2023年度詳細

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2023年度(令和5年度)山下記念研究賞詳細

 山下記念研究賞は,研究賞として本会の研究会および研究会主催シンポジウムにおける研究発表のうちから特に優秀な論文を選び,その発表者に贈られていたものですが,故山下英男先生のご遺族から学会にご寄贈いただいた資金を活用するため,平成6年度から研究賞を充実させ,山下記念研究賞としたものです.受賞者は該当論文の登壇発表者である本会の会員で,年齢制限はありません.本賞の選考は,表彰規程,山下記念研究賞受賞候補者選定手続および 山下記念研究賞推薦内規に基づき,各領域委員会が選定委員会となって行います.本年度は37研究会の主査から推薦された計52編の優れた論文に対し,慎重な審議を行い決定の上,理事会(2023年7月)および調査研究運営委員会に報告されたものです.本年度の下記受賞者には,3月に開催される第86回全国大会で表彰されます.

<コンピュータサイエンス領域>
DBS SE ARC OS SLDM HPC PRO AL MPS EMB QS

<情報環境領域>
DPS HCI IS IFAT DC MBL CSEC ITS UBI IOT SPT CDS DCC

<メディア知能情報領域>
NL ICS CVIM CG CE CH MUS SLP EIP GI EC BIO CLE

コンピュータサイエンス領域

●B+木における同時実行制御手法の統一的な再現実装及び性能検証
[データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム(DEIM2023)(2023/3/5)](データベースシステム研究会)
nohara

野原 健汰 君 (正会員)

2021年3月 名古屋大学情報学部コンピュータ科学科 卒業.
2023年3月 名古屋大学情報学研究科知能システム学専攻 博士前期課程 修了.
現在,ソフトウェア開発に従事.

[推薦理由] 本論文はメニーコア環境におけるデータベース性能について,索引構造に対する同時実行制御方式の観点から複数方式間での比較検証結果を報告している.調査対象としてB+木を取り上げ,索引構造への同時実行制御要素であるロック方式(悲観的,楽観的)とロック粒度(単層,多層)を実験条件として,ロックフリー索引(Bw木,Bz木)との性能比較を行った.本論文の価値は得られた比較検証結果だけでなく,データベース基礎技術に関わるテーマ選定,見通しの良い論文構成,実験結果に対する丁寧な考察にもあり,本論文はデータベース基礎研究として価値の高いものと考える.よって,本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●グラフ集約に基づく高速な最大k-plex探索
[データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム(DEIM2023)(2023/3/6)](データベースシステム研究会)
matsugu

真次 彰平 君 (学生会員)

2019年3月 筑波大学情報学群情報科学類 卒業.
2021年3月 筑波大学大学院システム情報工学研究科コンピュータサイエンス専攻 博士前期課程 修了.
同年より,同大学院 理工情報生命学術院システム情報工学研究群情報理工学位プログラム 博士後期課程 在学.
高速な大規模グラフ分析技術に関する研究に従事.

[推薦理由] 本論文はグラフからの最大k-plex探索に対し,グラフ集約に基づく高速化としてBranch-and-Merge(BnM)法を提案した.最大k-plex探索はSNSにおけるネットワーク分析など多用な応用を持つが,既存手法では探索候補の枝刈り時にグラフのノード数に対し多項式時間の計算量が必要であった.BnM法はネットワークのスケールフリー性に着目しグラフの性質を崩さない範囲でノードを集約することで,正確な解を保証しつつ計算量を劣線形時間にまで削減した.各種データセットでの実験でも既存手法からの高速化が確認されており,最大k-plex探索における今後のベースラインとなることが期待される.以上より,本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●機械学習プロジェクトにおけるアンチパターンとその整備
[2023-SE-213(2023/3/10)](ソフトウェア工学研究会)
takeuchi

竹内 広宜 君 (正会員)

1998年 東京大学工学部計数工学科 卒業.
2000年 東京大学工学系研究科計数工学専攻 修士課程 修了.
2012年 慶應義塾大学大学院理工学研究科開放環境科学専攻 後期博士課程 修了,博士(工学).
2000年〜2018年 日本アイ・ビー・エム株式会社東京基礎研究所 勤務.
2018年より武蔵大学経済学部教授.現在に至る.

 
[推薦理由] 本論文は,機械学習を活用したサービスシステムの開発プロジェクトにおいて頻出する問題やその回避ならびに解決策を,実務家から収集した情報の整理および抽象化を通じて,一定の形式に従ったアンチパターン群として整備し提案している.専門性の異なる様々な要員やチームにより進められることが多く,また複雑かつ不確実性が高く適応的な機械学習システム開発において,従来のソフトウェアシステム開発には見らない問題に直面することが多い中で,有用なガイドを与える点で価値の高いものであり,優れた新規性と有用性が認められる.以上より山下記念研究賞に相応しいものとして推薦する.
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●部分的なインオーダ実行の導入によるベクトル拡張命令の高効率な実装
[2023-ARC-252(2023/3/25)](システム・アーキテクチャ研究会)
kimura

木村 優之 君 (学生会員)

2009年 広島大学工学部 卒業.
2011年 慶応義塾大学大学院理工学研究科開放環境科学専攻 修了.
2019年 Shanghai StarFive Technology Co., Ltd.
兼 2022年より東京大学大学院情報理工学系研究科 博士課程 在籍中.

[推薦理由] 近年の汎用CPUには,細粒度なデータ並列性を効率的に抽出するためのベクトル命令が実装されている.ただし,今日の汎用CPUは一般にOut-of-Order(OoO)スーパスカラ型のアーキテクチャを採用しているため,ベクトル命令の実行のためには膨大な規模の回路の追加が必要となる.本研究では,ベクトル命令を部分的にIn-Order実行することで,ベクトル命令実行の機構をOoOスーパスカラ・アーキテクチャに軽量に実装する方法を提案している.シミュレーションの結果,大きな性能低下なく回路を大幅に単純化可能なことを示しており,今後のプロセッサ・アーキテクチャ研究における重要な方向性を示す価値ある成果である.よって,山下記念研究賞にふさわしい候補としてここに推薦する.
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●ソフトウェアメモリを用いたNVMeコマンドのキャプチャ
[2023-OS-158(2023/2/14)](システムソフトウェアとオペレーティング・システム研究会)
kuga

空閑 洋平 君 (正会員)

2015年 慶応義塾大学政策・メディア研究科 博士課程 修了.
2015年 同大大学院特任助教.
2018年 東京大学情報基盤センター特任講師.
2021年11月 同大准教授.
現在に至る.

[推薦理由] 本研究では,PCIeデバイス間のデータ通信をソフトウェアで観測する手法を提案している.PCIeデバイス間の通信はCPUを介在せずにおこなわれるため,従来はソフトウェアからの観測は難しかった.本研究では,主要なPCIeデバイスがコマンドやデータの受け渡しにDRAMを用いていることに着目し,メモリ領域の書き込み内容をソフトウェアで観測・変更可能なSoftMEMを提案している.ソフトウェアで制御可能なソフトウェアメモリという概念自体ユニークで新規性の高いものであり,さらに実際にFPGAを用いてプロトタイプ実装をおこなって実現可能性を実証しており,将来性の期待できる非常に優れた研究である.
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●C-elementにより単一ノード反転に強靭な耐ソフトエラーフリップフロップの提案
 [DAS2022(2022/8/31)](システムとLSIの設計技術研究会)
ito

伊藤 貴史 君 (正会員)

2021年3月 京都工芸繊維大学工芸科学部電子システム工学課程 卒業.
2023年3月 京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科電子システム工学専攻 博士前期課程 終了.
同年4月 TSMCデザインテクノロジージャパン株式会社 入社.

