2015年度詳細

2015年度(平成27年度)山下記念研究賞詳細

  山下記念研究賞は,研究賞として本学会の研究会および研究会主催シンポジウムにおける研究発表のうちから特に優秀な論文を選び,その発表者に 贈られていたものですが,故山下英男先生のご遺族から学会にご寄贈いただいた資金を活用するため,平成6年度から研究賞を充実させ,山下記念研究賞としたものです.受賞者は該当論文の登壇発表者である本学会の会員で,年齢制限はありません.本賞の選考は,表彰規程,山下記念研究賞受賞候補者選定手続および 山下記念研究賞推薦内規に基づき,各領域委員会が選定委員会となって行います.本年度は37研究会の主査から推薦された計53編の優れた論文に対し,慎重な審議を行い,決定されたうえで,理事会(2015年7月)および調査研究運営委員会に報告されたものです.本年度の下記受賞者には,3月10日に慶應義塾大学で開催される第78回全国大会の席上で表彰状,賞牌,賞金が授与されます.

<コンピュータサイエンス領域>
DBS SE ARC OS SLDM HPC PRO AL MPS EMB

<情報環境領域>
DPS HCI CG IS IFAT GN DC MBL CSEC ITS UBI IOT SPT CDS DCC

<フロンティア領域>
NL ICS CVIM CE CH MUS SLP EIP GI EC BIO CLE

コンピュータサイエンス領域

●移動手段判定のための表現学習を用いたGPS軌跡からの特徴抽出
[Webとデータベースに関するフォーラム(WebDBForum 2014)(2014.11.20)] (データベースシステム研究会)
endo

遠藤 結城  君 (正会員)

2010月3月 筑波大学第三学群情報学類 卒業.
2012年3月 筑波大学大学院システム情報工学研究科コンピュータサイエンス専攻博士前期課程 卒業.
2012年4月 日本電信電話株式会社 入社.現在に至る.
NTTサービスエボリューション研究所所属.
データマイニングの研究開発に従事.

[推薦理由] 本論文は,GPSより得られる移動軌跡の情報から移動の手段を判定するという問題に関して,移動軌跡を表現した画像を多層ニューラルネットワーク(DNN)に学習させるというアプローチを提案し,これによって,人間が特徴量を設計する従来のアプローチでは得られなかったような特徴量を得られることを示している.DNNを用いた深層学習は画像認識などの分野で近年大きな注目を浴びている技術だが,移動軌跡からの移動手段推定という問題を,移動軌跡画像の分類問題に置き換えることで深層学習によって解こうとする本アプローチは意外性のある興味深いアプローチであり,他の様々な問題の研究への有用な示唆を与えるものである.よって,山下記念研究賞にふさわしい論文として推薦する.
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●LZE++:共有辞書を用いた圧縮データに対するランダムアクセスの高速化
[データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム(DEIM2015)(2015.3.2)] (データベースシステム研究会)
yamamuro

山室  健  君 (正会員)

NTTソフトウェアイノベーションセンタ研究員.
2008 年上智大学理工学研究科博士前期課程修了,修士(工学).
DBMSのコア技術,およびハードウェア特性を考慮した探索/圧縮アルゴリズムの研究に従事.
情報処理学会,日本 データベース学会,各会員.
[推薦理由] 本論文では,圧縮データからの部分列の取り出しを高速実行可能な圧縮手法を提案している.既存手法では,圧縮データを格納したメモリへのランダムアクセスによるキャッシュミスの増大と,再帰処理によるCPU実行命令数の増大という問題がある.提案手法は,頻出文字列の共有辞書化と,圧縮の際に過去に現れた共通接頭辞を探す範囲を現在の位置から一定範囲内に限定することで,これらの問題を軽減し,既存手法と比べ大きく圧縮率を下げること無く,大規模データに対しては千倍以上の処理速度を達成している.非常に基本的な処理における大幅な性能向上を達成している点で価値が高い研究であると考える.よって,山下記念研究賞にふさわしい論文として推薦する.
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●大規模OSS開発における不具合修正時間の短縮化を目的としたバグトリアージ手法
[ソフトウェアエンジニアリングシンポジウム(SES2014)(2014.9.2)] (ソフトウェア工学研究会)
kashiwa

柏 祐太郎  君 (正会員)

2013年 和歌山大学システム工学部情報通信システム学科 卒業.
2015年 和歌山大学大学院システム工学研究科システム工学専攻 博士前期課程修了.
2015年 (株)日立製作所 情報・通信システム社 入社.
現在に至る.

[推薦理由] 大規模OSSにおける不具合修正時間の短縮化を目的とするバグトリアージ手法を提案している.従来の手法が不具合に対する開発者の適性のみを考慮する.これに対して,提案手法では開発者の適性に加えて,開発者が一定期間内に修正作業に使える時間の上限を考慮している点が特徴である.不具合を開発者の組み合わせ問題をマルチナップザック問題と見なし,0-1整数計画法により解を求めるという発想は新規性が高い.さらに,提案手法を大規模な開発プロジェクトに適用することで,不具合修正時間の短縮化が達成できることを示している点からも,実用性のきわめて高い手法である.以上より,山下記念研究賞にふさわしい論文である.
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Hadoopクラスタの動的構成変更による低電力化手法の提案
[2014-ARC-210(2014.5.14)] (システム・アーキテクチャ研究会)
ono

小野 貴継  君 (正会員)

2004年 福岡大学工学部電子情報工学科 卒業.
2006年 福岡大学大学院工学研究科電子情報工学専攻博士課程前期 修了.
2009年 九州大学大学院システム情報科学府情報理学専攻博士後期課程 修了.
2009年 独立行政法人日本学術振興会 特別研究員(PD).
2010年 株式会社富士通研究所 研究員.
2015年 九州大学大学院システム情報科学研究院 助教,現在に至る.
ウェアハウススケール・コンピューティングおよびメモリ・アーキテクチャに関する研究に従事.
情報処理学会,電子情報通信学会,IEEE 各会員.博士(工学).

[推薦理由] 本研究報告はデータセンタ等で実行される並列分散型機械学習プログラムを対象に,性能および消費電力を解析し,消費電力を削減するサーバアーキテクチャを提案し定量的に評価している.本研究では,プログラムの特徴に応じて適したサーバノードを選択し,それらを低オーバーヘッドで切換えて使用するアーキテクチャを提案しており,高い新規性が認められる.加えて,プロトタイプを構築し,従来手法と定量的な比較を実施しており,有効性が確認できる.データセンタにおいて重要な課題である消費電力の削減に対し,貢献する技術として評価できる.このような点から本研究は山下記念研究賞にふさわしいと判断し,ここに推薦するものである.
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●ブルーム・フィルタを用いたメモリ・アクセス順序違反検出
[2014-ARC-212(2014.10.7)] (システム・アーキテクチャ研究会)
kurata

倉田 成己 君 (正会員)

2010年 東京大学工学部電子情報工学科 卒業.
2012年 東京大学大学院情報理工学系研究科電子情報学専攻 修士課程 修了.
2015年 東京大学大学院情報理工学系研究科電子情報学専攻 博士課程 修了.
同年,(株)日立製作所入社.現在に至る.

[推薦理由] 近年のout-of-order(OoO)スーパスカラ・プロセッサの構成要素の中で,CAMで構成されたロード・ストア・キュー(LSQ)が最も高コストなものの1つとなっている.本論文では,高コストなCAMで構成されたLSQではなく,RAMで構成されたブルーム・フィルタ(BF)を用いるメモリ・アクセス順序違反/フォワーディング・ミス検出手法を提案している.小容量でも偽陽性率が極めて低いBFを用いることで,性能をほとんど落とすことなくLSQのCAMを排除でき,また多くのアーキテクチャに適用できる実用性の高さが評価できる.以上の理由より,本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●ブロックストレージとの組み合わせによるメモリストレージ容量拡張手法
[コンピュータシステム・シンポジウム(ComSys2014)(2014.11.20)] (システムソフトウェアとオペレーティング・システム研究会)
oikawa

追川 修一 君 (正会員)

1996年 慶應義塾大学より博士(工学).
2004年 筑波大学大学院システム情報工学研究科助教授.
現在,筑波大学システム情報系准教授.
2015年 情報処理学会論文賞受賞.

[推薦理由] 本研究発表は,次世代不揮発性メモリとして注目されているMRAMを大容量のブロックストレージと組み合わせて使うことで,大容量の不揮発性ストレージに対して高速なアクセスを提供する手法を提案している.耐久性は高いが集積度が低いというMRAMの特性を考慮した上で,メモリストレージを隠蔽せずに,ブロックストレージとして明示的に見せる手法をとっている.提案手法はLinux上に実装され,入手困難なMRAMをDRAMに置き換えた評価実験によりその有効性を示している.本研究は,今後予想されるハードウェアの革新への対応を高い技術力により先行して実現したものであり,山下記念研究賞に値する特に優れた論文であると判断しここに推薦する.
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●3996トランジスタにおけるNBTI劣化の統計的ばらつき
[DAシンポジウム2014(2014.8.28)] (システムとLSIの設計技術研究会)
awano

粟野 皓光  君 (学生会員)

2010年 京都大学工学部情報学科計算機科学コース 卒業.
2012年 京都大学大学院情報学研究科通信情報システム専攻博士前期課程修了.
2012年 同専攻 博士後期課程進学.
現在に至る.

