2008年度詳細

2008年度(平成20年度)山下記念研究賞詳細

  山下記念研究賞は,これまでは研究賞として本学会の研究会および研究会主催シンポジウムにおける研究発表のうちから特に優秀な論文を選び,その発表者に贈られていたものですが,故山下英男先生のご遺族から学会にご寄贈いただいた資金を活用するため,平成6年度から研究賞を充実させ,山下記念研究賞としたものです.受賞者は該当論文の登壇発表者である本学会の会員で,年齢制限はありません.本賞の選考は,表彰規程,山下記念研究賞受賞候補者選定手続および山下記念研究賞推薦内規に基づき,各領域委員会が選定委員会となって行います.本年度は34研究会の主査から推薦された計50編の優れた論文に対し,慎重な審議を行い,決定されたうえで,第537回理事会(平成20年7月)および調査研究運営委員会に報告されたものです.本年度の受賞者は下記50君で,3月11日に立命館大学で開催される第71回全国大会の席上で表彰状,賞牌,賞金が授与されます.

<コンピュータサイエンス領域>
DBS SE ARC OS SLDM HPC PRO AL MPS EMB

<情報環境領域>
DPS HCI CG IS FI AVM GN DSM(該当なし) DD MBL CSEC ITS QAI(該当なし) EVA UBI

<フロンティア領域>
NL ICS CVIM CE CH MUS SLP EIP GI EC  BIO

コンピュータサイエンス領域

●Web検索質問の自動分類と質問応答への応用
[2007-DBS-142(2007.5.31)] (データベースシステム研究会)

藤井  敦 君 (正会員)

1998年3月東京工業大学大学院情報理工学研究科博士課程修了. 現在,筑波大学大学院図書館情報メディア研究科准教授,博士(工学). 自然言語処理,情報検索,音声言語処理の研究に従事.2003年IPA未踏ソフトウェア創造事業「天才プログラマー/スーパークリエータ」に認定. 1996年・2006年言語処理学会年次大会優秀発表賞受賞.2007年インターネットコンファレンス論文賞受賞.
[推薦理由]
Web検索質問を調査型と誘導型に自動分類する手法を提案し,合わせて自動で重みを付けて検索対象ページの本文を利用したコンテンツ検索と,アンカーテキストを用いてWebページが検索される確率を計算するアンカー検索を融合する手法を提案している.情報検索の研究分野では,Web検索質問を調査型と誘導型に分類することは極めて重要で,提案手法は,検索語とアンカーテキストが完全一致していなくても検索可能な点で,革新的である.また,上記分類を実際に検索を行い評価している点も新規性がある.よって,本論文発表者を山下記念研究賞受賞候補者として推薦する.
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●情報フローを考慮したブラウザの計算モデル
[ソフトウェアエンジニアリングシンポジウム2007(2007.8.27)] (ソフトウェア工学研究会)

立石 孝彰 君 (正会員)

2003年,北陸先端科学技術大学院大学 博士後期過程修了,博士(工学)取得. 2003年より,日本アイ・ビー・エム(株)東京基礎研究所に在籍.
[推薦理由]
データをセキュアに扱うことのできるウェブブラウザの一つのモデルを提案している。立石氏は、近年、氏の属する研究グループのメンバーとともに、ウェブに関連するソフトウェアについて、フォーマリズムの導入、あるいは、それによるセキュリティの向上に関しての多数の研究成果を挙げている。本論文では、情報フロー制御を用いた、セキュアなウェブブラウザのモデルを与えている。ウェブブラウザは、データとしてスクリプトを扱うので、データ(スクリプト)によってデータ自体が書き換えられるという特性を持つ。そのため、本論文では、高階プログラム的なモデルを提案しており、この点に新規性を認める。また、扱うテーマの実世界における有用性は言うまでもない。以上より、本論文を山下記念研究賞に相応しいものとして推薦する。
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●トラクションコントロール実行: CMP 向け実行制御方式の検討
[2007-ARC-174(2007. 8. 1)] (計算機アーキテクチャ研究会)

近藤 正章 君 (正会員)

2003年 東京大学大学院 工学系研究科 先端学際工学専攻修了.博士(工学). 2003年 科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業 研究員. 2004年 東京大学 先端科学技術研究センター 特任助手. 2007年 同センター 特任准教授. 2008年 電気通信大学 大学院情報システム学研究科 准教授.
[推薦理由]
チップマルチプロセッサ(CMP) において問題となる,L2 キャッシュやチップ・メモリ間バスなどの共有リソースの競合によるチップ全体の性能低下や各プロセスの性能低下の影響の不公平さなどを各プロセスの実行のスピードを調整しリソース競合の影響を柔軟に制御することで解決する,新しい実行制御方式を提案している.アーキテクチャレベルの問題である共有リソース競合をプロセス実行スピード制御というシステムソフトウェア的手法で解決するという発想の斬新さと適用範囲の広さ,さらに実機のCMPマシンにおいてその有効性を実証した完成度の高さから,その学術的価値は高い.以上の理由より,本論文を山下記念研究賞に推薦する。
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●MIPS R3000プロセッサにおける細粒度動的スリープ制御の実装と評価
[2008-ARC-176(2008. 1.16)] (計算機アーキテクチャ研究会)

関  直臣 君 (学生会員)

2007年 慶應義塾大学 理工学部情報工学科卒業 現在、同大学 大学院理工学研究科 開放環境科学専攻 修士課程在学中

 

[推薦理由]
リーク電力削減回路技術として有望視されているパワーゲーティングをMIPSR3000の演算器に細粒度に適用する際の動的スリープ制御機構の提案を行い,その機構をASPLA90nmで試作したチップGeyser-Oの詳細な評価を行っている.細粒度パワーゲーティングの実現には,時間的なオーバヘッドと電力的なオーバヘッドが存在するが,それらを試作チップの設計データを基に定量的に評価している点は,学術的な価値が高い.また,提案手法が効果的にリーク電力を低減することも評価結果から明らかにしており,今後のさらなる展開が期待される.以上の理由より,本論文を山下記念研究賞に推薦する。
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●FoxyTechnique: 仮想機械モニタによるOSの資源管理ポリシーの変更
[2008-OS-105(2007. 4. 5)] (システムソフトウェアとオペレーティング・システム研究会)

山田 浩史 君 (学生会員)

2004年 電気通信大学電気通信学部情報工学科卒業.
2006年 同大大学院電気通信学研究科情報工学専攻博士前期課程修了.
現在,慶應義塾大学大学院理工学研究科開放環境科学専攻後期博士課程在学中.
仮想マシン技術,オペレーティングシステム等のシステムソフトウェアの研究に従事.

