2014年度詳細

2014年度(平成26年度)山下記念研究賞詳細

  山下記念研究賞は,研究賞として本学会の研究会および研究会主催シンポジウムにおける研究発表のうちから特に優秀な論文を選び,その発表者に 贈られていたものですが,故山下英男先生のご遺族から学会にご寄贈いただいた資金を活用するため,平成6年度から研究賞を充実させ,山下記念研究賞としたものです.受賞者は該当論文の登壇発表者である本学会の会員で,年齢制限はありません.本賞の選考は,表彰規程,山下記念研究賞受賞候補者選定手続および 山下記念研究賞推薦内規に基づき,各領域委員会が選定委員会となって行います.本年度は36研究会の主査から推薦された計52編の優れた論文に対し,慎重な審議を行い,決定されたうえで,理事会(2014年8月)および調査研究運営委員会に報告されたものです.本年度の下記受賞者には,3月17日に京都大学で開催される第77回全国大会の席上で表彰状,賞牌,賞金が授与されます.

<コンピュータサイエンス領域>
DBS SE ARC OS SLDM HPC PRO AL MPS EMB

<情報環境領域>
DPS HCI CG IS GN DD MBL CSEC ITS UBI IOT SPT CDS DCC

<フロンティア領域>
NL ICS CVIM CE CH MUS SLP EIP GI EC BIO CLE

コンピュータサイエンス領域

●大規模時系列データからの特徴自動抽出
[データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム(DEIM2014)(2014.3.4)] (データベースシステム研究会)
sakurai

櫻井 保志  君 (正会員)

1991年 同志社大学工学部電気工学科卒業,日本電信電話株式会社(NTT)入社.
1996年 奈良先端科学技術大学院大学博士前期課程修了.
1999年 同大大学院博士後期課程修了,工学博士.
1998年から2013年 NTT研究所に所属.
2004年から2005年 カーネギーメロン大学 客員研究員.
2013年 熊本大学大学院自然科学研究科教授,現在に至る.
本会 平成16年度および19年度論文賞,平成18年度長尾真記念特別賞,日本データベース学会 平成18年度上林奨励賞,電子情報通信学会 平成19年度論文賞,ACM KDD Best Paper Awards (2008, 2010),電気通信普及財団 第27回テレコムシステム技術賞等受賞.
センサデータ処理やWeb情報解析など,時系列ビッグデータ マイニングの研究に従事.

[推薦理由] 本論文では,大規模時系列データのための特徴自動抽出手法を提案している.提案手法であるAUTOPLAITは,様々な時系列パターンを含む複雑なシーケンスが与えられたときに,そのシーケンスデータの中から重要な特徴を発見し,それらの情報を統計的に要約,表現する.実データを用いた実験では,AUTOPLAITが様々な時系列データの中から有用なパターンを正確に発見することを確認し,さらに最新の既存手法と比較を行い,提案手法が大幅な精度,性能向上を達成していることを明らかにしている.巨大データの解析技術に関する研究開発への貢献が大きく,山下記念研究賞に相応しい論文として推薦する.
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●2-Hop ラベルの直接的な計算によるグラフ最短経路クエリ処理の効率化
[データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム(DEIM2014)(2014.3.5)] (データベースシステム研究会)
akiba

秋葉 拓哉  君 (学生会員)

2011年 東京大学理学部情報科学科 卒業
2013年 東京大学大学院情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻 修士課程 修了
2013年 東京大学大学院情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻 博士課程 進学
現在に至る.
[推薦理由] 2点間の最短経路の計算は大規模グラフデータにおける最も重要な処理の一つである.本論文では,(1)グラフに対し予め索引を作成し,(2)それを用いて2点間の最短経路の問合せに効率的に応答するという問題を扱う.本論文の提案手法は,索引のデータ構造と問合せ時のアルゴリズムとして2-Hopと呼ばれる一部の既存手法と共通した枠組みを利用する.しかし,それらの既存手法は索引の計算を最適化問題に帰着し間接的に計算していたのに対し,提案手法は巧妙な枝刈りを伴う幅優先探索により索引を直接的に計算する.グラフデータベースのクエリ処理やネットワークを考慮した情報検索など,幅広い応用が考えられる重要な研究成果であり,山下記念研究賞にふさわしい論文として推薦する.
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●ソフトウェア要求仕様書の第3者インスペクション方法論とその実践評価
[ソフトウェアエンジニアリングシンポジウム2013(2013.9.9)] (ソフトウェア工学研究会)
saito

斎藤  忍  君 (正会員)

1999年 慶應義塾大学理工学部卒業.
2001年 慶應義塾大学大学院修士課程修了.同年 株式会社NTTデータに入社.
2007年 慶應義塾大学大学院博士課程修了.博士(工学)
現在,NTTデータ 技術開発本部に所属.
ソフトウェア工学・要求工学に関する研究開発・事業支援に従事.

[推薦理由] ソフトウェア要求仕様の品質向上は実務面からみて重要な技術である.この論文では,ソフトウェア要求仕様のインスペクションをプロジェクトから分離させた第三者レビューという課題に取りくみ,考案した方法論を複数の現実プロジェクトで評価を行って効果を確認している.実際のプロジェクトへの長期間の適用による結果を報告し,実務者に有用な知見を提供している点で優秀である.また,インスペクションの実現方法例を示したこと,費用対効果を(主観的評価に近いが)定量化して示したことで有用性が認められ,実践的かつ有用な内容となっている.よって,山下記念研究賞受賞候補として推薦する.
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●Smith-Watermanアルゴリズムを利用したギャップを含むコードクローン検出
[ソフトウェアエンジニアリングシンポジウム2013(2013.9.10)] (ソフトウェア工学研究会)
murakami

村上  寛明  君 (学生会員)

2012年 大阪大学基礎工学部情報科学科卒業
2013年 大阪大学大学院情報科学研究科コンピュータサイエンス専攻博士前期課程修了
2013年 大阪大学大学院情報科学研究科コンピュータサイエンス専攻博士後期課程入学
現在に至る.

[推薦理由] 本研究は,コードクローンにおいて長年の課題となっている,ギャップを含むコードクローンを高精度でかつ高速に行う手法を提案し成果を上げている.現実的なコストで,コードクローン検出が達成できている.また,検出精度の評価方法の問題改善を行っており,今後のクローン検出における精度改善に非常に有益だと考えられる.手法には,他分野で用いられている高速化のアルゴリズムを取り入れる事で目的と合致した実験結果を得られており,大変興味深い.コードクローン検出の精度向上に有用な方法と考えられる.よって,山下記念研究賞受賞候補として推薦する.
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高次元トポロジ NoC の配線長最小化手法
[2013-ARC-206(2013.7.31)] (計算機アーキテクチャ研究会)
fujiwara

藤原 一毅  君 (正会員)

2002年 東京工業大学 工学部 制御システム工学科 卒業
2004年 東京工業大学大学院 理工学研究科 機械制御システム専攻 修了
2004年~2008年 株式会社日立製作所 情報制御システム事業部
2012年 総合研究大学院大学 複合科学研究科 情報学専攻 修了 博士(情報学)
同年  国立情報学研究所 アーキテクチャ科学研究系 特任研究員
2014年 同 特任助教
情報処理学会,電子情報通信学会,IEEE 各会員.

[推薦理由] 本発表は,チップ内ネットワークにおいて,高次元ネットワークトポロジの配置を二次割り当て問題としてモデル化し,総配線長を最小化するような準最適配置を求める手法とその有効性を示した.本手法は,適切なメタヒューリスティクスに基づき,おおむね512コアまでのチップ内ネットワークモデルに対し,準最適なコア配置を現実的な時間内で求めることができる.本手法を用いた場合,単純手法と比べて総配線長が最大45%削減されることが分かった.本研究は今後コア数の増加が想定されるメニーコアチップ内のネットワークの設計に大きく寄与することが期待されることから,山下記念賞に推薦する.
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●Triple-helix Writeback: Reducing Inner-Bankgroup Contention in DDR4 SDRAM Memory System
[2013-ARC-206(2013.8.1)] (計算機アーキテクチャ研究会)
hosokawa

細川 航平 君 (正会員)

2012年3月 東京大学理学部情報科学科卒業
2014年3月 東京大学大学院情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻修士課程修了
2014年4月 マイクロソフトディベロップメント株式会社入社

[推薦理由] 高性能計算機の研究において,メインメモリの高速化・省電力化は最も重要な問題の一つとして知られている.今回本候補者は,次世代メインメモリであるDDR4-SDRAMにおいて,予測手法の一 つであるScheduled Writebackの効率化を行った.提案手法では,①:マップ型履歴構造を用いたプロセッサ-メモリ間のトラフィックの解析及びア クセス傾向の予測,及び ②:①を元にした投機的スケジューリングアルゴリズム の2段階の予測プロセスにより,従来のアルゴリズムに比べ正確なトラフィック予測と高速なリクエスト処理を実現した.これにより,提案手法では最新の既存手法より4.7%の高速化と5.9%の消費電力削減を実現した.本論文の持つ新規性や性能の向上は目覚しいものがあるため,本候補者を推薦する.
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●GPUの完全仮想化
[2013-OS-126(2013.7.31)] (システムソフトウェアとオペレーティング・システム研究会)
suzuki

鈴木 勇介 君 (正会員)

2013年3月 慶應義塾大学理工学部情報工学科 卒業
2013年4月 慶應義塾大学大学院 理工学研究科開放環境科学専攻 博士前期課程 入学​​
現在に至る.

