連続セミナー2024「情報技術の新たな地平:AIと量子が導く社会変革」
第2回【6月19日(水) 13:00~16:10】
量子情報科学への招待(2)量子インターネットの現在地と未来
量子インターネットの展望を概観し、実用化への大きな期待と現 在の技術的課題を解き明かします。量子通信における最新の技術チャレンジや、セキュリティ、暗号化といった分野での 応用可能性を紹介します。
※本セミナーは、配布資料とアーカイブ配信をご提供いたします。
参加された方々の声
- 非専門家にもわかりやすいセミナーでした。最新技術の最前線にいる研究者からフランクにご講演いただけるのが本連続セミナーの魅力と考えています。
- 量子インターネットの現在地という意味でこの実現(商用化や汎用化)に向けての展望と期待感が感じられた。
-
[13:00-13:05]オープニング
嶋田 義皓(科学技術振興機構 研究開発戦略センター フェロー)
【略歴】博士(工学、公共政策分析)。東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻博士課程修了。2008 年日本科学未来館科学コミュニケーター、2012 年科学技術振興機構戦略研究推進部主査などを経て、2017 年より現職。専門分野は、物性物理、ICT、科学コミュニケーション。著書に『量子コンピューティング 基本アルゴリズムから量子機械学習まで』(オーム社)。 -
[13:05-13:45]Session1「量子インターネットの概要と展望」
本講演では、量子コンピュータ及びその応用分野である量子インターネットに焦点を当てます。量子コンピュータは、単なる高性能計算機を超えた存在として、量子力学を基盤とした新たな計算パラダイムを開拓しています。これらの量子コンピュータを連携させることで生まれる量子インターネットは、量子情報処理の長所を活かし、広域での分散量子計算、量子センサーネットワークの構築、破られない暗号化システムの実現を期待できます。さらに、広域での量子現象を扱えることで、物理学の最先端を拓く可能性を秘めています。
この講演ではまず、量子インターネットの基本概念を解説し、今後の議論の基礎を築きます。量子情報技術の魅力とその学際的な分野におけるサブフィールドを紹介し、量子インターネットにおける重要なマイルストーン、研究開発の最新進展、将来の展望、そして国際的な競争状況について深掘りします。永山 翔太(株式会社メルカリ mercariR4D シニアリサーチャー/慶應義塾大学 政策・メディア研究科 特任准教授)
【略歴】専門は量子インターネット。特に、量子エラー訂正符号および量子ネットワークアーキテクチャ・通信プロトコル。博士(政策・メディア)。現在、株式会社メルカリ研究開発部R4Dシニアリサーチャー、慶應義塾大学政策・メディア研究科特任准教授を兼務。他に、量子インターネットタスクフォース代表、JSTムーンショット型研究開発プログラム目標6「スケーラブルで強靭な量子通信システム」プロジェクトPM、情報処理学会量子ソフトウェア研究会幹事など。 -
[13:45-13:50]休憩
-
[13:50-14:30]Session2「The Internet:量子インターネットの展開とインターネットの進化」
インターネットはこれまでも新しい技術を取り込みながら進化を続けてきた。
しかしながら、量子コンピュータ/量子インターネットの登場はこれまで以上に大きなインパクトのある進化を伴う変化が起こると考える。
ここでは、インターネットの哲学を示しながら、量子コンピュータ/量子インターネットを含んだ新しいインターネットの形について議論を行う。砂原 秀樹(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授/KGRI サイバーセキュリティ研究センター長)
【略歴】1960年兵庫県生まれ。88年慶應義塾大学理工学部博士課程修了。電気通信大学情報工学科助手、94年奈良先端科学技術大学院大学情報科学センター助教授を経て、2001年から教授。2005年情報科学研究科教授。2008年4月より現職。 村井純(慶應義塾大学教授)らとともに、1984年からJUNET、1988年からWIDEプロジェクトを通じて、日本におけるインターネットの構築とその研究に従事。現在は、東京大学柴崎亮介教授らとともに、パーソナル情報を預かり個人の意思でそれらを活用する"情報銀行"の実現に向けて研究を進めている。他に、サイバーセキュリティについて技術・社会・人の観点で研究を推進。2008年より大学間連携セキュリティ人財育成事業を先導。 -
[14:30-14:35]休憩
-
[14:35-14:55]Session3「量子インターネットのアプリケーションを量子力学の理論から考える」
