2022年05月16日版:河内谷 清久仁(監事)

  • 2022年05月16日版

    「学会の持続と変革

    河内谷 清久仁(監事)


     ここは「理事からのメッセージ」というコーナーですが、おそれながら私は理事ではありません。2020年度から2年間、「監事」を務めさせていただいております。監事の担務の1つは法令および定款上の監事職務であり、学会の業務や財産の状況から監査報告を作成すること、と定められています。私は過去に事業担当理事として、全国大会やFIT・プログラミングコンテストなどを担当し、学会の基幹事業の継続と改革のお手伝いをさせていただきました1)が、監事はそれらを含めた学会運営全体を見守る立場ともいえます。今回はその観点から、「学会の持続と変革」という大それたタイトルで寄稿させていただきます。

     任期中の2年間はコロナ禍のため、多くのことがオンラインで行われる状況が続きました。そんな中、3月の全国大会をハイブリッド開催できたことはアフターコロナに向けてのよい成果であったと思います。学会運営に関する議論は理事会も含め多くがオンラインで行われましたが、それでもさまざまな改革が行われました。例として、委員会体制の見直しや中長期戦略2)の推進、ダイバーシティ宣言3)などが挙げられるでしょう。これらはほんの一部ですが、会長・副会長をはじめ尽力されている理事および事務局の皆様には頭の下がる思いです。監事2名も、統合された経営企画委員会にオブザーバーとして参加し、意見をよりタイムリーに述べさせていただきました。

     昨今、SDGsという言葉が世の中をにぎわせている通り、持続可能な社会を作ることの重要性が高まっています。学会においても主要なテーマであることは、徳田会長の就任メッセージ4)でも触れられていたとおりですが、「学会自身の持続可能性」はどうでしょうか? そのための指標の1つである会員数は、よろこばしいことに2万人台を回復しました。これはジュニア会員の増加によるところが大きく、その維持とさらなる躍進のためには中高生(および教員)に対して学会の有用性をいかにアピールしていくかが重要となるでしょう。高校での「情報」科目の必修化や2025年からの大学入試科目への追加は、その追い風になると思いますし、教員や生徒が入会することが当たり前であるような環境を作っていくことが学会の持続にもつながると考えます。

     さて、持続のためには変革が必要となります。学会が改革を続けていることは最初にも触れたとおりで、DX(デジタルトランスフォーメーション)についてもさまざまな取り組みが行われていますが、その継続に加え、企業会員や賛助会員の維持・増加につながるような新たな施策ものぞまれます。AIやクラウドサービス系のような新しい「情報処理」企業や、そのユーザ企業にも学会の価値を訴求していけるとすばらしいです。その他の方向性として、学会自身のさらなる国際化にも期待が高まります。国際化を進めることはインパクトファクターの取得および向上の助けにもなりますし、ACMおよびIEEE-CSとのJoint Awardの価値向上にも役立つでしょう。また、これらの変革自体が一時的なものではなく持続性のあるものであることが強く望まれます。持続のためには変革が必要、そしてその変革は持続的であることが重要です。

     以上、大上段に構えて書きましたが、ここで申し上げたことのほとんどはすでに検討・着手されていることであり、その意味でも当学会の運営は大変健全であることを申し添えます。2022年度はいよいよ、アフターコロナ(またはウィズコロナ)が重要なテーマになってくるでしょう。イベントはハイブリッド開催が標準となっていく可能性があり、学会の運営や体制をどう合わせていくかがポイントになりそうです。昨年9月のデジタル庁発足や「情報」科目の必修化などから、社会における当学会の重要性は増す一方です。会長のリーダーシップのもと、学会の持続と変革が引き続き行われていくことを期待いたします。

    1)https://www.ipsj.or.jp/annai/aboutipsj/kawachiya_kiyokuni_2019.html
    2)https://www.ipsj.or.jp/annai/report/plan2021to2025.html
    3)https://www.ipsj.or.jp/annai/aboutipsj/ipsj_diversity.html
    4)https://www.ipsj.or.jp/annai/aboutipsj/presidents/31tokuda.html