[推薦理由] Graphics Processing Unit (GPU) は最先端のメニーコア計算デバイスであり,超並列計算による性能上の高いスケーラビリティを有している.しかし GPU は仮想化のための機能を持たないため,クラウド環境などにおいて,単一の GPU を複数の仮想マシンで共有することは難しい.本発表では,GPU の完全仮想化を実現する方法を示し,実際にプロトタイピングを行い性能評価を行っている.仮想化のさまざまな技術を巧妙に組み合わせることによって,従来は困難だと言われていた GPU の仮想化を成し遂げた点に価値がある.この発表をベースにした研究成果は一流の国際会議に採択となっており,山下記念研究賞にふさわしい発表であるといえる.
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●適応的速度制御における連続時間マルコフ過程を用いた故障発生時間評価手法
[DAシンポジウム(2013.8.21)] (システムとLSIの設計技術研究会)
iiduka

飯塚 翔一  君 (学生会員)

2012年 大阪大学工学部電子情報工学科卒業.
同年  同大学大学院 情報科学研究科情報システム工学専攻博士前期課程入学
現在に至る.
LSIの遅延故障,信頼性に関する研究に従事.
情報処理学会,電子情報通信学会,IEEE,各学生会員.

[推薦理由] 本論文では,適応的速度制御で発生する低確率な遅延故障を考慮したMTTF評価手法を提案している.提案手法では,連続時間マルコフ過程を用いた適応的速度制御の確率的なモデル化と,回路状態間の推移密度の導出を事前に構築したデータベースを用いた計算で行うことにより,高速なMTTF評価を実現した.本論文は今後の信頼性を考慮したチップ設計に大きな指針を与えるもので価値が高い論文である.本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●2相ハンドシェイクプロトコル非同期式回路向けマルチクロック・マルチエッジトリガ・フリップフロップの提案
[2013-SLDM-162(2013.10.7)] (システムLSI設計技術研究会)
imai

今井  雅  君 (正会員)

1995年3月 東京工業大学 工学部 電気・電子工学科 卒業
1997年3月 東京工業大学大学院 情報理工学研究科 計算工学専攻 修士課程 修了
1998年4月 独立行政法人日本学術振興会 特別研究員(DC2)
2000年3月 東京大学大学院 工学系研究科 先端学際工学専攻 博士課程 単位取得満期退学
2000年4月 東京大学 先端科学技術研究センター 助手
2003年3月 博士(工学)学位取得(授与機関:東京大学)
2005年10月東京大学 先端科学技術研究センター 特任助教授
2006年4月 東京大学 駒場オープンラボラトリー 特任助教授
2007年4月 東京大学 駒場オープンラボラトリー 特任准教授
2011年4月 東京大学 先端科学技術研究センター 特任准教授
2012年1月 弘前大学大学院 理工学研究科 准教授
2014年5月 弘前大学大学院 理工学研究科 教授, 現在に至る.
ディペンダブル計算機システム,非同期式回路及びGALS-NoC設計に関する研究開発に従事.
情報処理学会,電子情報通信学会,電気学会,IEEE 各会員.

[推薦理由] 要求-応答ハンドシェイクに基づいて動作する非同期式回路の代表的なハンドシェイクプロトコルには2相と4相がある.2相は初期化のオーバーヘッドがないが,遷移論理であるため回路の実現が複雑になりやすい.本論文では2相ハンドシェイクプロトコルに基づく制御回路の実現を容易にするマルチクロック・マルチエッジトリガ・フリップフロップを提案している.提案したフリップフロップにより,2相ハンドシェイク信号を直接取り扱うことができ,制御回路を容易に設計することが可能となった.本論文は今後のチップ内非同期通信回路に大きな指針を与えるもので価値の高い論文である.本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●メニ-コア・プロセッサにおける動的スレッド数切替え手法
[2013-HPC-140(2013.8.2)] (ハイパフォーマンスコンピューティング研究会)
fukumoto

福本 尚人  君 (正会員)

2007年 九州大学工学部電気情報工学科卒業.
2009年 同大学大学院 システム情報科学府情報理学専攻修士課程修了.
2012年 同大学大学院博士後期課程修了.
同年    株式会社富士通研究所入社.現在に至る.
並列計算機の高速化技術に関する研究に従事.
情報処理学会HPCS2011最優秀論文賞 受賞.

[推薦理由] 本研究では,1コアあたりのスレッド数を高速に切り替える手法が提案され,稼働コア数も含めてプログラム実行中に適切に変更することを可能とした.複数スレッドを同時に処理できるコアを搭載したマルチコア,メニーコアプロセッサがHPC分野で主流となっているが,一部の並列プログラムでは,最大コア数,最大スレッド数での実行が最高性能を示さないことがある.このようなプログラムに対して,コア数,スレッド数の動的な切り替えによって性能向上が得られることが Intel Xeon Phi における評価実験で示されている.プロセッサのコア数がますます増大していくなかにあって,このような利用技術は極めて重要であり,本研究が山下記念研究賞にふさわしいものであるとして推薦する.
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●不揮発性メモリを用いたHybrid-BFSアルゴリズムの最適化と性能解析
[2014-HPC-143(2014.3.3)] (ハイパフォーマンスコンピューティング研究会)
iwabuchi

岩渕 圭太  君 (学生会員)

平成24年3月 東京工科大学コンピュータサイエンス学部コンピュータサイエンス学科 卒業
平成26年3月 東京工業大学大学院情報理工学研究科数理・計算科学専攻 修士課程修了
平成26年4月より,東京工業大学大学院情報理工学研究科数理・計算科学専攻博士課程に在学
大規模データ処理に関する研究に従事.

[推薦理由] 本論文は,DRAMと不揮発性メモリを併用しHybrid-BFSアルゴリズムを効率良く実行する手法について論じたものである.不揮発性メモリは価格および省電力性の面でDRAMより優れており,今後ますます規模が拡大するグラフ処理問題に対して高い電力性能比を実現することを本研究では目指している.本研究では,未訪問頂点の探索において頂点毎に少数のエッジの果たす役割が大きい点に着眼し,DRAMと不揮発性メモリを階層化し使い分けることで,Green Graph500 BigDataカテゴリの最高値(2013年11月時点)を1.8倍上回る電力効率性能を達成した.このように,本研究は今後のHPCの研究開発に大きく貢献するものであり,山下記念研究賞にふさわしい研究発表として推薦する.
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●バックトラックによる正規表現マッチングの時間計算量線形性判定
[(2014.1.14)] (プログラミング研究会)
sugiyama

杉山  聡  君 (正会員)

2012年 筑波大学 情報学群 情報科学類 卒業
2014年 筑波大学大学院 システム情報工学研究科 コンピュータサイエンス専攻 博士前期課程 修了
同年 野村総合研究所入社 現在に至る.

[推薦理由] この研究は,実用上よく用いられている,バックトラックを用いた正規表現マッチングの実装方式について,それが最悪の入力に対しても線形時間で処理を終えることを確認する手法を示した.正規表現マッチングはサーバ等でも盛んに使われており,その計算量の保証は実用上非常に重要である.この研究では,この問題を,マクロ木変換器の出力の大きさの推論という,今まで主に理論的興味から議論されてきた問題に帰着することで解決している.以上のように理論・実践の両面から興味深い結果であり,受賞に値する.

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●データ研磨によるクリーク列挙クラスタリング
[2014-AL-146(2014.1.31)] (アルゴリズム研究会)
uno

宇野 毅明  君 (学生会員)

1998年3月 東京工業大学終了,博士(理学)を取得.
1998年4月 東京工業大学経営工学専攻助手着任,
2001年2月 国立情報学研究所助教授着任.
2005年5月より2006年8月までスイス連邦工科大学に滞在.
現在,情報学プリンシプル研究系教授.
日本オペレーションズリサーチ学会,情報処理学会,電子情報通信学会に所属.
専門はアルゴリズムの理論と応用,特に離散アルゴリズム,列挙アルゴリズム,計算量理論,組合せ最適化など.データマイニング・データ解析・ゲノム情報学では,クラスタリングや類似性などの基礎計算を大規模データで高速に行う手法を研究.
2010年文部科学大臣表彰 科学技術部門 若手科学者賞受賞.