[推薦理由]
OSの資源管理ポリシーは効率的なシステム構築に重要な要素であるが、ポリシーをOSに適用するためにOSを修正する手間は問題となる。本研究では、仮想機械を用い、仮想機械内で資源管理ポリシーを実装する構成とすることでゲストOSを修正することなく、柔軟にポリシーを実現する方式を提案し、仮想デバイスに実装した。仮想化技術をOSに対する実行環境変化に利用することは、新しい応用向けのOS開発に有効である。また、その評価も詳細であり、興味深い実験結果が多く掲載されており、論文の完成度も高い。
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● Gandalf VMM における Shadow Paging の実装と評価
[コンピューティングシステムシンポジウム2007(2007.11.27)] (システムソフトウェアとオペレーティング・システム研究会)

伊藤  愛 君 (正会員)

2006年3月筑波大学第三学群情報学類卒業 2008年3月筑波大学大学院システム情報工学研究科コンピュータサイエンス専攻博士 前期課程修了 同年4月日本アイ・ビー・エム株式会社東京基礎研究所入社 仮想マシンモニタに関する研究に従事

 

[推薦理由]
軽量な組込み向け仮想機械の構築を目的とした仮想機械モニタのメモリ管理方式に対する論文である。仮想機械モニタのページングでは、ハードウェアの特別なサポートがない限り、シャドーページを用いたメモリ管理が必要となるが、本論文では二つの方式のシャドーページングを実装し、IA-32アーキテクチャ上で詳細な評価を行った。TLBミス軽減の実装方式、各方式の詳細な評価結果と考察は他研究への参考になる内容であり、論文の質も高い。マルチコアや割込みの仮想化の考察も示唆に富むところが多く、今後の展開が期待できる。
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●電力見える化によるソフトウェア無駄電力の削減
[DAシンポジウム2007(2007. 8.29)] (システムLSI設計技術研究会)

田宮  豊 君 (正会員)

1988年東京大学精密機械工学科卒業 1990年同大学院精密機械工学科修士課程修了 同年(株) 富士通研究所入社 1994年より 1年間 University of California, Berkely 校の客員研究員となる。 LSI における論理合成CAD、および、消費電力の見積りと最適化の研究に興味を持つ 現在、同社 CAD 研究部に所属
[推薦理由]
本論文はプロセッサの消費電力をソフトウェアの動作に関連付けて可視化する手法を提案している。プログラム中の関数で使われる電力に無駄が無いかを判定する“無駄電力指標”を導入することによりプログラム中の電力チューニングのポイントを絞り込むことができ、より省電力なプログラムを記述することが可能と なる。その着眼点の独創性は高く評価できる。また画像処理のアプリケーションを用いた実験では、ソフトウェアのコーディング段階で混入した無駄なポーリング処理を本手法により検出することに成功し、本手法の有効性が客観的に示されている。以上の理由から、本論文を山下記念研究賞に推薦する。

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●ノンパラメトリック統計的タイミング解析(SSTA)の実現手法の検討
[DAシンポジウム2007(2007. 8.29)] (システムLSI設計技術研究会)
 

今井 正紀 君 (正会員)

1979年 東京工業大学大学院修士課程修了
同年  三菱電機(株)入社
2003年 (株)ルネサステクノロジ転籍
2008年8月現在 
(株)ルネサステクノロジより(株)半導体理工学研究センター(STARC)に出向中。STARCに所属しながら2006年より社会人博士として東工大博士後期課程在学中。設計、検証技術全般、特に同分野への統計手法の応用に興味を持っている。

[推薦理由]
集積回路の加工寸法が縮小されるとトランジスタの電気的特性ばらつきが顕著になり設計段階での回路遅延の正確な解析が困難になっている。本論文は、トランジスタ特性のばらつきを前提として統計的に回路遅延を解析する手法を提案している。以前から統計的回路遅延解析手法は提案されているが、トランジスタの遅延分布関数が特定の型に限定されていた。本手法はトランジスタの遅延分布関数に依存しないノンパラメトリックな手法を提案している。その着眼点の独創性は高く評価できる。実験では、代表的なベンチマーク回路を用いて本手法の有効性が客観的に示されており、本手法の実用性に関しても高く評価できる。以上の理 由から、本論文を山下記念研究賞に推薦する。
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●階層型領域分割によるマルチステージ並列前処理手法へのハイブリッド並列プログラミングモデルの適用
[2007-HPC-110(2007. 6. 8)] (ハイパフォーマンスコンピューティング研究会)

中島 研吾 君 (正会員)

1962年生 1985年 東京大学工学部航空学科 卒業 1993年 テキサス大学オースティン校大学院航空宇宙工学専攻 修士課程修了 2003年 博士(工学)(東京大学大学院システム量子工学専攻) 1985年 株式会社三菱総合研究所(1991年~1993年:テキサス大学) 2004年 東京大学大学院地球惑星科学専攻 特任助教授(2007年:特任准教授) 2008年 東京大学情報基盤センター 特任教授 現在に至る 計算力学,並列数値計算,並列プログラミングモデルの研究に従事 日本計算工学会,日本応用数理学会,情報処理学会,日本地震学会,IEEE, AIAA, SIAM 各会員
[推薦理由]
本研究発表では,不均質場における静的弾性問題を対象とした並列有限要素法アプリケーションに対して,階層領域分割によるマルチステージ並列前処理手法に基づく反復法ソルバーを適用するとともに,MPIとOpenMPIのハイブリッドプログラミングを用いて実装した結果について報告している.著者らは,512CPUコアのクラスタシステム上での性能評価を行い,本手法が従来手法に比べて高性能であることを示している.本研究発表では,近年主流となりつつあるマルチコアプロセッサからなるクラスタ上で計算機の性能を十分に引き出すための有益な情報が報告されており,有用性が高い.また,本研究は計算機分野とアプリケーション分野の融合を実践したものであり,HPC研究会に非常にふさわしいものである.以上の理由により,本研究発表を本賞受賞に十分の価値のあるものとして推薦する.
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●GPU グリッドによる高速な塩基配列アライメント
[2007-HPC-111(2007. 8. 1)] (ハイパフォーマンスコンピューティング研究会)

伊野 文彦 君 (正会員)

1998年大阪大学基礎工学部情報工学科卒業. 2000年同大学大学院基礎工学研究科修士課程修了. 2002年同大学院同研究科博士課程中退. 同年,同大学助手.博士(情報科学).現在,同大学准教授. 2003年国際会議HiPC2003最優秀論文賞, 2004年SACSIS2004最優秀論文賞. 高性能計算に関する研究に従事.
[推薦理由]
従来のデスクトップグリッドではジョブ割り当てにおいてGPUの状態が考慮されていないため,GPUを計算資源として利用する場合,遊休状態ではないGPUにジョブが投入されて著しい性能低下を引き起こす可能性がある.本論文では,遊休状態にあるGPUに選択的にジョブを投入する機能を備えるデスクトップグリッドシステム(GPUグリッド)を開発し,同システム上で塩基配列のアラインメントを行うことでその性能を評価している.その結果,資源所有者とグリッドユーザとが計算資源を共有する,デスクトップグリッド本来の環境下におけるGPUグリッドの有効性を明らかにしている.GPUを使わない場合と比較して5倍以上の飛躍的な速度向上を達成できており,GPUの持つ高い演算能力を広く利用するための実用的な方法を提示するという観点からも重要な研究成果である.これらの理由から,本研究発表を山下記念賞に推薦する.
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●SIMD命令を用いるUTF-8文字列デコード処理の高速化
[2008. 3.17] (プログラミング研究会)

井上  拓 君 (正会員)

2000年慶應義塾大学理工学部システムデザイン工学科卒業. 2002年同大学院理工学研究科総合デザイン工学専攻修士課程修了. 同年日本アイ・ビー・エム(株)に入社.現在同社東京基礎研究所に勤務. プログラム最適化技術の研究に従事.

