2019年01月07日版

「巨人の肩,見えてますか?」

河内谷 清久仁(事業担当理事)


 「巨人の肩の上に立つ(Stand on the shoulders of giants)」という言葉があります.Google Scholar1)のトップページに出てくるので知っているという方が多いのではないでしょうか.元々はフランスの哲学者が言い出した表現で,ニュートンが手紙の中で使ったことで有名になったのだそうです.技術の進歩は,これまでの進歩の積み重ね(=「巨人」)を理解し,その上に立つことで初めて可能になるという意味だと理解していますが,日々の進歩の速い情報処理技術の分野では特に重要なことだと思います.

 たとえばプログラミングでは,開発ツールやライブラリなどの「巨人」を活用することで初めて大規模アプリの開発が現実的なものになりますし,逆にそれらを理解していないと望ましい成果を出すのは難しいでしょう.

 巷で流行している位置情報を利用したスマホゲームも,スマートフォンの登場だけでいきなり可能になったわけではなく,GPSによる測位技術,高速かつ低価格の無線通信技術,オープンアクセスできる地図情報,などの「巨人」の上で初めて現実のものになったのです.ゲームに登場するキャラクターやその世界観も「巨人」の一部といえるかもしれません.

 情報処理の分野では最近,人工知能関連の話題が盛んですが,これもニューラル・ネットワークの理論研究や各種のプログラミング言語,オープンソース技術などの「巨人」の上に立っているといえるでしょう.

 さて,私が当学会の「事業担当」理事を拝命して1年半ほどが経ちました.事業担当の担務の1つは全国大会と情報技術フォーラム(FIT),プログラミングコンテストなどの企画運営ですが,上の「巨人の肩の上に立つ」という言葉を意識していくつかの施策を行ってきたつもりです.

 まず,「巨人」を知らないと肩の上に立つことはできません.これはつまり,これまでの情報処理技術の成果を理解するということです.2018年9月に福岡工業大学で開催された第17回情報科学技術フォーラム(FIT2018)ではそのために,「既発表論文紹介」というカテゴリを新設しました2).これは,各分野の国際会議等で発表した最新の成果を著者に紹介してもらうというもので,FIT参加者に最先端の技術動向を知る機会を提供したいという考えからです.1回目ということもあり,プログラム委員会からもお声がけさせていただき,36件の論文紹介をしていただくことができました.

 次に,「巨人」の肩に立てる人材を増やしていく必要があります.当学会が大学学部3年生までの「ジュニア会員」育成に力を入れているのはそのためでもあります.2019年3月に福岡大学で開催される第81回全国大会では,開催日程に土曜日を含め,中高生のジュニア会員やその引率者の皆様が参加しやすい体制を作りました.イベントとして「中高生によるポスターセッション3)」や「小中校で必修化されたプログラミング教育に関するチュートリアル」なども行われる予定です.

 最後に,「巨人の肩の上に立てているか」を確認したい皆様.全国大会の中では,第7回国際人工知能プログラミングコンテスト(SamurAI Coding 2018-19)4)の決勝ラウンドも行われます.これは,プログラマがAIプログラミングの技倆を競うコンテストで,どなたでも参加いただけますがジュニア会員にも興味を持っていただける内容です.今回のゲーム「SamurAI Jockey 2018」は,AIの制御する2人のプレイヤがステップごとに場所を移動し,障害物を避けながらゴールに到達するまでのタイムを競うものです.プログラミング言語やライブラリ・AI手法などの「巨人」を活用し,肩の上に立てているかを確認する機会といえるでしょう.2月上旬までご応募いただけます.

 さあみなさん,巨人の肩の上に立ち,自らも巨人の一部になりましょう.

1)https://scholar.google.co.jp/
2)https://www.ipsj.or.jp/event/fit/fit2018/FIT2018_program_web/data/html/outline/
3)https://www.ipsj.or.jp/event/taikai/81/PosterSession/
4)https://samuraicoding.info/

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