[推薦理由] データの中から類似する項目が作るグループ(クラスタ)を見つけ出す問題は,データ解析分野における中心的克つ基礎的な問題であるが,精度・速度・解の粒度の大きな偏り・類似解の生成など多くの難しさから,実用で耐えうるだけの効率性と頑健性を持つ解法は提案されていない.本研究では,実行可能仮定に基づきデータのゆらぎの改変を行い,中小規模の構造を明確化するというまったく新しいアプローチを提案している.具体例として,グラフクラスタリングにおいて,2つの頂点の近傍集合の類似性が高ければ,それらは同一のクラスタに属している可能性が高い,という仮説に基づき,その条件を満たす頂点対に枝を張り,そうでなければ枝を消す,という操作を行うことで,クラスタが極大クリークとして明確化されることを実証した.速度・精度・粒度の均一性・解の非類似性の全てにおいて,既存手法を大きく凌駕する手法となっており,山下記念研究賞としてふさわしいものとして推薦する.
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●Twitterにおけるユーザの興味と話題の時間発展を考慮したオンライン学習可能なトピックモデルの提案
[2013-MPS-95(2013.9.26)] (数理モデル化と問題解決研究会)
sasaki

佐々木 謙太朗  君 (学生会員)

2013年3月 名古屋大学工学部電気電子・情報工学科卒業.
同年  4月 同大学大学院工学研究科博士課程前期課程計算理工学専攻に入学,現在に至る.
主として自然言語処理に関する研究に従事.

[推薦理由] 本論文においては,様々な分野で応用されているトピックモデルであるLatent Dirichlet Allocationをもとに,Twitterに適したオンライン学習モデルを提案している.具体的にはユーザ毎に一般語とトピック語との割合を推定するモデルを改良するとともに,さらにユーザの購買講堂をモデル化したトピックモデルを改良し,ユーザの興味と話題の時間発展を考慮した,オンライン学習が可能なトピックモデルTwitter-TTMを提案している.本論文においてはトピック抽出における時系列の扱い方を,関連研究をよくリサーチした上で提案しており,従来モデルよりもツイートの予測精度が高く,より適切なモデル化が行えることから,その有用性を鑑み,山下記念賞に推薦するものである.
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●適応型スケジューリングによる平均応答時間の短縮法-実行時間見積り方法の影響-
[組込みシステムシンポジウム(ESS2013)(2013.10.18)] (組込みシステム研究会)
tanaka

田中 清史  君 (正会員)

1995年3月 東京大学理学部情報科学科 卒業
1997年3月 東京大学大学院理学系研究科情報科学専攻 修士課程修了
2000年3月 東京大学大学院理学系研究科情報科学専攻 博士課程修了.博士(理学).
同年,東京大学リサーチアソシエイト,
2001年3月 北陸先端科学技術大学院大学 情報科学研究科助教授.現在に至る.
計算機アーキテクチャ,並列分散アーキテクチャ,リアルタイム組込みシステムの研究に従事.
情報処理学会,電子情報通信学会,ACM,IEEE CS各会員.

[推薦理由] 本発表は、非周期リクエストの平均応答時間の短縮を目的とした適応型リアルタイムスケジューリング法における実行時間の見積方法に関する基礎的な研究である.タスクの実行時間を考慮に入れるリアルタイムスケジューリング方式では、実行時間として最悪実行時間が費やされることが仮定されるが、実際のシステム上では、ほとんどの場合、最悪実行時間よりも短い時間で実行が完了する.本研究では、適応型リアルタイムスケジューリング法における実行時間の見積方法を改善する手法を提案し、実験により有効性を示した.本発表は実用的な有効性が高いと考えられ、山下記念研究賞にふさわしいと考えられる.
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情報環境領域

●ストレージ・ネットワークの直接転送エンジンを用いたSSDキャッシュサーバの提案
[2013-DPS-157(2013.10.18)] (マルチメディア通信と分散処理研究会)
goto

後藤 真孝  君 (正会員)

1995年 九州大学工学部情報工学科卒業.
1997年 九州大学大学院システム情報科学研究科情報工学専攻修士課程修了.
同年,(株)東芝入社.同社,研究開発センターにて,オペレーティングシステムや通信プロトコルに関する研究開発に従事.
2014年,同社ストレージプロダクツ事業部に所属.ストレージシステムに関する開発に従事.現在に至る.

[推薦理由] 本論文では,Webシステム等で用いられるメモリキャッシュサーバを大容量化するため,SSDを記憶領域として用いたキャッシュサーバについて提案している.ストレージ上のデータをTCP/IPネットワークにCPU処理を介することなく直接転送できるハードウェアエンジンを用い,低応答遅延のSSDキャッシュサーバとして試作し,参照要求への応答時間を実環境で計測する評価を行った実用性の高い研究である.以上より本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●端末状態の監視により端末利用状況に合わせたCPU周波数制御を行う携帯端末向け省電力手法
[DPSワークショップ(2013.12.6)] (マルチメディア通信と分散処理研究会)
noro

野呂 正明  君 (正会員)

1966年生.1988年名古屋大学工学部電気工学科卒.
1990年同大大学院情報工学研究科修士課程了.同年株式会社富士通研究所入社.
2002年よりTAOおよびNICTに出向.
2008年大阪大学大学院情報科学研究科博士課程了.
2008年より現職(富士通研究所).
ネットワークの品質制御,データ転送プロトコル,OSの研究開発に従事.

[推薦理由] 本論文では,携帯端末の周辺機器やアプリケーションの状態変化に加え,スマートフォンのシステムサービスの活動状況を観測し,それらの結果の組み合わせとCPU周波数制御の設定を対応づけるデータベースを用いることで端末の状態を把握し,省電力のための設定変更を行う方法を提案している.Android端末向けの試作を行い,実機による評価で電力の削減効果を確認した実用性の高い研究である.以上より本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●選択肢ログ:意志決定支援のための選択を対象としたライフログ
[2013-HCI-153(2013.5.24)] (ヒューマンコンピュータインタラション研究会)
koyama

小山 純平  君 (学生会員)

平成18年4月 国立長野高専 電子情報工学科 入学
平成23年3月 国立長野高専 電子情報工学科 卒業
平成23年4月 京都工芸繊維大学 設計工学域 情報工学課程 3年次編入学
平成25年3月 京都工芸繊維大学 設計工学域 情報工学課程 卒業
平成25年4月 京都工芸繊維大学大学院 工芸科学研究科 情報工学専攻 入学
現在に至る.

[推薦理由] 一般にライフログシステムは継続的にユーザの体験や経験を取得・蓄積し,のちにそれを振り返って利活用するものであるが,本論文では記録すべき重要な要素として選択という行為に着目したところに新規性がある.すなわち,選択された事象だけでなく選択という行為そのものを保存対象とすることにより,意志決定行動を振り返ることができるようになり,それにより有用なシステム提案がなされている.さらに試作システムを複数人に使用させ,その考察を丁寧に行っており,山下記念賞にふさわしい論文としてここに推薦する.
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●流体の流れ場のインタラクティブなデザイン
[VC/GCADシンポジウム(2013.6.22)] (グラフィクスとCAD研究会)
sato

佐藤 周平  君 (正会員)

2009年3月 北海道大学工学部卒業.
2011年3月 同大学院情報科学研究科 修士課程修了.
2014年3月 同大学院情報科学研究科 博士後期課程修了.
同年4月    同大学院情報科学研究科 専門研究員.
同年8月    株式会社ユビキタスエンターテインメント研究部門UEIリサーチ入社.
現在に至る.博士(情報科学).
主としてコンピュータグラフィックスに関する研究に従事.

