2011年度(平成23年度)山下記念研究賞詳細

  山下記念研究賞は,これまでは研究賞として本学会の研究会および研究会主催シンポジウムにおける研究発表のうちから特に優秀な論文を選び,その発表者に 贈られていたものですが,故山下英男先生のご遺族から学会にご寄贈いただいた資金を活用するため,平成6年度から研究賞を充実させ,山下記念研究賞としたものです.受賞者は該当論文の登壇発表者である本学会の会員で,年齢制限はありません.本賞の選考は,表彰規程,山下記念研究賞受賞候補者選定手続および 山下記念研究賞推薦内規に基づき,各領域委員会が選定委員会となって行います.本年度は36研究会の主査から推薦された計52編の優れた論文に対し,慎重な審議を行い,決定されたうえで,理事会(平成23年8月)および調査研究運営委員会に報告されたものです.本年度の受賞者は下記51君で,3月7日に名古屋工業大学で開催される第74回全国大会の席上で表彰状,賞牌,賞金が授与されます.

<コンピュータサイエンス領域>
DBS SE ARC OS SLDM HPC PRO AL MPS EMB

<情報環境領域>
DPS HCI CG IS IFAT AVM GN DD MBL CSEC ITS EVA UBI IOT

<フロンティア領域>
NL ICS CVIM CE CH MUS SLP EIP GI EC BIO CLE

コンピュータサイエンス領域

●Trust Relations and Product Ratings on the Web
[Webとデータベースに関するフォーラム(WebDB Forum 2010)(H22.11.12)] (データベースシステム研究会)
 auyeung

歐陽 靖民  君 (正会員)
2004 香港中文大学情報工学科卒業.
2006 香港中文大学コンピュータ理工学科 修士課程修了.
2009 英国サウサンプトン大学電子情報工学科 博士課程修了.
2009 NTTコミュニケーション科学基礎研究所リサーチアソシエイト.
2011 香港応用科技研究院シニアエンジニア. 現在に至る.

[推薦理由] 本論文では,ショッピングサイトにおいて,ユーザのカスタマー・レビューのレーティングを予測するためには,他ユーザの評価へのバイナリ形式の信頼性情報が有効ではないことを示している.また,本論文では,過去のレーティングから同じ嗜好のユーザを導くことで, 信頼性情報の重みを推測し,高い精度でレーティングを予測する手法を提案している. 提案手法は,実際のユーザの特徴を的確にモデル化している新規性の高い手法であり, ショッピングサイトや,SNS解析など,様々な応用が考えられる実用性の高い手法である ことから,本論文発表者を山下記念研究賞受賞候補者として推薦する.
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●MIGSOM:神経細胞移動モデルに基づく自己組織化マップ~大規模リンクドデータへの応用~
[Webとデータベースに関するフォーラム(WebDB Forum 2010)(H22.11.12)] (データベースシステム研究会)
nakayama

中山浩太郎  君 (正会員)

2000年10月    (株)関西総合情報研究所 代表取締役社長 就任
2002年 4月    同志社女子大学 非常勤講師 就任
2007年 3月    大阪大学大学院情報科学研究科 博士号取得
2007年 4月    大阪大学大学院情報科学研究科 特任研究員 就任
2008年 4月    東京大学 知の構造化センター特任助教 就任
[推薦理由] 受賞対象論文は,神経細胞移動モデルを自己組織化マップ(SOM)に適用する手法を提案している.従来のSOMアルゴリズムは,低次元・密なデータに対し,高いスケーラビリティを示していたが,高次元・疎なデータに対してスケーラビリティを確保することが困難であった.これに対し,受賞対象論文は,生体模倣技術に関する近年の研究の成果を取り入れることで,高次元・疎なデータに対するスケーラビリティを確保したアルゴリズムを提案した点に,際立った新規性・有用性があると解釈できる.データベース分野とは異なる研究成果を採用することで,新しいSOMアルゴリズムを提案したことが評価できるため,本論文発表者を山下記念研究賞受賞候補者として推薦する.
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●Feature Locationを用いたソースコード理解の対話的支援
[ソフトウェアエンジニアリングシンポジウム2010(H22.8.31)] (ソフトウェア工学研究会)
hayashi

林  晋平  君 (正会員)

2004年 北海道大学工学部情報工学科卒業.
2006年 東京工業大学大学院情報理工学研究科計算工学専攻修士課程修了.
2008年 同専攻博士後期課程修了,博士(工学).
2009年より同専攻助教.
2010年 ソフトウェアエンジニアリングシンポジウム2010最優秀論文賞受賞.
IEEE-CS,ACM各会員.

[推薦理由] 本研究は,Feature Location (FL)を用いて対話的にソフトウェア機能の理解を支援する手法を提案している.従来のFL手法は,機能に対応するコード片特定の入力の構築に課題があった.本研究では,FLの入力を利用者とシステムとの対話によって改善する手法を提案するとともに,事例により非対話手法との比較を行い有用性を示している.ソフトウェア保守における理解という重要な課題に対する良質の研究であり,本研究賞にふさわしいものとして推薦する.
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●Jacksonの要求・仕様参照モデルに基づく要求追跡の形式手法
[ソフトウェアエンジニアリングシンポジウム2010(H22.8.31)] (ソフトウェア工学研究会)
 

北村 崇師  君 (正会員)

2001年 静岡大学情報学部情報科学科卒業.
2003年 静岡大学大学院情報学研究科 博士前期課程修了.
2008年 Institute of Software, Chinese Academy of Sciences 博士後期課程修了.博士(工学).
2008年より,(独)産業技術総合研究所に所属.

[推薦理由] 本研究は,要求追跡に形式手法を適用することで,計算機支援によって細粒度での要求追跡を支援しようとするものである.具体的にはJacksonの要求・仕様の参照モデルを用いるとともに,形式的議論や計算機支援実現のために形式論理を用いている.エラーの原因追跡などにおいて重要となる要求追跡の問題に対する意欲的な研究であり,本研究賞にふさわしいものとして推薦する.
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●プロセスばらつきを考慮したNoCアーキテクチャの検討
[2010-ARC-191(H22.10.18)] (計算機アーキテクチャ研究会)
nakata

中田 洋平  君 (学生会員)

2008年3月 神戸大学工学部情報知能工学科卒業
2010年3月 神戸大学大学院工学研究科情報知能学専攻修士課程修了
2010年4月 神戸大学大学院システム情報学研究科情報科学専攻博士課程進学
現在に至る
情報処理学会,電子情報通信学会,IEEE各学生会員

[推薦理由] 半導体プロセステクノロジの微細化が進むにつれて,近年製造工程において発生するプロセスばらつきの問題が顕在化している.マルチコアプロセッサにおいては,個々のプロセッサ性能が異なるという問題を引き起こす.本研究では,最近注目されているネットワークオンチップ(NoC)においてプロセスばらつきの影響を評価し,個々のコアの動作周波数がばらつく環境下におけるタスク割り当てについての知見を得ている.このように,本研究は半導体実装技術における課題をアーキテクチャ技術で解決するという,両者の融合に基づく有望な取り組みであり,新規性と有用性のいずれにおいても高く評価できる.山下記念研究賞に相応しい論文である.
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●SIMDアレイプロセッサにおけるマルチスレッド実装方式の検討
[2010-ARC-191(H22.10.18)] (計算機アーキテクチャ研究会)
nomoto

野本 祥平  君 (正会員)

2003年  筑波大学第三学群情報学類 卒業
2005年  筑波大学大学院システム情報工学研究科 修士課程修了
同年,日本電気株式会社,入社2010年よりルネサスエレクトロニクス株式会社に勤務し,
画像処理および画像認識向け高並列プロセッサの研究開発に従事.

