連続セミナー2023「人とAIが共生する社会に向けた情報技術」

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第7回【10月6日(金)13:00~16:00】

ブレインテック(1)脳を知る、測る、産業化する


脳は私たちの思考や行動の源泉であり、古くからその仕組みの理解や機能修飾の可能性に人々の関心が集まっていた。最近では計測技術やAIの発展によって、実環境のなかでも脳情報をリアルタイムに見える化したり、機械動作に反映させたりすることができるようになり始め、ヘルスケア、人間拡張、脳機能医療などの応用が現実的になってきた。しかしその一方で、これまで不可能だった「脳を知る」「脳を改変する」ということへの不安や恐れもまた一般社会のなかで増幅し始め、世界各国ではブレインテックの規制や推進のあり方について、さまざまな議論が行われている。
このセミナーでは、本邦で精力的にブレインテックの研究や産業化に取り組んでいる講師陣から、ご自身の取り組みや周辺動向についてご発表いただき、参加者とともに今後の学術・産業動向について議論を深める。
  • [13:00-13:05]オープニング

    牛場 潤一
    牛場 潤一(慶應義塾大学理工学部 生命情報学科 教授)

    【略歴】1978年7月8日生まれ、東京都出身。2001年、慶應義塾大学理工学部卒(物理情報工学科)。2004年に博士(工学)を取得。同年、生命情報学科に助手として着任。以降、専任講師(’07〜)、准教授(’12〜)、基礎科学・基盤工学インスティテュート(KiPAS)主任研究員(’14〜’18)を経て、2022年より教授。慶應義塾大学関連スタートアップである研究成果活用企業 株式会社LIFESCAPES(’19〜)の代表取締役社長を兼務。
  • [13:05-13:55]Session1「Brain-machine interfaceで脳の情報処理機構を調べる」

    岩間 清太朗

    本講演では、計測した脳の活動をもとに外部機器を動かす装置であるBrain-machine interface, 通称BMIについて取り上げ、その基礎研究への展開と実世界応用の現在地について紹介します。多くのBMIは、神経の活動を時系列信号として機械学習モデルに与えて脳の情報を読み出すことで成立します。そのため、時々刻々取得するデータをどのようにリアルタイムに分析し、外部機器の操作に反映させるかによってシステムの挙動が変化します。また、BMIの操作結果が使用者にフィードバックされるため、BMIの操作を通じて使用者の脳のはたらきにも与えることが知られるようになりました。さらにはBMIの設計によって、使用者の脳活動が示す反応が異なることも示唆されています。本講演ではBMI技術の背景となる生理学と脳の情報を読み解くための情報学的技術、そしてBMIを使って脳の性質を明らかにした事例を紹介し、BMI研究に期待される今後の展開について考察します。

    岩間 清太朗(慶應義塾大学理工学部生命情報学科 助教(有期))

    【略歴】2019年3月慶應義塾大学理工学部生命情報学科を卒業。2021年4月より日本学術振興会特別研究員DC1, 同8月より内閣府ムーンショット型研究開発制度「身体的能力と知覚能力の拡張による身体の制約からの解放」においてResearch Assistantに従事。2023年3月慶應義塾大学大学院を修了、博士(理学)取得。2023年4月より慶應義塾大学理工学部生命情報学科にて助教(有期)に着任。
  • [13:55-14:05]休憩

  • [14:05-14:55]Session2「頭皮脳波の計測と解釈を製品品質で実装する際の要諦について」

    森川 幸治

    本講演では、非侵襲型の脳計測方法である頭皮脳波の計測を対象に、測定機器製作、測定方法、測定信号の解釈にわたる一連の脳計測とその応用に際しての注意点などについて述べる。特に医療分野への応用には、QMS省令への適合をベースにした品質の作りこみが必要となる。品質を担保するための製品開発プロセスに則りながら、電気的、電磁気的な安全性の確保や、機能性の評価、さらに臨床での有効性の確認など、各種のステップを着実にクリアしていくことになる。さらにこれらの結果を書面化し、承認審査や認証審査を経て医療機器として認められることになる。本講演では、Brain-Machine Interfaceに基づくリハビリテーション機器の開発を事例に、新しい分野の医療機器の開発をどんなステップで進めているかの事例紹介とともに、そのプロセスにおいて注意すべきこと、配慮すべきことについて述べる。

    森川 幸治(株式会社LIFESCAPES 取締役 CTO)

    【略歴】1996年9月名古屋大学大学院工学研究科博士課程修了。日本学術振興会特別研究員を経て1997年4月松下電器産業株式会社(現パナソニック)入社。人工知能技術、脳波などの生体信号応用技術に関する研究開発を推進。2020年4月Connect株式会社(現LIFESCAPES)に入社。現在、株式会社LIFESCAPES 取締役 CTO。Brain-Machine Interfaceによるリハビリ機器の製品開発に従事。博士(工学)。
  • [14:55-15:05]休憩

  • [15:05-15:55]Session3「ベンチャーサイエンティストと事業化について」

    藤井 直敬

    サイエンティストの社会貢献には様々な形がある。誰も知らない新規な研究成果によって世の理を明らかにすること、教育や人材育成、科学成果の社会への実装などである。一般に科学者の仕事は科学研究を行い、それを論文にするところで完了すると考えられている。社会への貢献や実装は、科学者自身が行う必要はないと考えがちであるし、研究費の申請書に書く研究の社会的意義に関して、真剣に評価・議論されることはほとんどない。一方、スタートアップ界隈では、常にシード技術を探しており、その対象として科学者の研究成果に目を向けがちである。しかし、科学者、投資家、起業家それぞれの視点・期待が異なっており、有望なシード技術がうまく実用化に至らないケースが多い。このマッチングのずれと歪みをどのように解消し、科学者の研究成果を世の中に活かしていけるのかについて考える。

    藤井 直敬(株式会社ハコスコ代表取締役社長/デジタルハリウッド大学大学院 卓越教授/XRコンソーシアム代表理事/ブレインテックコンソーシアム代表理事/東北大学 特任教授)

    【略歴】東北大学医学部卒業。同大大学院にて博士号取得。1998年よりマサチューセッツ工科大学(MIT)、 McGovern Institute 研究員。2004年より理化学研究所脳科学総合研究センター所属。2008年より理化学研究所チームリーダー、2014年株式会社ハコスコを起業。主要研究テーマは、適応知性および社会的脳機能解明。主な著書に、「つながる脳」(毎日出版文化賞 受賞)、「脳と生きる」「現実とは」など。
  • [15:55-16:00]クロージング

    牛場 潤一
    牛場 潤一(慶應義塾大学理工学部 生命情報学科 教授)

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