[推薦理由]
この研究は可変長の文字コード変換をSIMD命令を用いて高速化するという独自のアイデアを提案し,実際に使われることの多いUTF-8からUTF-16への文字コード変換を実装して評価をおこなったものである.クロック高速化によるプロセッサの高性能化が頭打ちになっているなかで,汎用プロセッサにも高機能なSIMD命令が実装されることが多くなっているが,変換によってコード長が変わるというSIMD処理には不利な状況でも高速化が可能であることを示すこの研究の意義は大きい.
発表も明快であり,山下記念研究賞にふさわしい研究と考えられる.

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●Arc-disjoint In-trees in Directed Graphs
[2007-AL-115(2007.11.30)] (アルゴリズム研究会)

神山 直之 君 (学生会員)

平成16年3月 京都大学工学部建築学科卒業 平成18年3月 京都大学大学院工学研究科建築学専攻 修士課程修了 平成18年4月 京都大学大学院工学研究科建築学専攻 博士課程進学 現在に至る

 

[推薦理由]
有向グラフDとD上の頂点vが与えられたとき,頂点vに到達可能な頂点をすべて含むような,D上の内向木を生成する問題を考える.本研究は,有向グラフDとその上の頂点集合S,およびSから自然数集合への関数fとが与えられたとき,それらがどのような条件を満たせば各u∈Sに対するf(u)個の内向木が存在し,しかもそれらが互いに辺素になるように構成できるのかについて考察し,その必要十分条件をあきらかにしている.この結果は,Edmondsによって証明された重要な定理の一般化になっており,アルゴリズムの解析も大変興味深い.以上のことから,山下記念研究賞に相応しい論文として推薦する.
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●ハイパーグラフを対象とした最大クリーク抽出の分枝限定アルゴリズム
[2006-MPS-66(2007. 9. 4)] (数理モデル化と問題解決研究会)

須谷 洋一 君 (正会員)

1984年生まれ 2006年 電気通信大学 電気通信学部 情報通信工学科 卒業 2008年 電気通信大学大学院 電気通信学研究科 情報通信工学専攻 修士課程修了 同年 ソニー株式会社 入社

 

[推薦理由]
無向グラフから最大クリークを見つける問題は多くの数理問題に応用できることから重要である.一方,通常のグラフではなく任意のハイパーグラフを対象とした研究も熱心に行われている.本研究では,任意のハイパーグラフから最大クリークを1つ抽出する分枝限定アルゴリズムを提案している.解析例にお いては,DNA配列設計問題など,いくかの評価問題を扱い,計算機実験により, その高い有効性を示している.以上のことから,本論文を本年度山下賞受賞論文として推薦する.
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● Embedded Software Development Flow and Verification for a Heterogeneous MPSoC Based on Tightly Coupled Thread Model
[組込みシステムシンポジウム2007(2007.10.19) ] (組込みシステム研究会)

Arif Ullah Khan 君 (学生会員)

Arif Ullah Khan received his B.Sc degree in Electrical Engineering from N-W.F.P University of Engineering & Technology Peshawar Pakistan in 2001 and M.Sc degree in Information & Communication Engineering from University of Karlsruhe Germany in 2004. Currently he is PhD scholar at Department of Communication and Integrated Systems, Tokyo Institute of Technology Japan. His interests include MPSoC and NoC design.
[推薦理由]
組込みシステム開発ではマルチプロセッサが主流となりつつあるが、マルチプロセッサーを利用したシステムでは、特にソフトウェアの開発や検証・テストが極めて難しくなるという問題点がある。本研究ではTightly Coupled Thread Model(TCT Model)という考え方を導入することで、上記の問題点を解決するための一つの方向性を示し
ている。特に本研究ではこのTCT Modelをもとに実際の祭りプロセッサー搭載のSoCを開発しその上でMulti Thread 化した JPEG Encoder のデバッグ方法について検討し,かつ実際にデバッグまで実行した点を高く評価できる。
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● 組込みシステムのプロダクトラインにおけるMDA
[組込みシステムシンポジウム2007(2007.10.19) ] (組込みシステム研究会)

加藤 滋郎 君 (正会員)

1995年 名古屋大学理学部物理学科卒業 1997年 名古屋大学大学院理学研究科博士前期課程修了(素粒子宇宙物理学専攻) 1999年 株式会社デンソー 入社 現在,同社ボデー機器事業部所属.車載ECUの組込みソフトウェア開発に従事

 

[推薦理由]
組込みソフトウェアの効率的な開発を実現する手段としてのプロダクトライン技術(SPLE)を製品開発に実適用するための工夫として、SPLEの中核的概念であるソフトウェアアーキテクチャの部分にMDA(モデル駆動アーキテクチャ)の発想を組込みことでSPLEの実適用に向けた技術の行間を埋める方式を提案した論文である。提案手法の評価に関しては、提案手法の実製品開発への適用は未実施であるものの、「ETロボコン」という比較的他者が取り組みやすい題材を対象に手法評価を行った具体的な報告がなされており、大規模な開発に適用することの可能性が示唆されており参考となる点が多い。
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情報環境領域

● IEEE802.11DCF端末との混在環境下におけるMAC Level Fairness 向上方式の提案
[マルチメディア通信と分散処理ワークショップ(2007.10.31)] (マルチメディア通信と分散処理研究会)

重安 哲也 君 (正会員)

1998年3月 徳山工業高等専門学校情報電子工学科卒業 2000年3月 山口大学理学部自然情報科学科卒業 2002年3月 同大大学院理工学研究科博士前期課程修了 2002年4月 広島国際大学社会環境科学部情報通信学科助手 現在,同大工学部情報通信学科助教 無線通信プロトコルに関する研究に従事 DPSWS2007最優秀論文賞受賞 情報処理学会,電子情報通信学会,IEEE各会員
[推薦理由]
本論文は,IEEE802.11DCFのMACレベルの公平性を改善するバックオフアルゴリズムとして,WLPB(Weighted Limited Packet-Burst)を提案している.WLPBは,十分なスループットが得られていない端末が連続してフレームを送信することにより,不公平状態を軽減するように動作する.積極的な公平性向上策をとる方式の新規性は高く,また,シミュレーションにより従来方式の端末と混在する環境においても有効性が示されており,本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●複数拠点統合型センサネットワークテストベッド X-Sensor の設計と実装
[マルチメディア通信と分散処理ワークショップ(2007.11. 1)] (マルチメディア通信と分散処理研究会)

神崎 映光 君 (正会員)

2002年大阪大学工学部情報システム工学科卒業. 2004年同大学院情報科学研究科博士前期課程修了. 2005年同大学院情報科学研究科博士後期課程中退後, 同大学院情報科学研究科マルチメディア工学専攻特任助手を経て, 2007年より同助教となり,現在に至る. 博士(情報科学).2008年本学会論文賞受賞.移動体ネットワーク, 通信プロトコル,分散処理に関する研究に従事.IEEE,電子情報通信学会,日本データベース学会の各会員
[推薦理由]
本論文は,複数拠点に設置されたセンサネットワークを統合利用できるセンサネットワークテストベッドである X-Sensor の設計および実装について述べている.従来無線センサネットワークを対象とした研究が盛んに行なわれているが,センサ実機を用いた実証評価は困難であり,その大半はシミュレーションにより性能評価が行なわれている.本テストベッドは実環境における性能の実証評価を,複数の異なる環境で容易に実施可能とするものであり,同分野の研究にとって非常に有用なものとなると考えられ,本論文を山下記念研究賞に推薦する.
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●効果音によるタッチセンサへの押下感提示の研究
[2007-HCI-124(2007. 7. 6)]  (ヒューマンコンピュータインタラクション研究会)