[推薦理由] 本研究は,ユーザが所望する炎や煙などの流体の流れ場をインタラクティブにデザインするための手法を提案している.流体シミュレーションを用いた映像制作において,制作者の意図に沿う流体映像生成を可能とすることは,コンピュータグラフィックスにおける重要な課題の一つである.提案手法では,流体の速度場を非圧縮かつ直交な基底関数の線形和によって近似し,ユーザ指定の流れ場および物理方程式を解いた流れ場との誤差を最小二乗法により最小化することで,所望のリアルな流れ場を高速に算出する手法を提案している.提案手法は,粒子法による流体解析や他の物理シミュレーションへの応用も期待できる.以上の理由により,本研究を山下記念研究賞として推薦する.
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●イラストスタイルの認知的分類に基づく識別モデルの構築
[2013-CG-152(2013.9.9)] (グラフィクスとCAD研究会)
kuriyama

栗山  繁  君 (正会員)

1985年 大阪大学 工学部 電子工学科 卒業
1987年 大阪大学 大学院 工学研究科 電子工学課程 修了
1988年 日本IBM株式会社 東京基礎研究所  研究員
1994年 広島市立大学 情報機械システム工学科  助教授
1998年 豊橋技術科学大学 情報工学系  助教授
2005年 豊橋技術科学大学 情報工学系  教授
2005年 産業技術総合研究所 デジタルヒューマン研究センター  チーム長(兼務)
2006年 早稲田大学  招聘研究員(兼務)
2010年 豊橋技術科学大学 情報・知能工学系  教授 現在に至る.
船井ベストペーパー賞(FIT2003)等受賞,博士(工学).
[推薦理由] 本研究では,画風や画調が類似したクリップアートやイラストの検索を可能にするために,イラストスタイルの相違度の定量化手法を提案している.テーマの設定自体に高い新規性があり,実用的なものであると認められる.被験者主観評価による画像類似度調査結果から、一定の妥当性のある類似度マップを生成できること,またその結果と各種の画像特徴量との間にどの程度の整合性があるかを詳細に示している.これらの成果は本課題に今後着手する研究者にとって資料価値の高い論文になっている.以上の理由により,本研究を山下記念研究賞として推薦する.
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●ソーシャルメディアにおける情報伝播ネットワークの可視化とアプリストアに与える影響についての統計的解析
[2013-IS-126(2013.12.2)] (情報システムと社会環境研究会)
hosoe

細江 成洋  君 (正会員)

2012年 名城大学 都市情報学部 都市情報学科 卒業
2014年 名古屋大学大学院 情報科学研究科・社会システム情報学専攻 博士前期課程 修了
同年, Sky株式会社 入社現在に至る.

[推薦理由] Twitter上での口コミ効果と商品の売れ行きとの関係を把握することを目的に,iTunes App StoreにおけるAPのダウンロードデータを用いた分析を試みた.その結果,iTunes App Storeランキング急上昇前にはリツイートが増加したものの,ゲームなど特定アプリに偏っていること,ランキング急上昇にはリツイート数より元につぶやいた特定ユーザが重要であることなどを明らかにした.TwitterというSNS内の情報を用い,消費者行動とマーケティングとの結びつきについて多角的に分析している.有用性の高い内容であると共に,結果の可視化による高い訴求性があり,情報システムと社会環境研究会の主旨に沿っている.以上より推薦に値すると考える.
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●確率的訪問POI分析: 時空間行動軌跡からのユーザモデリング
[DICOMO2013(2013.7.10)] (グループウェアとネットワークサービス研究会)
nishida

西田 京介  君 (正会員)

2004年3月 北海道大学工学部情報工学科卒業.
2006年3月 北海道大学大学院情報科学研究科複合情報学専攻修士課程修了.
2006年4月 日本学術振興会特別研究員(2009年3月まで).
2008年3月 北海道大学大学院情報科学研究科複合情報学専攻博士後期課程修了.
2009年4月 日本電信電話株式会社入社.
2013年2月より,NTTレゾナント株式会社所属.現在に至る.
博士(情報科学).
Web,ソーシャルメディア,テキスト,地理情報を対象としたデータマイニングの研究開発に従事.
GNWS2010ベストペーパー賞,DEIM2011最優秀インタラクティブ賞,DICOMO2013最優秀論文賞各受賞.
情報処理学会,電子情報通信学会,日本データベース学会各会員.

[推薦理由] 本研究発表は,GPSやネットワーク位置情報源(携帯基地局やWi-Fiなど)により得られるユーザの時空間行動軌跡から,そのユーザが訪問した場所(Point of Interest: POI)を推定するための分析技術を提案するものである.提案技術は,距離と時間情報を併せて考慮したMean-shiftクラスタリングによる滞留点抽出方法,および,ユーザの真の訪問POIを潜在変数とした教師無し/半教師あり学習による確率的生成モデルにより,訪問POIの高精度な推定を実現している.本研究発表では,実データによる実験により,従来手法に比べて滞留点の抽出と訪問POIの推定を精度良く行えたこと示しており,本技術が実現する訪問POIを基にした個々のユーザ行動・嗜好の理解は,情報提供や生活支援などをはじめとするパーソナルアシスタントサービスの今後の品質向上へ大きな貢献となるものである.
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●解像度を維持するBullet Timeの生成と評価
[2014-GN-90(2014.1.23)] (グループウェアとネットワークサービス研究会)
sakamoto

坂本 竜基  君 (正会員)

2003年 (株)国際電気通信基礎技術研究所 研究員
2008年 国立大学法人和歌山大学 講師
2012年 ヤフー株式会社 Yahoo! JAPAN研究所 上席研究員
HCI及びコンピュータビジョンの応用研究に従事.博士(知識科学).

[推薦理由] 本研究発表は,被写体を中心に等間隔に並べた多視点カメラからの映像のうち,同時刻のフレームを順に切り替えるBullet Timeと呼ばれるカメラワークをもった映像表現において,各カメラの被写体の一点が画像の中心となるように設置できないために不自然な映像となってしまった場合に,各フレームを射影変換で補正する方法に関するものである.本発表では,元の画像の解像度を維持しつつ,カメラワークとして自然な射影変換を行うアルゴリズムを複数提案し,既存手法に対する解像度維持の観点での比較,および被験者実験によるユーザに与える影響を,主に被写体の存在感と自然さ観点から検証し,その有効性を実証しており,新規性,有用性の両面で特に優れた発表であるので推薦する.
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●統合利用を目的とした地域史資料のLOD化
[2014-DD-93(2014.3.29)] (デジタルドキュメント研究会)
okuno

奥野  拓  君 (正会員)

1989年 北海道大学大学工学部精密工学科卒業
1994年 北海道大学大学院工学研究科博士課程精密工学専攻修了
同年 株式会社ジャパンテクニカルソフトウェア
2000年 株式会社情報科学センター
2003年 北海道大学大学院情報科学研究科客員助教授
2004年 同特任助教授
2005年 公立はこだて未来大学システム情報科学部助教授
2007年 同准教授

[推薦理由] 本論文は,様々な地域史コンテンツを相互に連携して取り扱うことを目指し,LODとして公開可能なRDF形式のデータセットを用いた具体的な統合利用手法を提案している.提案内容は単なるデジタルアーカイブの構築やその利用法の提示にとどまらず,種々のデータ形式を持つ地域情報を多面的かつ相補的に関連付けることで,「エピソードでつながる写真提示」や「地域ゆかりの人物にまつわる観光スポット情報の提示」といった具体的な地域情報活用手段を示しており,今後のコミュニケーション型ドキュメント研究の可能性を示す論文であると言える.以上の理由から,本論文を山下記念研究賞に相応しい論文として推薦する.
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●カメラ間通信を用いた無線マルチビューストリーミングの検討
[2013-MBL-68(2013.11.15)] (モバイルコンピューティングとユビキタス通信研究会)
kodera

小寺 志保  君 (学生会員)

2014年 静岡大学情報学部情報科学科を卒業.
2014年 静岡大学大学院情報研究科情報学専攻に入学.
映像伝送,計算機ネットワークに関する研究に従事.
情報処理学会学生会員.

[推薦理由] 本研究は,多数のカメラを用いたマルチビュービデオシステムにおいて,無線で接続された複数のカメラから発生するトラヒックを低減する手法に関する研究である.これまでの有線を前提としたマルチビュービデオシステムが無線化されることで,新たな応用への広がりが期待できる.提案手法では,カメラ同士が近隣のカメラから発生する映像を傍受・重複部分を排除・差分映像だけをエンコーディングすることによってトラヒックを削減する.この斬新なアイデアに加え,論文の構成ならびに評価が優れていることから,山下記念研究賞に推薦する.
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●HASC-IPSC: 屋内歩行センシングコーパス
[2014-MBL-70(2014.3.14)] (モバイルコンピューティングとユビキタス通信研究会)
kaji

梶  克彦  君 (正会員)

2002年3月 名古屋大学工学部電気電子・情報工学科 卒業
2004年3月 名古屋大学大学院工学研究科計算理工学専攻修士課程 修了
2007年3月 名古屋大学大学院情報科学研究科メディア科学専攻博士課程 修了
2007年4月 NTT コミュニケーション科学基礎研究所へリサーチアソシエイトとして入社,
2010年4月より名古屋大学大学院工学研究科 助教,現在に至る.
情報処理学会,日本ソフトウェア科学会各会員.博士(情報科学).
屋内位置推定,遠隔コミュニケーション支援等の研究に従事.