[推薦理由] 今後も需要が増えると予想される画像認識アプリケーション専用のSIMDアレイプロセッサに関する研究である.並列化が困難な逐次処理部分がSIMDアレイの実行効率を低下させる問題があった.本論文では,SIMDアレイプロセッサIMAPCAR2にマルチスレッド実行を導入することを検討し評価している.SIMDアレイによる並列処理と制御プロセッサによる逐次処理とをマルチスレッド実行する.64PE構成のSIMDアレイプロセッサで必要な回路規模の見積もりを実施しており,わずか1.6%の追加コストでマルチスレッド実行の機構を付加できることを明らかにしている.実用的なアーキテクチャ技術の提案とその回路評価を実施しており,山下記念研究賞に相応しい論文である
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●オーバレイネットワークにおけるグループ間通信抑制手法
[2010-OS-115(H22.8.3)] (システムソフトウェアとオペレーティング・システム研究会)
nagao

長尾  洋也 君 (学生会員)

2010年3月 東京工業大学 理学部 情報科学科卒業.
2010年4月 東京工業大学 大学院情報理工学研究科 数理・計算科学専攻 修士課程入学.
2010年4月 第114回OS研究会 最優秀学生発表賞 受賞.
2010年6月 Interop Tokyo 2010 クラウドコンピューティングコンペティション
                グランプリIBM賞 受賞.
2010年7月 DICOMO2010 優秀プレゼンテーション賞・優秀論文賞 受賞.
2010年9月 第115回OS研究会 最優秀学生発表賞 受賞.
2010年11月 ComSys2010 最優秀ポスター賞 受賞.
2011年5月 SACSIS2011 優秀若手研究賞 受賞.

[推薦理由] 分散ハッシュ表を構成するオーバーレイネットワークでは,物理ネットワークの構成を考慮していないため,無駄の多いルーティングを行うことが多い.本論文で提案されている手法は,オーバーレイの経路表にノードグループ情報を付加するという簡潔なものでありながら,ルーティングを柔軟に操作することができ,様々な応用が可能な強力な方式となっている.将来,さまざまなシステムに応用される可能性があり,山下記念賞にふさわしい論文である.
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●仮想マルチプロセッサモデルに基づく高速SoCプロトタイピング手法
[2010-SLDM-147(H22.11.29)] (システムLSI設計技術研究会)
yoshida

吉田 浩章  君 (正会員)

2000年 東京大学工学部電子工学科卒業.
2007年 同大学大学院工学系研究科電子工学専攻博士課程修了.
2002年~2006年 米国Zenasis Technologies社 Senior Software Engineer.
2007年 東京大学大規模集積システム設計教育研究センター 産学官連携研究員.
2008年 同センター 特任助教.

[推薦理由]]複数のプロセッサに加え,多数の特定用途アクセラレータが搭載されるヘテロジニアス構成のSoCを対象とし,性能・電力効率において最適な実装を行うための設計環境を提案している.具体的には,並列性および通信を記述できるように拡張したC言語を使用して動作を記述するとともに,典型的な命令セットを持つ仮想プロセッサをポイントツーポイント(P2P)ネットワークで完全接続した初期マルチプロセッサモデルから出発し,高速な性能・電力効率見積もりを活用しながら,段階的に仮想プロセッサの詳細化を行う設計環境を提案している.実用性が高く,今後の発展も大いに期待できることから,本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●Simultaneous Allocation and Binding Considering Multiplexers in High-Level Synthesis
[2011-SLDM-148(H23.1.17)] (システムLSI設計技術研究会)
azumi

安積(原)祐子  君 (正会員)

2006年3月 名古屋大学工学部電気電子情報工学科 卒業
2008年3月 名古屋大学大学院情報科学研究科 博士課程前期課程修了
2010年3月 名古屋大学大学院情報科学研究科 博士課程後期課程修了 博士(情報科学)
2008年4月~2010年3月 日本学術振興会特別研究員(DC1)
2010年7月~2010年12月 米国カリフォルニア大学アーバイン校 客員研究員
2010年4月~2011年3月 日本学術振興会特別研究員(PD)
2010年4月~2011年3月 立命館大学理工学部 客員研究員
2011年4月~ 日本学術振興会特別研究員(PD)
2011年9月~ 米国カリフォルニア大学アーバイン校 客員研究員
現在に至る

[推薦理由] プログラムからハードウェアを自動生成する高位合成技術が活用されつつあるが,マルチプレクサによるクロック制約違反や回路面積の増加が課題となっている.この課題に対し,本論文は,マルチプレクサの影響を考慮しながら,クロック制約の下で,リソース割り当てとバインディングを同時に行い,回路面積を最小化する手法を提案している.整数線形計画法により最適解を求める定式化ととともに,発見的手法も提案している.従来技術ではクロック制約違反が起こる例題に対して,提案技術は,回路面積を同程度に抑えつつ,クロック制約を満たせることを実証した.新規性,有効性いずれも高く評価できる.以上より,本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●パケットペーシングを用いた最適全対全通信アルゴリズムのシミュレーション評価
[2010-HPC-126(H22.8.3)] (ハイパフォーマンスコンピューティング研究会)
 shibamura

柴村 英智  君 (正会員)

1990年 詫間電波工業高等専門学校情報工学科卒業.
1992年 九州工業大学情報工学部知能情報工学科卒業.
1994年 九州工業大学大学院情報工学研究科修士課程修了.
1994年 九州工業大学マイクロ化総合技術センター助手.
1998年 熊本大学工学部数理情報システム工学科助手.
2006年 (財)九州システム情報技術研究所(現九州先端科学技術研究所)
次世代スーパーコンピュータ開発支援室研究員.現在に至る.
博士(工学).HPC,リコンフィギャラブルシステム,計算機アーキテクチャ等の研究に従事.
IEEE,電子情報通信学会各会員.

[推薦理由] 本論文では,並列計算機の2次元トーラス網上で実行するネットワーク負荷の高い全対全通信に関して,効率的な転送とされているA2AT方式の性能分析と性能改善方法を提案している.A2AT方式と他の通信方式の性能比較に関してシミュレーションを用いて定量的に行うと共に,パケットペーシングを用いることによる性能向上を示している.近年,計算ノード数の増加によりトーラス網の並列計算機が増えており,全対全通信を効率的に行うことは重要となっている.本研究は通信に関して基礎的な解析をしており応用範囲が広いため,今後の研究の広がりが期待できることから,本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●ヘテロ型スーパーコンピュータTSUBAME 2.0のLinpackによる性能評価
[2010-HPC-128(H22.12.16)] (ハイパフォーマンスコンピューティング研究会)
endo

遠藤 敏夫  君 (正会員)

2001年東京大学大学院理学系研究科情報科学専攻博士課程修了.
博士(理学).東京大学情報理工学系研究科特任助手,
東京工業大学情報理工学研究科特任准教授などを経て,
現在,東京工業大学学術国際情報センター特任准教授.
アクセラレータを含むハイブリッド型スーパーコンピュータを
中心とする高性能計算の研究に従事.
情報処理学会,日本ソフトウェア科学会,IEEE-CS,ACM各会員.

[推薦理由] 本論文は,ヘテロジニアス型のスーパーコンピュータTSUBAME2.0における高性能Linpackベンチマーク実装について報告している.GPUを用いた大規模システムの特性に合わせてLinpackベンチマークの最適化を行い,国内のスパコンとしては初めて1ペタフロップスを超える速度性能と高い電力性能比を同時達成した.高性能計算のインフラにおいて重要な役割を果たしていくことが期待されるTSUBAME2.0の基本的な性能指標を示すものであり,実行効率の解析結果等,有用性が非常に高い.本論文は今後のスーパーコンピューティング技術の発展に寄与するものであり,山下記念研究賞に相応しい論文として推薦する.
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●領域限定言語に基づく最適経路問合せ
[(H22.10.29) ] (プログラミング研究会)
morihata

森畑 明昌  君 (正会員)

2004年東京大学工学部計数工学科卒.
2006年同大学大学院情報理工学系研究科修士課程修了
2009年同博士後期課程修了,同年日本学術振興会特別研究員を経て,
2010年東北大学電気通信研究所助教となり現在に至る.
博士(情報理工学).プログラム変換,アルゴリズム導出,並列プログラミングなどに興味を持つ.
情報処理学会,日本ソフトウェア科学会各会員.

[推薦理由] 有向グラフの最適経路問題は重要な問題のクラスで,いくつかの個別問題に対しては効率の良いアルゴリズムが知られていたが,専門的知識をもたないユーザが理解して有効に利用するのは容易ではなかった.本研究の提案手法では,ユーザが自らが興味をもつ個別の最適経路問題を領域限定言語を用いて記述し,その最適経路問題の記述と探索対象の有向グラフから探索プログラムを自動生成する.この領域限定言語は「最適経路問題が効率的に解けること」の本質を明示し理論的に興味深い.さらに,与えられた仕様とグラフに対して最適経路を求めるシステムが実装されており,先行研究よりも効率をかなり改善していることを多くの例題に対して実証している.このような理由により,受賞にふさわしいと判断するものである.