木村 朝子 君 (正会員)

1996年大阪大学基礎工学部卒 1998年同大学院基礎工学研究科博士前期課程修了.同大学助手 2003年立命館大学理工学部助教授 2004年同情報理工学部助教授を経て 2007年4月より科学技術振興機構さきがけ研究員 立命館大学総合理工学研究機構客員教授兼任 博士(工学).実世界指向インタフェース,複合現実感,ハプテックインタフェースの研究に従事 2001年より2002年までMayoClinicにてSpecial Project Associate 電子情報通信学会,ヒューマンインタフェース学会,日本バーチャルリアリティ学会,ACM,IEEE 各会員

[推薦理由]
これまでタッチパネル等での押下感の提示のために,力覚・触覚フィードバック 機構を付加した研究はあったが,本研究では,効果音のみで押下感を与えること が可能か検討している.このようなフィジカルな感覚ではなく,メンタルな面に 注目した研究は今までにあまりなく,今後の展開が楽しみである.

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●円筒型マルチタッチインタフェース
[2007-HCl-127(H20.1.31)](ヒューマンコンピュータインタラション研究会)

内藤 真樹 君 (正会員)

平成20年筑波大学第三学群情報学類卒業 同年同大学大学院博士前期課程に進学

 

[推薦理由]
円筒という全く新しい形状のマルチタッチインタフェースの構成法、その用途、 および基本的なインタラクション手法を示した点において独創的かつ有用な研究 成果である。今後の実用化とさらなる研究の展開も期待される。
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●視覚特性を考慮したフォトモザイク
[VC/グラフィクスとCAD合同シンポジウム(H19.6.24)](グラフィクスとCAD研究会)
 

小島加寿代 君 (正会員)

2005年3月 東京大学 工学部 計数工学科 卒業 2007年3月 同大学大学院 情報理工学系研究科 コンピュータ科学専攻 修士課程修了 同年4月  日本SGI株式会社 入社
[推薦理由]
本研究発表は,小さい写真を併せて大きな画像を作るフォトモザイクの作成時に視覚特性を考慮する手法であり,特にSaliency MapやHybrid Imagesという2つの画像に関する技術との組合せによって,フォトモザイクの新しい可能性を示している。従来のフォトモザイクと大きく異なる点は,小さい写真を規則的に配置するのではなく,特徴に沿った四角形分割を利用している点である.四角形分割手法では大画像の特徴に合わせた分割を実現するためにサーフェスネットワーク技術を導入する点等が工夫されており,その着眼点は新しく画期的である.さらに,Saliency Mapを用いて人の注目度合いも考慮している点は今までのフォトモザイクには無い技術であり,その効果も画像生成結果から確認できる.特に,従来手法と比較して輪郭が明瞭化され,グラデーションも元の画像に近い精度を得ている.今後の発展としては,エンターテイメントとしての利用だけでなくハイブリッドイメージのように,遠くから見る人に伝えたい情報と近くで見る人に伝えたい情報を分けて提示する技術等への応用が期待できる.また,四角形分割結果や選択された小画像の情報から,大画像の特徴を測る指標として利用できる可能性がある.以上の理由により,本研究会は上記の研究発表を山下記念研究賞に推薦する。
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●環境マップのインタラクティブなデザイン手法
[2007-CG-127(H19.7.9)](グラフィクスとCAD研究会)

岡部 誠 君 (正会員)

2003年 東京大学理学部情報科学科卒業 2005年 同大学大学院 情報理工学系研究科 コンピュータ科学専攻 修士課程修了 2008年 同大学大学院 情報理工学系研究科 コンピュータ科学専攻 博士課程修了 現在、Max Planck Institut fuer Informatik、ポストドクター
[推薦理由]
本研究発表は,物体表面の輝度分布がユーザに指定されたものに沿うように環境マップを逆に推定するものであり,輝度分布から光源情報を推定する逆問題については従来研究が存在するが,ユーザインターフェースも含めたインタラクティブなシステムを構築している点が評価できる.その有用性を高めるために,環境マップを使用する段階で数学的な厳密さよりも光源が無限遠にある等の割り切りをしており,光源情報の逆推定問題をSRBFの係数推定に置き換えるというアイデアもバランスが良い.照明モデルとしては拡散成分と反射成分の組み合わせという単純なものであるが,これも比較的妥当な妥協点だと思われる.数学的な考察を行った上で推定アルゴリズムを単純化し,安定にしている点もよい.注意深く構築されたシステムで,レンダリング分野とインターフェース分野を結びつける研究であり,さらには手法の提案のみでなく実際に試用可能なプログラムとして実装しており,ユーザ評価を通して既存ツールとの比較を行っている点も評価できる.以上の理由により,本研究会は上記の研究発表を山下記念研究賞に推薦する。
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● PBLによるビジネス構造の把握を目的とした概念データモデリングの習得-学習する側から見た知見の報告-
[2008-IS-103(H20.3.4)](情報システムと社会環境研究会)

三好きよみ 君 (学生会員)

福井県立藤島高等学校、愛知教育大学教育学部卒業。
株式会社SRA、キャダムシステム株式会社を経て、現在は、日本アイビーエム・アプリケーション・ソリューション株式会社にて、RDBおよび、PLM製品の技術サポートに従事。

2008年3月 産業技術大学院大学産業技術研究科情報アーキテクチャ専攻修了
2008年4月 同大学院大学産業技術研究科創造技術専攻入学
2008年6月 同大学院大学産業技術研究科情報アーキテクチャ専攻認定講師 
[推薦理由]
本論文は,ビジネス構造の把握を目的とした,概念データモデリングによる情報システム設計を行うPBL(Project Based Learning)を,学習者の視点から報告したものである。一年間にわたる現実の業務を対象とするPBLで,著者が所属するグループでの様々な中間成果物などの詳細を分析し,学習者がどのような能力を段階的に身につけているのか考察している。情報システム設計能力を身につけさせるPBLは,多く報告されているが,本報告は中間段階での詳細なデータに基づき分析していることに特長があり,情報システムに関するPBLの学習プロセス管理をする上で重要な知見が含まれており,山下記念研究賞にふさわしい。
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●オントロジーを用いたニュース理解支援方式
[2008-FI-90(H20.3.28)](情報学基礎研究会)

吉田慶章 君 (学生会員)

2004年東海大学電子情報学部情報メディア学科入学. 2007年東海大学電子情報学部情報メディア学科退学. 同年東海大学大学院工学研究科情報理工学専攻修士課程飛び級入学.現在に至る. 2008年情報処理学会第69回全国大会大会優秀賞を受賞. セマンティックウェブ分野,特にオントロジーを用いた知識支援の研究に注力.