量子インターネットはある種のインフラになると思われるが、そこから社会全体が価値を得るには適切なアプリケーションが求められる。量子インターネットが存在しない現状では、そのアプリケーションの開発は、量子インターネットが前提とする量子力学の理論を起点にせざるを得ない。一方で、量子力学の理論は、本来はミクロな物理現象を説明および解明することを目的としており、量子インターネットへの適用は未想定であった。本講演では、これまでの解決方策や今後の課題について言及したのち、量子力学の基本原理を概説し、量子インターネットを含む分散型情報処理への応用を探求する。また、量子インターネットの開発が進むにつれて予測される理論の進展、それによって誘引される新しいアプリケーションの発展の方向性についても考察する。
添田 彬仁(大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立情報学研究所 情報学プリンシプル研究系 准教授)
【略歴】2013年に東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。博士(理学)。シンガポールのCentre for Quantum Technologiesでのポスドク、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻の助教を歴任。2022年より現職。日本物理学会会員。電子情報通信学会エレクトロニクスソサエティ量子情報技術特別研究専門委員会幹事。量子インターネットタスクフォース・ボードメンバー。主な研究テーマは量子アルゴリズムの研究・開発ならびに量子情報処理の原理の探究、特に分散型量子情報処理に着目。 -
[14:55-15:15]Session4「量子インターネット社会に向けて」
数年前まで、大規模な量子計算を実現する耐故障量子計算機(FTQC)や遠隔地間での量子通信を担うインフラである量子インターネットの実現は遠い未来と考えられてきた。2024年現在、企業のロードマップには2020年代のFTQC登場が予告され、国内では量子インターネット・テストベッドの建設が着手されている。それらが実用レベルに到達し、現行のコンピュータとインターネットが実装できないさまざまな量子アプリケーションが登場すると、私たちの生活・社会はどう変わっていくのだろうか。本講演では量子インターネット・アプリケーションのユースケースや運用コストなど、現段階で予想される将来像と現在の知見を紹介する。また、量子インターネット社会の早期実現に向けた講演者の関わる人材育成の取り組みについても紹介する。
佐藤 貴彦(学校法人慶應義塾大学 理工学部情報工学科 准教授)
【略歴】2016年東京大学にて博士(情報理工学)取得。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科および慶應義塾大学量子コンピューティングセンターでの特任助教・特任講師を経て、2023年4月より慶應義塾大学理工学部情報工学科准教授。専門は量子情報科学。MOOC講座『Understanding Quantum Computers』(FutureLearn)やプログラミングコンテスト『IBM Quantum Challenge』(IBM,慶應共催)などの開発に携わる。 -
[15:15-15:20]休憩
-
[15:20-16:05]パネルディスカッション「量子インターネット実現へ ~ユースケースとコストから見る未来展望~」
佐藤 貴彦(学校法人慶應義塾大学 理工学部情報工学科 准教授)
-
須賀 祐治(株式会社インターネットイニシアティブ セキュリティ情報統括室 シニアエンジニア)
【略歴】1997年九大大学院数理学研究科修士課程修了。2016年筑波大学大学院システム情報工学研究科博士課程修了。2008年より現職。専門分野は、Applied Cryptography、 Blockchain、 Identity Management、Secure Protocol Designなど多岐に渡る。CRYPTREC暗号技術活用委員会 委員、暗号鍵管理ガイダンスWG 委員。JVCEAセキュリティ委員会 専門委員。
-
砂原 秀樹(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授/KGRI サイバーセキュリティ研究センター長)
-
添田 彬仁(大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立情報学研究所 情報学プリンシプル研究系 准教授)
-
永山 翔太(株式会社メルカリ mercariR4D シニアリサーチャー/慶應義塾大学 政策・メディア研究科 特任准教授)
-
[16:05-16:10]クロージング
嶋田 義皓(科学技術振興機構 研究開発戦略センター フェロー)