[推薦理由] 集積回路の微細化に伴う信頼性の低下が問題視され始めている.特に負バイアス温度不安定性(Negative Bias Temperature Instability, NBTI)は長期信頼性を左右する劣化モードであり,精力的な研究が行われている.本論文では数千個のトランジスタにおけるNBTI劣化の効率的な測定を可能とするデバイスアレイを提案した.NBTI劣化の測定には非常に長時間のストレス時間が必要であり,多数のトランジスタでNBTI劣化を測定することは困難であった.提案回路では測定時間を支配するストレス電圧印加を並列化させることで,測定時間を大幅に短縮した.試作チップを使った実験の結果,NBTIが引き起こす閾値電圧劣化量の標準偏差はチャネル面積に反比例することが明らかとなった.またACストレスを印加して測定した劣化ばらつきについても報告した.本研究は今後の集積回路の信頼性向上に貢献する価値の高い論文である.山下記念研究賞に推薦する.
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●トポロジー可変な遅延モニタ回路を用いたトランジスタ毎の静的及び動的特性ばらつきの評価
[DAシンポジウム2014(2014.8.28)] (システムとLSIの設計技術研究会)
islam

Islam A.K.M. Mahfuzul  君 (正会員)

2007年3月 大分工業高等専門学校 卒業.
2009年3月 京都大学 工学部 電気電子科 卒業.
2011年3月 京都大学大学院 情報学研究科 通信情報システム専攻 修士課程 終了.
2013年4月 日本学術振興会特別研究員(DC2) 採用.
2014年1月 京都大学大学院 情報学研究科 通信情報システム博士課程 卒業.
博士(情報学).
2014年2月 日本学術振興会特別研究員(PD) 身分変更.
2015年4月 東京大学生産技術研究所 助教.

[推薦理由] トランジスタの微細化に伴い,静的特性ばらつきに加えて動的特性ばらつきの増大が回路性能に大きな影響を与えるようになった.本論文では,トポロジー可変なモニタ回路を活用し,トランジスタレベルの静的及び動的なばらつきを評価する方法を提案した.提案手法は,少数のトランジスタに対して感度の異なる複数の回路トポロジーを利用し,感度解析により各トランジスタのばらつき量を推定するものである.本研究は最先端プロセスによって製造される回路の特性を高精度の見積もる手段を与えるものであり,価値の高い研究である.山下記念研究賞に推薦する.
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●GPU間マイグレーションによる効率的な並列実行
[2014-HPC-145(2014.7.30)] (ハイパフォーマンスコンピューティング研究会)
suzuki

鈴木太一郎  君 (学生会員)

2014年3月 東京工業大学 理学部 情報科学科 卒業.
2014年4月 東京工業大学大学院 情報理工学研究科 数理・計算科学専攻 修士課程 入学.
現在に至る.

[推薦理由] 本研究は,複数のアプリケーションをGPUで実行させる場合に生じるデバイスメモリ不足に対処するために,アプリケーションが使用するデバイスメモリ量を監視し,アプリケーションの実行中断やGPU間のマイグレーションを行うランタイムライブラリを開発し,4GPU,100アプリケーションを用いた検証実験により,実行時間を約13%,消費エネルギーを約2%削減できることを明らかにしたものである.
ハイパフォーマンスコンピューティング分野においては,GPUを有効に使うことがますます重要となってきており,本研究により複数のアプリケーションを実行できる環境の一つの提案として,極めて重要な成果といえる.本研究は今後のハイパフォーマンスコンピューティング分野の研究開発に大きく貢献するものであり,山下記念研究賞にふさわしい研究発表として推薦する.
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●XcalableACC: OpenACCを用いたアクセラレータクラスタのためのPGAS言語XcalableMPの拡張
[2014-HPC-146(2014.10.2)] (ハイパフォーマンスコンピューティング研究会)
nakao

中尾 昌広  君 (正会員)

2010年3月 同志社大学大学院 工学研究科 知識工学専攻 博士後期課程修了.
博士(工学).
2010年4月 筑波大学 計算科学研究センター 高性能計算システム研究部門 研究員.
2013年12月 理化学研究所 計算科学研究機構 プログラミング環境研究チーム 特別研究員.
2015年4月 同 研究員.
現在に至る.

[推薦理由] 本研究は,Partitioned Global Address Space (PGAS)言語 XcalableMPとOpenACCを用いたアクセラレータクラスタのための新しいプログラミングモデルXcalableACC (XACC)を提案し,ベンチマークプログラムを用いた実装によりXACCの高い生産性と,他のプログラミングモデルと比較して高性能が得られることを評価実験により示したものである.今後のハイパフォーマンスコンピューティングにおいて,アクセラレータは一つのアーキテクチャ候補としてますます重要となってきており,生産性及び性能の高いプログラミングモデルが望まれている中,XACCの提案は極めて重要な成果といえる.このように,本研究は今後のハイパフォーマンスコンピューティング分野の研究開発に大きく貢献するものであり,山下記念研究賞にふさわしい研究発表として推薦する.
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●Rubyにおけるライトバリアのないオブジェクトを考慮した世代別インクリメンタルGCの実装
[(2014.11.10)] (プログラミング研究会)
sasada

笹田 耕一  君 (正会員)

2006年 東京農工大学大学院工学教育部 博士後期課程 退学.
2006年 東京大学大学院情報理工学系研究科 特任助手.
2007年 東京大学大学院情報理工学系研究科 博士(情報理工学)取得.
2008年 東京大学大学院情報理工学系研究科 講師.
2012年 Heroku, Inc.(現職).
プログラミング言語Rubyの処理系の研究開発に従事.

[推薦理由] オブジェクト指向プログラミング言語の実装では,生成したオブジェクトを回収するガーベージコレクション(GC)が重要である.GCのオーバーヘッドを減らす手法として世代別GCやインクリメンタルGCなどがあるが,これらのGCを実装するには「ライトバリア」と呼ばれる機構を言語処理系に組み込む必要がある.すでに存在する処理系に後からライトバリアをもれなく追加することは容易でない場合があり,Rubyもそのひとつであった.本研究は,そのような言語においても世代別インクリメンタルGCを行う手法について,実用的な提案と評価を行っている.特に,ライトバリア挿入済・未挿入コードの混在を許し,段階的に挿入していけるようにするという考え方と手法は実用的な言語処理系の開発において非常に有用であり,適用可能な範囲も広いと考えられる.これらのことから,山下記念研究賞にふさわしい研究として推薦する.

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●(Total) Vector Domination for Graphs with Bounded Branchwidth
[2014-AL-148(2014.6.13)] (アルゴリズム研究会)
ishii

石井 利昌  君 (学生会員)

2000年3月 京都大学大学院情報学研究科博士課程修了 博士(情報学).
2000年4月 豊橋技術科学大学工学部 助手.
2006年4月 小樽商科大学商学部 助教授.
2007年4月 同 准教授.
2012年4月 北海道大学大学院経済学研究科 准教授,現在に至る.
組合せ最適化,アルゴリズム,グラフ理論などの研究に従事.
日本オペレーションズ・リサーチ学会,情報処理学会,電子情報通信学会各会員.

[推薦理由] 近年,計算困難なグラフ問題に対して,多項式時間で解けるためのグラフクラスの導出や,固定パラメータ容易性に関する解析を行うことが盛んに行われている.本論文は,計算困難な古典的なグラフの支配集合問題の一般化であるベクトル支配集合問題を扱い,分枝幅が定数であるグラフにおいて問題が多項式時間で解けることを示している.さらに,この結果を応用し,平面グラフにおける問題が準指数固定パラメータ容易であることを示している.パラメータ化計算量に関する議論では,単に固定パラメータ容易であるかだけでなく,準指数固定パラメータ容易であるかどうかが一つの大きなテーマであり,本論文の成果は特にこの分野に対して大きな貢献を与えている.以上の理由により,本年度の山下記念研究賞の候補として本論文を推薦する.
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●An exhaustive search and stability of sparse estimation for feature selection problem
[2014-MPS-100(2014.9.25)] (数理モデル化と問題解決研究会)
nagata

永田  賢二  君 (正会員)

2008年 東京工業大学総合理工学研究科知能システム科学専攻博士課程修了.
博士(工学).
2009年より,東京大学新領域創成科学研究科複雑理工学専攻にて,特任研究員,特任助教を経て 2012年より助教.
マルコフ連鎖モンテカルロ法および,ベイズ推定による統計的推論への応用に興味をもっている.
電子情報通信学会,情報処理学会,日本物理学会,IEEE各会員.