[推薦理由]
本論文は、ニュース記事に対する利用者の理解を支援するためのニュース オントロジを構築した試みである。OWLなどのセマンティックウェブ実現のた めの道具を実際に活用して、実用的なアプリケーションの性能向上を図ろう とする試みは、革新的な新規性を持つとは言えないが、これらの新技術の 応用を模索する上で重要な意味を持っており、この点、本研究は、堅実に プロトタイプを構築し、限定的ではあるが他研究との比較評価を行った点で 高く評価することができる。

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●方向性フィルタバンクにおけるサブバンド信号の分割伝送に関する検討
[2007-AVM-58(H19.9.26)](オーディオビジュアル複合情報処理研究会)
 

石川 孝明 君 (正会員)

平成15年 早稲田大学理工学部電子・情報通信学科卒業 平成17年 同大学院国際情報通信研究科修士課程修了 同年 同大学院博士後期課程入学 平成19年 同大学国際情報通信研究センター助手,現在に至る 主に,画像符号化に関する研究に従事. 現在は,ネットワーク親和性の高い動画像符号化技術の研究に従事 平成19年PCSJ学生論文賞受賞.IEEE,情報処理学会,電子情報通信学会,画像電子学会,信号処理学会各会員
[推薦理由]
本論文では、方向性フィルタバンクを用いた多重記述符号化実現に不可欠なファンフィルタの提案を行っている。具体的には、1次元フィルタをマクレラン変換により2次元フィルタへ拡張し、これを利用した完全再構成方向性フィルタバンクの設計を行っている。提案手法を用いることで、伝送等でエラーが発生した際に高いPSNRが得られているとともに、主観評価においても特にエッジ周辺における主観品質の大きな向上が確認できるなど、多重記述符号化実現に関して大きな貢献が認められるため。
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●授業支援のための投票機能付き匿名相互レビューシステム
[GNワークショップ2007(H19.11.9)](グループウェアとネットワークサービス研究会)

角田 篤泰 君 (正会員)

1988年 明治学院大学法学部法律学科卒業
1988~1992年 (株)富士通ソーシアルサイエンスラボラトリに勤務
1997年 東京工業大学大学院総合理工学研究科システム科学専攻博士課程修了.博士(工学)
1997年 北海道大学大学院法学研究科助手
1998年 同専任講師
2002年 名古屋大学大学院法学研究科助教授
2008年~ 同研究科附属法情報研究センター准教授.法情報学,法学教育システム,法律人工知能の研究に従事

[推薦理由]
本論文は、授業中に学生のレポートを添削する際、学生による投票を用いた、効率的、かつ合理的な方法で、対象となるレポートを選択し、授業進行の円滑化を図ることを目的としたWeb上の授業支援システムの開発と、その運用状況の分析について述べられたものである。システムの機能はやや新規性が少ないものの、17の講義、2年にわたる利用実績データを対象にした分析は、教育にかかわる情報処理の分野で大変有用なものであると考える。よって、山下記念研究賞に推薦する。
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●時間配置と構造配置の融合による活動プロセスの協働リフレクションの実現
[2008-GN-67(H20.3.21)](グループウェアとネットワークサービス研究会)

友部 博教 君 (正会員)

1999年3月 東京大学工学部電子情報工学科卒業
2001年4月 東京大学大学院工学系研究科電子情報工学専攻修士課程修了
2004年3月 東京大学大学院情報理工学系研究科電子情報学専攻博士課程修了・博士(情報理工学)
博士論文「知識共有システムにおける知識の獲得・加工・管理に関する研究」
2004年4月-2007年3月 名古屋大学21世紀COE「社会情報基盤のための音声・映像の知的統合」博士研究員
Webからアクセス可能なマルチメディア議事録の生成と議論からの知識発見に関する研究を行う。
2007年4月-2008年6月 産業技術総合研究所・特別研究員。市民芸術に関する実世界人間活動のWebコンテンツ化・可視化技術に関する研究を行う。
2008年6月-現在 東京大学大学院工学系研究科総合研究機構
イノベーション政策研究センター助教。Web編集エンジンや知識の構造化・俯瞰に関する研究開発を行っている。

[推薦理由]
本論文では、実世界の表現・創造活動の場であるワークショップの活動を、記録された写真や動画などのコンテンツの時間表現と構造表現を融合すること
で、協働して振り返る仕組みを提案している。著者らはコンテンツを時系列に配置して表現するツールと2次元上に構造的に配置して表現するツールを開発し、実世界の活動の協働振り返りにおける時間表現と構造表現の役割を評価実験により明確にした。本研究の成果は、実世界ベースの協働コミュニケーションに関するグループウェアへの貢献が期待されるため、山下記念研究賞に推薦する。
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●文章のシームレスな表示に関する研究-電子テキストの拡大・縮小表示の構想と概要-
[2007-DD-63(H19.9.28)](デジタルドキュメント研究会)

杉山 正治 君 (正会員)

1992年立命館大学理工学部機械工学科卒業 1997年同大学院理工学研究科修士課程情報システム学専攻修了 2000年同大学院理工学研究科総合理工学専攻博士課程後期課程修了 立命館大学非常勤講師・大谷大学非常勤講師を経て, 2003年大谷大学文学部人文情報学科任期制講師 2008年立命館大学情報理工学部助手,現在に至る 工学博士.情報処理学会,日本ロボット学会,日本音楽知覚認知学会各会員
[推薦理由]
多くのドキュメントのデジタル化が促進されている一方,一覧性など紙媒体の特徴を凌駕出来ずにデジタル化が躊躇されている状況もある.本研究は,紙媒体の特徴及び電子テキストの特徴・問題点を分析し,紙媒体では全体の俯瞰的な把握と部分の詳細な把握をシームレスに行なう事が可能な点に着目し,地図表示システムのような操作感で電子テキストを「拡大・縮小」表示する方法を提案している.俯瞰する際には上位の構造が主体で示され,縮小して詳細を把握する際には下位の構造の視認が容易となる様に文書構造を活用して階層毎に異なるフォントサイズの倍率を与えて表示しており,人間によるドキュメントの「見え方」に配慮している点も高く評価できる.電子テキストの課題解決に重要な示唆を与えており,デジタルドキュメント研究の広がりに寄与するとともに,視点が秀逸であり,山下記念研究賞に相応しい研究として推薦する.
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●データセントリックセンサネットワークにおける位置情報を必要としないルーティング方式の提案
[マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2007)シンポジウム(H19.7.5)] (モバイルコンピューティングとユビキタス通信研究会)

油田健太郎 君 (学生会員)

2003年宮崎大学工学部情報システム工学科卒 2005年同大学院工学研究科情報工学専攻博士前期課程了 2006年熊本県立大学総合管理学部助手 現在,宮崎大学大学院博士後期課程在学中 モバイルネットワーク,センサネットワークに関する研究に従事.