[推薦理由] 自動運転や医療機器,宇宙機などの人命に関わる機器には高い信頼性が要求されるなか,集積回路は微細化に伴ってソフトエラーによる信頼性の低下が顕著になっている.本論文では,多重化フリップフロップに配線やC-elementを追加することで,放射線によってノードの値が反転しにくいフリップフロップと,反転したノードの値を除去・修復するフリップフロップを提案する.提案したフリップフロップに対する回路シミュレーションを用いた性能評価と,65 nmバルクプロセスにより試作したチップを用いたα線照射による耐性評価を行った.照射結果より,提案したフリップフロップのソフトエラー耐性は改善元のフリップフロップに比べて前者で2倍,後者で26倍の向上を確認した.本論文は,高い信頼性が要求される環境下で運用される集積回路において,ソフトエラー耐性に優れた記憶素子の設計指針を与える価値の高い論文であることから,山下記念研究賞に相応しい論文として推薦する.
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●FPGA Implementation of Learned Image Compression
[2022-SLDM-200(2022/11/30)](システムとLSIの設計技術研究会)
sun

孫  鶴鳴 君 (正会員)

2011年7月 上海交通大学電子情報電気工学部 卒業.
2012年9月 早稲田大学情報生産システム研究科 修士課程 修了.
2014年3月 上海交通大学電子情報電気工学研究科 修士課程 修了.
2017年3月 早稲田大学情報生産システム研究科 博士課程 修了.
2017年4月より2018年9月 日本電気株式会社 中央研究所 研究員.
2018年9月より2023年3月 早稲田大学理工学術院総合研究所 次席研究員(研究院講師).
2023年4月より現在 横浜国立大学大学院工学研究院 准教授.

[推薦理由] JPEGなどの従来の画像符号化方式に代わり,ニューラルネットワークベースのlearned image compression (LIC) が注目を集めている.LICは従来手法よりも優れた符号化率による符号化が可能であり,またGPUによる浮動小数点ベースでの高速化が可能である.しかし,符号化処理と復号処理を異なるプラットフォームで行うと,浮動小数点計算における丸め誤差の違いにより,復号に失敗することがあるため,固定小数点による実装が求められている.本論文では,8ビットの固定小数点量子化によるLICのFPGA実装を行っており,最新のFPGA実装と比較して,処理速度が5倍になることを示している.本論文は,LICを用いた画像符号化システムの実用性を示す価値の高い論文であることから,山下記念研究賞に相応しい論文として推薦する.
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●対称ブロック低ランク行列の固有値問題解法
[2022-HPC-185(2022/7/20)](ハイパフォーマンスコンピューティング研究会)
ida

伊田 明弘 君 (正会員)

1994年3月 名古屋大学理学部数学科 卒業.
1996年3月 名古屋大学大学院工学研究科エネルギー理工学専攻博士 前期課程 修了.
1999年3月 名古屋大学大学院工学研究科エネルギー理工学専攻博士 後期課程 満期退学.
2004年3月 中央大学大学院理工学研究科博士課程後期課程数学専攻 修了,博士(理学).
2000年4月 株式会社ヴァイナス.
2012年4月 京都大学学術情報メディアセンター 特定助教.
2015年12月 東京大学情報基盤センター 特任准教授.
2021年4月 海洋研究開発機構付加価値情報創生部門 副主任研究員.
現在に至る.

[推薦理由] 大規模な行列固有値問題解法として,ブロックHouseholder 変換を用いて帯行列化を経由する2段階の三重対角行列化手法がある.従来,この手法では行列は密行列として扱われていた.本研究では,固有値計算の対象行列がブロック低ランク(BLR)行列で近似されている場合について,ブロックHouseholder ベクトルもBLR 行列で近似することにより,計算量を低減させる手法を検討し,かつBLR 行列向けの特殊なブロックHouseholder 変換の並列計算手法を提案した.数値実験により,これらの見積りが妥当であることを確かめ,行列のサイズが数万より大きい場合には,従来手法より高速であることを明らかにした.以上から提案手法は有用な数値計算法と認められ,山下記念研究賞に相応しい研究成果であると評価できる.
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●分散ワークスティーリングと協調するキャッシュ機構を備えたPGAS処理系
[2022-HPC-185(2022/7/20)](ハイパフォーマンスコンピューティング研究)
shiina

椎名 峻平 君 (学生会員)

2019年3月 東京大学工学部電子情報工学科 卒業.
2021年3月 東京大学大学院情報理工学系研究科電子情報学専攻 修士課程 修了.
2021年4月 東京大学大学院情報理工学系研究科電子情報学専攻 博士課程 進学.
2021年4月より,日本学術振興会特別研究員(DC1).
現在に至る.

[推薦理由] RDMA 技術の発展により分散メモリ上でのワークスティーリングは効率的に行えるようになった.しかし,動的に負荷分散されるタスクから大域的なデータへアクセスするため Partitioned Global Address Space(PGAS)のような大域アドレス空間を用いる場合,特に細粒度な通信を発行するタスク並列プログラムでは遠隔ノードへの通信が多発してしまう問題がある.本研究では,大域アドレス空間へのアクセスを自動的にローカルのメモリにキャッシュする処理系の設計を提案した.性能評価の結果,提案手法のスケーラビリティを確認し,初期評価として十分な成果を得た.以上から提案手法は有用な手法と認められ,山下記念研究賞に相応しい研究成果であると評価できる.
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●セル単位の実行状態分離を備えたノートブックプログラミング環境
[2022-PRO-139(2022/6/16)](プログラミング研究会)
nakamaru

中丸 智貴 君 (正会員)

2021年3月 東京大学大学院情報理工学系研究科 博士課程 修了,博士(情報理工学).
2021年3月 東京大学大学院総合文化研究科 助教.
現在,内部DSLの実装技術やノートブック環境の研究に従事.

[推薦理由] 近年,JupyterLabやGoogle Colaboratoryなどのノートブックプログラミング環境が機械学習分野で広く利用されており,活発に研究開発が行われている.ノートブックプログラミング環境上では,データの前処理,予測モデルの選択,モデルの訓練及びテスト,結果の可視化など,一連のタスク遂行における試行錯誤を対話的かつ視覚的に行うことができる反面,アドホックなセル編集や再実行を頻繁に行なった際に,順序通りに実行し直しても結果が再現しなかったり,どのような試行錯誤を行ったかを読み取れないなどの問題がある.そこで本論文では,コードセルが木構造を成し,各セルが親セルの実行状態を引き継ぎながら独立した実行状態を持つノートブックプログラミング環境を提案している.これにより,試行錯誤の選択過程を木構造として明示的に記述し,それぞれの試行を安全かつ効率的に実行して結果を比較できるようになる.開発言語に依存しない応用範囲の広い設計であり,実装も優れており軽快に動作する実用性も持つため,本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●アルファベット順による lex-parse サイズ比
[2023-AL-191(2023/1/20)](アルゴリズム研究会)
nakashima

中島 祐人 君 (正会員)

2012年3月 九州大学理学部物理学科 卒業.
2014年3月 九州大学大学院システム情報科学府情報学専攻 修士課程 修了.
2017年3月 九州大学大学院システム情報科学府情報学専攻 博士後期課程 修了,博士(情報科学) 取得.
2017年4月より 九州大学大学院システム情報科学研究院情報学部門 助教.
現在に至る.

[推薦理由] lex-parse は辞書式順序によって定義される文字列分解の一種であり,その分解に基づいた文字列の圧縮表現が存在する.本研究では,異なるアルファベット順による lex-parse のサイズ比について,文字列長に対して対数関数的上界を示した.また,フィボナッチ語と呼ばれる規則的な文字列が上界に対して漸近的にタイトな下界を与えることを示した.本成果は,異なるアルファベット順における文字列データ構造のサイズ比に関して初の非自明かつタイトな上下界を与えた結果であり,辞書式順序がデータ構造に与える影響を理論的に解明することを目指す近年の研究動向における重要な知見である.以上の理由により,山下記念研究賞に推薦する.
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●推薦の解釈を目的とした識別的なベイズ離散ガウス過程潜在空間モデル
[2022-MPS-138(2022/6/28)](数理モデル化と問題解決研究会)
takehara

竹原 一彰 君 (学生会員)

2006年3月 青山学院大学大学院理工学研究科知能情報コース 修了.
2006年4月 株式会社 野村総合研究所.
2016年1月 株式会社 リクルート.
2019年4月 株式会社 メルカリ.
2020年4月 総合研究大学院大学複合科学研究科統計科学専攻 入学.
現在に至る.