[推薦理由] スマートフォンを用いた屋内位置推定や建物構造推定は近年盛んに行われているが,研究グループごとにデータを収集,分析されているため,推定アルゴリズムの純粋な評価が難しいという問題があった.この問題を解決するため,本研究では,評価用の共通データ,つまりコーパスの構築に取り組んでいる.様々な年齢層107名の被験者による実験を行い,収集したデータにラベル付けする作業は大変な作業であったことが予想される.構築されたコーパスは,今後,当該分野の発展に大きく寄与することが予想されることから山下記念研究賞に推薦する.
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●並列Gauss Sieveアルゴリズムを用いた128次元イデアル格子の最短ベクトル問題の求解
[CSS2013(2013.10.21)] (コンピュータセキュリティ研究会)
ishiguro

石黒  司  君 (正会員)

2008年 公立はこだて未来大学システム情報科学部 卒業
2010年 情報セキュリティ大学院大学情報セキュリティ研究科 修士課程修了
同年  KDDI株式会社 入社
現在に至る.
 

[推薦理由] 耐量子計算機暗号として有望視されている格子暗号の安全性に関し、最短ベクトル問題(SVP)の困難性仮定は重要な役割を担っている.したがって,SVPの困難性の厳密な評価は,格子暗号の実用上の安全性と効率性を見積もることにつながる.本論文は,80台以上の計算機による具体的な計算機実験により,これまでの世界最高記録である128次元のイデアル格子上のSVP問題を実際に解くことで,SVPの困難性に関する極めて有用な知見を与えている.本成果により,SVPのより厳密な困難性が今後一層明らかになっていくものと強く期待できることから本論文を推薦する.
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●SNS上のプライバシーセンシティブ情報の漏洩検知に基づく公開範囲の設定方式
[CSS2013(2013.10.22)] (コンピュータセキュリティ研究会)
machida

町田 史門  君 (学生会員)

2013年 首都大学東京産業技術大学院大学産業技術研究科情報アーキテクチャ専攻専門職修士課程修了
2013年 総合研究大学院大学複合科学研究科情報学専攻博士後期課程入学
現在に至る.
CSS2013優秀論文賞,CSS2013コンセプト論文賞を受賞.

[推薦理由] 本論文は,SNSにおけるプライバシー侵害を情報の内容・重要度によって家族から複数の他人までに分類した5段階の開示レベルを策定し,大規模なTwitterのアーカイブを対象とした実証分析により評価している.さらに,SNSへ投稿する際に開示レベルを自動検出するシステムを提案している.近年の社会問題を課題対象とした重要なテーマであり,これを解決するための大規模なデータ分析を通した実証評価・システム提案は,意欲的な研究であり,今後の発展が期待できる研究領域であることから本論文を推薦する.
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●案内サインを活用した駅構内ナビゲーションシステムの開発と評価
[2013-ITS-55(2013.11.14)] (高度交通システムとスマートコミュニティ研究会)
hidaka

日高 洋祐  君 (正会員)

2005年 東京工業大学大学院総合理工学部メカノマイクロ工学専攻修士課程修了
2005年 東日本旅客鉄道株式会社
2011年 慶応義塾大学SFC研究所訪問研究員(派遣)
2012年 東日本旅客鉄道株式会社JR東日本研究開発センターフロンティアサービス研究所研究員
2014年 東京大学大学院学際情報学府博士課程入学
インターフェースデザインの研究,スマートフォンを活用したナビゲーションシステム開発等に従事.
情報処理学会会員.

[推薦理由] 駅構内における案内という現実的なニーズに対して,実際に使用する環境を想定した使いやすいシステムが提案されており,実地での実験を通してその有用性が評価されている.提案手法では,スマートフォンを対象とした複雑な駅構内での道案内システムの実現方法が模索されており,案内サインというどの駅にも豊富に設置されているインフラを目印とし,それらの目印と文章や図を組み合わせた案内でユーザを誘導する,見やすく操作しやすいユーザインターフェイスを有するスマートフォンアプリとして実装されている.ユーザに実際に使って貰う形での評価実験が行われ,更なる問題点の洗い出しや今後の改良の方向性も検討されており,質の高い研究と言える.
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●途上国における予防医療を実現するポータブルヘルスクリニックシステムの構築
[2013-UBI-39(2013.7.31)] (ユビキタスコンピューティングシステム研究会)
nohara

野原 康伸  君 (正会員)

2003年 九州大学工学部電気情報工学科卒業.
2005年 九州大学大学院システム情報科学府情報工学専攻修士課程修了.
2008年 九州大学大学院システム情報科学府情報工学専攻博士後期課程単位取得退学.同年 博士(工学).
九州大学大学院システム情報科学研究院学術研究員等を経て,2010年より九州大学病院メディカル・インフォメーションセンター特任助教.現在に至る.
センサネットワークおよび医療情報の解析に関する研究に従事.
電子情報通信学会,IEEE,日本医療情報学会各会員.

[推薦理由] 本研究は,情報インフラが整っていない途上国においてユビキタスコンピューティングを展開し,かつ現地において非常にニーズが多い医療への応用を1万人規模で実験するという挑戦的な物である.本論文では,その裏に隠れたシステム基盤における重要な知見を記した物であり,ユビキタスコンピューティングの実用化に対する大きな貢献であるため,山下記念研究賞の受賞候補に本研究を推薦する.
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●動作・人物・場所情報の超音波を用いた音声データへの埋め込み手法
[2013-UBI-39(2013.7.31)] (ユビキタスコンピューティングシステム研究会)
watanabe

渡邉 拓貴  君 (学生会員)

2012年 神戸大学工学部電気電子工学科卒業
2014年 同大学大学院工学研究科電気電子工学専攻修士課程修了
2014年 同大学大学院博士課程に進学,現在に至る.
ウェアラブル・ユビキタスコンピューティングの研究に興味を持つ.
情報処理学会学生会員 .

[推薦理由] 本研究では,ユーザや環境に設置した超音波スピーカからの超音波を用いて,本来音だけでは取得困難なユーザの行動,居た場所,会った人等の情報を認識可能とした.本研究で用いる超音波は人の耳には聞こえない周波数かつ一般的なボイスレコーダ等でも取得できる範囲の周波数であり,音声データとしてこれらすべてのデータを埋め込む点に新規性がある.また近年多くの人が携帯するスマートフォンにもマイクとスピーカは標準装着されており,このような背景からも本研究の応用は将来性・実用性ともに高いと考えらえる.以上のように将来性・実用性および当該研究分野への貢献が大であると考えられることから,山下記念研究賞に相応しい研究として推薦する.
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●SAML連携を行うPAMに基づくSSO認証対応Webメールシステムの開発
[2013-IOT-22(2013.8.1)] (インターネットと運用技術研究会)
ohtani

大谷  誠  君 (正会員)

1998年 3月 佐賀大学理工学部情報科学科卒業
2000年 3月 佐賀大学大学院工学系研究科博士前期課程情報科学専攻修了
2003年 3月 佐賀大学大学院工学系研究科博士後期課程システム生産科学専攻修了
2003年 4月 佐賀大学海洋エネルギー研究センター COE研究員
2004年12月 佐賀大学学術情報処理センター(現 総合情報基盤センター) 講師
2009年 4月 佐賀大学総合情報基盤センター 准教授
2011年 4月 国立情報学研究所学術ネットワーク研究開発センター 外来研究員併任(2012年3月まで)
現在に至る.インターネットの研究に従事.博士(工学).

[推薦理由] ShibbolethによるSAML認証において,あるWebシステムが認証サーバに,あるユーザの認証を要求し認証に成功すると,認証サーバからそのユーザの属性情報が提供されるが,セキュリティの観点からパスワード情報が提供されない設計を採用している例がある.本稿はこのような設計の認証統合環境において,SAMLに対応可能なPAMモジュールの導入により利便性を向上することに成功した報告である.実装とその評価を行い,また問題点についても細かく指摘されており,実用性と信頼性に富む.よって,山下記念研究賞として推薦する.
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●mod_mruby: スクリプト言語で高速かつ省メモリに拡張可能なWebサーバの機能拡張支援機構
[IOTS2013(2013.12.13)] (インターネットと運用技術研究会)
matsumoto

松本 亮介  君 (学生会員)

2012年04月 京都大学 情報学研究科 博士課程 入学
2012年01月 京都大学 博士課程出願資格 取得(修士課程免除)
2011年08月 ファーストサーバ株式会社 退社
2008年04月 ファーストサーバ株式会社 入社
2008年03月 大阪府立大学 工学部情報工学科 卒業