 

[推薦理由]
本論文では,データセントリックセンサネットワークにおける地理的位置情報を必要としないルーティング方式を対象として,既存の地理的位置情報を用いた手法に比べて通信量を大きくは増加させずに一部のノードに通信が集中しないルーティング方式HVGFを提案している.さらに,提案に基づきシミュレーション,評価を行い,提案手法が既存の方式と同等の性能を持つことを示している.本研究成果は,ネットワークサイズやノード密度の観点で有効性があり,
センサネットワークの発展に大きく寄与するものである.よって,ここに推薦する.
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●マルチOS環境におけるカーネル補助型難読化方式の提案
[2007-MBL-42(H19.9.27)](モバイルコンピューティングとユビキタス通信研究会)
 

中川 智尋 君 (正会員)

2000年筑波大学第三学群情報学類卒業 2002年奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士前期課程修了 同年沖電気工業株式会社入社 2006年奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士後期課程修了 2007年より情報通信研究機構専攻研究員 博士(工学)

 

[推薦理由]
本論文は携帯電話端末でセキュリティを確保しつつネイティブコードを利用可能にする方式を提案している.マルチOS環境では,通話などの基本機能を実行する保護OSとアプリケーションを実行する一般OSが並行動作するため,一般OS上のコードによる保護OSへの攻撃を防ぐ必要がある.本方式では,保護OSのメモリ内容等を暗号化する際,暗号鍵の生成をOS例外処理で行うことにより,攻撃側コードによる保護OSの模擬実行・鍵不正取得を困難にした.本成果は携帯電話端末の高度化に大きく寄与するものであり,ここに推薦する.
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●IPsec用鍵交換プロトコルにおけるDPD Trigger方式の一検討
[マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2007)シンポジウム(H19.7.4)] (コンピュータセキュリティ研究会)

石山 政浩 君 (正会員)

1994年横浜国立大学工学院修士課程修了 現在,(株) 東芝研究開発センター通信プラットホームラボラトリーに勤務 工博.Moblie IPv4及びIPSec の実装,IPv6における移動透過保証方式の検討,IETFへの標準化提案などを行う. 主にネットワークレイヤを中心としたモーバイルコンピューティングおよびセキュリティ技術の研究開発に従事
[推薦理由]
センサネットワークにおいて、現在用いられている IPsec のDead Peer Detection (DPD) における keep alive などの方式の問題点を改善し、効率化を図ったProactive DPD Triggerを提案し、実装評価している。提案方式はDPDの開始タイミングを検知し、通信トラフィックを監視することで、IPsec SA 一貫性喪失の検出に定期的な探査パケット交換を必要とせず、通信帯域を圧迫しない方式である。さらに、実装を用いた性能測定を通して提案方式の処理オーバヘッドが十分に小さいことを示している。課題設定ならびに方式提案/評価のいずれにおいても、参考となる論文であることから、本論文を推薦する.
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●Ajaxを用いたSSHクライアントシステムの提案と実装
[2008-CSEC-40(H20.3.7)](コンピュータセキュリティ研究会)

小須田優介 君 (正会員)

1985年生まれ 2008年3月 東京電機大学工学部第二部情報通信工学科 卒業 同年4月 NECソフト株式会社 入社
[推薦理由]
本論文は、JavaScriptによりブラウザ上でSSH over HTTP(s)を実現する仕組みを提案し、PC/携帯のWebインタフェースへの実装を行っている。この利用場面として、遠隔システムのリモート保守を目的とした支援ツールを想定しており、公開Webサーバに、内部のSSHサーバへの通信を中継させることで、エンド-エンドのSSH通信を簡易に実現できるという、実用性の高い手法である。また、実装にあたり様々な工夫を行っていること、処理速度も妥当であることから、今後のVPNの一手法として注目されることが期待される。以上の点で、本学会の多くの会員にとって有益であり、参考となる内容であるため本論文を推薦する。
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●車車間通信による安全運転支援システムの性能評価
[2007-ITS-30(H19.9.19)](高度交通システム研究会)

伊藤 健二 君 (正会員)

平11年名古屋工業大学工学部電気情報工学科卒業
平13年同大大学院工学研究科博士前期課程修了
同年(株)豊田中央研究所入社
以来,地上デジタル放送移動受信システム,車車間通信システムの研究に従事
情報処理学会,電子情報通信学会,IEEE各会員

[推薦理由]
本論文では,車車間通信を用いた安全運転支援システムについて,実環境を想定した評価を行っている.このため,数千台の車両が移動する環境で,市坪モデルを改良した電波伝搬モデルを用いて,より現実的なシミュレーションを行っている.また,評価のために,新たに初回相手車両把握地点,最大情報更新距離という二つの指標を提案し,安全運転支援サービスを確立させるための要件を明確化している.本研究は,車車間通信の評価方法として,今後の研究活動に極めて有用である.このため,山下記念研究賞授賞候補者として推薦する.
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●拡張ユースケースシナリオからテストプログラムの自動生成を支援する開発環境の提案と評価について
[2008-EVA-24(H20.3.19)](システム評価研究会)

古田 裕久 君 (正会員)

2000年早稲田大学理工学部情報学科卒業
2002年早稲田大学理工学研究科情報科学専攻修士課程修了
同年三菱電機(株)入社
現在、先端技術総合研究所にて、システムエンジニアリング、ソフトウェア再利用などの研究開発に従事
情報処理学会、電気学会各会員

[推薦理由]
テストプログラムを用いて自動テストするツールが普及しつつあるが、そのテストプログラムの開発に手間がかかるという問題がある。そこで発表者らは、システムの仕様を拡張ユースケースシナリオで 記述してテストプログラムを自動生成する開発環境を提案し、信頼性評価を行った。これにより、少ないテストプログラムコード開発量で効率的に統合システムテストを実施できることを確認した。本研究は実用性の高いテスト環境を提案し効果を確認している点で有用性の高い研究であり、システム評価研究会からの山下記念研究賞候補に推薦したい。
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●ユビキタス環境のためのスクリプト言語の設計
[2007-UBI-16(H19.11.29)](ユビキタスコンピューティングシステム研究会)
 

倉光 君郎 君 (正会員)

 

[推薦理由]
ユビキタスコンピューティングでは、データベース、Web、センサなど、粒度 の異なる多種多様な情報ソースを自由に組み合わせて処理する必要がある。本論 文では、異種データの変換をマッピングとして扱い、マッピング機能を統合する ことでユビキタスアプリケーションの開発を効率化するための「Konohaスクリプ ティング言語」を提案した。この言語を用いることで、情報の多様性や抽象性を 容易に処理することでき、それぞれの環境に適したアプリケーション開発が可能 となる。また、オープンソースによる公開も行っており、ユビキタスアプリケー ションの開発効率向上と普及に貢献する取り組みとして高く評価する。
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フロンティア領域

●Shift-Reduce法に基づく日本語固有表現抽出
[2007-NL-179(H19.5.24)](自然言語処理研究会)

山田 寛康 君 (正会員)

1999.3    山梨大学大学院工学研究科電子情報工学専攻博士前期課程 修了
2002.3    奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士後期課程 修了
2002.4-2006.8 北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科 助手
2006.9    株式会社ジャストシステム入社. 現在に至る
博士(工学)自然言語処理の研究に従事

[推薦理由]
数多くの手法が提案されている固有表現抽出において、本提案手法はShift-Reduce法の本質的な特長をうまく一般化し,固有表現抽出に適用したもので, 発想は新しく、同課題のいくつかの問題を同時に解決している.このアイデアは他のタスクにも応用できる可能性を秘めており,長く残る技術の一つになる可能性がある.高精度でかつ計算コストの小さい優れた手法であり今後の応用も期待されることから、推薦に値する。
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● ギブスサンプリングを用いた係り受け解析
[2007-NL-179(H19.5.24)](自然言語処理研究会)

