プロジェクトの鍵は人 CITP企業認定による人財の質担保で成功に導く

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プロジェクトの鍵は人 CITP企業認定による人財の質担保で成功に導く

後藤協子

最大手システムベンダーの一翼を担う日立製作所(本社・東京都千代田区)、およびそのグループ会社の技術者認定制度は、2015年に情報処理学会のCITP企業認定を取得した。

同社は、「良い人間作りと事業の発展を同時に志す」ことを、人材育成の基本理念に掲げている。情報通信分野を担うデジタルシステム&サービス部門は60年を超える歴史を有し、システムエンジニア(SE)を中心とする精鋭の技術者集団だが、新時代に対応した人材育成が喫緊の課題となっている。

事業の中期経営計画と歩調を合わせ、デジタルトランスフォーメーション(DX)人材の育成に力を入れており、その要となる仕組みとして位置付けているのが、社内の技術者認定制度である。これを情報処理学会のCITPの企業認定と調和させる形で再構築し、高度人材の見える化に取り組み、着実な効果を上げている。

社内資格から第三者のお墨付きへ

企業認定証

後藤協子氏(デジタルシステム&サービス統括本部プロジェクトマネジメント統括本部IT人財マネジメントセンタ センタ長)は、社内の資格制度の司令塔として、入社以来一貫して、社内の人材育成を手掛ける。CITPが立ち上がった2014年当時、同社には、SEの代表的な職種とされるプロジェクトマネージャ(PM)を筆頭として、いくつもの社内資格があったが、統一が取れていなかった。そこで、CITPの企業認定に合わせて社内資格を整備し、対外的にも評価される制度を目指すことになった。後藤氏は、「社内でITSSレベル5相当のPMと認定されても、社外に通用する資格でなかった。CITPの企業認定を取れば、第三者のお墨付きを得た資格にできる」と経緯を語る。

同年、CITPの認定要件に合わせる形で、PM以外の人材にも対応した「日立ITプロフェッショナル認定制度(Hitachi Certified IT Professional)」(以下CIP制度)」が誕生した。英語の正式名称の後半は、CITPと同じだ。CIP 制度では、情報処理推進機構(IPA)のITスキル標準(ITSS)レベル4以上の高度技術者を審査し認定する。職種別の審査委員会があり、グループ会社を含む所属部署から推薦された対象者について、スキルとキャリアの双方を審査する。CIP制度の有資格者と認定されれば、以後は3年ごとの更新となる。

一方、CIP制度で認定された人を一括してCITPに登録することはしていない。CIP制度の認定者で外部のCITP資格も欲しいと考える人が、各自で学会に申請し、その際は個人認定の受験料と同じ1万円を自己負担する。CITP有資格者は、プロフェッショナル・コミュニティの活動などに参加できるが、こちらも社内的には自主的に業務外に行う活動と位置付けられている。これまでに100~200人ほどが自主的にCITP資格も取得しているという。

プロジェクト成功率が右肩上がりに

後藤氏は、同社がCITPの企業認定を取得した最大のメリットは、「人材の質の保証ができ、それを対外的にも“見える化”して示せたこと」だという。「ITプロジェクトの成否は、プロジェクトメンバーのスキルや経験に依存する面が大きいが、社内制度が第三者から認定されることで、人材の質が対外的にも担保される」と語る。

実際に、その効果は「プロジェクト成功率」という指標に現れている。CIP制度を整備した2014年以降、プロジェクト成功率は順調に右肩上がりで上昇を続けている。これは、納期・予算・品質等いくつかの評価基準により成功したと判断されるプロジェクトの割合が増えていることを示している。CITPの企業認定には100万円以上の費用がかかるが、メリットは大きく、同社では5年ごとの更新を続けていきたいと考えている。また最近は、DXの担い手となるデータサイエンティストの養成にも力を入れ、社内資格のCIP制度に新たに組み入れているが、2021年のCITP更新時にデータサイエンティスを加えた企業認定として認定された。「CITPは人材をスキルとキャリアと両面から評価でき、かつ更新制であるという要件を満たした情報系では唯一の資格で、大きな価値がある」(後藤氏)。

日立では2016年から、デジタル技術を活用したソリューションやサービス、テクノロジーの総称であるLumada(ルマーダ)事業を展開している。Lumadaは、「illuminate(照らす)+data(データ)」の造語である。これを担うグループ内のデジタル人材は、2018年には3万人だったのが、2021年には6.7万人を超えた。顧客のデータに光を当てて新たな知見を引き出し、経営課題に応えられる高度な人材づくりは最も重要である。その中核となる、CIP制度すなわちCITPで認定された人材には大きな期待が寄せられている。

(2023年5月10日)

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