[推薦理由] 本研究は,多変量解析や,パターン識別などの多岐にわたる分野において問題になる特徴量の選択に関して,統一的な手法を提案し,有効性を提示した点が推薦に値する.実問題としてサルの神経集団における情報キャリアを推定する場合に,全ての組み合わせから得られる特徴選択の誤差率と,統計力学的な手法である温度交換型マルコフチェーンモンテカルロ法から得られる誤差率とを比較し,実効的な計算時間の中で有効な特徴量を選択することに成功している.これは特に生物学に限った分野の話ではなく,広く他の分野に応用可能な手法であると考えられるため,本研究を山下研究記念賞に推薦する.
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●電力消費振る舞いのロジック・モデル検査
[2014-EMB-34(2014.9.17)] (組込みシステム研究会)
nakajima

中島  震  君 (正会員)

1981年 東京大学大学院理学系研究科修士課程修了.
2004年 情報・システム研究機構国立情報学研究所教授,現在に至る.
学術博士(東京大学).
本会2001年度山下記念研究賞,日本ソフトェア科学会第8回論文賞受賞.
ソフトウェア工学,形式手法および自動検証に関する研究に従事.
日本ソフトウェア科学会,ACM各会員.

[推薦理由] スマートフォンなどの小型軽量システムでは,アプリケーション・プログラムに起因する電力消費が大きな問題となっている.本論文は,電力消費オートマトン (PCA) ならびに凍結限量子を持つ時相論理 (fWLTL)を基にした,システム設計時における電力消費のモデルベース自動解析手法を提案した.検証エンジンに Realtime Maudeを用い,また,時間有界モデル検査にサンプリング抽象の導入や凍結限量子を除去するために fWLTL を構文的に制限した fWLTLS を導入などをおこない,既存技術では困難であった検証の自動化を実現した.
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情報環境領域

●広帯域離散OFDM技術における適応変調制御方式の基本性能評価
[マルチメディア通信と分散処理ワークショップ2014(2014.12.9)] (マルチメディア通信と分散処理研究会)
shinbo

新保 宏之  君 (正会員)

1997年3月 電気通信大学 電気通信学部 電子情報通信学科 卒業.
1999年3月 電気通信大学 大学院情報システム学研究科 情報ネットワーク学専攻 博士前期課程 修了.
1999年4月 KDD(現KDDI)株式会社に入社し,研究所(現 株式会社KDDI研究所)に配属.
2014年12月 株式会社国際電気通信基礎技術研究所に出向し,現在に至る.
移動体におけるTCP/IP通信,通信システムの運用や障害検知,第5世代移動通信等の無線通信方式に関する研究に従事.
情報処理学会 シニア会員,マルチメディア通信と分散処理研究会 幹事(2012年~),第22回マルチメディア通信と分散処理ワークショップ 優秀プレゼンテーション賞受賞(2015年).電子情報通信学会 会員,会誌B編集委員(2009年)/副主査(2010年),学術奨励賞受賞(2004年).第5世代モバイル推進フォーラム ネットワーク委員会委員.

[推薦理由] 本論文では,移動体通信において,離散的な空き周波数帯域を束ねて広帯域のデータ通信を実現するために,適応変調制御方式を提案している.シミュレーションによる基本的な性能評価を行い,適応変調制御方式自体によるスループット性能への影響はほとんどなく,制御遅延が大きく影響することから制御遅延を小さくする仕組みが必要であり,あわせて周波数帯毎の送信電力制御を検討する必要があることを示した.今後の発展が期待できる実用性の高い研究である.以上より本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●P2P型センサデータストリーム配信システムにおける耐障害性向上のための複製ノード配置手法の検討
[マルチメディア通信と分散処理ワークショップ2014(2014.12.10)] (マルチメディア通信と分散処理研究会)
kawakami

川上 朋也  君 (正会員)

2005年 近畿大学理工学部経営工学科 卒業.
2007年 大阪大学大学院情報科学研究科 博士前期課程修了.
2007年 大阪大学サイバーメディアセンター 特任研究員.
2008年 大阪大学大学院情報科学研究科 特任研究員.
2012年 大阪大学サイバーメディアセンター 特任研究員.
2013年 神戸大学大学院工学研究科 学術推進研究員.
2014年 大阪大学サイバーメディアセンター 特任研究員.
2015年 奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科助教および
大阪大学サイバーメディアセンター招へい研究員,現在に至る.
博士(情報科学).分散処理システム,P2Pネットワークに
関する研究に従事.情報処理学会,IEEE各会員.

[推薦理由] 本論文では,P2P型のセンサデータストリーム配信において,耐障害性を向上するために複数のノードに負荷を均等化するノード配置方法を提案している.複製ノードの数をノードの信頼度や配信先数に基づいて動的に決定する.複数のシミュレーションにより評価を行い,システム信頼度を満たしつつ,複製ノード数を抑制できることを確認した.今後の発展が期待できる実用性の高い研究である.以上より本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●データフロービジュアル言語を用いた情報可視化システムの開発環境
[2015-HCI-162(2015.3.14)] (ヒューマンコンピュータインタラション研究会)
ito

伊藤 隆朗  君 (学生会員)

2008年 筑波大学第三学群情報学類 卒業.
2010年 同大学大学院システム情報工学研究科コンピュータサイエンス専攻博士前期課程 修了.
同博士後期課程在学中.
2008年 ソフトイーサ(株)入社.
情報可視化研究を行うとともに,3次元ポーズ入力デバイスの開発および製品化や3Dコンテンツ関連ソフトウェアの開発に従事.
2006年上期IPA未踏ユース 天才プログラマー/スーパークリエータ認定.

[推薦理由] 本研究は,情報可視化の構成要素に基づいたデータフロービジュアル言語を開発し,システム開発の専門家以外でも情報可視化システムをインタラクティブに設計することのできるツールを提案,実装したものである.スマートフォンやIoTデバイス,ウェアラブルデバイスなどの普及に伴い集められる情報量やそれを人に提示する機会は増加しており,情報可視化を取り入れたシステム(情報可視化システム)の開発需要は今後増えてゆくと考えられる.本研究はそれに先駆けた成果であり,多彩なシーンで情報可視化を効果的に活用でき社会に貢献すると考えられる.学術的な成果だけでなく実装も優れており軽快に動作する実用的なツールになっている.これらのことから山下記念賞にふさわしい成果と判断し,ここに推薦する.
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●鏡面反射成分を持つ大域照明画像のノイズ除去フィルタリング及びアップサンプリング
[Visual Computing / グラフィクスとCAD合同シンポジウム2014(2014.6.30)] (グラフィクスとCAD研究会)
tokuyoshi

徳吉 雄介  君 (正会員)

2002年3月 信州大学工学部情報工学科 卒業.
2004年3月 信州大学大学院工学系研究科博士前期課程情報工学専攻 修了.
2007年3月 信州大学大学院工学系研究科博士後期課程システム開発工学専攻 修了.
2007年4月 株式会社日立製作所システム開発研究所 入社(研究員).
2010年7月 株式会社スクウェア・エニックス 入社(シニアリサーチャー).
現在に至る.博士(工学).

[推薦理由] 本研究はレンダリング画像における光の反射方向分布を考慮したピクセル間の類似性を提案するものである。提案手法は既存手法で扱うことが難しかった鏡面反射面に対して有効であり,また単純かつ高速である.この類似性を用いたノイズ除去やアップサンプリングを後処理で行うことで,高品質な画像を実時間で生成することが可能となった.本研究は年々高解像度化していくディスプレイに対して有用なレンダリング技術であると考えられる.以上の理由により,本研究を山下記念研究賞として推薦する.
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●線形ブレンドスキニングにおける補助骨の姿勢最適化
[2014-CG-157(2014.11.20)] (グラフィクスとCAD研究会)
mukai

向井 智彦  君 (正会員)

1999年 佐世保工業高等専門学校 電子制御工学科 卒業.
2001年 豊橋技術科学大学 情報工学課程 卒業.
2003年 豊橋技術科学大学大学院 修士課程 情報工学専攻 修了.
2006年 豊橋技術科学大学大学院 博士後期課程 電子・情報工学専攻 修了.
博士(工学).
2006年 豊橋技術科学大学 情報工学系 助教.
2009年 (株)スクウェア・エニックス テクノロジー推進部 主席研究員.
2014年 東海大学 情報通信学部 情報メディア学科 専任講師.現在に至る.
コンピュータグラフィックスやヒューマノイドアニメーションに関する研究教育に従事.
[推薦理由] 本研究は,CGキャラクターの皮膚変形生成に用いられる,補助骨と呼ばれる仮想的な骨格の最適な構造を,例示データを用いて自動推定する技術を提案している.今後,筋肉シミュレーションなどの複雑で高負荷な計算による皮膚変形を,提案技術によって高速にエミュレーションできることも期待できる.以上の理由により,本研究を山下記念研究賞として推薦する.
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●動物園におけるセンサーデータ活用に向けた飼育管理システムの開発
[2014-IS-130(2014.12.8)] (情報システムと社会環境研究会)
yoshida

吉田 信明  君 (正会員)

1995年 京都大学 理学部 卒業.
2000年 京都大学 大学院理学研究科 数学数理解析専攻 博士課程 退学.
修士(理学).
同年より京都高度技術研究所.
以降,主として,ネットワークを利用したシステムやアプリケーションの研究開発等に従事.
情報処理学会,日本ソフトウェア科学会,電子情報通信学会他会員.
1999年 日本ソフトウェア科学会高橋奨励賞,2012年 情報処理学会デジタルプラクティスアワード 受賞.