中川 哲治 君 (正会員)

2000年筑波大学第三学群情報学類卒業 2002年奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士前期課程修了 同年沖電気工業株式会社入社 2006年奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士後期課程修了 2007年より情報通信研究機構専攻研究員
[推薦理由]
特定の文法理論に依らない係り受け解析において,係り先や係り元といった大域的に決定される素性を利用するためには,あらかじめ係り受け構造を仮定する必要があるが、全ての係り受け構造を仮定すると解の候補が爆発するため計算量が問題となる。この問題に対し,著者は,局所的素性を用いて決定される係り受け構造を基にギブスサンプリングを基に解候補を生成し,それら候補に対して大域的素性を用いた解析を行なう手法を提案し実装し精度の向上を得ている。完成度の高さが評価できる論文であり、推薦に値する。
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●適切な掲載数を決定するキーワード広告オークションの提案
[2007-ICS-149(H19.10.30)](知能と複雑系研究会)
 

櫻井 祐子 君 (正会員)

1997年 名古屋大学大学院多元数理科学研究科博士前期課程修了 2006年 九州大学大学院システム情報科学府博士後期課程修了 1997-2005年 日本電信電話株式会社コミュニケーション科学基礎研究所 2005-2007年 西日本電信電話株式会社 2007年より,日本学術振興会特別研究員 (RPD) 主に,マルチエージェントシステムおけるエージェント間の 合意形成メカニズムの設計に関する研究に従事 博士 (工学)
[推薦理由]
本発表は,検索エンジン等の広告の掲載順位を決定するキーワード広告オークションを対象とし,広告の掲載数を入札に応じて適切に設定するオークション方式の提案を行っている.近年,キーワード広告オークションは盛んであり,非常に重要である.オークションが繰り返し行われ,ソフトウェアエージェントが入札を行う.従って,理論的に安定性や頑健性が保証される方式が必要であり,既にオークション理論の成果が適用されている.提案方式は理論的に望ましい性質を保証するだけでなく,現用の方式よりも良い収入や社会的な結果をもたらすことを評価実験により示している.よって,完成度が高く,理論的にも実用的にも有益で意義深い研究である.
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●K-means Clustering Based Pixel-wise Object Tracking
[2007-CVIM-159(H19.5.14)](コンピュータビジョンとイメージメディア研究会)

華 春生 君 (学生会員)

平成13年7月 瀋陽工業大学 電子工程学部 電子計測学科卒業(中国)
平成13年10月 京都工芸繊維大学 工芸科学研究科 機械システム工学専攻 研究生 入学
平成14年3月 京都工芸繊維大学 工芸科学研究科 機械システム工学専攻 研究生 修了
平成14年4月 京都工芸繊維大学 工芸科学研究科 機械システム工学専攻 博士前期課程 入学
平成16年3月 京都工芸繊維大学 工芸科学研究科 機械システム工学専攻 博士前期課程 修士修了
平成16年4月 和歌山大学 システム工学大学院 知的計測クラスタ 博士後期課程 入学
平成19年3月 和歌山大学 システム工学大学院 知的計測クラスタ 博士後期課程 工学博士卒業
平成19年4月 大阪大学産業科学研究所 特任研究員 現在に至る
顔検出、通用物体追跡論理、クラスタの検出、レンジデータよりの複数歩行者検出と追跡に関する研究に従事
2006年4月 IPSJ Digital Courier船井若手奨励賞を受賞。情報処理学会正会員

[推薦理由]
本発表は,K-meansクラスタリングを用いた物体追跡アルゴリズムを提案したものである.新規性の高い手法であり,ノイズの多い背景下でも対象物を安定して追跡できる性能を持っている.ビデオレートの実時間処理も実現しており,実用性も高いと判断できる.以上より,本論文は平成20年度山下記念研究賞にふさわしいと考え,ここに推薦する次第である.
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●顔認識におけるぼけ除去のためのPSF推定
[2008-CVIM-161(H20.1.17)](コンピュータビジョンとイメージメディア研究会)
 

西山 正志 君 (正会員)

2000年 岡山大学工学部情報工学科卒業 2002年 岡山大学大学院自然科学研究科博士前期課程修了 2002年 株式会社東芝入社 現在、同社研究開発センターマルチメディアラボラトリー勤務 2008年 東京大学大学院学際情報学府博士課程入学 現在、社会人学生として在学中 コンピュータビジョン、パターン認識に関する研究に従事 IEEE Computer Society Workshop on Biometrics Best Paper Award、 第12回画像センシングシンポジウム優秀論文賞、平成17年度PRMU研究奨励賞などを受賞 情報処理学会、電子情報通信学会各会員
[推薦理由]
本発表は顔認識の識別性能に大きな影響を与えるカメラの焦点ぼけに関するものであり,ぼけによる劣化過程PSF(Point Spread Function) の推定手法とそれを用いたぼけ除去手法を提案したものである.ぼけによる顔の見え変動を統計モデルとして学習してPSF推定に利用することで,従来よく行われていた1枚の画像のみからの推定手法に比べて高信頼の推定が可能となる.本発表では,提案アルゴリズムを実際に顔認識システムに組み込んで識別率の改善を実証しており, 新規性とともに高い実用性を示していることから,最近注目されている同分野の読者に対して大きなインパクトを与えるものである.以上により,本論文は平成20年度山下記念研究賞にふさわしいと考え,ここに推薦する次第である.
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●仮想環境ソフトウェアに基づくLinuxネットワークトラブルシューティング実習環境提供システムの開発
[2007-CE-92(H19.12.7)](コンピュータと教育研究会)

立岩佑一郎 君 (学生会員)

2002年 名古屋工業大学工学部知能情報システム学科卒業 2004年 名古屋大学大学院人間情報学研究科修士課程修了 2008年 名古屋大学大学院情報科学研究科博士課程修了 同年 名古屋工業大学大学院工学研究科ながれ領域助教
[推薦理由]ネットワークトラブルシューティングの実習は、ネットワーク管理者育成のために必須であるにもかかわらず、不調なスイッチングハブや設定ミスのあるサーバなどを含むネットワークを学習者ごとに提供することは困難である。本研究はネットワークトラブルシューティングの実習環境を現実的に提供するためのシステムを開発した報告であり、汎用性・実用性のある研究で、システムの完成度も高い。よって、山下記念研究賞受賞候補として推薦する。
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●中学校におけるコンピュータを使わない情報教育(アンプラグド)の評価
[2008-CE-93(H20.2.16)](コンピュータと教育研究会)

井戸坂幸男 君 (準会員)

1984年3月:三重大学教育学部 中学校教員養成課程 技術科 卒業    4月:北牟婁郡三船中学校組合立三船中学校 勤務 1986年4月:飯南郡飯高町立飯高東中学校 勤務 1993年4月:多気郡大台町立三瀬谷中学校 勤務 1994年4月:多気郡大台町立大台中学校 勤務 1995年4月:三重大学教育学部附属中学校 勤務 2000年4月:松阪市立鎌田中学校 勤務 2004年4月:飯南郡飯南町立飯南中学校 勤務 (2005年 市町村合併により、松阪市立飯南中学校に改名)
[推薦理由]
小中学生にコンピュータを使わせる場合、操作教育が中心になりがちで、 「情報の科学的理解」の教育に結び付かない傾向がある。それを防ぐにはコンピュータを使わない教育も併用するのが良い。この試みは Computer Science Unplugged として、近年、海外で提唱されている。本発表はその観点を取り入れ、コンピュータを使わない教育でどこまで教えられるかを評価しており、今後の日本の情報教育への問題提起として価値がある。よって、山下記念研究賞受賞候補として推薦する。
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●物語映画の時空間分析-小津映画を素材として-
[2007-CH-74(H19.5.25)](人文科学とコンピュータ研究会)