[推薦理由] 推薦システムにおける解釈性の高い新たなモデルとして,識別的なベイズ離散ガウス過程潜在空間モデルを提案し,ユーザーとアイテムに関する潜在空間上の解釈性について定量的,定性的な側面から検証について報告している.本研究内容は,推薦内容の妥当性について根拠の視点から検証可能にするとともに,推薦システム自体の信頼性を飛躍的に向上させる社会的意義の非常に高いものである.よって数理モデル化と応用 研究会として,山下記念研究賞受賞候補としてふさわしいと判断し,ここに推薦する.
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●コンテナ型仮想化における低レベルランタイムの評価
[2023-EMB-62(2023/3/25)](組込みシステム研究会)
nishimura

西村  惇 君 (正会員)

2021年3月 名古屋大学情報学部コンピュータ科学科 卒業.
2023年3月 名古屋大学大学院情報学研究科情報システム学専攻 修了.
2023年4月 ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社 入社.
現在に至る.

[推薦理由] コンテナ型仮想化は,VM型仮想化(仮想マシンによる仮想化)に比べてコンピュータ資源の利用効率や処理速度で優れており,PCやクラウドなどの分野で普及している.信頼性や安全性が重要視される組込みシステム分野においても,その適用可能性が検討されているが,利用状況によって実行性能,応答時間,使用資源量,セキュリティ等の多様な要求が存在する一方で,ソフトウェア実行を担う低レベルランタイムも数多く存在しており,利用状況に適する低レベルランタイムの比較・評価の負担が大きいという課題があった.本論文では,runc,crun,gVisor,Kata Containersの 4つの低レベルランタイムを対象に組込みシステムへの適用可能性を評価している.さらに,要求を満たす低レベルランタイムの選択を支援する評価ツールを設計・実装し,オープンソースとして公開した.これらの成果は,学術的に有用な知見を示しただけでなく,ツールのオープンソース化により,多くの研究者,技術者にとっても有益な成果となっている.以上より,本論文を山下記念研究賞にふさわしい論文として推薦する.
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●Searching for quantum-classical crossover in condensed matter problems
[2022-QS-7(2022/10/27)](量子ソフトウェア研究会)
yoshioka

吉岡 信行 君 (正会員)

2015年3月 東京大学理学部物理学科 卒業.
2017年3月 東京大学大学院理学系研究科物理学専攻 修士課程 修了.
2017年4月 日本学術振興会特別研究員DC1.
2020年3月 東京大学大学院理学系研究科物理学専攻 博士課程 修了.
2020年4月 理化学研究所Nori理論量子物理研究室 特別研究員.
2021年1月 東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻 助教.
2021年1月 理化学研究所Nori理論量子物理研究室 客員研究員.
2021年10月より 科学技術振興機構 さきがけ研究者を兼務.

[推薦理由] 量子情報処理によって古典情報処理を凌駕する計算速度・精度を達成することを「量子超越」と呼び,物理学・計算科学・数学など多岐にわたる分野から注目を集めている.素因数分解や機械学習などの問題にて,非常に大きなサイズにて量子超越が達成可能と考えられているが,(1) 実用的な問題にて (2) 現実的な時間スケールで (3)最も少ない量子リソースにて達成可能,との条件を満たす問題は知られていない.本研究では,物性物理における量子多体計算が,上記の要件全てを満たすことを示しており,将来の量子計算機の有効な利用法に示唆を与える重要な結果であると考えられるため,山下記念研究賞に推薦する.
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情報環境領域

●動的なレート制御を持つアプリケーションの識別に関する考察
[2023-DPS-194(2023/3/7)](マルチメディア通信と分散処理研究会)
aoki

青木  寛 君 (正会員)

2009年3月 横浜国立大学工学部知能物理工学科 卒業.
2011年3月 横浜国立大学大学院工学府物理情報工学専攻 博士課程前期 修了.
2011年4月 株式会社モバイルテクノ 入社.
2019年12月 株式会社国際電気通信基礎技術研究所 出向.
適応コニュニケーション研究所スマートネットワーク研究室 研究員.
現在に至る.

[推薦理由] 本研究では,多様な通信が混在するトラヒックから通信フローを識別し,それぞれに適切な品質要求を設定することにより,サービス継続を保つ技術を提案している.特に本論文では,動的なレート制御機能を持つアプリケーションにおいて通信フローの識別を行う際に,リンク容量の変化による挙動の変化によって識別精度が低下することを実測によって示し,その原因について考察している.フロー識別において重要な課題に取り組んだ有用な研究であり,実用面において重要な成果であると考えられるため,本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●Bicode:イベントカメラ向け遠近両用高速点滅二次元マーカーの提案
[2023-HCI-201(2023/1/17)](ヒューマンコンピュータインタラクション研究会)
kitade

北出 卓也 君 (正会員)

2013年 慶應義塾大学大学院理工学研究科開放環境科学専攻 修士課程 修了.
2013年 株式会社NTTドコモ 入社.
2023年 慶應義塾大学大学院理工学研究科開放環境科学専攻 博士課程 入学.

[推薦理由] ユビキタスコンピューティングにおいて,実空間中の物体の位置および姿勢をコンピュータに認識させることは重要な課題である.この課題の解決策として本研究が示すBicode は,点滅マーカと2 次元マーカの両方の機能を併せ持ち,イベントカメラと組み合わせて利用可能な,アクティブなビジュアルマーカである.Bicode は両機能を,マイコンにより駆動される,5cm 角の安価な小型マーカを定消費電力にて提供できている.このように,本研究は,社会的要求に応えつつ高い実用性を有する学術的成果を挙げているため,山下記念研究賞を受賞するのにふさわしいと判断される.
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●3次元バーチャル空間におけるインフォーマルな会話の開始を促すためのゲイズキューの可視化手法
[インタラクション2023(2023/3/8)](ヒューマンコンピュータインタラクション研究会)
ide

井出 将弘 君 (学生会員)

2010年 名古屋大学文学部人文学科 卒業.
同年 株式会社ユーフィット(現 TIS株式会社)入社.
現在 VR,AR,MRに関する研究開発に従事.
2020年~2021年 東京都市大学総合研究所未来都市研究機構 VR×社会的交流の場の創生研究ユニット 研究メンバー.
2022年 東京都市大学総合研究所未来都市研究機構 ソーシャルVR研究ユニット 研究メンバー.
東京都市大学環境情報学研究科 博士後期課程 在籍中.

[推薦理由] インフォーマルな会話を促すきっかけとしてゲイズキューは重要な役割を果たす.本研究は,VR空間におけるゲイズキューの可視化が,一方がもう一方を見つめる一方向型と2人が同じ対象を見つめる共同型という 2 種のゲイズタイプにおいて,インフォーマルな会話を促かどうかを調査している.実験結果から,可視化がインフォーマルな会話を促すこと,ゲイズタイプによって効果的な可視化方法が異なることを示している.現在 VR を活用したコミュニケーションの質の向上は重要な社会課題である.本研究は,この課題への一つの解を示している点,及び今後の研究の方向性を示している点で学術的価値が高く,また社会的要求にも応えている.以上の理由より本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●地方公共団体における新型コロナウイルスワクチン接種予約サイトの調査
[2023-IS-163(2023/3/6)](情報システムと社会環境研究会)
kakizaki

柿崎 淑郎 君 (正会員)

2003年3月 東海大学工学部電子工学科 卒業.
2008年3月 東海大学連合大学院理工学研究科総合理工学専攻情報理工学コース 博士課程 修了,博士(工学).
2008年4月 東京理科大学工学部第一部電気工学科 嘱託助教.
2013年4月 東京電機大学未来科学部情報メディア学科 助教.
2018年4月 東京電機大学研究推進社会連携センター 准教授.
2021年4月 東海大学情報通信学部通信ネットワーク工学科 特任准教授.
2022年4月 東海大学情報通信学部情報通信学科 特任准教授.
現在に至る.