[推薦理由] 動物園には,動物の個体情報や,行動,環境,飼育などに関する大量かつ多様な情報がある.それらを用いて,管理部門だけでなく飼育現場でも活用できるシステムを述べている.研究の特徴として,従来作業の効率化に留まらず,自然への単なる情緒的理解を超えた科学的エビデンスに基づく教育プログラムへの発展を前提としていることがあり,将来性を感じさせる.このことは,種の保存や繁殖を支えるためのデータの国際標準への対応などにも表れている.またシステムの効用などについて,わかり易く扱っていることも特徴である.以上のことから,本研究を山下記念賞に推薦する.
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●近似直線を用いたダブル配列の圧縮法
[2014-IFAT-115(2014.8.1)] (情報基礎とアクセス技術研究会)
kanda

神田  峻介 君 (学生会員)

2014年3月 徳島大学 工学部 知能情報工学科 卒業.
2014年4月 徳島大学大学院 先端技術科学教育部 システム創生工学専攻 知能情報システム工学コース 博士前期課程 入学.
現在に至る.

[推薦理由] 本論文は形態素解析用辞書等で用いられるトライ法の実装であるダブル配列の改良を実現しており,自然言語処理に関連する研究に与える波及効果が大きい.主に,検索の高速性を損なうことなく,状態番号の表現のために近似直線を導入してそこからの偏差を記述することでダブル配列に要する記憶量を大幅に圧縮する技術を提案したことが高く評価される.これまでの知見を統合した堅実な研究であり,100万語規模の大規模なデータを用いた評価実験が周到に行われていることから,報告されている結果についても十分に信頼に足り,情報アクセス技術の発展に資する有用性の高い成果であると判断した.
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●仮想物を残像として用いたMRマニュアルとそのオーサリングツール
[マルチメディア,分散,協調とモバイルシンポジウム(DICOMO2014)(2014.7.10)] (グループウェアとネットワークサービス研究会)
endo

遠藤 裕之  君 (正会員)

2009年4月 慶応義塾大学理工学部 入学.
2013年3月 慶応義塾大学理工学部 卒業.
2013年4月 慶応義塾大学大学院理工学研究科修士課程 入学.
2015年3月 慶応義塾大学大学院理工学研究科修士課程 修了.
2015年4月 株式会社 数理計画 入社.

[推薦理由] 本研究発表は,非同期作業支援において,作業状態の定義付けが困難なため同期作業支援と同等の作業支援が行うことが困難であるという課題に対して,仮想物を残像として用いたMRマニュアルとそのオーサリングツールを提案するものである.本提案では,作業のコツの付加タイミングを直感的に指示者に提示する事で,作業者へのコツの提示タイミングの選定を同期作業支援と同等に行えるようにしている.また,実験の結果,提案ツールにより既存よりも学習効果が高くなること,および未習熟者でも残像を用いたマニュアルが作成可能であることを確認しており,非同期作業支援における作業のコツの効率的な伝達の実現に向けて大きな貢献となることから推薦する.
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●音声認識による認知症・発達障害スクリーニングは可能か? -言語能力測定システム"言秤"の提案-
[グループウェアとネットワークサービスワークショップ2014(2014.11.28)] (グループウェアとネットワークサービス研究会)
miyabe

宮部 真衣  君 (正会員)

2006年 和歌山大学システム工学部デザイン情報学科 中退.
2008年 和歌山大学大学院システム工学研究科システム工学専攻博士前期課程 修了.
2011年 和歌山大学大学院システム工学研究科システム工学専攻博士後期課程 修了.博士(工学).
同年 東京大学知の構造化センター 特任研究員.
2013年 京都大学学際融合教育研究推進センター 特定研究員.
2015年 和歌山大学システム工学部 講師.
現在に至る.

[推薦理由] 本研究発表は,認知症や発達障害における初期判断や自己把握・状況改善での利用を想定し,手軽に言語能力を測定可能なシステム「言秤(コトバカリ)」を提案しているものである.本提案では,音声認識システムの組み込み,およびテキストデータから定量的に言語能力を測定する指標の採用を行うことで,従来人手で行っていたテキスト化および言語能力スコアの算出を自動化し,コストの軽減と手軽な測定を実現している.また,検証実験の結果,被測定者の言語能力スコアを継続的に測定し,その変化を観察することにより,初期判断や現状把握・維持・改善に利用できる可能性を示し,言語能力測定の発展に大きく貢献していることから推薦する.
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●Extracting Condition-Opinion Relations in Online Reviews
[2015-DD-97(2015.3.30)] (ドキュメントコミュニケーション研究会)
nakayama

中山 祐輝 君 (学生会員)

2008年3月 石川工業高等専門学校 電子情報工学科 卒業.
2010年3月 金沢大学 工学部情報システム工学科 卒業.
2012年3月 金沢大学 大学院自然科学研究科 電子情報工学専攻 修士課程修了.
2012年4月 東京工業大学 大学院情報理工学研究科 計算工学専攻 博士課程入学.現在に至る.
WebDB Forum 2014最優秀論文賞,企業賞(楽天賞)受賞.

[推薦理由] オンラインレビューには,特定の条件や文脈でしか成立しない条件付きの評価表現が含まれていることがある.本研究はこのような,評価に関する条件(CFO;Condition for Opinion)に着目し,CFOがオピニオンマイニングの精度を向上する上で重要であることを明らかにするとともに,CFOを抽出する手法を提案しその有効性を実験により評価している.オピニオンマイニングにおいて,新たな視点を与える研究であり,今後の発展が期待できることから,山下記念研究賞に推薦する.
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●3次元距離センサと無線LANを用いた屋内位置推定
[マルチメディア,分散,協調とモバイルシンポジウム(DICOMO2014)(2014.7.11)] (モバイルコンピューティングとパーベイシブシステム研究会)
ito

伊藤 誠悟  君 (正会員)

2002年 東京理科大学大学院理工学研究科情報科学専攻修士課程修了.
同年,日本電信電話株式会社 情報流通プラットフォーム研究所入所.
2004年 名古屋大学情報科学研究科に所属.
2007年 同大学博士後期課程修了.同年より現在まで株式会社豊田中央研究所に勤務.
2009年 University of Washington 客員研究員.
2012年 University of Freiburg 客員研究員として
確率的状態推定技術およびSLAM技術について学ぶ.主に位置推定関連,周辺環境認識関連の研究に従事.

[推薦理由] 本論文では3次元距離センサと無線LANを用いた屋内位置推定手法を提案している.これまで筆者らが研究してきた無線LANによる位置推定での経験を踏まえ,3次元距離センサによる高精度な位置推定を実現しつつ大域誤差の検出や推定の初期化に無線LANによるセンシングを活用する手法は興味深い.さらに距離画像から推定の手掛りとなるランドマークを高速に抽出する手法も提案し,推定精度においても従来手法に対する優位性を示している.昨今のスマートフォンの多機能化を鑑みると3次元距離センサの利用の想定は妥当と考えられ,本論文の新規性のある方式と優れた評価結果から山下記念研究賞に推薦する.
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●桜センサ:車載スマートフォンによる画像処理に基づいた桜景観の良い道路区間の抽出
[2014-MBL-72(2014.8.29)] (モバイルコンピューティングとパーベイシブシステム通信研究会)
tamai

玉井 森彦  君 (正会員)

2002年 岡山県立大学情報工学部卒業.
2004年 奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士前期課程修了.
2007年 奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士後期課程修了.
博士(工学)取得.
現在,株式会社国際電気通信基礎技術研究所研究員.

[推薦理由] 本論文は,車載スマートフォンで撮影した動画のリアルタイム解析により,街の綺麗な景観を参加型センシングに基づいて収集する手法を提案している.色ヒストグラム解析,フラクタル次元解析といった,比較的シンプルな画像処理アルゴリズムと参加型センシングを組み合わせることで,桜という自然物が存在する場所を広域からリアルタイムに収集できることを示した点が優れている.事故検知など,一般的にはネガティブな事象の検知に利用されることの多い車載カメラを,綺麗な景観の発見に用いるのは面白いアイデアであり,開発されたスマートフォンアプリの完成度も高い.以上より,山下記念研究賞に相応しい論文として推薦する.
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●差分プライバシー基準に基づく情報秘匿手法の一考察
[マルチメディア,分散,協調とモバイルシンポジウム(DICOMO2014)(2014.7.9)] (コンピュータセキュリティ研究会)
terada

寺田 雅之  君 (正会員)

1995年 神戸大学大学院 工学研究科 修士課程修了.
同年 日本電信電話(株) 入社.
2003年より(株)NTTドコモに所属.
2008年 電気通信大学大学院 電気通信研究科 博士後期課程修了.博士(工学).
現在,(株)NTTドコモ 先進技術研究所にて,大規模データ処理技術およびプライバシー保護技術などの研究開発に従事.
論文誌ジャーナル特選論文(Vol.56 No.9),DICOMO2014 最優秀論文賞,DICOMO2009 優秀論文賞 各賞受賞.

