学際情報学府修了.2011年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了.東京大学大学院情報理工学系研究科知能機械情報学専攻助教,講師を経て,2019年より准教授,現在に至る.博士(工学).JSTさきがけ研究者.バーチャルリアリティや拡張現実感の技術と認知科学・心理学の知見を融合し,身体と心の相互作用を活用して人間の認知,行動,能力を変化させるゴーストエンジニアリング等の研究に取り組む.
  • [15:00-15:10]休憩

  • [15:10-15:30]Session4 ディスカッション

    持丸 正明
    持丸 正明(国立研究開発法人産業技術総合研究所 フェロー 兼 人間拡張研究センター 研究センター長 )


  • 前川 和純
    前川 和純(東京大学 先端科学技術研究センター 身体情報学分野 特任講師 )


  • 鳴海 拓志
    鳴海 拓志(東京大学 大学院情報理工学系研究科 准教授)



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