[推薦理由] 本論文は,新型コロナウイルスのワクチン接種終了後のワクチン予約システムサイトのドメイン名を第三者が再登録するドロップキャッチに関する調査研究である.公的なワクチン予約サイトのように廃止前に良いレピュテーションを得ていたドメイン名は,ドロップキャッチにより,フィッシング,広告,マルウェア配布などに効果的に利用することができるという問題がある.本稿では,全国の市区町村におけるワクチン予約サイトの状況調査を実施し,ドロップキャッチの懸念があるドメイン名の現状について報告し,その対策について考察したものである.現実の情報システムで発生する社会的にインパクトの大きな課題を取り上げたものであり,社会環境の中で運用される情報システムを研究対象としている当研究会にとって有用性が高い事例研究であることから,山下記念賞に値すると判断した.
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●特許中のフローチャート画像からの説明文の自動生成
[2023-IFAT-150(2023/3/28)](情報基礎とアクセス技術研究会)
namba

難波 英嗣 君 (正会員)

1996年 東京理科大学理工学部電気工学科 卒業.
2001年 北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科 博士後期課程 修了,博士(情報科学).
東京工業大学精密工学研究所 助手,広島市立大学大学院情報科学研究科 准教授等を経て,2019年より中央大学理工学部 教授.

[推薦理由] 本論文では,特許文書中の選択図と要約を対象として,フローチャート画像に対する説明文自動生成器を提案している.提案手法における説明文自動生成の手順は,大きく3つ,画像からのテキスト抽出,訓練データの用意,説明文生成器からなる.各手順において妥当な既存手法が検討されて用いられている.実験結果では誤り分析で示される,複雑なフローチャート画像に対する課題が示されているが,数量的評価では,ROUGE,BERT Score の尺度で高い性能を示し,生成文の質の高さを示していると考えられる.これらの実験から,記述に高い専門性が要求される特許文書記述の支援・効率化に役立つと期待できる.将来的には,特許文書に限らず,その他の手順テキスト(レシピなど)への展開が期待できるため,波及効果が高いと考えられることから,山下記念研究賞にふさわしい論文として推薦する.
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●大規模言語モデルに基づいた対話型AIによる研究支援に関する初歩的分析
[2023-DC-128(2023/3/28)](ドキュメントコミュニケーション研究会)
tajima

田島 逸郎 君 (正会員)

2009年3月 電気通信大学電気通信学部人間コミュニケーション学科 卒業.
2011年3月 埼玉大学大学院文化科学研究科修士課程文化環境専攻情報メディア環境コース 修了,修士(文化科学).
2012年3月より 合同会社Georepublic Japan入社.R&D/GIS Specialist.現在に至る.
2015年4月 慶應義塾大学大学院文学研究科図書館・情報学専攻 博士課程 入学.
2021年3月 慶應義塾大学大学院文学研究科図書館・情報学専攻 博士課程 所定単位取得退学.
2021年9月 日本女子大学文学部日本文学科 非常勤講師.
地理空間情報に関するソフトウェア開発に従事. テクノロジーを用いた実践の中での知識の生産と流通を研究.

[推薦理由] 本研究は,ChatGPTやBing Chatにみられる大規模言語モデル(LLM)の学術研究分野での支援可能性について報告している.大学のゼミに見られる対話に着想を得て,AIと人間の実際の対話を収集し,収集した対話をエスノメソドロジーに基づき分析する手法を提案しており,新規性がある.加えて,AIによる提案を分類し,研究活動における具体的な活用に関する示唆を与えており,有用性が高い.話題の研究分野にいち早く取り組み,分析を加えている点においても,ドキュメントコミュニケーションの発展に資する内容である.以上の理由から,山下記念研究賞にふさわしい論文として推薦する.
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●細粒度人口分布推定のためのマルチモーダル超解像
[2022-MBL-105(2022/11/18)](モバイルコンピューティングと新社会システム研究会)
takeda

武田 直人 君 (正会員)

2016年3月 筑波大学知識情報図書館学類 卒業.
2018年3月 筑波大学大学院図書館情報メディア研究科 博士前期課程 修了.
2018年4月 KDDI株式会社 入社.
2019年4月 株式会社KDDI総合研究所 出向.
現在に至る.

[推薦理由] 本論文では,人流データのメッシュ解像度を機械学習で精細化する超解像人流推定技術を提案している.地方部では少ない人口に対するサンプリング誤差の影響が無視できないため,メッシュサイズを小さくできない課題があったことに対し,提案手法では,敵対的学習による画像の超解像モデルをサンプリング誤差影響の少ない都市部のデータで学習させつつ,地方部と都市部で共通の特徴を持つ地図画像を特徴量として組み込むことで課題を解決している.評価実験では,実地で観測した人流データとの相関によって有効性が確認されており,商圏分析や交通管理,災害時の避難状況把握,パンデミックのリスク評価など,幅広い応用が期待できる.以上の理由から,本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●Topswopsの物理的ゼロ知識証明プロトコル
[マルチメディア,分散,協調とモバイルシンポジウム(DICOMO2022)(2022/7/14)](コンピュータセキュリティ研究会)
komano

駒野 雄一 君 (正会員)

2001年3月 早稲田大学理工学部数理科学科 卒業.
2003年3月 早稲田大学大学院理工学研究科数理科学専攻 博士前期課程 修了.(博士(理学)(早稲田大学),2007年)
2003年4月 株式会社東芝 研究開発センター入社.以来,情報セキュリティ製品の基盤技術の研究開発および研究企画業務に従事.
2023年4月 千葉工業大学情報科学部情報ネットワーク学科 教授.

[推薦理由] 被推薦者主著の当該論文は,DICOMO2022 最優秀論文賞を受賞.Topswops と呼ばれる,カードを用いたゲームについて,解を知っていることのみを「物理的ゼロ知識証明」により他者に納得させる手法を提案している.これまで様々な問題に対して,トランプ等を用いた物理的ゼロ知識証明の手法が提案されてきたが,未解決問題の存在が知られるTopswops に対しては先行研究が無く新規性が高い.セキュリティとアルゴリズム・計算量の要素が融合する本研究は,学際分野としても大変興味深く,今後の研究の発展が大いに期待できる.また論文は丁寧かつ分かりやすく書かれており非専門家でも読みやすく,十分信頼できる内容である.以上より本賞受賞の資格は十分にあり,推薦する.
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●xltrace: クロスアーキテクチャに対応したライブラリ関数のトレース手法
[コンピュータセキュリティシンポジウム(CSS2022)(2022/10/24)](コンピュータセキュリティ研究会)
akabane

赤羽  秀 君 (学生会員)

2022年3月 神奈川工科大学情報学部情報ネットワーク・コミュニケーション学科 卒業.
2022年4月 神奈川工科大学工学研究科 博士前期課程 情報工学専攻 入学.
現在に至る.

[推薦理由] 被推薦者主著の当該論文は,191件の発表のうち2件のみに与えられた最優秀論文賞を受賞.静的にリンクされたライブラリ関数の名前を特定する自身の先行研究を基に,動的解析にシフトし大きく応用・発展させた結果に関する.動的に呼び出される際のライブラリ関数名と引数を,ダミープログラムの実行結果から引数とTCG変数のマッピングを行う斬新なアイデアであり新規性が高い.これによりアーキテクチャに依存しない引数の取得ができており,実用性の面でも非常に有効である.更に同じソースコードから作られた動的・静的リンクの実行可能ファイルでの評価,および実際のマルウェアでの評価を行うなど有効性の評価も十分優れる.以上より本賞受賞の資格は十分にあり,推薦する.
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●データ駆動型人流シミュレーションのモデル汎化手法の検討
[マルチメディア,分散,協調とモバイルシンポジウム(DICOMO2022)(2022/7/13)](高度交通システムとスマートコミュニティ研究会)
kitano

北野  佑 君 (正会員)

2008年3月 東京大学工学部計数工学科 卒業.
2010年3月 東京大学大学院情報理工学系研究科システム情報学専攻 修士課程 修了.
2010年4月 株式会社 日立製作所入社.
地理情報システム,人流データ分析等に関する研究に従事.
情報処理学会,電子情報通信学会会員.