[推薦理由] Webサービスを安定して提供するために,Webサーバソフトウェアの内部機能の拡張が必要となる場合がある.この機能拡張を,生産性や保守性を考慮してスクリプト言語で行う手法の提案がいくつかなされているが,高速性・省メモリ・安全性の面でいくつかの課題があった.著者は,Apache HTTP Serverに組み込みスクリプ卜言語であるmrubyを組み込むことで,Rubyスクリプトにより容易に機能拡張でき,高速・省メモリで動作する機能拡張支援機構を提案している.また,本機構の有用性を様々な角度から検証している.実用性も非常に高く,この研究は今後のWebサービスの発展に寄与するものであると考えられる.よって,山下記念研究賞として推薦する.
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●暗号技術の信頼情報を提供するクライアント側機構とユーザインタフェースの提案
[2014-SPT-8(2014.3.28)] (セキュリティ心理学とトラスト研究会)
kanaoka

金岡  晃  君 (正会員)

1998年3月 東邦大学理学部情報科学科 卒業
2001年3月 東邦大学大学院理学研究科 修了
2004年3月 筑波大学大学院博士課程システム情報工学研究科 修了
2004年4月 セコム株式会社 IS研究所 研究員
2007年4月 筑波大学大学院システム情報工学研究科 研究員
2008年4月 筑波大学大学院システム情報工学研究科 助教
2013年4月 東邦大学理学部情報科学科 講師

[推薦理由] ユーザへの暗号技術が信頼できるかどうかを示すユーザインタフェースを提案し,評価を行い,その結果から,提案インタフェースは「第三者の信頼情報を「ユーザに提供する」という本来の目的だけでなく、「プライバシへの注目」や「第三者に情報を預けることの不安を明らかにする」という効果を得た。一般の人々に伝えにくい暗号技術について、その信頼度の提示は、重要な課題であり、今後の展開が期待できる.
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●ポリシーベース電力制御のためのスマートタップの設計と実装
[2013-CDS-7(2013.5.23)] (コンシューマデバイス&システム研究会)
morimoto

森本 尚之  君 (正会員)

2006年3月 京都大学理学部 卒業
2008年3月 京都大学大学院情報学研究科 知能情報学専攻 修士課程修了
2011年3月 同博士後期課程 研究指導認定退学
同年4月    株式会社エネゲート入社
2013年5月 情報処理学会コンシューマ・デバイス&システム研究会 優秀発表選出
2014年4月 京都大学 物質ー細胞統合システム拠点 特定拠点助教
2014年7月 博士(情報学)取得
現在に至る.オンラインアルゴリズムと近似アルゴリズムの設計と解析,およびそのエネルギーマネジメントへの応用の研究に従事.
情報処理学会および電子情報通信学会会員.

[推薦理由] 本論文では,電力マネジメントを自動化しユーザの負担を軽減することを目的として,ポリシーベースで電力制御が可能なスマートタップの設計と実装について論じている.具体的には,正確な電力計測性能,様々な制御ポリシーの実行が可能な計算能力,実生活環境での継続的な使用を考慮した安全性などに重点を置いたスマートタップの開発,ソフトウェアベースでの回路ブレーカ機能と,複数機器の突入電流の重なりを回避する機能を実装し有効性を示している.また,実生活環境下で,開発したスマートタップと環境センサ情報を用いた家電制御に関する継続的な運用と動作検証を行っており,今後の実用化が期待できる.以上より本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●短編3DCGアニメーション "Fossil Tears -融心石-"
[2013-DCC-4(2013.6.27)](デジタルコンテンツクリエーション研究会)
maki

牧 奈歩美  君 (正会員)

2005年 京都市立芸術大学 美術学科 構想設計専攻卒業
2008年 南カリフォルニア大学 映画芸術学部 アニメーション・デジタルアート学科 修士課程修了
2009年 Xfrog. Inc CGデザイナー
2011年 神奈川工科大学 情報メディア学科  助教,現在に至る.
2014年 東京藝術大学大学院 映像研究科 博士後期課程 入学

[推薦理由] 本論文は,著者の制作した短編3DCGアニメーション作品について,3DCG史における新たな位置づけと制作過程,構築した独自の表現法が述べられている.当作品において,世界観を表現するために著者の目指した,3DCGと2D手描き表現や自然物の質感との融合は高度に実現されており,作品の芸術性、娯楽性、社会的受容性が大きく認められる.本論では,コンセプトを視覚化するために,独自の質感表現を再現した方法として,スケッチから完成画像キャプチャ図版までが盛り込まれ,筆者の意図する世界観構築の実現が明らかにされている.本研究は,ノンフォトリアリスティックレンダリング技術という枠組みにおいて,新たな芸術表現の将来性を有する点から,山下記念研究賞として推薦する.
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メディア知能情報

●日本語述語項構造アノテーションに関わる諸問題の分析
[2013-NL-214(2013.11.15)] (自然言語処理研究会)
matsubayashi

松林優一郎  君 (正会員)

2004年 九州大学理学部物理学科卒業
2006年 東京大学大学院情報理工学研究科 コンピュータ科学専攻 修士課程修了
2010年 東京大学大学院情報理工学研究科 コンピュータ科学専攻 博士課程修了.博士(情報理工学)
同年 国立情報学研究所 コンテンツ科学研究系 特任研究員,2012年 東北大学大学院情報科学研究科 特任助教.現在に至る.
述語項構造解析,述語項構造アノテーション,言い換え等の研究に従事.

[推薦理由] 述語項構造解析は自然言語の意味処理において重要な役割をはたすが,現在の日本語述語項構造解析はその精度において頭打ちに近い状況にある.これを打破するためには本来の課題設定に立ち返り,述語項構造の注釈付けの仕様をもう一度吟味することが必要である.本論文は,実際の注釈付け作業においてPDCAサイクルを回すことにより作業のガイドラインを洗練し,信頼性のある効果的な注釈付けを実現しようとする試みを報告しており,上の要請に応えるものとなっている.こうした分析的な研究は,定量的評価を重視する昨今の研究環境では評価されにくい傾向があるが,定性的な分析と定量的な評価は研究を進める上での両輪であり,この種の研究を奨励することの意義は大きい.
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●Smart Access Vehiclesの社会実装—シミュレーションを通じた分析と実証—
[2014-ICS-174(2014.3.2)] (知能システム研究会)
koshiba

小柴  等  君 (正会員)

2003年 宇部工業高等専門学校 専攻科 生産システム工学専攻 修了
2005年 北陸先端科学技術大学院大学 知識科学研究科 博士前期課程修了
2008年 北陸先端科学技術大学院大学 知識科学研究科 博士後期課程修了.博士(知識科学).
2008年 国立情報学研究所 コンテンツ科学研究系 特任研究員
2011年 産業技術総合研究所 サービス工学研究センター 特別研究員
2014年 文部科学省 科学技術・学術政策研究所 研究員
現在に至る.
産業技術総合研究所 外来研究員,公立はこだて未来大学 客員教授を兼務.

[推薦理由] 筆者らによるこれまでの研究である,デマンドバスの一種である Smart Access Vehicles (SAV) の社会実装に関する論文であり,これまでの,シミュレーションによる利便性評価に対して,今回は,40名程度の被験者の協力の下で数日間のデマンド自動受付・全自動配車の複数台運行というSAV の実証実験を行った結果についての報告である.今回の実証実験は,世界初の試みであることから極めて有意義なものであり,しかも,比較的長期間に渡る実験を行うことが出来ていることから,得られた実験データの価値も高く,本年度の山下記念研究賞受賞に相応しいと判断する.
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●部分空間法の応用と魅力
[2013-CVIM-188(2013.9.3)] (コンピュータビジョンとイメージメディア研究会)
hotta

堀田 政二  君 (正会員)

1998年3月 九州芸術工科大学 芸術工学部 (現 九州大学芸術工学部) 画像設計学科卒業
1999年3月 九州芸術工科大学大学院 芸術工学研究科 博士前期課程修了
2002年3月 九州芸術工科大学大学院 芸術工学研究科 博士後期課程修了(博士(工学))
2002年4月 長崎大学 工学部 情報システム工学科 助手
2007年1月 東京農工大学大学院 共生技術研究院 特任助教授
2011年4月より 東京農工大学大学院 工学府工学研究院 准教授
パターンの解析と認識,画像情報処理とその応用,画像・ビデオの類似検索の研究に従事.
情報処理学会,電子情報通信学会,画像電子学会,映像情報メディア学会,IEEE各会員.

