広がるCITPコミュニティ 社会のためにスキルや専門知識を発揮する

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広がるCITPコミュニティ 社会のためにスキルや専門知識を発揮する

菊池修

CITP有資格者同士の交流を通じ、自律的な質の向上を目指す——高度IT人材であるCITPによるプロフェッショナルコミュニティでは、自己研鑽はもちろんのこと、社会に対しても教育活動など、IT技術の強みを生かした取り組みを展開している。2022年7月からCITPコミュニティの代表幹事として旗振り役を務めるのが、NTTテクノクロス株式会社(本社・東京都港区)セキュアシステム事業部 アシスタントマネージャーの菊池修氏である。

企業認定を受け個人でもCITP有資格者に

NTTテクノクロスはNTTのグループ会社で、主としてNTTの 研究所が開発した先進技術を活用したソリューションを展開する 。社内のプロフェッショナル認定制度「NTT TechnoCross Certified Professional (TXCP)」は、情報処理学会の「認定情報技術者(CITP)企業認定」に適合させる形で微調整され、同社は2017年にCITP企業認定を取得した。さらに、菊池氏を含めたTXCP認定者を一括してCITP有資格者として登録した。

菊池氏の専門領域はITアーキテクト、顧客企業が求める要件に最適なシステムを設計し、開発をリードする役割を担う。菊池氏は、CITPの魅力について「IT業界に知識だけを測る資格は多いが、業務実績を伴う人材を評価している」と語る。同社では昇任・昇格に際してTXCP(すなわちCITP)は絶対条件でないが、プラス要素として評価される。そこで積極的にアピールしたいと名刺にCITPのロゴを入れており、それが接ぎ穂となって、社外でも会話が広がるという。

未来の技術者に生きた教育を授けたい

菊池氏は父親も姉もIT系の仕事に就き、パソコンに親しんで育った。高校でITパスポートの入門資格を得ると、横浜国立大学の電子情報工学科に進み応用資格を取った後、1994年に現在の会社の前身であるNTTソフトウェアに入社した。

2017年にCITP有資格者に認定され、メーリングリストに登録。2019年、CITPのコミュニティ活動として大学で講義する人を募集する告知に出会った。情報処理学会のITフォーラムの中に「CITPフォーラム」があり、その専門部会(Special Interest Group、略称:SIG)では有志が自分の関心のあるテーマで活動している。大学教育は「情報教育支援・実践」SIGの活動で、それ以外に「おんらいん読書会」「マーケティング」「アラサー技術者交流」などのSIGもある。

教育に関心が高い菊池氏は、率先して手を挙げた。それは石巻専修大学(宮城県石巻市)における授業の依頼で、石巻出身のCITPメンバーが東日本大震災の復興支援を込めて地元とやりとりする中から生まれた企画だった。菊池氏も他のメンバーも教育のプロではない。しかし、「未来の技術者に対して、IT技術が社会でどう使われるのかまでを伝えたい」と知恵を絞った。授業は大好評で、翌年以降も継続されただけでなく、菊池氏の母校である横浜国大、東京都市大学(東京都世田谷区)でも行うようになった。

大学での講義風景

大学からは、情報リテラシーや情報倫理などをテーマとした講義の要望が多く、事前の課題を用意している。生きた事例として、例えば、特定の世界的通信機器メーカーを政府調達から除外するという報道について、「あなたが会社の調達担当者だったら同社を外すか、外さないのであれば、社内でどう説明するか」といった課題である。情報教育のSIGメンバーは総勢15人で、1回の授業に5人ほどが参加し、グループディスカッションの際は各グループに入って議論を盛り上げる。また、情報倫理の講義では、誰もが気軽にSNSを使う時代に、デジタル情報の拡散するリスクなど、送り手・受け手双方の注意点を、事例を交えながら話すという具合だ。

単なる実務家教員でなく、学会の認定資格というお墨付きを得ていることが、大学がCITPに信頼を寄せる拠り所となる。初等中等教育にも活動が広がり、2022年は神奈川県の教育委員会に教材提供した。ここでは、スマートフォンを用いて生徒会長を選挙する事例について、不正を防ぎながら、IT技術を活用する仕組みを説明するビデオを作成した。最近は、CITPフォーラムに「初等教育」のSIGも立ち上がった。

菊池氏は、「正しく情報技術を使うことを理解してもらう取り組みは、プロボノとして、とてもやり甲斐がある」と語る。「プロボノ」はラテン語で、社会のために、職業上のスキルや専門知識を生かして行うボランティア活動を指す。こうした活動は、会社によっては手弁当だが、NTTテクノクロスの場合、プロフェッショナルの活動として勤務の一環として扱われる。

菊池氏がCITPに認定されて3年、2020年に最初の更新を迎えた。「CITPコミュニティを通じて、コロナ禍でも同業者と活発に交流できた。多方面の情報が蓄積され、業務にも生かせる」と手応えを語る。同時に、CITP認定者がもっとアクティブに活動できる場を増やし、CITPのプレゼンス向上を重要なミッションと痛感し、さらなる飛躍を期している。

(2023年5月10日)

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