[推薦理由] 本論文では,集計データのプライバシーを差分プライバシー基準に基づいて保護する上で,データの統計的正確性と計算効率に着目した手法を提案している.Wavelet変換とTop-down精緻化処理と呼ぶ方法を組み合わせた,差分プライバシー基準を満たす新たなプライバシー保護方式を提案し,国勢調査データを用いた提案手法の評価結果を示した.論文の主旨が明瞭で,かつ実際のシステムにおいて有用な提案を含んでおり,山下記念研究賞受賞として適当である.
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●RC4に対する平文回復攻撃の改良
[コンピュータセキュリティシンポジウム(CSS2014)(2014.10.23)] (コンピュータセキュリティ研究会)
ohigashi

大東 俊博  君 (正会員)

2002年3月 徳島大学工学部知能情報工学科 卒業.
2004年3月 徳島大学大学院工学研究科博士前期課程 修了.
2008年3月 神戸大学大学院自然科学研究科博士課程後期課程 修了.
博士(工学).
2008年4月 広島大学情報メディア教育研究センター 助教.
2015年4月 東海大学情報通信学部通信ネットワーク工学科 講師,現在に至る.
暗号理論,情報セキュリティに関する研究に従事.
電子情報通信学会 SCIS20周年記念賞,電子情報通信学会 SCIS2013イノベーション論文賞,情報処理学会CSS2014優秀論文賞,電子情報通信学会 ICSS2013年度研究賞,電子情報通信学会 第71回論文賞を受賞.
情報処理学会,電子情報通信学会各会員.

[推薦理由] RC4に対する平文回復攻撃についてこれまでの研究がよく分析されており,これまでの方式と比べ,攻撃に必要な暗号文を2倍以上削減する改良手法を提案している.これは海外研究者による同様の研究にも引けを取らず,国際的にも評価できる内容であり,山下記念研究賞受賞として適当である.
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●セキュアブート+認証による車載制御システムの保護
[2014-ITS-58(2014.9.19)] (高度交通システムとスマートコミュニティ研究会)
takemori

竹森 敬祐  君 (正会員)

1994年 慶應義塾大学 理工学部電気工学科 卒業.
1996年 同大学院 理工学研究科電気工学専攻 修士課程了.
1996年 国際電信電話株式会社(KDD) 入社,KDD研究所 配属
2004年 慶應義塾大学大学院 理工学研究科開放環境科学専攻 博士課程了.
現在,KDDI(株),(株)KDDI研究所に勤務.
インターネットセキュリティ,スマートフォンセキュリティ,自動車セキュリティ等に関する研究開発に従事.
2006年Interop Tokyoグランプリ,2007年DICOMO最優秀論文賞および最優秀プレゼンテーション賞,2013年喜安記念業績賞など受賞.
著書に、Androidセキュリティバイブル2012/2013, スマホ白書など.
情報処理学会,電子情報通信学会,IEEE各会員.
日本スマートフォンセキュリティ協会アプリWGリーダ.

[推薦理由] 現在,自動車の制御システムに対する攻撃が脅威になっており,走行の安全性を脅かす問題になっている.この自動車の制御システムに対する攻撃では,コントローラの改竄・取替,コントローラとの通信のなりすましなどに対する堅牢性の確保が課題となる.本論文では,コントローラのセキュアブート・認証,CANパケット認証といった,自動車の制御システムに対する自動車に搭載可能である実用的なセキュア方式を提案しており,社会のニーズに合った研究と言える.また,自動車に適用可能な実際のコントローラを用いて,処理速度,メモリサイズなどを実験評価し,提案方式の実現性が高いことを示している点からも価値があるものと認められる.
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●スマートフォンを用いた電気自動車およびハイブリッド車の接近検知手法
[2014-UBI-43(2014.7.29)] (ユビキタスコンピューティングシステム研究会)
takagi

高木  雅  君 (学生会員)

1990年生.
2013年 東京大学工学部電子情報工学科卒.
2015年 同大大学院修士課程修了.
同大大学院博士課程に在学中.
スマートフォンを活用したセンシング技術に関する研究に従事.
電子情報通信学会 会員.

[推薦理由] 本研究では,走行時の静音性が高く歩行者が気付きにくい電気自動車やハイブリッド車の接近を,モータユニットが発する高周波をスマートフォンを用いて検知して歩行者に通知することで,交通事故を予防する技術を提案している.提案手法は,機械学習を用いることで車両間の個体差や環境雑音といった要因に対するロバスト性を確保し,また,車両検知だけでなく相対速度や車種といった情報も検出可能としている.提案手法は,高い有用性を有するとともに,追加のハードウェアやインフラ設備を追加せずにスマートフォンのみで実現されており,広範な波及を見込むことができる.よって,山下記念研究賞の候補にふさわしいと考え,本研究を推薦する.
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●安定歩行区間に基づく歩行軌跡推定手法
[2014-UBI-44(2014.10.15)] (ユビキタスコンピューティングシステム研究会)
kaji

梶  克彦  君 (正会員)

2002年3月 名古屋大学工学部電気電子・情報工学科 卒業.
2004年3月 名古屋大学大学院工学研究科計算理工学専攻修士課程 修了.
2007年3月 名古屋大学大学院情報科学研究科メディア科学専攻博士課程 修了.
2007年4月 NTT コミュニケーション科学基礎研究所へリサーチアソシエイトとして入社.
2010年4月 名古屋大学大学院工学研究科 助教.
2015年4月 愛知工業大学情報科学部 准教授,現在に至る.
情報処理学会,日本ソフトウェア科学会各会員.博士(情報科学).
屋内位置推定,コミュニケーションメディアの研究に従事.

[推薦理由] 本研究は,近年のユビキタスコンピューティング分野における重要な課題の一つである,屋内歩行軌跡推定の高精度化に取り組んだ研究である.センサ信号の変化の少ない状態が継続している区間に着目し,人が安定して歩行している状態に符合させ,センサデータのドリフトの影響を排除して高精度化を果たしている.提案手法は詳細な建物構造情報やセンサノイズ除去のためのキャリブレーション動作を必要とせず,かつ,数多く存在する一般的なオフィスビルのような単純構造の建物に適用可能であるため,高い実用性が認められる.また,基本となるアイデアは,行動センシングをはじめとする信号処理に幅広く適用可能であり,研究分野の発展にも寄与すると考えられる.よって,山下記念研究賞の候補にふさわしいと考え,本研究を推薦する.
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●Android端末を利用した乳幼児見守りシステム
[インターネットと運用技術シンポジウム(IOTS2014)(2014.12.4)] (インターネットと運用技術研究会)
saito

齊藤  桂  君 (正会員)

2010年 鳥取環境大学情報システム学科卒業.
2015年 奈良先端大情報科学研究科博士前期課程修了.
同年 株式会社LASSICに入社,感情医工学研究所にて研究開発に従事.
現在に至る.

[推薦理由] 乳幼児の育児においては,見守りが重要であるが,常に乳幼児から目を離さず集中して見守り続けることは現実的ではない.この研究では,自力で移動可能な生後6ヶ月以降の乳幼児を保護者1人で監視する場合に,Android端末を用いて支援する手法が提案されている.乳幼児にAndroid端末を装着し,その端末の向きや加速度など,各センサーの状態から異常を検知し知らせることで,保護者の乳幼児監視の負担軽減を図っている.実験データの細かな分析や評価,問題点なども詳細に述べられており,信頼性や実用性が高い.また,単に監視目的だけでなく,乳幼児の行動データベースとしての活用も期待できる.よって,山下記念研究賞として推薦する.
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●運用の効率化を目的としたネットワーク構成管理と自動設定の実現
[2015-IOT-33(2015.3.6)] (インターネットと運用技術研究会)
kondo

近堂  徹  君 (正会員)

2001年 広島大学工学部卒業.
2003年 広島大学大学院 工学研究科 情報工学専攻 博士課程前期 修了.
2006年 広島大学大学院 工学研究科 情報工学専攻 博士課程後期 修了.
博士(工学).
同年  広島大学情報メディア教育研究センター助手.
2011年 広島大学情報メディア教育研究センター准教授.
現在に至る.
ネットワーク管理・運用,リアルタイムマルチメディア通信,
仮想化技術の研究に従事.

[推薦理由] ネットワークの利用形態の多様化・複雑化にする中で,インフラの運用管理の効率化が強く求められるようになっているが,ネットワーク機器も増加も相まって,人手だけでの対応は難しくなってきている.特に機器の設定状況が管理情報として正しく登録されていないような場合,初動対応の遅れやニューマンエラーの発生が避けられない.この研究では,組織おけるネットワークデザインの管理の一元化および,ネットワーク機器の構成管理と設定の自動化による運用の効率化について考察が行われ,現状や課題について細かく整理されている.また,キャンパスネットワークの実運用からみた効果と課題も述べられており,実用性に富む.よって,山下記念研究賞として推薦する.
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●オンラインショッピング時の情報セキュリティ技術に関する安心感調査のための指標作成の検討
[コンピュータセキュリティシンポジウム(CSS2014)(2014.10.24)] (セキュリティ心理学とトラスト研究会)
nishioka

西岡  大  君 (正会員)

2006年 岩手県立大学ソフトウェア情報学部 卒業.
2008年 岩手県立大学大学院ソフトウェア情報学研究科博士前期課程修了.
2012年9月 岩手県立大学大学院ソフトウェア情報学研究科博士後期課程修了.
博士(ソフトウェア情報学).
2013年 岩手県立大学ソフトウェア情報学部 助教.
2014年 岩手県立大学ソフトウェア情報学部 講師.現在に至る.
情報セキュリティに関する安心感の研究に従事.
2012年 第4回辻井重男セキュリティ学生論文賞セキュリティマネジメント学生賞
受賞.