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●Undecidability of a Simple Origami Problem
[2010-AL-131(H22.9.22)] (アルゴリズム研究会)
uehara

上原 隆平 君 (正会員)

1991年 電気通信大学大学院 電気通信学研究科 博士前期課程 情報工学専攻修了.
1991年 株式会社キヤノン 情報システム研究所 研究員.
1993年 東京女子大学 情報処理センター 助手.
1998年 電気通信大学にて博士(理学)取得.
1998年 駒澤大学 文学部 自然科学教室 講師.
2001年 駒澤大学 文学部 自然科学教室 助教授.
2004年 北陸先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 助教授.
2011年 北陸先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 教授.現在に至る.
グラフ理論・アルゴリズム・データ構造・計算量の理論の研究に従事.
目下,理論計算機科学的な観点からの折り紙・パズル・ゲームの研究にも取り組んでいる.
情報処理学会,電子情報通信学会,EATCS,ACM,IEEE各会員.

[推薦理由] 近年,コンピュータサイエンスとしての折紙が注目を集めつつある.本研究では,計算基盤としての「折紙」と,その上の操作である折り」を数理モデル化し,このモデルの基本的な性質を研究した.そして,折紙の上の自然な判定問題が本質的に決定不能であることを示した.本研究では,「基本操作の組合せ」であるアルゴリズムを考える上で,その基礎となる計算モデルの妥当性の検討の重要性を改めて指摘している.今後,単に「折紙のアルゴリズム」のみならず,他の抽象的な計算モデル上でのアルゴリズムを研究するときにも同様の問題意識を広く問いかける結果である.以上の理由により,本発表を山下記念研究賞に推薦する次第である.
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●細胞分化クロストークのモデル化と細胞分化クロストーク遺伝子の推定手法
[2011-MPS-82(H23.3.7)] (数理モデル化と問題解決研究会)
yoshizawa

吉澤 陽志 君 (正会員)

2009年3月 大阪大学 基礎工学部 情報科学科 卒業
2011年3月 大阪大学大学院 情報科学研究科 バイオ情報工学専攻 博士前期課程 修了
同年 富士通株式会社 入社

[推薦理由] 本論文は,細胞分化クロストークの新しい数理モデルを提案し,その推定を可能にした斬新な研究を取り扱っている.細胞分化クロストークは,複数の細胞種にまたがる遺伝子制御ネットワークであり,その生物的実験による研究は行われているが,情報科学的アプローチにより推定を行う手法が存在しない.その理由は,推定には,複数の細胞種からの遺伝子発現データを有機的に結合する必要性があるため,従来の数理モデルへの適用が困難であったためである.そのため複数の細胞種の遺伝子発現量のデータを統合的に扱う新しいモデルが必要とされていた.本研究では細胞分化クロストークのグラフを用いた数理モデル化を提案し,その推定を可能とした極めて優れた研究である.よって,本論文を,山下記念研究賞に推薦する.
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●静的コード解析による検出漏れのない割込み干渉検出手法の開発
[組込みシステムシンポジウム2010(H22.10.29)] (組込みシステム研究会)
inamori

稲森  豊  君 (正会員)

1992年 京都大学工学部情報工学科卒業.
1994年 京都大学大学院工学研究科情報工学専攻修了.
同年,株式会社豊田中央研究所入社.
現在,車載ソフトウェア高信頼化のための設計・検証手法に関する研究に従事.

[推薦理由] 車載制御ソフトウェアにおいては,高信頼性,リアルタイム応答性能保証のために,割込み干渉(割込み処理に起因するデータ競合)の未然防止は必須である.本研究では,割込み干渉の発生箇所を誤検出数を抑えながらもれなく検出する手法を示している.具体的には抽象構文を用いて各文の割込み禁止・許可を特定してアクセス制御の有無を判定する方法,SPINを用いて割込み干渉の発生する実行パスの存在を判定する方法などを用いている.その結果,数万行の製品向けCプログラムに対して,検出漏れなし,自動判定率94.3%を達成した.組込み製品開発現場の問題を実践的に解決し,その効果を定量的に評価しており,山下記念研究賞にふさわしいと考えられる.
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情報環境領域

●Range-Key Skip Graphによる範囲検索可能な大規模分散キーバリューストアの実現
[2010-DPS-144(H22.9.18)] (マルチメディア通信と分散処理研究会)
ishi

石  芳正  君 (正会員)

2004年 京都工芸大学工芸学部電子情報工学科卒業.
2006年 大阪大学大学院情報科学研究科博士前期課程修了.
同  年 同学サイバーメディアセンター 特任研究員.
2008年 同学大学院情報科学研究科 特任研究員,現在に至る.
ユビキタス応用システム等の研究開発に従事.

[推薦理由] 現在の大規模ネットワーク環境において,Twitter等の情報の範囲検索を必要とするアプリケーションが利用されている.本論文では,オーバーレイネットワークRange-Key Skip Graphを用いて,このような状況に対応するための手法を提案している.Star Bed,有用性の高く,当該分野への貢献が大きいと認められるので本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●Network-based Local Mobility Management に基づく移動ネットワークプロトコルの実装と評価
[2011-DPS-146(H23.3.11)] (マルチメディア通信と分散処理研究会)
arita

有田 哲也  君 (正会員)

2009年3月 慶應義塾大学理工学部情報工学科卒業
2011年3月 慶應義塾大学大学院理工学研究科修士課程修了 同年、 NTTコミュニケーションズ株式会社に入社
現在はVerio Inc.勤務
2010年9月 第55回MBL研究会優秀発表賞 受賞

[推薦理由] Network-based Local Mobility Managementに基づく移動ネットワークプロトコルとして,従来技術の問題点であるトンネリングによるヘッダオーバヘッドを抑制するプロトコルを提案している.また,提案プロトコルを実装し,既存プロトコルとの性能評価により,その有効性を示している.プロトコル設計,動作検証ともに十分に行われており,標準化に向けた活動を行っているなど,その有用性は非常に高い.以上により当該分野への貢献が大きいと認められるので本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●AntiSpoiler:ネタバレ防止ブラウザ
[2010-HCI-139(H22.7.31)] (ヒューマンコンピュータインタラション研究会)
nakamura

中村 聡史  君 (正会員)

京都大学大学院情報学研究科特定准教授.
2004年大阪大学大学院工学研究科博士後期課程修了.
情報通信研究機構専攻研究員を経て,現職.
ウェブとインタラクション,ライフログ,ユーザインタフェース,エンターテイメントコンピューティングなどの研究に従事.

[推薦理由] インターネットとウェブ技術の発達により,世界中のあらゆる情報を即座に入手できる環境が整ってきた.その利便性の裏返しとして,いわゆる「ネタバレ」情報に意図せずして遭遇する事故が増加している.たとえば楽しみにしていたスポーツの試合のビデオを見る前に,あるウェブページでその結果を知ってしまい,大きく面白みを損なわれるような事態である.本研究では,あるコンテンツがネタバレ情報を含むかどうかを判定 し,曖昧記述変換などの新規な手法によりネタバレ情報を自動的に隠蔽するシステムAntiSpoilerを提案し,その有効性を検証している.情報の豊かさが産み出す負の側面に注目し,これを巧みに回避する技術を考案・実現している点で,本研究は新規性・有用性とも高く,山下記念研究賞受賞候補にふさわしいと考えるので,推薦する.
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●患者固有データに基づく手術手技訓練用シミュレータの開発
[グラフィクスとCAD合同シンポジウム2010(H22.6.27)] (グラフィクスとCAD研究会)
ogata

緒方 正人 君 (正会員)