[推薦理由] パターン認識の分野で多く用いられている部分空間法について,理論的,実用的な観点から解説をしている.部分空間法の性質を,これまで深く考察されなかった部分空間の導出に用いられる自己相関行列に着目して理論的に考察している.さらに,ベイズ決定則に基づいて複合部分空間識別器を導出し,これまで関連があると予想されてきたベイス決定則と部分空間法の関連性を示した.これらの理論的考察は,部分空間法の今後の発展を促進するものと考えられ,非常に有益である.また,理論的な解説にとどまらず,実験を通じて部分空間法の利点,欠点を分かりやすく示し,読者の部分空間法に対する理解をより一層深いものにしている.以上より,本論文は平成25年度山下記念研究賞にふさわしいと考え,ここに推薦する次第である.
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●焦点距離の異なる複数パターンを投影可能なプロジェクタによるDepth from Defocus手法
[2014-CVIM-191(2014.3.4)] (コンピュータビジョンとイメージメディア研究会)
masuyama

益山  仁  君 (学生会員)

2013年3月 鹿児島大学工学部情報生体システム工学科 卒業
2013年4月 鹿児島大学大学院理工学研究科情報生体システム工学専攻 入学
2014年7月 MIRU2014優秀賞授賞
現在に至る.

[推薦理由] 本発表は,プロジェクタにより投影されたパターンによりシーン中の物体の奥行きを計測するパターン光投影の研究である.一般的なパターン光投影では格子などの幾何的パターンの歪みから距離や形状を求めることが一般的であるが,本研究ではプロジェクタの投影像の奥行きボケ,すなわち光学的な変化により奥行きを求めている.特に注目すべきは,異なる焦点位置に異なるパターンスクリーンを置く独自のプロジェクタシステムを構築することで,投影奥行き毎に異なるパターンが表れるように光線空間を符号化するこれまでにない斬新なアプローチを提案している点にある.以上より,本論文は平成25年度山下記念研究賞にふさわしいと考え,ここに推薦する次第である.
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●PenFlowchartによるプログラミング導入教育の評価
[2013-CE-121(2013.10.12)] (コンピュータと教育研究会)
nakanishi

中西  渉  君 (正会員)

1989年 名古屋大学理学部数学科卒業
1989年 学校法人名古屋学院 名古屋高等学校数学科教諭
2004年 情報科を兼担
現在に至る.

[推薦理由] 本発表で提案されているPenFlowchartを導入したことで,プログラミング初学者に対するプログラミング序盤の演習がスムーズに進んだこと,成績下位の生徒のプログラミング構造理解が深まったことなどが,長期に渡る授業実践により明らかになったことが意義深く,中等教育へプログラミング教育を導入するための有用なツールの一つになると思われる。また,この種の研究は,ビジュアル言語としての新規性を狙った結果として,教育には使いづらいものになりがちであるが,ここで提案されているものは現場での利用を考慮した基本を押さえたものになっており,興味深い知見を提供している.
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●「LINE外し」ロールプレイングによる情報社会に参画する態度の育成
[2013-CE-122(2013.12.14)] (コンピュータと教育研究会)
nakano

中野 由章  君 (正会員)

1988年 芝浦工業大学 工学部 通信工学科 卒業
1990年 芝浦工業大学大学院 工学研究科 電気工学専攻 修士課程修了
1990年 日本アイ・ビー・エム株式会社 大和研究所
1993年 三重県立高等学校 講師
1994年 三重県立高等学校 教諭
2004年 千里金蘭大学 人間社会学部 情報社会学科 専任講師
2008年 千里金蘭大学 現代社会学部 現代社会学科 准教授
2010年 千里金蘭大学 情報処理教育センター長
2011年 大阪大学大学院 人間科学研究科 博士後期課程単位修得
2011年 大阪電気通信大学 メディアコミュニケーションセンター 情報教育特任講師
2013年 大阪電気通信大学 総合情報学部 情報学科 客員准教授
2013年 神戸市立科学技術高等学校 電気情報工学科 教諭
情報処理学会 シニア会員(予定),初等中等教育委員会委員,情報入試WG幹事,コンピュータと教育研究会運営委員.
技術士(総合技術監理・情報工学).

[推薦理由] 本発表では,LINEなどのSNSを用いた「いじめ」を起こさせないための指導として,「LINE外し」という特定の生徒をLINEのグループから退会させるというシチュエーションを,CSアンプラグドと同様の情報機器を一切使わない,ロールプレイを通じて生徒に疑似体験させ,その危険性について学習させる教材を提案している.この教材は,実際に学校で起こったいじめの事案を再発させないように指導することが開発の動機となっており,これをその高校の授業において実践して評価しているので,他の高校教員などの教育者が「情報社会に参画する態度」を育成する授業・講義を行う上で非常に有用性が高い結果を示している発表となっていたと評価した.
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●日付を表す文字列の解釈と暦の変換-暦に関する統合基盤の構築に向けて
[じんもんこん2013(2013.12.13)] (人文科学とコンピュータ研究会)
sekino

関野  樹  君 (正会員)

1991年 信州大学理学部生物学科卒業
1993年 信州大学大学院理学研究科生物学専攻修了
1998年 京都大学大学院理学研究科動物学専攻修了,博士(理学)
京都大学生態学研究センター,(財)国際湖沼環境委員会を経て,
2002年より総合地球環境学研究所助教授,現在に至る(准教授).

[推薦理由] 和暦の問題は日本史の資料を扱う上で,重要な課題であるにも関わらず,これまで個別のデータベースでの対応が多く,体系的な基盤整備が遅れてきた経緯がある.本研究はこれに対して,様々なデータベースで活用することが可能な基盤技術を確立させる可能性を持っている.また,同氏は,時空間情報のうち時間情報を効果的に取り扱う仕組みを作成する試みを継続的に行っている.人文科学において時間情報の取り扱いの整理は重要な課題であるが,日本のそれについては,未だに整理がされていない.この現状を鑑み,アジア地域を広く視野に入れて,時間情報という人文科学研究の基盤的な情報に対する総合的な検討を行い,整理しようという一連の研究は,広範囲の研究者にとって有益な取り組みとして高く評価ができる.
[ 戻る ]
●ピアノの両手運指モデルによる合奏曲のピアノ用自動編曲手法
[2013-MUS-101(2013.12.24)] (音楽情報科学研究会)
nakamura

中村 栄太  君 (正会員)

2007年 東京大学理学部物理学科 卒業
2009年 同大学大学院理学系研究科物理学専攻修士課程 修了
2012年 同専攻博士課程 修了 [博士(理学)]
2013年 国立情報学研究所 特任研究員
2014年より 特任助教.
音楽情報処理に従事.

[推薦理由] 本論文では,音楽の自動編曲という興味深い難問に挑んでおり,ピアノの運指モデルと編曲過程の両方を,提案の出力合流隠れマルコフモデルという新しい確率モデルで巧みに記述し,運指モデルによる演奏難易度を制約とした最尤原理に基づく合奏曲のピアノ用自動編曲手法を提案している.人間による運指や編曲との比較も示唆に富んでいる.提案モデルは,複数の時系列が同時進行する多声音楽の効率的な計算モデルとして利用可能で,今後多くの発展や応用が期待される.音楽情報処理分野の発展に寄与する極めて独創的で優秀な論文であり,山下記念研究賞に相応しい論文として推薦する.
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●連続励起振動楽器を対象とした音量軌跡のダイナキクスとアーティキュレーションへの分解法
[2014-MUS-102(2014.2.24)] (音楽情報科学研究会)
koizumi

小泉 悠馬  君 (正会員)

2012年3月 法政大学情報科学部 卒業
2014年3月 法政大学大学院情報科学研究科 修士課程修了
2014年4月 日本電信電話株式会社 入社
現在,同社,NTTメディアインテリジェンス研究所 所属.
音響信号処理,音楽情報処理に関する研究に従事.
2013年 FIT船井ベストペーパー賞 受賞.

[推薦理由] 楽器演奏の音響信号から得られる音響インテンシティ(音の強さ)の時系列信号には,演奏者の表現や技術,習熟度に起因する成分が時間的に複雑に畳み込まれており,それらをどう表現し,モデリングするかは重要で難しい研究課題である.本研究は,インテンシティの時系列信号が,大局的な変化であるダイナミクスと局所的な変化であるアーティキュレーションからなると想定することによってこの課題に取り組み,これら2つの動特性を,階層ベイズモデルに基づく動的システムを利用した新しい表現手法によって解決しており,その着想から評価に至る一連の研究成果は高く評価できる.この独創的な成果に加え,発表者による説明も魅力的で分かりやすく,本賞に相応しい論文として推薦する.
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●生成型アプローチによるLatent Words Language ModelのN-gram近似
[2013-SLP-97(2013.7.26)] (音声言語情報処理研究会)
masumura

増村  亮  君 (正会員)

2009年3月 東北大学 工学部 電気情報物理工学科 卒業.
2011年3月 東北大学大学院 工学研究科 電気通信工学専攻 博士前期課程 修了.
2011年4月 日本電信電話株式会社 入社.
現在 NTTメディアインテリジェンス研究所 所属.
音声認識・音声言語処理の研究開発に従事.
情報処理学会,音響学会,IEEE, ISCA,各会員.
2010年 日本音響学会 第1回 学生優秀発表賞 受賞.
2010年 IEEE Sendai Section Student Awards 2010 The Best Paper Prize 受賞.
2013年 日本音響学会 第34回 粟屋潔学術奨励賞 受賞.