[推薦理由] 本論文は,人流シミュレーションの精度向上を目的とし,経路探索による学習データ拡張と,距離特徴量の1次元CNN による深層学習モデルにもとづく人流シミュレーション手法によって,学習に用いる動線データのレイアウトとシミュレーション時のレイアウトが大きく異なる場合でもシミュレーション精度を向上させるモデル汎化手法を確立した.今後のITS,さらにはCPSの社会実装に向け,動線データの分析・利活用は益々重要になっており,シミュレーション精度向上に寄与できる本研究発表は,社会発展に向けて大きく貢献する技術であると評価し,山下記念研究賞に推薦する.
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●スマートフォンのGNSSセンサを用いたUVインデックス推定
[2022-UBI-76(2022/11/9)](ユビキタスコンピューティングシステム研究会)
ishioka

石岡  陸 君 (学生会員)

2022年3月 東京大学工学部電気電子工学科 卒業.
2022年4月 東京大学大学院情報理工学系研究科電子情報学専攻 修士課程 入学.
現在に至る.

[推薦理由] 適度な紫外線被曝は人の健康増進に有用であるが,逆に過度・過小な被曝はうつ病や皮膚癌,白内障など様々な健康被害に繋がるため,被曝量のモニタリングが重要である.本研究では,市販のスマートフォンに搭載された位置情報センサが受信する衛星の信号強度を活用し,被曝量の目安になるUV インデックスを推定する手法を提案している.本論文では評価実験として,提案手法を用いて一つの地域内の複数箇所で計測したUV値の推定を行い,提案手法が高い推定精度であることを示した.本取り組みは,個々人の紫外線被曝量モニタリングにおける革命的な手法であり,ユビキタスコンピューティング分野に大きく貢献する.以上の理由により,本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●音漏れ信号を用いたヒアラブルデバイス向け個人認証手法の検討
[2023-UBI-77(2023/2/28)](ユビキタスコンピューティングシステム研究会)
amesaka

雨坂 宇宙 君 (正会員)

2023年 筑波大学システム情報工学研究群 博士後期課程 修了, 博士(工学).
同年より慶応義塾大学理工学部情報工学科 訪問研究員(日本学術振興会特別研究員PD).
主に音響センシングを用いたウェアラブルコンピューティングに関する研究に従事.

[推薦理由] ユーザの生活を支える新たなウェアラブルデバイスとしてヒアラブルデバイスが注目されているが,その社会実装にはセキュリティ対策として装着者の認証機能が必要になる.そこで本研究では,ヒアラブルデバイスの音漏れに着目し,外耳道反響音と耳介反響音にて装着者の認証を行う手法を提案している.特に本論文では,音漏れ信号および耳介の音響特性の基礎調査と提案手法の評価実験を通し,本手法の高い個人識別・認証性能を明らかにしている.本取り組みはヒアラブルデバイスの社会実装に向けた重要な要素技術であり,ユビキタスコンピューティング分野に大きく貢献するものである.よって,山下記念研究賞にふさわしい論文として推薦する.
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●遠隔会議システムの計測データを用いた広域ネットワーク品質計測
[インターネットと運用技術シンポジウム (IOTS 2022)(2022/12/8)](インターネットと運用技術研究会)
kuga

空閑 洋平 君 (正会員)

2015年 慶応義塾大学政策・メディア研究科 博士課程 修了.
2015年 同大大学院特任助教.
2018年 東京大学情報基盤センター特任講師.
2021年11月 同准教授.
現在に至る.

[推薦理由] 本研究は,遠隔会議システムであるZoom によるネットワーク回線品質(QoS)計測データを用い,広域ネットワークの回線品質調査を行った結果を報告している.Zoom が保持しているQoSデータを継続的に収集するシステムをmdx上に構築し,長期間蓄積するための工夫が図られている.収集したQoSデータを分析することで,これまで観測が困難であった回線品質の比較評価が可能であることを示し,時間帯やAutonomous System毎で回線品質に差があることを明らかにしている.アプリケーションにて収集しているデータを活用し,インターネットの品質を分析する試みは非常に興味深いもので,QoSデータの収集蓄積の知見も有用性が高いと考える.以上のことから,山下記念研究賞候補として推薦する.
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●ECMPの拡張によるハードウェアロードバランサの提案
[インターネットと運用技術シンポジウム (IOTS 2022)(2022/12/9)](インターネットと運用技術研究会)
nakamura

中村  遼 君 (正会員)

2012年3月 慶應義塾大学環境情報学部 卒業.
2017年3月 東京大学大学院情報理工学系研究科 博士課程 修了.
2017年9月 東京大学情報基盤センター 助教.
2022年8月 東京大学情報基盤センター 准教授.
現在に至る.

[推薦理由] 本研究は,経路制御で利用されるEqual Cost Multi-path(ECMP)を拡張する事でロードバランス機能を実現したECMP with Explicit Retransmission(ECMP-ER)を提案している.本手法では,ECMPにおけるコネクションの一貫性欠如という問題を解決し,100Gbps NICを有するP4スイッチへの実装で性能評価を行っている.評価実験により,実用に耐えうる実装を実現しつつ,コネクション断が発生しないシステムとなっていることを確認している.また,経路制御によりロードバランス機能を実現しているため,ルータ単体でのロードバランス制御が可能である点で有用性の高い研究成果と言える.以上のことから,山下記念研究賞候補として推薦する.
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●AI誤判断に関する利用時品質のトラスト構築についての考察
[2022-SPT-47(2022/5/27)](セキュリティ心理学とトラスト研究会)
shima

島  成佳 君 (正会員)

1995年 弘前大学理学部情報科学科 卒業.
1997年 北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科情報処理学専攻 博士前期課程 修了.
同年 日本電気株式会社 入社.
2012年 電気通信大学大学院情報システム学研究科情報システム基盤学専攻 博士課程 修了,博士(工学).
2021年 長崎県立大学情報システム学部情報セキュリティ学科 教授.
現在に至る.

[推薦理由] 本論文は,利用者1000人を対象にWebアンケート調査を実施し,AIを使った製品やサービスに関してAIの誤判断リスクの認知と受容に関しての集計結果や仮説に基づく分析結果について述べている.著者らはSPT研究会において,本論文も含め継続的にAIシステムと利用者とのトラスト構築に関する研究に取り組んでおり,本論文は調査分析結果に限らずAIのトラストに関する今後の研究の方向性を示唆する,様々な知見を有するものとして高く評価されると考えられる.よって本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●日本国内におけるメールセキュリティに関する実態把握
[コンピュータセキュリティシンポジウム2022(CSS2022)(2022/10/25)](セキュリティ心理学とトラスト研究会)
shibuya

澁谷 遊野 君 (正会員)

2016年3月 東京大学大学院学際情報学府 修士課程 修了.
2019年3月 東京大学大学院学際情報学府 博士課程 修了.
2019年4月 東京大学大学院情報学環 特任助教.
2022年1月 東京大学空間情報科学研究センター 准教授.
現在に至る.

[推薦理由] 本論文は,約350の国内企業・団体を対象とした質問紙調査と,さらにそのうち150超の組織を対象としたメールセキュリティ解析を行い,PPAP等のメールセキュリティ対策の国内での利用状況の実態を明らかにするとともに,組織体制と合わせて分析・考察を行っている.PPAPを扱った詳細な実態調査,組織・技術対策両面からの分析等の着眼点は高く評価されるものと考えられる.よって本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●メロン画像特徴量の類似度を用いた等級判定技能習得支援システムの提案
[2022-CDS-35(2022/9/6)](コンシューマ・デバイス&システム研究会)
koike

小池  誠 君 (学生会員)

2005年3月 静岡大学大学院情報学研究科情報学専攻 修士課程 修了.
2018年10月 静岡大学大学院自然科学系教育部情報科学専攻 博士課程 入学.
現在に至る.

[推薦理由] 属人的なタスクと言えるメロン等級判定技能の修得を支援するシステムを研究開発したものである.Activation Mapや深層距離学習を用いて等級判定に有用な特徴部位の可視化や,レーダーチャート形式での等級類似度の提示によって,素人でも等級判定時にどの部位に着目すべきか分かりやすく提示する等級判定技能習得支援システムと言える.学習データの収集しづらい対象に対し,コンシューマデバイスや技術を応用した効果的なシステムの事例としてCDS研究会のテーマと合致し,当研究会会員の評価も高かったため当該論文を推薦する.
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●1ドットLEDの発光パターンが感情に与える影響
[マルチメディア,分散,協調とモバイルシンポジウム(DICOMO2022)(2022/7/13)](デジタルコンテンツクリエーション研究会)
yamamoto

山本 剛生 君 (学生会員)

2022年 神戸大学工学部電気電子工学科 卒業.
同年 同大学大学院工学研究科電気電子工学専攻 博士前期課程.
現在に至る.