1970年 国立大分高専電気工学科卒業、同年三菱プレシジョン(株)入社.主にフライトシミュレータとその構成技術に関する研究開発に従事.1998-2000三菱電機米国研究所(MERL)に出向し手術シミュレータの研究開発を行う.現在,引き続き,手術シミュレータの研究開発に従事.2001年 注目発明賞受賞.主席技師長,横浜市立大大学院医学研究科客員教授.IEEE C.S., ACM各会員.横浜国大 工博,技術士(情報工学)
[推薦理由] 本研究発表では,医工連携研究により新たに開発した手術シミュレータの構成技術を,(1) シミュレーションモデル生成装置,(2) 力学計算,(3) ヒューマンインタフェースとしての模擬術具,(4)GPU クラスタの主要な4つの観点から紹介している.実際,開発した技術基盤は,従来,実時間模擬が困難であった,臓器や,血管,膜組織などの対象部位の複雑な接触に伴う変形や剥離等に伴う微妙な術具の操作感を,映像と力感の統合的刺激により高精度に模擬でき,複雑な手術手順のシミュレーションを可能としている.以上の理由により,本研究会は上記の研究発表を山下記念研究賞に推薦する.
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●不偏な適合的自由行程サンプリングのための最適な空間分割に関する考察
[2010-CG-141(H22.11.8)] (グラフィクスとCAD研究会)
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楽  詠灝  君 (正会員)

2005年 東京大学理学部情報科学科卒業.
2007年 東京大学大学院情報理工学系研究科修士課程修了.
2011年 東京大学大学院情報理工学系研究科博士後期課程修了.博士(情報理工学).
同年 東京大学大学院新領域創成科学研究科 助教. 現在に至る.
コンピュータグラフィックス,相互反射・多重散乱を考慮した写実的レンダリングの研究に従事.

[推薦理由] 本研究発表では,統計的な不偏性に重点をおき,モンテカルロ法による散乱計算のサンプリング効率を高める手法を探求している.サンプリング効率が最適となる空間分割手法を論理的に導き,先行研究での空間分割法とのサンプリング効率の比較を行い効率の改善を実証している.最適分割のリファレンスを提供しているため,既存の手法の効率やロバスト性を評価検討する際の指針として用いることができる点は高く評価できる.また,空間内に不均質に分布する物理量に対する解析という意味においてCG以外の分野での発展の可能性も感じさせられる研究である.以上の理由により,本研究会は上記の研究発表を山下記念研究賞に推薦する.
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●意欲喚起と自学自習支援による情報システムクリエータの育成
[2010-IS-114(H22.12.1)] (情報システムと社会環境)
kanedera

金寺  登  君 (正会員)

1983年 石川高専卒.1985年 電通大・通信卒.1987年 東大大学院修士課程了.
同年石川高専助手.1996年 Oregon Graduate Institute of Science and Technology(USA)
客員研究員.現在 石川高専教授.博士(工学).音声認識の研究に従事.
情報処理,IEEE,電子情報通信,日本音響,人工知能学会各会員.

[推薦理由] 本研究では,国立高専電子情報工学科を実践フィールドとして,自学自習支援と三重の達成度評価による専門基礎学力の定着,システム設計・構築演習へのプロジェクト型学習導入による学生の意欲喚起等をインストラクショナルデザイン手法を用いてシステマティックに展開するアプローチによって,学生および社会のニーズに対応した教育の質改善に対する取り組みの有効性を確認した.情報システム教育の実践的研究として,当該校のみならず他の教育機関や学会員における教育の質向上に資する有用な知見を得ていることから,本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●帰属文書数に基づくWebページ情報発信者の専門性分析
[2010-IFAT-99(H22.8.4)] (情報基礎とアクセス技術)
kato

加藤 義清 君 (正会員)

1998年 東京大学工学部航空宇宙工学科卒業.1998年~1999年 カリフォルニア大学
サンディエゴ校計算機科学・工学科大学院留学.2000年 東京大学大学院工学系研
究科修士課程修了.2003年 同大学院工学系研究科博士課程修了.博士(工学).
同年 宇宙開発事業団宇宙開発特別研究員(後、宇宙航空研究開発機構に改組).
2005年 情報通信研究機構研究員.2011年 グーグル株式会社に入社.
現在,検索エンジンの研究開発に従事.AAAI,人工知能学会,言語処理学会,各会員.

[推薦理由] 本研究は,Webページ情報発信者の専門性を定量化する手法を提案し,既存の大規模Webページ収集・検索基盤の上で評価実験を行っている.情報発信者の専門性の自動判定は,玉石混淆の情報が氾濫する今日,重要な研究課題である.提案手法は検索ヒット数,もしくは検索結果のうち発信者に帰属するページ数に基づく比較的単純なものであるが,発信者の順位付けタスクを綿密に評価している点,一般のWebページに適用できる点,および研究課題の萌芽性が評価できる.
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●ブロック適応時空間予測に基づいた動画像符号化の検討
[2011-AVM-72(H23.3.11)] (オーディオビジュアル複合情報処理研究会)
unno

海野 恭平 君 (正会員)

2009年 東京理科大学 理工学部 電気電子情報工学科 卒業
2011年 東京理科大学大学院 理工学研究科 電気工学専攻 修士課程修了
同年 株式会社日立製作所 入社

[推薦理由] 本研究は,時間方向と空間方向の相関を同時に利用可能な,ブロック単位の適応時空間予測手法を提案した.また,フレーム毎に予測誤差電力を最小化する複数の予測器を,準ニュートン法を用いて設計する手順も示した.本稿では,DCTと算術符号を用いた予測誤差信号の符号化処理を実装し,予測係数などの付加情報も加味した最終的な符号化性能の観点から,レート・歪特性の評価を行うものであり,新たな符号化性能の最適化手法の取り組みとして評価できる.
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●2次トリアージを用いた傷病者情報管理システムの提案
[2011-GN-78(H23.1.22)] (グループウェアとネットワークサービス研究会)
takahashi

高橋 祐樹 君 (学生会員)

2011年3月 慶應義塾大学 理工学部情報工学科 卒業
2011年4月 慶應塾大学大学院 理工学研究科開放環境科学専攻 修士課程在学中

[推薦理由] 本研究発表は,多数の傷病者が同時に発生する災害時における医療従事者の救急救命活動を支援するシステムの提案である.災害時には医療資源に限りがあるため,特に緊急に治療を要さない軽傷病者の救命を一時的に遅らせ,緊急度が高く助かる見込みのある傷病者を優先して救命するトリアージという手法を導入している.本研究では1次トリアージ後の傷病者を対象とした2次トリアージに着目し,1次トリアージで収集した生理学的所見を監視した上で,2 次トリアージ時に解剖学的所見,受傷機転,災害弱者を新たに加味させ,その情報を伝達する.
これにより,迅速に精度が高い優先度を決定でき,また医療従事者間の意思疎通を支援することで救命救急活動の効率が向上すると期待される.
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●TrueTypeフォントのUVS拡張を用いたAdobe CID字形集合の代替処理の高速化
[2010-DD-76(H22.7.23)] (デジタルドキュメント研究会)
suzuki

鈴木 俊哉 君 (正会員)

1998年3月 東北大学理学部物理学研究科物理学第二専攻 博士後期課程修了 博士(理学).
1998年4月~2000年6月 東北大学理学部物理学研究科 技官.
2000年7月~2007年3月 広島大学総合情報処理センタ 助手.
2007年4月 広島大学情報メディア教育研究センタ 助教.
フォント,印字処理および電子文書の情報抽出に関する研究と,国際標準化への協力を行なう.
情報処理学会,ACM会員,ISO/IEC JTC1/SC34/WG2委員.
2009年 情報規格調査会 国際規格開発賞.

[推薦理由] PostscriptとPDFの文字列符号処理に潜在する未解決の字形処理問題に対し,TrueTypeのUVSサポートを利用した,適用可能性と処理効率の面で現実的な手法を提案されている.今後,開発元のAdobe社や業界へどのように働きかけるかという課題はあるが,漢字や仮名の複雑な字形表記を扱う上での問題と解決方法の研究は,国際標準を尊重しつつ主として日本語を利用する我々にとって重要な取り組みである.緻密な分析と評価に基づき,普及面にも配慮した提案である点からも,山下記念研究賞に相応しい論文として推薦する.
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●モバイルノードを用いた建造物の位置および形状推定
[2010-MBL-54(H22.5.20)] (モバイルコンピューティングとユビキタス通信研究会)
fujii

藤井 彩恵 君 (正会員)

2006年 大阪大学基礎工学部情報科学科飛び級中退.
2008年 大阪大学大学院情報科学研究科情報ネットワーク学博士前期課程修了.
2008年より日本学術振興会 特別研究員(DC1).
2011年 大阪大学大学院情報科学研究科情報ネットワーク学博士後期課程修了.博士(情報科学).
同年 三菱電機株式会社入社.現在は同社先端技術総合研究所勤務.
在学中はアドホックネットワークに関する研究に従事.
2009年 第24回電気通信普及財団賞(テレコムシステム技術学生賞)受賞.
2010年 IEEE関西支部 学生研究奨励賞受賞.
2010年 情報処理学会 創立50周年記念論文賞受賞.