[推薦理由] 安全な技術が提供されたとしても,ユーザが安心するとは限らない.安全性だけでなく安心感を定量的に研究することは,セキュリティ心理学とトラスト分野における重要な研究課題である.本論文は,オンラインショッピングにおいてリテラシーの低いユーザが求める安心感の要因を明らかにするための調査手法に関する提案をしている.具体的には,既に明らかにされている安心感の要因を踏まえて体系的に質問紙を設計し,その修正を考察している.体系的なアプローチであることから当該分野における波及効果が大きく,また,オンラインショッピングという研究対象はインパクトも大きい.よって,とくに優秀な論文として,推薦したい.
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●車載カメラ俯瞰映像における立体物消失回避技術
[2014-CDS-11(2014.8.29)] (コンシューマデバイス&システム研究会)
higuchi

樋口 晴彦  君 (正会員)

2005年3月 東京都立大学 工学部 電子情報工学科 卒業.
2007年3月 東京工業大学大学院 総合理工学研究科.
     物理情報システム専攻 修士課程修了.
2007年4月 株式会社日立製作所 入社.
現在,同社研究開発グループに在籍.
画像情報処理に関する研究開発に従事.

[推薦理由] 俯瞰映像は,自動車の駐車の際に大変有用なものではあるが,複数の車載カメラからの映像を合成により得られるものであり,繋ぎ目の映像の精度は必ずしも高いわけではない.本論文では,繋ぎ目において障害物が消失しないよう,重複領域における立体物を認識し,それに応じ表示を行うことで,立体物の消失を防いでいる.実用化を想定した性能評価実験を実施するだけでなく,SoCによる実装を行い,リアルタイムによる処理が行えることを確認しており,実用面においても大変有用な成果である.以上により本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●遠隔多人数会話のための発話音源定位分散の効果
[2015-DCC-9(2015.1.27)](デジタルコンテンツクリエーション研究会)
noguchi

野口 康人  君 (学生会員)

2006年 筑波大学 図書館情報専門学群卒業.
2008年 筑波大学大学院 図書館情報メディア研究科 博士前期課程修了.
2008年 NTTコミュニケーションズ株式会社に入社.
2010年 NTTレゾナント株式会社に転籍.
2012年 NTTレゾナント株式会社を退社.
2014年 筑波大学大学院 図書館情報メディア研究科 博士後期課程入学.
現在に至る.グループウェアの研究に従事.

[推薦理由] 遠隔多人数の同時発話を聴きとり易くするために,その音像を分離分散させることが考えられているが,本研究はその効果を実験的に検討したものである.一般的なステレオ音声機器で両耳間強度差と両耳間時間差を制御する実験用ソフトウェアを開発して,聴取限界を含む聴取率を母語(中国語)と非母語(日本語)の両方について定量的に得ている.結果,分散的音像定位により少なくとも1名の話を聴き取れると期待できる同時話者人数は母語で2名から3名に向上すること,分散的音像定位の効果は母語か非母語かに関わらず生じることを示している.本論文は,同様の実験がこれまでになされておらず新規性が認められるばかりでなく,今後の会話コンテンツの制作や符号化・流通に示唆を与える特に優秀な論文である.
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メディア知能情報

●意味と構造の構成演算と類似度学習における非線形性
[2015-NL-220(2015.1.20)] (自然言語処理研究会)
tsubaki

椿  真史  君 (学生会員)

2014年3月 奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 博士前期課程 卒業.
2014年4月 奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 博士後期課程 在学中.
意味解析などの言語処理技術に関する研究に従事.

[推薦理由] 本研究は文の意味的類似度評価において,単語ベクトル空間モデルにおける意味の構成性とカーネル法による非線形類似度学習の2つのアプローチを融合する新規性の高い手法です.意味的類似度評価では,近年Deep Learningを用いた手法が多く提案されていますが,Deep Learningは外部知識を導入することが難しいという問題があります.それに対しカーネル法は人間が持つ言語に対する知識を明示的にカーネル設計を通じて導入することが可能です.提案手法はシンプルで実装が容易でありながら,既存研究の最高性能に迫る高い性能を実現した点が高く評価できます.本研究のカーネル法を用いた非線形類似度学習の貢献は,言語処理分野における非線形な類似度学習の新たな可能性を示したと考え,推薦をします.
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●コトDBに基づく非定型業務の協創支援システムの構築
[2014-ICS-176(2014.7.23)] (知能システム研究会)
nishimura

西村 拓一  君 (正会員)

1992年 東京大学工学系大学院修士(計測工学)課程修了,NKK(株)入社.
1995年 新情報処理開発機構(RWCP)に出向,1998年NKK(株)復帰.
1999年 RWCPつくば研究センター研究員.
2001年 産業技術総合研究所サイバーアシスト研究センター研究員.
2005年 同情報技術研究部門実世界指向インタラクショングループ長.
2009年 NEC出向,2011年帰任.
2011年 同サービス工学研究センターサービスプロセスモデリング研究チーム長.
2015年 同人間情報研究部門サービス設計工学研究グループ長,現在に至る.
博士(工学).介護・看護サービス,コミュニティ支援,インタラクション技術,時系列データ検索・認識に興味を持つ.
情報処理学会,サービス学会,電子情報通信学会,人工知能学会,ヒューマンインタフェース学会各会員.

[推薦理由] 日本社会の超高齢化にともなう介護・医療コストの増加などの社会的な問題に対して,多職種連携が求められる現場の実践コミュニティが自発的に協働し創的に品質向上と効率化を進めることを支援する協創支援システムの開発に際し,現場で発生する動的な業務(コト)を柔軟に取り扱うためのコト・データベース(コトDB)を構築した.具体的には,逐次変化する実環境に対応するため,業務の「コト化支援」「業務設計支援」「実践知化支援」の3種の機能を持つ対話型の協創支援システムを開発したという内容であり,人・集団と機械が調和して協働することにより生まれた現場の新たな知を形式知化するという研究の重要性・有用性・将来性が高く評価され,研究会主査・幹事にて今年度4回の研究会にて発表された全58件の論文を精査した結果,本論文が本賞を受賞するに相応しいとの判断に至った.
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●Modeling Spatiotemporal Correlations between Video Saliency and Gaze Dynamics
[2014-CVIM-192(2014.5.16)] (コンピュータビジョンとイメージメディア研究会)
 yonetani

米谷  竜  君 (正会員)

2009年 京都大学 電気電子工学科 卒業.
2011年 京都大学 大学院情報学研究科 修士課程修了.
2013年 京都大学 大学院情報学研究科 博士後期課程 期間短縮修了.博士(情報学).
2014年 東京大学 生産技術研究所 助教,現在に至る.
コンピュータビジョンに関する研究に従事.
2010年 International Conference on Pattern Recognition, IBM Best Student Paper Award.
2012年 画像の認識と理解シンポジウム MIRU優秀学生論文賞.
2014年 電子情報通信学会パターン認識とメディア理解研究会 平成25年度PRMU研究奨励賞.
2014年 電子情報通信学会 平成25年度情報・システムソサイエティ論文賞.

[推薦理由] 映像視聴時の視線運動解析は,映像コンテンツの評価や人の心的状態の推定に基づいた運転支援など様々な応用につながるため近年特に注目されている研究分野である.本発表は複雑な映像の変化を単純・系統的な変化パターンの組み合わせによりモデル化することによって,映像の持つ顕著性変動と視線ダイナミクスの間の時空間的相互関係性をモデル化する新たな枠組みを提案するものであり,動的に変化する複雑な映像コンテンツを視聴する際の注視行動解析への応用可能性を示したことは高く評価できる.以上より,平成27年度山下記念研究賞にふさわしい論文して推薦する.
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●因果指標と偏正準相関分析
[2014-CVIM-194(2014.11.21)] (コンピュータビジョンとイメージメディア研究会)
harada

原田 達也  君 (正会員)

1996年 東京大学工学部機械情報工学科卒業.
2001年 東京大学大学院工学系研究科機械工学専門課程博士課程修了.博士(工学).
2001年 東京大学大学院情報理工学系研究科 助手.
2013年 東京大学大学院情報理工学系研究科 教授.
現在に至る.