[推薦理由] 本論文では,単純なLEDの発光パターンと感情の関係を明らかにするため,1ドットのLEDの発光パターンが人の感情に与える影響を調査している.4つの要素を組み合わせて作成した基礎パターンと映像をLEDに出力した映像パターンがどの感情に影響するのか調査している.実験結果からLEDの発光パターンが感情に与える影響として,1)赤色は怒り,青色は悲しみに影響を与えるといった,色彩による感情への影響があること,2)色や明るさが不規則に変化する複雑な発光パターンのほうが不思議に影響を与えやすいこと,などが知見として得られた.この結果は今後,観客に特定の感情を与えるLEDの電飾を演出する場合,その電飾を構成するLEDの発光パターンの設計の際の指針となる.本論文は,DICOMO2022において優秀な発表に対して授与されるDICOMO2022ヤングリサーチャ賞を受賞している点と,また,2022年度の対象論文に対する幹事,運営委員による投票の結果,高得点を獲得している点から,本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●異種環境での感情表出アバターを用いたリモート対話環境
[マルチメディア,分散,協調とモバイルシンポジウム(DICOMO2022)(2022/7/13)](デジタルコンテンツクリエーション研究会)
 utsugi

宇都木 契 君 (正会員)

1998年3月 東京大学工学部計数工学科 卒業.
2000年3月 東京大学大学院工学系研究科計数工学専攻 修士課程 修了.
2000年4月(株)日立製作所入社.映像・UI関連の研究に従事,現在に至る.
2010年3月 東京大学大学院学際情報学府学際情報学専攻 博士課程 修了,博士(学際情報学) .

[推薦理由] 本論文では,遠隔営業や説明議論の支援を目的としたコミュニケーション支援システムの試作について報告している.システムの概要は,(1)HMD,PC,スマートフォンなど異種機器を対象としてWebブラウザ上に対話・議論用の仮想空間を構築する,(2)顔部分を撮影するカメラからユーザの表情リアクションを取得し,空間上のアバター動作に反映する,(3)視聴コンテンツの共同再生機構と表情ログのロギングを合わせ会話の状況分析を行うためにリアクションKPIの変化を計測する機構,である.特に,この試作で検討した会話に対して顔表情による操作に基づく非言語情報のフィードバックを行う機構の実現,同システムに多様な接続機器で接続した場合のユーザビリティを担保するための画面構成デザインについて報告している.本論文は,DICOMO2022において優秀な論文に対して授与されるDICOMO2022優秀論文賞を受賞している点と,また,2022年度の対象論文に対する幹事,運営委員による投票の結果,高得点を獲得している点から,本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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メディア知能情報

●言語モデルの第二言語獲得効率
[2022-NL-254(2022/12/1)](自然言語処理研究会)
oba

大羽 未悠 君 (学生会員)

2022年9月 南山大学外国語学部フランス学科 卒業.
2022年4月 奈良先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科情報科学領域 博士前期課程 入学.
自然言語処理,計算言語学の研究に従事.

[推薦理由] 本研究では,言語モデルの言語転移について,第二言語における文法の獲得への影響という観点で様々な設定を用いて調査している.言語モデルの第二言語獲得というテーマ設定の独創性が非常に高く,シンプルな道具立てによる検証の中で,人間の第二言語獲得の難易度と言語モデルの獲得難易度で差があるなど多くの発見があり,実験結果に対する考察も示唆に富んでいる.
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●部品指向感情分析におけるデータ拡張時の偏り低減と多様性強化の効果
[2023-ICS-208(2023/2/20)](知能システム研究会)
anda

按田 将吾 君 (学生会員)

2022年3月 名古屋工業大学工学部情報工学科 卒業.
2022年4月 名古屋工業大学大学院工学研究科 博士前期課程 入学.
現在に至る.

[推薦理由] 社会的なニーズの大きい応用課題の1つである部品指向感情分析(CBSA)という製品レビュー分析課題に対して,WordNetを起点とした訓練データ拡張を効果的に行うための実践的かつ網羅的な実験的解析の結果について報告をしている研究発表論文である.本発表論文で提案されたアプローチには,他の既存のアプローチと比較して多くの外部データや時間を要することなくその効果を得られるという特長があり,データ拡張時の多様性の強化と偏りの低減のどちらが効果的であるかという関心の高いリサーチクエスチョンに対して実験的に網羅的な解析することでその1つの回答を示している点が,非常に興味深い.本研究は,将来の発展性も含めて本賞の推薦対象となるに相応しい内容であるためここに推薦する.
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●Refraction and Absorption for Underwater Shape Recovery
[2022-CVIM-230(2022/5/12)](コンピュータビジョンとイメージメディア研究会)
kuo

KUO MENG-YU JENNIFER 君 (正会員)

2017年3月 京都大学大学院情報学研究科知能情報学専攻 修士課程 修了.
2021年9月 京都大学大学院情報学研究科知能情報学専攻 博士後期課程 修了.
2022年1月 Postdoctoral Associate at University of Minnesota Twin Cities.

[推薦理由] 本論文は画像計測による水中物体の3次元形状復元に取り組んだものであり,水中撮影に伴う屈折や散乱を明示的にモデル化すると同時に,水による光の吸収量が水中での光路長,つまり被写体までの距離に依存し,かつその吸収係数が波長依存であることに着目して,異なる波長で計測された同一物体の輝度の違いから,光の吸収量の比を利用した3次元形状・運動計測手法を提案している.画素単位で精緻な奥行と法線を得ることができる3次元形状復元アルゴリズムに加えて,光源とカメラのキャリブレーション手法についても新たに提案するなど,コンピュータビジョン分野の研究として高く評価できる.以上により本研究を山下記念研究賞として推薦する.
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●音響信号を用いた人物三次元姿勢推定
[2023-CVIM-232(2023/1/26)](コンピュータビジョンとイメージメディア研究会)
shibata

柴田 優斗 君 (学生会員)

2023年 慶應義塾大学理工学部電気情報工学科 卒業.
2023年 慶應義塾大学大学院理工学研究科総合デザイン工学専攻 入学.
現在に至る.

[推薦理由] 本手法は音響情報を用いて人の三次元姿勢を推定する,いわば「人の三次元姿勢を"聴く"ことは可能なのか?」という課題に挑戦した取り組みである.具体的には,人物の動作により生じる音場の変化を推定に用いることで,明示的に人物の状態に結びつくような会話などの音声情報などをユーザが発していない状況であっても非侵襲な姿勢推定を可能にしている.計測対象人物の身体で反射・回折された音響信号は人物の体格差の影響を受けやすいため,提案手法では敵対的学習を活用して体格による分布差が小さい特徴量を作成することで未知の人物に対する推定精度を向上させた.また,残響音や回折音の影響の少ない無響室環境だけでなく実用性を意識した教室環境においてもデータセットを構築し,広範な実験を行っている点も高く評価できる.よって,本研究発表を山下記念研究賞候補として推薦する.
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●経年劣化に伴う金属物体上の塗膜の亀裂・湾曲表現 —静力学的破壊判定と位置ベース変形による準静的過程のビジュアルシミュレーション—
[Visual Computing(VC2022)(2022/10/6)](コンピュータグラフィックスとビジュアル情報学研究会)
ishitobi

石飛 晶啓 君 (学生会員)

2019年3月 慶應義塾大学理工学部 卒業.
2020年9月 慶應義塾大学大学院理工学研究科 修士課程 修了.
2021年4月 日本学術振興会 特別研究員(DC1).
2023年9月 慶應義塾大学大学院理工学研究科 博士課程 修了.
2023年10月 日本学術振興会 特別研究員(PD),慶應義塾大学 訪問研究員.
現在に至る.