[推薦理由] 本論文は,モバイルユーザが所持する携帯端末の無線アドホック通信機能とGPS測位機能のみを用いて,対象領域の障害物の位置や形状を自動で推定する方法を提案した.提案手法は,ノード間に障害物が存在する場合,無線通信距離内であっても通信できないときがあることに着目し,ノードが対象領域内を移動中に蓄積した他ノードとの通信履歴と,GPSで測定した位置情報履歴を用いて障害物の存在領域を推定する.実測に基づく実験により,大学キャンパスの建物の配置図をほぼ正確に推定できることを実証した.本論文は新規性が高く,災害支援に応用できるなど,本分野における寄与が大きい.よって,ここに山下賞に推薦する.
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●Probabilistic Methods for Spatio-Temporal Coverage in People-Centric Sensing
[2010-MBL-55(H22.9.2)] (モバイルコンピューティングとユビキタス通信研究会)
ahmed

Ahmed Asaad 君 (学生会員)

He received his B.S. degree in Computer Science from
Faculty of Science, Alexandria University, Egypt in 1999.
He received M.S. in Computer Science from Faculty of Science, Cairo University, Egypt in 2008. He was an assistance lecturer at Mathematics Department, Faculty of Science, Al-Azhar University, Egypt from 2001 to 2008. Since 2008, he is a Ph.D student candidate at Graduate School of Information Science, Nara Institute of Science and Technology, Japan. His current research interests include distributed systems, mobile ad hoc networks and ubiquitous computing.

[推薦理由] 本論文は,人間を中心としたセンシング(PCS)に着目し,任意に動くモバイルセンサノードを用いてローコストで注目エリア(AoI)のセンシングをローコストに行う必要があることを指摘している.またこの問題を定式化し,指定した時間内にできるだけ少ないノード数でAoIのセンシングを達成する2つのアルゴリズムを提案している.それらには新規性が認められ,評価もよくなされていることから,学術的価値が高いと考えられる.よって,ここに山下賞に推薦する.
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●マルウェア動的解析オンラインサービスの脆弱性(その2)
[コンピュータセキュリティシンポジウム2010(H22.10.20)] (コンピュータセキュリティ研究会)
kasama

笠間 貴弘 君 (学生会員)

2011年3月横浜国立大学大学院環境情報学府情報メディア環境学専攻博士課程前期修了,修士(工学).同年4月横浜国立大学大学院環境情報学府情報メディア環境学専攻博士課程後期に進学.同年4月より独立行政法人情報通信研究機構で研究員として勤務.マルウェア解析やネットワーク攻撃観測等のネットワークセキュリティの研究に従事.

[推薦理由] ユーザから不審なファイル検体を受け付けて解析環境内でその挙動を分析し,分析結果をユーザに提供するサービスが,不正ソフトウェア(マルウェア)対策の一つとして注目されている.本論文は,斬新な着想で当該サービスの脆弱性を指摘して体系的にまとめるとともに,実験による検証と考察を丁寧に行って完成度の高い成果を示している.特定のマルウェアに限らずマルウェア全般から電子社会を守る基盤そのものに影響する多大なインパクトを有し,技術的貢献度および資料価値のどちらも高いので,推薦したい.
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●開封時刻の秘匿性を持つ事前開封機能付きタイムリリース暗号の一般的な構成法
[コンピュータセキュリティシンポジウム2010(H22.10.21)] (コンピュータセキュリティ研究会)
matsuda

松田 隆宏 君 (正会員)

2006年 東京大学工学部電子情報工学科卒業.
2008年 同大学大学院情報理工学系研究科 電子情報学専攻修士課程修了.
2009年より日本学術振興会特別研究員(DC2)を経て,
2011年 同大学大学院情報理工学系研究科 電子情報学専攻博士課程修了,博士(情報理工学).
同年4月より, 日本学術振興会特別研究員(PD)として,
独立行政法人産業技術総合研究所情報セキュリティ研究センターにおいて
情報セキュリティの基盤技術の研究に従事.
2009年 SCIS 2009論文賞, CSS 2009優秀論文賞受賞.
2010年 CSS 2010優秀論文賞受賞.

[推薦理由] 本論文の提案は,所定時刻に暗号文を復号(開封)可能とする電子文書を扱う幅広いアプリケーションに応用可能であり,暗号技術によるコンピュータセキュリティの発展に大きく貢献する.とくに,一般的構成法として示した2つの構成は,利用者(受信者)が開封時刻の秘匿性が必要か否かを選択可能であるため,柔軟性がある.特定の数論的アルゴリズムに依存しない一般的構成法を示しているため,標準化などの面でも将来性豊かである.応用上の深い考察と厳密な安全性証明を兼ね備えた質の高い論文であるので,候補としたい.
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●GPSドップラーと慣性センサの統合による車両軌跡推定手法の提案
[2010-ITS-43(H22.11.12)] (高度交通システム研究会)
meguro

目黒 淳一 君 (正会員)

2003年3月 早稲田大学理工学部機械工学科卒
2005年3月 早稲田大学理工学研究科機械工学専攻 修士課程修了
2008年3月 早稲田大学理工学研究科機械工学専攻 博士課程終了 博士(工学)
2008年4月 - 2008年11月 日本学術振興会特別研究員(PD)
2008年11月より株式会社 豊田中央研究所にてITSに関連する研究に従事

[推薦理由] 本論文ではGPS信号から得た情報と慣性センサを複合する事により軌跡精度の向上を図る手法を提案しており,独自性が高い方法であり新規性がある.また,十分な解析を通して高精度で軌跡を推定できることが示されており,研究としての完成度も高い.これらの結果により比較的安価な装置でも高精度に位置推定できる可能性を導いたことは有用性の面でも高く評価できる.また,内容が分かりやすく説明されており,発表時の討議も活発であった.発表時の討議においては,GPSドップラーの技術の詳細に関する質問も相次ぎ,関連分野の研究者からの注目が大きいことがうかがい知れるなど,当研究会にとっても非常に有用な発表であったため,山下記念研究賞候補として推薦する.
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●システムモデルベースSI支援環境による性能・可用性評価
[2010-EVA-33(H22.11.29)] (システム評価研究会)
izuka

伊豆倉さやか 君 (正会員)

2006年3月 上智大学理工学部物理学科卒業
2008年3月 同大学院  理工学研究科物理学専攻 修士課程修了
同年4月 日本電気株式会社 入社
現在,同社サービスプラットフォーム研究所に所属.
SI(システムインテグレーション)の効率化・高品質化のためのモデルベースのSI支援技術に関する研究開発に従事.

[推薦理由] 受賞候補者らはモデルベースSIに関して継続的に研究を行っている.本研究報告論文はモデルベースSIの要素技術のひとつである顧客用件に基づくシステムモデルの評価について報告したものである.システムモデル・性能評価モデルの構築方法および可用性評価手法について具体的に記述され,典型的なWebサーバシステムに対するモデル適用評価の結果が示されている.本研究において提案されるモデルおよび手法は一般化されており,幅広い場面のシステム構築における設計品質の向上に資することが期待される.システム評価研究における優秀な研究報告として,山下記念研究賞の候補に推薦するものである.
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●ユーザ参加型動的ストリート画像フロー生成機構の設計
[2010-UBI-25(H22.5.28)] (ユビキタスコンピューティングシステム研究会)
isizuka

石塚 宏紀 君 (学生会員)

2006年 東京電機大学 工学部 情報メディア学科卒業.
2008年 東京電機大学大学院 工学研究科 情報メディア学専攻修了.
2009年 東京大学大学院情報理工学系研究科電子情報専攻博士課程進学.
現在に至る
情報処理学会会員.