[推薦理由] 本論文は,時系列データの因果関係を用いて予測を行うモデルとしてTransfer Entropyを用いることを提案している.また時系列の確率変数がガウス分布に従う時に,偏正準相関分析に従う事を示し,これに対して様々な確率モデル的拡張を行うことで,少数データから時系列情報の予測が行われることを示した.時系列データの予測はコンピュータビジョンの諸問題,例えばトラッキング問題,行動予測問題だけでなく,他の情報科学(音声,大量データ解析など)や物理学,経済学等多くの分野で必要とされている.本論文はこの問題に対して解を与える基礎理論を提案しており,影響力の大きい論文である.よって山下記念賞にふさわしいものとして本発表を推薦する.
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●「コンピュータサイエンスフィールドガイド」CSアンプラグドを活用した情報科学学習サイト
[情報教育シンポジウム(SSS2014)(2014.8.24)] (コンピュータと教育研究会)
kanemune

兼宗  進  君 (正会員)

1987年 千葉大学工学部電子工学科卒業.
1989年 筑波大学大学院理工学研究科修士課程修了.
2004年 筑波大学大学院ビジネス科学研究科博士課程修了.博士(システムズ・マネジメント).
2004年 一橋大学総合情報処理センター 准教授.
2009年 大阪電気通信大学(医療福祉工学研究科、電子機械工学科)教授.
現在に至る.

[推薦理由] 本発表ではニュージーランドのカンタベリー大学で開発されているコンピュータ科学学習サイト「コンピュータサイエンス(CS)フィールドガイド」の紹介と,その日本語サイトの制作について報告している.このサイトは日本でも広く用いられているコンピュターを使わないCS教育手法のCSアンプラグドを利用した学習や,動画やインタラクティブな教材が用意されており,今後の初等中等教育における情報教育に大きく貢献するものである.発表者の兼宗氏はCSアンプラグドの日本語化を含め,これまでの初等中等教育における情報教育に多大な貢献をしており,この発表は情報教育において現場を実践的にサポートしていくという本学会が果たすべき役割の範となるものであったので,山下記念研究賞の候補として推薦する.
[ 戻る ]
●コンピューティングを基盤とした情報教育の再規定
[情報教育シンポジウム(SSS2014)(2014.8.25)] (コンピュータと教育研究会)
kuno

久野   靖  君 (正会員)

1956年生.
1984年 東京工業大学大学院理工学研究科博士後期課程単位取得退学.
同年 東京工業大学理学部情報科学科助手.
筑波大学講師,助教授を経て,現在,同大学ビジネスサイエンス系教授.
理学博士(1986年,東京工業大学).
プログラミング言語,ユーザインタフェース,情報教育に興味を持つ.
本会情報処理教育委員会,初等中等教育委員会委員.
ACM,IEEE-CS,日本ソフトウェア科学会,日本情報科教育学会各会員.

[推薦理由] 本発表では,初等中等教育における情報教育の目標である「情報活用能力」を「コンピューティング」を加えた新たな形とすべきであると提案している.また,小中高の各段階でどのような内容を経て「情報活用能力」を育成していくかについても提案している.これは,学術会議を中心に策定されつつある「情報学」の参照基準において,コンピューティングが多様な情報学の分野を横断する共通概念になっていることがベースとなっており,非専門家でも必要な本質としてコンピューティングをどう教育するかを論じている.発表者の久野氏は本学会を始めとして,日本の学協会の先導者として精力的に活動しており,本発表は情報処理学会として提言すべき事の本質をついた優れた発表であったので,山下記念研究賞の候補として推薦する.
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●二十一代集シソーラスのための漸近的語彙対応システムの開発
[人文科学とコンピュータシンポジウム(じんもんこん2014)(2014.12.13)] (人文科学とコンピュータ研究会)
yamamoto

山元 啓史  君 (正会員)

1992年 筑波大学文芸・言語学系・留学生センター助手.
1995年 筑波大学文芸・言語学系・留学生センター専任講師.
1997年 カリフォルニア大学サンディエゴ校文部省在外研究員.
2000年 カリフォルニア大学サンディエゴ校客員研究員.
2005年 オーストラリア国立大学大学院人文科学研究科 博士課程 修了(Ph. D. in Linguistics).
2006年 オーストラリア国立大学客員研究員.
2009年 東京工業大学留学生センター准教授(現在に至る).

[推薦理由] 本論文は,勅撰和歌集である二十一代集のシソーラス開発を介して,1000年以上前の日本語における語彙体系を明らかにすることを目的としている.和歌と現代語訳のパラレルコーパスを利用した単語対の推定法により,計算手続きだけで新規登録すべき語を抽出することが可能なアルゴリズムを提案・実証した点で,今後、他の古典籍研究にも応用可能な計量国語学の優れた業績と認められる.本研究は,古典における知識の体系化の実現のための取り組みを,10年以上に渡り行った成果であり,その積み重ねは,人文科学研究の基盤的な研究として位置づけられると同時に,今後の発展性という点でも高く評価できる.
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●遷画:展示の数学モデルに基づく参加型アーカイブの分析とミュージアムでの展開
[人文科学とコンピュータシンポジウム(じんもんこん2014)(2014.12.13)] (人文科学とコンピュータ研究会)
kitamoto

北本 朝展  君 (正会員)

1992年 東京大学工学部電子工学科卒業.
1997年 東京大学工学系研究科電子工学専攻修了.博士(工学).
同年 文部省学術情報センター 助手を経て,
現在 国立情報学研究所 コンテンツ科学研究系 准教授.
2009年 JSTさきがけ研究者.
2008年 「じんもんこん2008」最優秀論文賞.
2007年,2012年 文化庁メディア芸術祭入賞.
2013年,2014年 LODチャレンジ受賞.
人文情報や地球環境情報・災害情報等を対象としたビッグデータの研究に従事.

[推薦理由] 遷画とは,デジタル化された貴重書アーカイブから画像断片を切り出し,探索・収集・並べ替え・共有機能を提供することで,ユーザが貴重書の画像を自由に再構成できるユーザ参加型のデジタル・キュレーションシステムである.ユーザは,個人の視点で画像断片に文脈を与え,それらを一つの展示として公開できるため,人々の多様な視点を集約・共有可能となり,豊かな鑑賞体験を生み出すことが期待できる独創的なシステムである.本システムは,2011年10月より東洋文庫ミュージアムに常設展示され,実運用も続けている.本研究は,この実践によりユーザが形成した展示群の数学モデルを複雑ネットワークの手法などで分析し,展示の自動生成の可能性,他のアーカイブへの適用なども考察しており,ミュージアムに大きなインパクトを与える研究である.
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●潜在共通構造モデルに基づく音響信号間アライメント
[2014-MUS-103(2014.5.24)] (音楽情報科学研究会)
maezawa

前澤  陽  君 (正会員)

2008年 ニューヨーク州立大学 ビンガムトン校 工学部電気工学科 卒業 (summa cum laude).
2011年 京都大学大学院情報学研究科 知能情報学専攻 修士課程修了.
2011年 ヤマハ株式会社 入社.
2015年 京都大学大学院情報学研究科 知能情報学専攻 博士課程修了.博士 (情報学).
現在に至る.
音楽情報処理技術及び統計的信号処理技術の研究・開発に従事.
情報処理学会,音響学会各会員.

[推薦理由] 本論文では,同一楽曲を演奏した複数の音響信号を時間同期させるための新しいアプローチを提案している.従来研究では,各音響信号を音響的特徴量の系列に変換し,DTWやHMMを用いて特徴量系列どうしを直接対応付けるアプローチが主流であった.一方,本論文では,各音響信号の背後に存在する共通構造(概念的には楽譜情報に相当)に着目している.共通構造と各演奏に固有のゆらぎに対応するHMMをそれぞれ個別に定式化し,それらを確率的に統合して得られる階層HMMに対する効率的な変分ベイズ学習アルゴリズムを導出している.アイデアの独創性および技術的完成度の点で極めて優れており,山下記念研究賞に強く推薦する.
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●無矛盾性規準に基づく連続ウェーブレット変換スペクトログラムへの位相推定法と高速化
[2014-MUS-103(2014.5.24)] (音楽情報科学研究会)
nakamura

中村 友彦  君 (学生会員)

2011年3月 東京大学工学部計数工学科 卒業.
2013年3月 同大学大学院情報理工学系研究科システム情報学専攻修士課程 修了.
2013年4月‐現在 同専攻博士課程 在籍.
2015年4月‐現在 日本学術振興会特別研究員 DC2.
音響信号処理,音楽情報処理に関する研究に従事.