[推薦理由] 本研究は,静力学的破壊判定と位置ベース変形を用いて,金属塗膜の経年劣化を対象とした準静的過程のビジュアルシミュレーション手法を提案している.従来法では再現が難しい,枝分かれする亀裂や剥離現象を本研究は再現することができ,シミュレーション結果は良好な結果を得られている.現実の金属製品の多くは防腐剤が塗布されており,本研究の意義は高いと考えられる.防腐剤の経年劣化に着眼した点は新規性があり,用いられている手法は高度かつ合理的な理論が展開されている.以上のことから,本研究発表を山下記念研究賞候補として推薦する.
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●情報科教科書に現れる用語の変遷—情報ABCから情報Ⅰ・Ⅱまで—
[2022-CE-166(2022/10/1)](コンピュータと教育研究会)
akazawa

赤澤 紀子 君 (正会員)

1997年 電気通信大学大学院情報工学専攻 博士前期課程 修了.
同年,日本電気株式会社入社.ソフトウェア開発に従事.
2015年 電気通信大学大学院情報・通信工学専攻 博士後期課程修了,博士(工学).
2016年 電気通信大学共通教育部特任助教.現在,同アドミッションセンター特任准教授.情報教育に関する研究に従事.
本会では,会誌編集委員,コンピュータと教育研究会幹事などを務める.
第84回全国大会大会優秀賞受賞.シニア会員.

[推薦理由] 本研究は情報科の知識体系の構築を目指し,高等学校共通情報科の必履修化以降の教科書に出現する用語を網羅的に調査し,用語出現の割合やその位置づけの変遷など多角的に分析・整理したものである.高等学校の共通教科情報科の新課程「情報I」「情報II」の開始,大学入学共通テストの出題教科への「情報」追加などの情報教育の変化を背景に,2003年度の「情報」必履修化以降の課程の変遷も含めて丁寧に調査分析を行っており,その結果がもたらす有用性は,本研究会の参加者から高い注目を集めた.今後の情報科の知識体系の構築へ向けて有用な知見を提供しており,推薦する.
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●忘れ物が多い児童を支援する音声を用いたリマインダーシステムの提案
[2023-CE-168(2023/2/12)](コンピュータと教育研究会)
kimura

木村 航大 君 (正会員)

2021年3月 東京学芸大学教育学部初等教育教員養成課程情報教育選修 卒業.
2023年3月 東京学芸大学大学院教育学研究科 修士課程 修了.
同年 NTTコミュニケーションズ株式会社 入社.
現在に至る.

[推薦理由] 本研究は,「忘れ物が多い」特性を持つ児童に対する支援として,親や教員の負荷軽減と個別最適な支援を指向したリマインダーシステムの提案を行うものである. 学校教育における特性を考慮した,複数のIoT機器や児童用タブレットと連携したリマインド環境の設計,児童の状態に応じた適切なリマインドのタイミングの推定など,システム設計のアイデアに新規性が認められるとともに,実際に試作システムを構築して評価実験を行い,その効果と今後の課題を明らかにしており,提案システムの高い有用性と将来性が期待できる研究である.以上から本研究は推薦にふさわしい内容であると評価した.
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●日本語資料の全文テキストデータ分析ツールNDL Ngram Viewerの開発について
[人文科学とコンピュータシンポジウム(じんもんこん2022)(2022/12/10)](人文科学とコンピュータ研究会)
aoike

青池  亨 君 (正会員)

2015年 東京大学農学部応用生物学専修 卒業.
2017年 東京大学大学院農学生命科学研究科 修士課程 修了.
同年 国立国会図書館 入館.
現在,同館電子情報部電子情報企画課次世代システム開発研究室に所属.

[推薦理由] 本論文は,国立国会図書館が提供するデジタル化資料を対象としたOCRテキストデータを活用した実験サービスとして開発された,「NDL Ngram Viewer」についてその技術的側面を解説するものである.同サービスは,図書及び雑誌資料合計約230万点に出現する語句の頻度情報を可視化する分析ツールであり,表記ゆれの多い日本語に対応するために正規表現検索が可能であるなど,既存の同種のサービスにない特徴を有している.また,比較的小規模なサーバ環境を利用して,大量のテキストデータに対して高速な正規表現検索機能を提供する技術的課題を解決したものとなっている.本論文は,その実現手法,解決手法を紹介し,開発において得られた知見を広く共有するものであり,高い価値を有する.山下記念研究賞にふさわしい論文として推薦する.
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●地震史料集テキストデータへの地理情報の統合
[2023-CH-131(2023/2/18)](人文科学とコンピュータ研究会)
kano

加納 靖之 君 (正会員)

2005年 京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻 博士後期課程 修了.
2005年 京都大学防災研究所 非常勤講師(研究機関研究員).
2008年 京都大学防災研究所 助教.
2018年 東京大学地震研究所 准教授.
2018年 東京大学地震火山史料連携研究機構 准教授(兼務).
現在に至る.

[推薦理由] 明治以降100年以上にわたって編纂されてきた地震や火山噴火に関する史料6万7千件がテキストデータになった.このテキストの活用のため,テキストデータ中の地名に緯度,経度などの地理情報を付与することを考えた.このテキストデータでは,各史料の出典に自治体名が付記されている.この地名を抽出し,既存の歴史的行政区域データセットβ版のデータのID を対応させることで,各史料のテキストに地理情報を関連づけることができた.史料に関連する地点約2千か所を地図上に表示したり,ある地名に共通する史料を抽出したりできるようになった.この成果は,地震学など関連分野での史料の活用を推進し,文理融合・学際的な研究につながるものである.
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●歌声のための自己教師あり対照学習による特徴量表現の獲得手法
[2022-MUS-135(2022/9/15)](音楽情報科学研究会)
yakura

矢倉 大夢 君 (学生会員)

2019年3月 筑波大学情報学群情報科学類 卒業.
2021年3月 筑波大学大学院システム情報工学研究科知能機能システム専攻 博士前期課程 修了.
同年より, 同大学院システム情報工学研究群知能機能システム学位プログラム 博士後期課程 在学.
ヒューマンコンピュータインタラクション分野で機械学習の応用を拡げる研究に従事.

[推薦理由] 本論文は,自己教師あり対照学習を歌声に応用することで,似た歌声の歌手を見つけることを教師データなしという条件下で可能にした.自己教師あり対照学習の音声・音楽分野への応用は限られている中での提案という点が独創的であるのみならず,歌手識別の精度を既存手法から25ポイント近く向上させることができたという点は特筆に値する.また,歌声の音声信号としての性質を考慮しながら,ドメイン知識を生かして手法を拡張しているという点も独自である.特に,ピッチシフトとタイムストレッチを用いた手法を新たに開発し,「歌い方は似ているが声質は似ていない歌手」といった検索を可能にした点は今後の産業応用が期待できる.よって,山下記念研究賞受賞候補として推薦する.
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●Tranducer型ストリーミング音声認識におけるMask-CTCを用いた事前学習
[2022-SLP-142(2022/6/18)](音声言語情報処理研究会)
zhao

趙  懐博 君 (学生会員)

2021年9月 早稲田大学基幹理工学部情報通信学科 卒業.
2023年9月 早稲田大学基幹理工研究科情報通信学科 修士課程 卒業.
同年 スプランク株式会社 入社.

[推薦理由] 本論文はTransducer型のEnd-to-End音声認識モデルにおいて,Acoustic Encoder部分をMask-CTCを用いた事前学習を行うことで,低遅延かつ高精度なストリーミング音声認識を試みている.Transducerに基づくEnd-to-End音声認識モデルは,入力音声の各フレームに対してトークンの予測を行うフレーム同期型モデルであり,先読み範囲の制御によりストリーミング音声認識が可能となる.先読み範囲を大きく取ることは認識精度の向上につながるが遅延量とのトレードオフとなる.本研究では長期的な文脈を考慮した音響特徴表現を獲得できるMask-CTCを用いた事前学習により,ストリーミング音声認識に適した音響特徴表現を学習することを意図したもので,結果的に低遅延かつ高精度なストリーミング音声認識を実現しており,音声認識研究に寄与するところが大きい.以上の理由により,山下記念研究賞にふさわしい論文として本論文を推薦する.
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●実環境下日本語話し言葉音声コーパスの構築と音声認識ベンチマーク
[2023-SLP-146(2023/2/28)](音声言語情報処理研究会)
mimura

三村 正人 君 (正会員)

1996年3月 京都大学工学部 卒業.
2000年3月 京都大学大学院情報学研究科 修士課程 修了.
2022年9月 京都大学大学院情報学研究科 博士後期課程 修了,博士(情報学).
2022年10月 京都大学情報学研究科 特定研究員.
2023年7月 日本電信電話株式会社 入社.
現在に至る.