[推薦理由] 本研究では,センサネットワークの分野において比較的新しい研究領域であるユーザ参加型センサネットワークの明確なアプリケーションとして動的ストリート画像フローを提案し,道路ネットワークに沿って観測された多次元センサデータを高速かつ効率的に扱えるデータ索引構造KDRN-Tree(KD-Tree with Road Networks)を開発した.また,その有効性をシミュレーションだけでなく,実データ収集による実験でも示した.個々人が街中で観測したセンサデータを管理する機会が今後増加してくると考えられるが,広く一般的に利用可能なデータ構造を提案したことは,ユビキタスコンピューティングの実用化に対する大きな貢献であるため,山下記念研究賞の受賞候補に本研究を推薦する.
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●個人必携パソコンによる情報環境-鳥取環境大学の事例-
[2010-IOT-9(H22.5.14)] (インターネットと運用技術)
saito

齊藤 明紀 君 (正会員)

昭和61年 大阪大学基礎工学部情報工学科卒業
平成3年 同大学院基礎工学研究科 物理系専攻情報工学分野
博士後期課程修了(工学博士)
平成3年 同大学 基礎工学部情報工学科 助手
平成6年 同大学 情報処理教育センター講師
平成11年 同大学大学院 基礎工学研究科情報数理系専攻 講師
平成14年 同大学大学院 情報科学研究科  助教授
平成16年 鳥取環境大学 環境情報学部 情報システム学科教授(現在に至る)
分散システム運用・管理の研究に従事.
情報処理学会、電子情報通信学会 各会員

[推薦理由] 鳥取環境大学では,パソコンを並べた教室を用意するのではなく,学生個々にノートPCを携行させる方式を採用している.本論文では,この方法を行うにあたり,どのような設備と体制を大学として構築したかを中心に報告されている.高等教育として必須要素となっている情報処理技術教育を総体的に実施するために,PCを個人必携とすることの効果と,大学レベルで実施するにあたり必要となる実践的な経験知(トラブルなど) をまとめており,大学など多くの教育機関へ貢献するものである点が,非常に有益であると評価できる.
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●HoUZK/JP - 手作りUSB HID を用いたシステム管理支援,特殊入力装置作製,およびプレゼンテーション手法について
[2011-IOT-12(H23.2.28)] (インターネットと運用技術)
 ohno

大野 浩之 君 (正会員)

昭和35年生まれ.
平成元年東京工業大学大学院理工学研究科博士後期過程単位取得退学.
同大学理学部情報科学科助手,同大学院情報理工学研究科数理計算科学専攻講師を経て,平成11年郵政省通信総合研究所通信システム部非常時通信研究室長.
平成12年内閣官房内閣安全保障危機管理室併任(平成18年3月まで).
平成16年(独)情報通信研究機構情報通信部門セキュアネットワークグループリーダー.
平成18年国立大学法人金沢大学総合メディア基盤センター教授(現職).
博士(理学).
大規模災害時等の非常時に資する情報通信技術の研究開発をライフワークとしつつ,近年では小型電子回路の新規設計と自作にも熱中している.
情報処理学会などの会員.

[推薦理由] 本論文では,非同期シリアルインターフェースを介してUSBキーボードやUSBマウスなどの USB HID を操作する装置である「HoUZK」の設計および実装を報告している.様々な入力機器をUSB-HIDを用いることで汎用的にPC等に接続できるようにし,実際に機器を作成して実演している点,およびPC等に新たなデバイスドライバ等を用意することなく使用できるため,システム管理等に関する用途だけではなく,ヒューマンインタフェース,特にユニバーサルデザインに関する研究においても機器作成時のハードルを下げることができ,多くの研究者へ貢献するものである点が,非常に有益であると評価できる.
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フロンティア領域

●ハブを作らないグラフ構築法を用いた半教師あり語義曖昧性解消
[2010-NL-199(H22.11.19)] (自然言語処理研究会)
ozaki

小嵜 耕平 君 (学生会員)

2009年東京理科大学理工学部情報科学科卒業.
2011年奈良先端科学技術大学院大学情報科学科博士前期課程修了.
同年同大学院情報科学研究科博士後期課程進学.
現在,社会人学生として在学中.
同年4月より株式会社はてな入社.
情報処理学会,ACL各会員.

[推薦理由] 本研究は,半教師あり分類手法に用いるグラフの利用に関して,ハブに着目したグラフ構築法を提案している.このグラフ構築法では効率的な計算が可能であり,語義曖昧性解消の問題において,優れた分類結果を出力することを示している.半教師あり分類手法は言語処理のさまざまな分野に適用可能な分野横断的な手法であり,本研究は論文中で評価対象となった語義曖昧性解消のタスクだけでなく,他のさまざまな問題に適用可能な汎用性の高い研究である.よって,本研究を山下記念研究賞に推薦する.
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●モバイルエージェントに基づくP2P検索への意味レベル照合の実装手法に関する一考察
[2010-ICS-160(H22.10.27)] (知能システム研究会)
fukuda

福田 直樹 君 (正会員)

1997年名古屋工業大学工学部知能情報システム学科卒業.
1999年同大学大学院工学研究科電気情報工学専攻博士前期課程修了.
2002年同大学院博士後期課程修了.
博士(工学)
同年より静岡大学情報学部情報科学科助手.
2007年より同学科助教.
2010年より同学科講師.
2011年同大学若手重点研究者に選定.
モバイルエージェント技術,オントロジー,オークション理論の応用
などに関する研究に従事.
IEEE-CS, ACM, 情報処理学会,電子情報通信学会, ソフトウェア科学会,
人工知能学会,情報システム学会各会員.

[推薦理由] P2Pにおけるファイル・データ検索技術における精度の高い検索のために,メタデータの意味レベル照合技術が発展することが望ましい.しかし,事前のインデックス付けやオントロジの統一化およびメタデータ照合における通信帯域利用量が増大する等の困難性が多い.本発表では,具体的にモバイルエージェント技術を適用した際の利害得失を実際の評価を通して分析し,既存の問題点を効果的に解決している.
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●反射・散乱の計測とモデル化
[2010-CVIM-172(H22.5.27)] (コンピュータビジョンとイメージメディア研究会)
mukaigawa

向川 康博  君 (正会員)

1997年 筑波大学大学院博士課程工学研究科修了.博士(工学).
1997年 岡山大学助手.
2003年 筑波大学講師.
2004年 大阪大学助教授,2007年同准教授.
2009年~2010年マサチューセッツ工科大学メディアラボ客員准教授.
コンピュータビジョンの研究に従事.

[推薦理由] フォトメトリ分野での主要テーマである物体表面上での反射と物体内部での散乱の2つの物理現象を取り上げ,それらの計測手段と表現方法について解説することを目的とする.フォトメトリは陰影や色などの解析の基礎となる重要な技術である.さらに,より高精度な解析に必要不可欠な技術として最近注目されている散乱についても概観し,コンピュータビジョン技術の底上げに不可欠な知識をより多くの人と共有したしたという点は特筆に値する.以上より,本論文は平成23年度山下記念研究賞にふさわしいと考え,ここに 推薦する次第である.
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●画像化プロセスと画像ノイズ
[2010-CVIM-174(H22.11.19)] (コンピュータビジョンとイメージメディア研究会)
takamatu

高松  淳 君 (正会員)

1999年 東京大学理学部情報科学科卒業
2004年 東京大学大学院情報理工学系研究科博士課程修了.博士(情報理工学)
東京大学生産術研究所特任助教,同特任講師を経て,
2008年から奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科准教授,現在に至る.
知能ロボットの動作獲得, 3次元形状モデリング・形状解析,物理ベースビジョンに関する研究に従事.