[推薦理由] 連続ウェーブレット変換により得られる振幅スペクトログラムは聴覚フィルタバンクと似た時間周波数解像度をもつため,聴覚特性を考慮した音源分離手法や音響信号加工手法を実現するのに適した信号表現の一つである.しかし,振幅スペクトログラムは位相情報を含まないため,振幅スペクトログラムを時間領域信号に戻すには位相を推定する必要がある.本論文では,連続ウェーブレット変換が信号の冗長な表現となっている点に着目して振幅スペクトログラムから位相を推定する問題を最適化問題として定式化し,補助関数法と呼ばれる最適化原理に基づく高速な位相推定アルゴリズムを提案している.提案アルゴリズムは従来法に比べて実に100倍も高速であり,本成果は学術的だけでなく実用的にも極めて意義が大きい.以上より,本論文を山下記念研究賞に相応しい論文として推薦する.
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●行列変量正規分布の混合モデルとその声質変換への応用
[2014-SLP-102(2014.7.26)] (音声言語情報処理研究会)
saito

齋藤 大輔  君 (正会員)

2006年3月 東京大学工学部電子情報工学科 卒業.
2008年3月 東京大学大学院新領域創成科学研究科基盤情報学専攻修士課程修了.
2010年4月 日本学術振興会特別研究員DC2.
2011年3月 東京大学大学院工学系研究科博士課程修了.博士(工学).
2011年4月 東京大学大学院情報理工学系研究科助教 現在に至る.
音声合成,音声変換,音声分析,音声認識などの研究に従事.
2007年 日本音響学会 優秀ポスター賞.
2010年 日本音響学会 第2回学生優秀発表賞.
2011年 ISCA Interspeech Best Student Paper Awards 受賞.
2011年 日本音響学会 第31回 粟屋潔学術奨励賞 受賞.
2013年 第7回 信号処理学会論文賞 受賞.
2013年 電子情報通信学会 音声研究会研究奨励賞 受賞.
2014年 日本音響学会 第9回 独創研究奨励賞板倉記念 受賞.

[推薦理由] 本論文は,行列を確率変量とする確率分布を利用した声質変換の枠組みを提案したものである.従来は,入力および出力の特徴量を連結した結合ベクトルを変量とするガウス混合モデル(GMM)によって入出力特徴量の同時分布をモデル化していたが,入出力特徴量空間の関係性を適切にモデル化しているとは言えなかった.提案法では,行列変量のGMMによって入出力特徴量の同時分布をモデル化することで,入出力話者双方の特徴量空間の精緻なモデル化および両空間の関係性の適切なモデル化を同時に実現している.声質変換の性能向上に大きく貢献する研究であり,山下記念研究賞にふさわしいと考えるので推薦する.
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●サプライチェーンにおける情報セキュリティの研究
[2014-EIP-65(2014.9.18)] (電子化知的財産・社会基盤研究会)
kubo

久保 知裕  君 (正会員)

1988年 早稲田大学理工学部資源工学科 卒業.
1990年 早稲田大学大学院理工学研究科 修了.
同年 昭和シェル石油株式会社 入社.
2006年 青山学院大学大学院国際マネジメント研究科(MBA)修了.
2014年 情報セキュリティ大学院大学情報セキュリティ研究科 修了.
2015年 昭和シェルビジネス&ITソリューションズ株式会社 代表取締役社長就任.

[推薦理由] 多くの企業は,取引がサプライチェーンとなっている.久保は,このサプライチェーンに注目して,複数の企業にまたがる取引は,商流のみまらず,これに関する情報が併せて流れていること着目して,サプライチェーンのガバナンスが重要となることを明らかにした.論文では,アンケート調査や企業の開示情報の分析の結果,日本企業はリスク変化に対応した効果的な施策をとれていないことを指摘している.サプライチェーンではこのリスク認識が異なる中で個人情報が流通して共有されている.この情報が漏えいした場合には,全体の責任が追及されるようになっており,サプライチェーン全体を対象にした情報セキュリティやガバナンスが必要となることを指摘している.この解決には,サプライチェーンを対象にした化学物質の管理や児童労働の制限などの仕組みをベースにすることを提案している.また,この問題解決として,情報流通をガバナンスするためのクラウドの活用・情報の利用に関して国際標準の必要性を提言している.十分な研究のレベルにある.
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●将棋名人のレーティングと棋譜分析
[ゲームプログラミングワークショップ(GPW2014)(2014.11.7)] (ゲーム情報学研究会)
yamashita

山下  宏  君 (正会員)

1995年 東北大学 工学部 資源工学科 卒業.
コンピュータ将棋や囲碁の開発に従事.
共著
「コンピュータ囲碁 —モンテカルロ法の理論と実践—」共立出版
「コンピュータ囲碁の入門」共立出版
「コンピュータ将棋の進歩2」共立出版

[推薦理由] 本論文では,将棋の歴代名人の強さを勝敗の結果と棋譜から推定する試みを行っている.多くの棋譜からEloレーティングを用いて,実証的に研究を進めており,データも非常に興味深い.また,Bonanza, GPSFishでプロ,アマの合計6,500棋譜を解析し,羽生名人と大山15世名人の棋譜を含むすべての将棋プレイヤの棋力を推定する試みを行っている.本研究は,コンピュータ将棋プログラムが十分に強くなった特性を活かした興味深い研究であり,本賞の推薦に値する研究であると言える.
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●平均文字は美しい
[エンタテインメントコンピューティング2014(2014.9.13)] (エンタテインメントコンピューティング研究会)
nakamura

中村 聡史  君 (正会員)

2004年3月 大阪大学大学院 工学研究科 博士後期課程修了.博士(工学).
2004年4月 独立行政法人 情報通信研究機構 専攻研究員.
2006年6月 京都大学大学院 情報学研究科 特任助手.以後,特任助教,特任講師,特任准教授.
2013年4月 明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 准教授,現在に至る.
ウェブ,検索,HCI,エンタテイメントコンピューティング,ライフログなどの研究に従事.

[推薦理由] 本研究は,平均文字は美しいという仮説を検証するため,手書き文字をフーリエ級数展開によって数式化して平均文字を算出する手法を構築し,実際に書いた文字よりもユーザの平均的な文字が高く評価されること,各ユーザの平均文字よりも全ユーザの平均文字のほうが高く評価されることを示したものである.また,ほとんどの被験者が自身の文字を高く評価する傾向があることも示している.本研究は,人間の感性を数理的なアプローチから解析し,その特性を明らかにするものであり,美しさを感じさせる新規文字表現手法の実現や,人が綺麗だと感じる文字を書くための支援手法など,アート,エンタテインメント分野での応用も見込まれる.これらのことから,山下記念研究賞受賞にふさわしいと判断する.
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●マイクロタスク埋め込み型音楽ゲームの提案
[2014-EC-34(2014.12.19)] (エンタテインメントコンピューティング研究会)
miwa

三輪 聡哉  君 (学生会員)

2013年 明治大学総合数理学部先端メディアサイエンス学科 入学.
現在に至る.

[推薦理由] 本研究は,音楽ゲーム中にマイクロタスクへの回答が可能な仕組みを埋め込むことで,ゲームの邪魔をせずに楽しくマイクロタスクをこなしてもらう手法を提案した研究である.膨大なタスクを容易に回答可能なマイクロタスクに分解し,マイクロタスクの回答を大量に集めることで複雑な問題を解くというクラウドソーシングの仕組みにおいて,いかにマイクロタスクへの接触機会,回答機会を増やし,効率的な仕組みを実現するかという問いに対し,エンタテインメントコンピューティングの観点から新しい手法を提案した研究であり,山下記念研究賞受賞にふさわしいと判断する..
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●Network Completion for Static Gene Expression Data
[2015-BIO-41(2015.3.20)] (バイオ情報学研究会)
nakajima

仲嶋 なつ  君 (正会員)

2008年3月 奈良女子大学理学部情報科学科卒業.
2010年3月 奈良女子大学大学院人間文化研究科情報科学専攻博士前期課程修了.
2015年1月 京都大学大学院情報学研究科知能情報学専攻博士後期課程修了.
博士(情報学).
2015年2月 京都大学化学研究所附属バイオインフォマティクスセンター博士研究員.

[推薦理由] 本研究では,静的遺伝子発現データを用いて,既知の遺伝子ネットワークを補完,推定するための手法を提案している.また,遺伝子間の静的な制御規則を非線形方程式により定式化し,最小二乗法と動的計画法を組み合わせることで,より実用性のあるネットワーク補完を実現している.さらに肺がん細胞や正常肺細胞の遺伝子発現データを用いたネットワーク推定に適用し,異なる細胞下での遺伝子間相互作用推定における有効性を実証している.本研究は従来の遺伝子ネットワーク解析法とは異なる観点からの試みであり,新規性および拡張性が高いことから,山下記念研究賞として推薦する.
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●大学連携における学生意識調査から得られた学生タイプに関する検討
[2014-CLE-13(2014.5.16)] (教育学習支援情報システム研究会)
tokuno

徳野 淳子  君 (正会員)

2005年 3月 北陸先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 博士後期課程修了.
博士(情報科学).
2005年 4月 東京農工大学 産官学連携・知的財産センター 研究員.
2006年10月 東京農工大学 総合情報メディアセンター 特任助手.
2009年 4月 福井県立大学 学術教養センター 専任講師.
現在に至る.

[推薦理由] 本論文は,福井県大学間連携事業(Fレックス) における教学IRに関する事例をまとめたものである.Fレックスでは,学生の将来設計や授業外の過ごし方,大学生活で身についた知識や技能など多角的な視点で学生像を分析することで,学生理解や教育改善に関わる IR データを提供することを目的としており,2013年度に行われたFレックス学生意識調査アンケートの結果について報告している.現状では,教学IRのデータは研究成果としてまとめられているものが少ない上に,主に単一機関での分析が多いが,本論文では5機関の連携で得られたデータを用いており,規模の大きさと共に機関毎の違いが見られるものとなっており,研究としても成果の資料的価値としても価値が高いと考えられる.
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