[推薦理由] 本論文では,多数の雑音原画存在する4つのロケーションにおいて様々なトピックについてのプレゼンテーション音声を遠隔マイクで収録し,遠隔話し言葉音声認識の評価を行うためのコーパスを構築している.加えて,種々の音声強調・音声発話区分化・音声認識手法を用いて,構築したコーパスに対する音声認識ベンチマーク結果を報告している.本研究は様々な雑音源が存在する実環境下でプレゼンテーションスタイルの音声認識を行うコーパスを構築し,さらにベンチマークとなる結果を示すことで,実環境音声認識の研究分野全体にに大きく貢献するものであり,以上の理由により,山下記念研究賞にふさわしい論文として本論文を推薦する.
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●欧州(EU)・米国における「修理する権利」と日本における「修理する権利」
[2022-EIP-96(2022/6/10)](電子化知的財産・社会基盤研究会)
shimazaki

嶋崎 禅那 君 (正会員)

2022年3月 国際基督教大学教養学部アーツ・サイエンス学科 卒業.

[推薦理由] 「修理する権利」は,定期的なサプライやメンテナンスの重要性が高い情報処理関連機器で特に問題となるものである.しかし,米国や欧州では議論が行われているものの,日本ではまだ注目されていない.本報告は,この「修理する権利」について,諸外国の状況をもとにわが国の課題を論じたものであり,EIP研究会のテーマとして意義の大きいものと認めるため,推薦する.
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●深層学習による圧縮を利用した強力なオセロAIの制作
[2022-GI-48(2022/7/2)](ゲーム情報学研究会)
yamana

山名 琢翔 君 (ジュニア会員)

2020年3月 東京都立小石川中等教育学校 卒業.
2020年4月 筑波大学理工学群工学システム学類 入学.
現在に至る.

[推薦理由] 深層学習を用いた評価パラメータの圧縮という斬新な手法を提案,開発し,短いコードで極めて高い性能のオセロAI作成に成功している.このAIは,計算資源の制約が厳しい世界的なオセロAIコンテストで世界1位になるという素晴らしい結果を出した.また,制約のない一般のオセロAIに最適化しても高い性能を発揮し,世界1位のAIプログラムを上回り最強クラスのプログラムになった.少ない計算資源で極めて強いAIを作成したインパクトは大きく,実用的にも今後さまざまな応用が見込める画期的な成果である.この成果は今後ゲームAI分野において重要な貢献となりうるもので,山下記念賞に強く推薦する.
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●NOCCA×NOCCAの強解決
[ゲームプログラミングワークショップ(GPWS2022)(2022/11/11)](ゲーム情報学研究会)
yamamoto

山本 敦也 君 (学生会員)

2022年3月 電気通信大学情報理工学域 卒業.
2022年4月 電気通信大学情報理工学研究科 修士課程 入学.

[推薦理由] ボードゲーム「NOCCA x NOCCA」の最適戦略を探求した研究を2022年のゲームプログラムワークショップ (GPW)で発表した山本敦也氏を推薦する.彼の研究は,該当のゲームを「強解決」するという難関を突破した.強解決とは,ゲームにおける全ての可能な状況に対して最適な行動を求めることであり,この目標を達成したゲームは少数に限られている.NOCCA x NOCCAは,広く知られている強解決済みのゲーム「Awari」と同規模の状態空間を有している.山本氏のGPWでの発表は,ゲーム情報学の発展に寄与していると評価でき,彼に賞を授与するのが適当であると考える.
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●ホットミラーによる赤外光反射を用いた空中像インタラクション手法の提案
[2022-EC-64(2022/6/16)](エンタテインメントコンピューティング研究会)
ando

安藤 将平  君 (学生会員)

2022年3月 電気通信大学情報理工学域Ⅰ類 卒業.
2022年4月 電気通信大学情報理工学研究科情報学専攻 修士課程 入学.
現在に至る.

[推薦理由] 本論文は,空中像とのインタラクションを実現する際のセンサーの配置に着目し,ユーザーがセンサー等の機材を意識することなく空中像とインタラクションできる光学系を提案したものである.提案されたシステムでは,ホットミラーによる赤外光反射を利用することで,空中像の見た目に影響を与えることなくユーザーからセンサーを見えなくすることに成功している.装置の外観がインタラクションに影響を与えるという視点は目新しいものであり注目に値する.また,提案手法を用いることで,空中像キャラクター自身が視覚を持っているかのようなインタラクションの設計が可能になるという点から,今後の展開が大いに期待される.
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●あアラウド法:体験中の心理プロセスを「あ」の音声情報で評価する手法の提案と検証
[エンタテインメントコンピューティング2022(EC2022)(2022/9/3)](エンタテインメントコンピューティング研究会)
kawashima

川島 拓也  君 (正会員)

2017年3月 茨城県立日立第一高等学校 卒業.
2017年4月 明治大学総合数理学部 入学.
2021年3月 明治大学総合数理学部 卒業.
2021年4月 明治大学大学院先端数理科学研究科 入学.
2023年3月 明治大学大学院先端数理科学研究科 修了.

[推薦理由] 本論文はタスクを実行しながらそのとき頭に浮かんだことを声に出して語る思考発話法を応用し,発話を「あ」の表現のみに限定し思考・心理・感情を表現する実験手法の提案である.思考発話法には言語化負担や反応性が問題とされているが,感動詞でもある「あ」は,日常生活でも自然に多用しており感情や心理を実験参加者は感情を容易に表出しやすく,反応性ついても最小化できる可能性がある.本論文では基礎検討として「あ」の発声を用いて,その表現と感情や心理の関係についてビデオゲームを題材に質的に「あ」を分類調査し,「あ」での評価可能性について考察した.本研究は,評価が課題となっているエンタテインメントシステム研究へ一石を投じる可能性を秘めている.
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●Multidimensional Scaling Methods Can Reconstruct Genomic DNA Loops Using Hi-C Data Properties
[2023-BIO-73(2023/3/10)](バイオ情報学研究会)
ishibashi

石橋  瞭 君 (正会員)

2021年3月 中央大学理工学部物理学科 卒業.
2023年3月 中央大学理工学研究科物理学専攻 修士課程 修了.
現在,システム開発に従事.

[推薦理由] 多次元尺度構成法(MDS)をヒトゲノムの相互作用に関するHi-Cデータに適用し,DNAループを可視化する方法を提案している.計算機実験により,DNAループ形成に関与する転写因子が結合したDNAが以前の方法で得られたものよりも有意に多く含まれており,提案手法が以前の手法よりも優れていることが示された.提案手法は染色体の立体構造に関する研究に大きな影響を与える可能性がある.以上のことから,山下記念研究賞に相応しいものとしてバイオ情報学研究会より推薦する.
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●指標の細分化による学習者の特徴把握に関する分析
[2023-CLE-39(2023/3/10)](教育学習支援情報システム研究会)
kano

加納 泰斗 君 (学生会員)

2022年3月 京都大学工学部 卒業.
2022年4月 京都大学大学院情報学研究科 修士課程 入学.
現在に至る.

[推薦理由] 既存システムに記録される学習状況の可視化や問題推薦のための学習ログを用い,学習ログの含む情報をもとに学校内外の記録への細分化と,他の人と同じタイミングで行ったコモンとそうでないユニークとに細分化した学習ログを用いて学習者の行動の違いを捉える新たな課題に取り組んでいる.考察では,細分化前の基本的な指標では捉えることのできない閲覧行動の違いやメモ数,クイズの解答数などの違いについて考察しており,学習者の特徴を把握する特徴量エンジニアリング手法の開発が期待される.以上のことから,山下記念研究賞に相応しいものとしてCLE研究会より推薦する.
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