[推薦理由] 画像処理を頑健にするために必要不可欠となる画像ノイズをモデル化する方法を紹介し,また画像ノイズそのものを情報として利用する方法を紹介することを目的とする.近年,確率的最適化アルゴリズムの発展にともない,個々の問題における確率密度関数の設定は非常に重要であり,それに対して画像ノイズという側面から理論的に設計する方法を紹介し,頑健な画像処理を底辺から支える技術を明確にしたという点は特筆に値する.以上より,本論文は平成23年度山下記念研究賞にふさわしいと考え,ここに推薦する次第である.
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●テレビゲームを通して情報科学を概観する教養教育科目の授業実践
[2010-CE-105(H22.7.10)] (コンピュータと教育研究会)
nagataki

長瀧  寛之 君 (正会員)

2000年3月: 大阪大学基礎工学部情報科学科 卒業
2002年3月: 大阪大学大学院基礎工学研究科情報数理系専攻 博士前期課程 修了
(修士:工学)
2002年4月~2006年3月: 鳥取環境大学環境情報学部情報システム学科 助手
2009年3月: 大阪大学大学院情報科学研究科コンピュータサイエンス専攻 博士
後期課程 修了(博士:情報科学)
2009年4月-現在: 岡山大学教育開発センター 助教

[推薦理由] 「情報科学の諸概念がゲームでどのように利用されているか」を解説することで,学生に高い興味付けを行うことができた授業の紹介である.コンピューティング科学の入門授業において,テレビゲームという学生が興味を持ちやすい題材を用いた独自のやり方を工夫することで,学生の意欲を高め,この種の授業を行なう際の新しい一つの方法を切り開いた.授業で紹介した話題と工夫点が具体的に説明されて,高い教育効果が期待できるすばらしい内容であり,世の中への貢献度も高い.よって,山下記念研究賞受賞候補として推薦する.
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●回路の製作を取り入れた計測・制御学習用基板の開発
[情報教育シンポジウム2010(H22.8.20)] (コンピュータと教育研究会)
higuchi

樋口  大輔 君 (正会員)

2009年 静岡大学教育学部学校教育教員養成課程 卒業
2011年 同大学大学院教育学研究科 修了
現在 静岡県裾野市立東中学校 勤務
情報処理学会情報教育シンポジウムにて、発表賞(2010)受賞
日本産業技術教育学会会員

[推薦理由] 中学校の技術・家庭で必修となる計測・制御の学習で利用可能となる新たな学習教材である汎用入出力ボードを提案している.試作したボードは,パソコンからプログラムを転送して利用できるほか,対話的な利用も可能であり,ソフトウエアも学習者が使い易く,授業で利用しやすいように工夫されている.ものづくりの基本をしっかり取り入れたすばらしい内容であり,世の中への貢献度も高い.よって,山下記念研究賞受賞候補として推薦する.
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●人名典拠情報のAPIによる共有化と図像資料における人名情報参照システム
[人文科学とコンピュータシンポジウム2010(H22.12.11)] (人文科学とコンピュータ研究会)
togiya

研谷 紀夫 君 (正会員)

2007年東京大学大学院学際情報学府博士課程修了.
同大学院特任助教を経て現職 東京大学大学院情報学環 特任准教授.
専門は文化資源の電子情報化.
主な著作に『デジタルアーカイブにおける「資料基盤」統合化モデルの研究』(勉誠出版 2009),共著書に『アーカイブを学ぶ』(岩田書院 2007),『デジタル時代のアーカイブ』(岩田書院 2008),他.
第4回野上紘子記念アート・ドキュメンテーション学会賞(2010),情報文化学会学会賞(2010)など受賞.

[推薦理由] 本論文は,人名の典拠情報を収容するデータベースとその典拠情報を利用するためのAPIを構築し,写真などの図像資料の解析や管理への応用を試みたものである.APIはRESTなどを使って実装されており,典拠情報を供給するためのウェブサービスとして機能するものである.また,写真アノテータと典拠情報ブラウザを作成し,APIを介して戦前の皇族・華族に関する写真へのアノテーション付与を試みる検証もなされている.図像資料の取り扱いについて幅広く応用可能な優れた成果として評価できる.
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●Sinsy: 「あの人に歌ってほしい」をかなえるHMM歌声合成システム
[2010-MUS-86(H22.7.28)] (音楽情報科学研究会)
ooura

大浦圭一郎 君 (正会員)

2010年3月,名古屋工業大学大学院工学研究科情報工学専攻博士後期課程修了.
博士(工学).
ATR音声言語コミュニケーション研究所有期補助員,欧州連合FP7 EMIMEプロジェクト研究員を経て,現在,名古屋工業大学特任助教,総務省SCOPE研究員,株式会社テクノスピーチ代表取締役を兼任.
音声認識・合成に関する研究に従事し,より自然な音声の再現を目指して研究を進めている.
現在,音声インタラクションシステムや歌声合成システムとそれらの設計に対して,様々な研究課題に取り組んでいる.
HTS, hts_engine API, Open JTalk, MMDAgent, Sinsyなどのソフトウェアを開発している.

[推薦理由] 本発表は,HMMテキスト音声合成の手法を元に歌声合成を行うシステムSinsyに関するものである.Sinsyは,HMM音声合成と同じ枠組みの上で,モーラや音符の対応付けなど音楽特有の情報の追加,ビブラートモデルやテンポ・リズムを考慮したタイミングモデルの導入,計算コスト削減のための音高シフトによる工夫が行われるなど歌声向けの改良が随所に行われている.その中でも,様々な歌声(話者)モデルの学習に必要なデータが増加する問題点に対し,制約付き最尤線形回帰(Constrained Maximum-Likelihood Linear Regression: CMLLR)に基づく話者適応手法を導入している点が本発表の一番の特徴である.そして,その主観評価実験で少量データでの学習の有効性が確認されたことは,話者適応の容易さにおいて,他の歌声合成システムにはない最大の特徴が示せたと言える.また,本システムは歌詞付きMusicXMLをアップロードするだけで良いWeb上のオンラインデモを公開しており,歌声の合成結果が動画共有サイトで幾つも聞ける点など,既に一般へ向けて利用してもらっているという話もあった.Sinsyの技術的利点や,その歌声のデモを含む発表のインパクトの大きさなどから,本発表は山下記念研究賞候補としてふさわしいと判断する.
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●BandNavi: バンドメンバーの変遷情報を辿るアーティスト発見システム
[2010-MUS-86(H22.7.29)] (音楽情報科学研究会)
yoshiya

吉谷 幹人 君 (正会員)

2009年 東邦大学理学部情報科学科卒業
2011年 筑波大学大学院システム情報工学研究科博士前期課程修了
同年  ソネットエンタテインメント株式会社入社

[推薦理由] 本研究のシステムは,ミュージシャンが所属するバンドの変遷をWebマイニングによって自動的に収集し,他のミュージシャンやバンドの情報を辿ることができるシステムである.これは,本来は玄人音楽リスナー(音楽マニア)が楽曲やミュージシャンを探したり調べたりする手法をWebサービスで実現しており,広く一般ユーザに玄人の音楽の聴き方・探し方を提供するという新たな提案をしていると言える.Webマイニングの手法自体に特筆すべき点は少ないものの,既存のWebサービスでは情報入手が困難なバンドやミュージシャン同士の繋がりまで自動的に処理できる点,情報の辿り方に対するUI機能の設計をしっかり行っている点,iPhoneアプリとして実装することで辿った情報から曲の試聴・購入までできる点など,実利用音楽Webサービスとしての完成度の高さを中心とした発表が行われた.また,この研究自体は主にロックを中心としているが,手法自体はクラシックやジャズなどにも適用できる可能性が充分にあり,サービスの広がりを期待できる点でも評価が高い.以上より,提案の面白さと完成度の高さを充分にアピールする発表が行われた点で,本発表は山下記念研究賞候補にふさわしいと判断する.
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●ベイズ推論を用いた連続音声からの言語モデル学習
[2010-SLP-82(H22.7.24)] (音声言語情報処理研究会)
graham

NEUBIG Graham 君 (学生会員)

2005年米国イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校工学部コンピュータ・サイエンス専攻卒業.
2010年京都大学大学院情報学研究科修士課程修了.
同年同大学院博士後期課程に進学.
現在に至る.
自然言語処理,特に機械翻訳,音声言語処理の研究に従事.