[推薦理由] 大語彙連続音声認識システムの言語モデルとしてN-gram言語モデルが最も一般的に用いられている.N-gram言語モデルの学習では,本質的にデータスパースネスの問題が避けられず,これに対応する方法について盛んに研究されている.この問題に対応するために,本論文では,限られた学習データから大量のデータを自動生成してそれを学習データとして用いる方法が採用されており,学習データの生成方法としてLatent Words Language Modelを利用することが提案されている.このモデル化により,従来のN-gram言語モデルを用いた時と比べて,結果を改善することができた.これは音声認識システムの高精度化・実用化に大きく寄与する結果であることから,山下記念研究賞に推薦するものである.
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●3Dプリンタの法的問題序説
[2014-EIP-63(2014.2.21)] (電子化知的財産・社会基盤研究会)
sugawa

須川 賢洋  君 (正会員)

1992年 新潟大学法学部卒業
1995年 新潟大学大学院法学研究科修士課程修了
1996年 新潟大学法学部助手(2004年~助教)
専門:サイバー法(コンピュータ犯罪,デジタル知的財産,情報セキュリティ制度,デジタル・フォレン ジックなどを研究)
NPOデジタル・フォレンジック研究会 理事
共著:「ITセキュリティカフェ—見習いコンサルの事件簿」(丸善),「 実践的eディスカバリ—米国民事訴訟に備える」(NTT出版),「デジタル・フォレンジック事典」(日科技連)など.

[推薦理由] 最近脚光を浴びている3Dプリンタに関する問題点を国内でいち早く提示・説明し,社会への注意喚起を行った.今後,本分野・テーマに関する研究開発の活発化が期待できる.
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●生物学的制約の導入による「人間らしい」振る舞いを伴うゲームAIの自律的獲得
[GPWS2013(2013.11.9)] (ゲーム情報学研究会)
fujii

藤井 叙人  君 (学生会員)

2007年 関西学院大学理工学部情報科学科 卒業
2009年 関西学院大学大学院理工学研究科情報科学専攻 博士前期課程 修了
2009年-2012年 株式会社 野村総合研究所
2012年-現在 関西学院大学大学院理工学研究科人間システム工学専攻 博士後期課程 在籍
日本学術振興会特別研究員(DC2).研究テーマ「ビデオゲームエージェントにおける人間らしい行動戦略の自動獲得」.

[推薦理由] 近年,ゲームにおいて人間の熟達者に迫るAIを構築するという研究は,一部の思考ゲームを中心にその目的を達しつつある.十分に強くなったAIに如何に「人間らしさ」を持たせるかという方向の研究に,研究のベクトルの一つは向かっている.本研究では,人間の持つ生物学的特性に着目し,その生物学的な制約をモデル化し,そのようなバイアスを与えた機械学習や経路探索を行うことで「人間らしさ」を実現することを目指した研究である.このモデルを用いて作成したゲームAIについて主観的評価実験も行っており,比較的良好な結果も得られており,本研究の有効性も示している.ここで主張する認知モデルに基づいて,他の様々なゲームへの応用も期待される.
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●lapillus bug:音響浮揚による粒子の空中移動制御とインタラクション
[EC2013(2013.10.4)] (エンタテインメントコンピューティング研究会)
kono

河野 通就  君 (学生会員)

2012年9月  慶應義塾大学環境情報学部 卒業
2014年9月  慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 修士課程修了
2014年10月 東京大学大学院学際情報学府 博士課程入学

[推薦理由] 本研究は,超音波振動子アレイを用いた音響浮揚によって粒子を空中に定位させ,その動きを制御することで小バエが飛び回るような「生物感」を伴う表現を可能にした研究である.粒状の物質を浮遊させ,空中を移動させる手法を提案しただけでなく,浮遊粒子を操作するインタラクション手法の提案も行った.また,浮遊粒子を動かした際の特徴を調べ,その特有の生物感に着目することで,食卓に集う小バエのような生物を飼い慣らすことができるインタラクティブインスタレーション作品,"lapillus bug"を制作している.本研究は,音響浮揚という新規性の高い手法を実現し,それをアート,エンタテインメントにおける表現手法に結実させたものであり,山下記念研究賞受賞にふさわしいと判断する.
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●COMP*PASS:実世界での図形のコピー&ペーストを可能にするコンパスの拡張
[2014-EC-31(2014.3.15)] (エンタテインメントコンピューティング研究会)
nakagaki

中垣  拳  君 (学生会員)

2013年4月 慶應義塾大学 総合政策学部 卒業
2014年9月 慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科修士課程 修了
2014年9月 MIT Media Lab (Master of Media Arts and Science) 入学
インタラクションデザイン,タンジブルインタフェース,エンタテイメントメディアなどの研究に従事.
主な受賞に,国際学生対抗バーチャルリアリティコンテスト(IVRC) 総合優勝,
文化庁メディア芸術祭エンタテイメント部門 審査委員会推薦作品など.
Web: http://ken-nakagaki.com

[推薦理由] 本研究は,コンパスにデジタル制御を加えることで,単純な操作で円だけではない多様な図形を実際の紙の上に描画可能なインタフェースを提案した研究である.特にコンパスの測り取るという機能に着目し,実世界の物体の形状(矩形,直方体,自由曲線)を計測し,それを紙に写し取ることができる手法により,実世界におけるコピー&ペースト機能を実現している.また,展示におけるフィードバックから,コンパスに期待される機能(円の描画)と出力される結果の差異が驚きを生み,エンタテンメント性を生んでいるという考察を行っている.本研究は,実世界の描画行為に情報処理技術を取り入れることで創作支援とエンタテインメント性の付与を実現したものであり,山下記念研究賞受賞にふさわしいと判断する.
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●動力学的因果モデリングにおける神経スパイク交差コレログラム解析について
[2013-BIO-34(2013.6.28)] (バイオ情報学研究会)
oba

大羽 成征  君 (正会員)

2002年 奈良先端大情報学研究科博士後期課程修了.博士(工学).
2003年 同助手.
2008年より現職,京都大学大学院情報学研究科システム科学専攻講師.
2008年10月から2014年3月までJSTさきがけ研究者を兼任した.
統計的バイオインフォマティクスとくに超多重検定とその応用に興味を持っている.
電子情報通信学会,情報処理学会各会員.

[推薦理由] 当該研究は,多数神経細胞の電気的活動データの標準的な解析法において,理論と現実の齟齬を起こしていた問題を発見し,その解決方法を提案したものである.多数神経細胞が電気的スパイク信号をやりとりして情報処理を行う仕組みを調べるさい,スパイクタイミング計測データに基づく因果関係ネットワークのモデリングが重要なゴールと考えられているが,現実のデータでは,スパイク時刻の推定誤差や,非線形性の強いダイナミクスによって,因果の方向を逆転して推定してしまう危険があった.当該研究は,この危険性を単純な例によって明快に示すとともに,パターン解析による解決可能性を示した.近年,脳神経科学を対象としたビッグデータの集積がすすんでおり,これを対象とした情報処理手法の必要性がいよいよ増している.その中で,理想化された情報理論と現実の生物学データの両面への手当を行うところに,学祭融合領域たるバイオ情報学研究の目指す姿があり,これを当該研究が優れて示唆している点に意義が大きい.山下記念研究賞の候補として推薦する.
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●SDNによるネットワーク構築実習における分散型実習環境管理システムの開発
[2013-CLE-11(2013.12.14)] (教育学習支援情報システム研究会)
ushigome

牛込 翔平  君 (正会員)

2012年 信州大学工学部 情報工学科卒業
2014年 信州大学大学院 理工学系研究科 修士課程修了
同年,ネットワンシステムズ株式会社入社

[推薦理由] 著者らは本発表において学習者自身が所有する端末を実習用仮想マシンの実行環境として利用する際の学習履歴取得について考察し,socket.ioを用いて学習状況管理システムと実習用仮想マシン間の通信を学習者PCブラウザで仲介するという方式を提案している.この方式はOS・ブラウザへの依存度が低いため汎用的であり,仮想マシン実行環境としてクラウド環境を混在させることも可能である.また,学習状況管理システムから各学習者用の実習用仮想マシンに対してテストケースを実行させる仕組みを構築することで,学習者の仮想マシン間で干渉を起こすことなく仮想ネットワーク演習の学習状況把握を可能としており,仮想演習のための専用インフラを用いることなく大規模演習を実現している.本論文の内容は従来型の固定端末,移動体端末,クラウドが混在した計算機環境における学習支援システムのあり方を示すものであり,推薦に値する。
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