[推薦理由] 本論文では,テキストを用いないで,連続音声のみから言語モデルを学習するという斬新なアプローチを提案している.具体的には,音響モデルのみを用いて作成された音素ラティスに対してノンパラメトリックベイズ学習を適用することで,単語境界と言語モデルを同時に学習する方法を実現している.言語モデル学習に関する新たな知見を与えるとともに,希少な言語や方言などを書き起こす上で有用であると期待される.
[ 戻る ]
●非負値行列因子分解に基づく多人数会話における話者分類
[2011-SLP-85(H23.2.4)] (音声言語情報処理研究会)
nishida

西田 昌史 君 (正会員)

2002年3月 龍谷大学 大学院理工学研究科 電子情報学専攻 博士後期課程 修了
博士(工学)
2002年4月 科学技術振興事業団 さきがけ研究21「協調と制御」領域 博士研究員
2003年7月 千葉大学 大学院自然科学研究科 情報科学専攻 助手
2007年4月 千葉大学 大学院融合科学研究科 情報科学専攻 助教
2009年4月 同志社大学 理工学部 情報システムデザイン学科 准教授
音声情報処理,福祉情報工学に関する研究に従事
電子情報通信学会,情報処理学会,日本音響学会,人工知能学会各会員

[推薦理由] 多人数の会話音声において,話者の分類・インデキシングを行うことは,それ自体のみならず,音声認識の話者適応においても重要である.従来は,発話毎に計算される統計量に基づいて,クラスタリングを行うアプローチが一般的であった.これに対して本論文では,非負値行列因子分解を用いて,会話全体の特徴を捉えて一括して話者分類を行うという新たな方法論を提案しており,非常に興味深い.
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●WEB上の生命保険契約に関する一考察
[2010-EIP-48(H22.5.28)] (電子化知的財産・社会基盤研究会)
ide

井出  明 君 (正会員)

 1995年京都大学経済学部卒業
京都大学大学院修士課程法学研究科修了
京都大学大学院情報学研究科博士後期課程指導認定退学
京都大学博士(情報学).専門は社会情報学.
九州東海大学専任講師,大阪経済法科大学助教授,近畿大学経済学部助教授,首都大学東京准教授などを経て現職

[推薦理由] 候補者のインターネット上の保険契約に関する一連の研究は保険法の分野でで高く評価され,既に財団法人かんぽ財団から平成22年度調査研究優秀研究賞を受けている.http://www.kampozaidan.or.jp/CL01_02/65_S1.pdf これら研究発表の場として情報処理学会が3件含まれていることもあり,情報学の観点からも大いに評価されるべきである.特に,ICTの観点で保険を捉えるという新しい試みは,今後想定されるこの分野の研究に大きな示唆を与える.なお,上記論文を目にした情報通信行政の担当者からも,高い評価が聞かれている.
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●ゲーム構成要素を組み合わせた特徴の最適化
[ゲームプログラミングワークショップ2010(H22.11.12)] (ゲーム情報学研究会)
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矢野 友貴 君 (正会員)

2009年東京大学工学部電子情報工学科卒業.
2011年東京大学大学院工学系研究科電気系工学専攻修士課程修了.
同年株式会社インターネットイ ニシアティブ入社.
現在システム開発に従事.

[推薦理由] 本発表は,ゲームプログラミングの重要なテーマである評価関数の機械学習において,特徴の高次の組み合わせと絞り込みを提案し,効果を示したものである.近年,評価関数の学習について多くの研究がなされてきたが,効果的な特徴をどのように用意するかは依然未解決の問題であり,この成果は重要である.よって,本発表は新規性と実用性ともに山下記念研究賞に相応しいと判断する.
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●温冷呈示を利用したビデオゲームインタラクションにおけるその手法の検討と開発
[2010-EC-17(H22.8.24)] (エンタテインメントコンピューティング研究会)
baba

馬場 哲晃 君 (正会員)

2003年九州芸術工科大学芸術工学部芸術情報設計学科 卒業
2005年九州芸術工科大学大学院芸術工学府 修了
2008年九州大学大学院 芸術工学府博士後期課程 単位取得退学
2008年4月より公立大学法人首都大学東京大学院システムデザイン研究科助教
博士(芸術工学)

[推薦理由] 本稿にて報告されている研究は,温冷感覚をビデオゲームインタラクションに適用するという意欲的な研究であり,冷感・温感について詳細に検討し,冷却においてはプレイヤの反応速度と温度変化に関係があること,温度変化に対する反応速度の基礎的知見を得ている.本研究は,これまでの視聴覚・触覚などの知られた感覚に加えて冷温感を計算機制御し,エンタテインメントコンテンツに導入することを目指す,エンタテインメントコンピューティングの研究分野の新しい側面に光を投げかける論文であり,その観点から本賞受賞に値するものとしてここに推薦する.
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●複数生物種ネットワークの同時予測:半教師つき学習によるアプローチ
[2010-BIO-21(H22.6.19)] (バイオ情報学研究会研究会)
kasima

鹿島 久嗣 君 (正会員)

1997年,京都大学工学部数理工学科卒業.
1999年,同大学工学研究科応用システム科学専攻修士課程修了.
同年より,日本アイ・ビー・エム株式会社東京基礎研究所研究員.
2007年,京都大学情報学研究科知能情報学専攻博士後期課程修了(博士(情報学)).
2009年より,東京大学大学院情報理工学系研究科数理情報学専攻准教授.
機械学習,データマイニングの応用に従事.
2007年に人工知能学会論文賞,2004年と2008年に人工知能学会研究会優秀賞受賞.
2009年に情報処理学会長尾真記念特別賞受賞.
情報処理学会,人工知能学会,電子情報通信学会の各会員.

[推薦理由] 生体ネットワークの予測はバイオ情報学における基本的で重要な課題であり,これまでに機械学習手法等を利用して部分的な情報からネットワーク全体を予測する試みは盛んに行われてきた.従来研究では主に各生物種で個別に予測が行われてきたのに対し,本研究において鹿島氏らは複数の生物種のネットワークを「同時にまとめて」予測することを提案している.様々な生物種の情報が得られる今日において,これらを最大限に利用し予測精度を向上したいというのは極めて自然な要望であると同時に挑戦的な課題であり,この問題を半教師つき学習と呼ばれる機械学習の枠組みを複数ネットワークの同時予測に拡張することによってエレガントに解決した本研究は,本賞を贈るにふさわしい.
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●期待精度最大化に基づくRNAシュードノット予測
[2010-BIO-22(H22.7.29)] (バイオ情報学研究会)
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加藤 有己 君 (正会員)

2002年同志社大学工学部電気工学科卒業.
2007年奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士後期課程修了.
博士(工学).
日本学術振興会特別研究員PD,京都大学化学研究所バイオインフォマティクスセンター特定研究員を経て,現在,奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科助教.
RNA配列情報解析を中心とするバイオインフォマティクスに関する研究に従事.

[推薦理由] 本研究はシュードノットと呼ばれる部分構造を考慮したRNA2次構造予測に対し,整数計画法を用いて予測構造の期待精度を最大化する観点での計算手法を与えている.従来法の1つである動的計画法に基づく手法では計算量が大きくあまり実用的ではない.また,ヒューリスティックな手法では高速に予測できるものの,予測精度が十分高いとは言えない状況であった.本研究で提案されているIPknotと呼ばれる手法は,圧倒的な高速性を実現しているのみならず,世界最高レベルの予測精度を達成しており,国内はもとより国際的にも与えるインパクトは大きいと思われる.よって,本研究を山下記念研究賞に推薦する.
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●市販ハイビジョンカメラを用いた講義ビデオ撮影加工システムの運用報告
[2010-CLE-1(H22.5.14)] (教育学習支援情報システム研究会)
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永井 孝幸 君 (正会員)

1999年1月 日本学術振興会特別研究員(2001年3月まで)
2000年3月 大阪大学大学院 基礎工学研究科 博士後期課程修了 博士(工学)
2001年4月 鳥取環境大学 環境情報学部 情報システム学科 講師
2004年2月 鳥取環境大学 環境情報学部 情報システム学科 助教授
2008年9月 熊本大学 総合情報基盤センター 准教授
現在,教育学習支援情報システム,講義ビデオ撮影配信システムに関する研究に従事
情報処理学会,電子情報通信学会,IEEE,ACM各会員

[推薦理由] 本論文は,著者が先に本研究会の前身となる情報処理学会CMS研究グループの研究会において提案した講義ビデオの自動収録手法を実運用した報告をまとめたものである.本手法では,市販のハイビジョンカメラで教室全体を撮影してサーバに保存し,そのビデオから仮想カメラワークにより,教師の動きに合わせた講義ビデオを自動的に作成し,配信用ビデオへの変換と配信サーバへのアップロードまで全自動で行う.また,ビデオカメラからファイルを取り出す際にUSB接続ボタンを押すためのアクチュエータを自作したり,講義の日時・場所の情報を2次元バーコードで設定するなどの工夫を凝らし,安価で有用なシステムを構築し,実用性を示した点が高く評価できる.以上の理由より,本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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