佐藤 大和 君 (正会員)

1967年北海道大学工学部電子工学科卒業
1969年同大学大学院工学研究科修士課程修了
同年日本電信電話公社入社(武蔵野電気通信研究所)
日本電信電話株式会社・基礎研究所、ヒューマンインタフェース研究所等を経て、
1994年NTTアドバンステクノロジー(株)に入社
1998年同社理事・音声音響技術センター所長
2003年東京工業大学大学院情報理工学研究科特任教授(21世紀COE)
2008年東京外国語大学特任教授(グローバルCOE)、現在に至る。工学博士

[推薦理由]
人文学の分野では、これまで映画は批評的あるいは感性的に論述されることが多かったが、本論文では、小津映画のショットや画面の特性を統計的かつ数理的観点から分析し、彼の映画のもつ魅力の根源を具体的に解き明かしている。明らかにされたショットの時間特性や黄金分割比を多用する構図に関して、制作技術の側面からの考究がなされており具体性がある。さらに、ショットの時間特性と日本詩歌の音数律との類似性も指摘するなど視野が広い。ディジタル化された映像文芸の分析研究として類例のない試みであり、人文科学とコンピューターの融合研究として、好個の一例を提供するものである。以上の理由により,人文科学とコンピュータ研究会研究運営委員会において,当該候補者を山下記念研究賞の受賞者として推薦する旨決定したものである.
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●暦象オントロジの構築-日本旧暦時代の文献分析支援のために-
[2007-CH-76(H19.9.27)](人文科学とコンピュータ研究会)

相田 満 君 (正会員)

1981年3月 中央大学文学部文学科国文学専攻卒業
1983年3月 中央大学大学院博士前期課程(国文学)修了
1986年3月 中央大学大学院博士後期課程(日本漢文学)終了
1986年4月 東京都立本所工業高等学校教諭(国語科)
1992年4月 国文学研究資料館助手
2007年4月 人間文化研究機構国文学研究資料館助教 
2008年3月 (中央大学大学院文学研究科)博士(文学)

[推薦理由]
本研究は、日本の古典時代を含む情報資源の共有を目的に構築された101万件超の暦日DB作成についての報告と構想である。本DBの特徴は、暦日の表現をプログラムによる変換出力ではなく、ユリウス通日をキーとして、実際の運用に即して複雑な暦法の変遷を吸収した実表形式にした点である。これにより、言語・地域・分野を超えた人文情報の連携をはかるための拡張運用が容易になる。さらに論中では、イレギュラーな記述を持った情報資源への対応や、人間の認知に暦日概念が大きく関わってきた歴史を踏まえての、暦日オントロジの構想が示されたが,これも十分説得性があるものであった。以上の理由により、人文科学とコンピュータ研究会研究運営委員会において、当該候補者を山下記念研究賞の受賞者として推薦する旨決定したものである。なお、本DBは人間文化研究機構資源共有化事業の時空間システムの基盤データにも採用されたことを付記しておく。
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●歌声の旋律と動的変動を特徴付けるための確率的な表現手法に関する検討
[2007-MUS-71(H19.8.2)](音楽情報科学研究会)

大石 康智 君 (学生会員)

2004年名古屋大学工学部電気電子情報工学科卒業
2006年同大学大学院情報科学研究科博士前期課程修了
現在,同大学大学院情報科学研究科博士後期課程在学中
音楽情報処理,音声言語情報処理に興味を持つ
2005年日本音響学会ポスター賞受賞
情報処理学会,日本音響学会各学生会員

[推薦理由]
音楽の大切な要素の一つである歌声は、時間的に複雑な変動をする音響信号であり、それをどう表現し、モデリングするかは重要で難しい研究課題である。本研究は、歌声の旋律とビブラートのような動的変動を同時に特徴付けるアプローチによってこの課題に取り組み、歌声の基本周波数とその時間微分からなる相平面とアトラクタを利用した新しい表現手法によって解決しており、その着想から評価に至る一連の研究成果は高く評価できる。独創的な成果に加え、発表者による説明も魅力的でわかりやすく、本賞に相応しい論文として推薦する。
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●SingBySpeaking:歌声知覚に重要な音響特徴を制御して話声を歌声に変換するシステム
[2008-MUS-74(H20.2.8)](音楽情報科学研究会)

齋藤 毅 君 (正会員)

2006年北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士後期課程修了 博士(情報科学).ATR認知情報科学研究所を経て, 2007年4月から産業技術総合研究所特別研究員 歌声知覚・合成,及び音声の個人性知覚に関する研究に従事

 

[推薦理由]
歌声の知覚・生成機構を解明する上で、歌声特有の各種音響特徴を操作・変換して合成ができる枠組みは重要である。本研究は、基本周波数・スペクトル・音韻長を操作して歌声特有の音響特徴を付与することによって、歌詞の朗読音声を歌声に変換する歌声合成システムを実現したもので、その新しいアプローチは、様々な応用や実験に影響を与える独創的な提案である。発表者による歌声に対する深い理解と、自然な歌声合成音を生成する高い技術に裏付けられた成果は極めて優れており、山下記念研究賞に相応しい論文として高く評価できる。
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●HMM音声合成システム(HTS)の開発
[2007-SLP-69(H19.12.21)](音声言語情報処理研究会)

全 炳河 君 (正会員)

昭54生 平11 鈴鹿高専・電子情報卒 平13 名工大・知能情報卒 平18 名工大大学院・情報工学専攻・博士後期課程修了 平15.4~平16.3 ATR音声言語コミュニケーション研究所 研修研究員 平16.6~平17.5 米国IBMワトソン研究所 共同研究員.平18.4~平20.3 文科省リーディングプロジェクトe-Society 研究員 平20.4~平20.7 EC FP7 EMIMEプロジェクト 研究員.現在,東芝欧州研究所・ケンブリッジ研究所 音声技術班に所属. 工博.統計的音声認識・合成の研究に従事.平18 日本音響学会 粟屋潔学術奨励賞,平20日本音響学会 独創研究奨励賞板倉記念, 電気通信普及財団 テレコムシステム技術賞,電子情報通信学会 情報システムソサイエティ論文賞受賞.日本音響学会,日本情報処理学会,ISCA会員
[推薦理由]
発表者は,近年注目を集める隠れマルコフモデル(HMM)に基づく統計的パラメトリック音声合成方式の研究と,そのためのオープンソースソフトウェアツールキット「HMM音声合成システム(HTS)」の開発を継続している.本発表では,その機能や利用・開発状況,他分野への応用などに関する最新の情報が紹介された.また,様々なデモンストレーションを交え,本方式の有効性と将来性を強く印象付ける極めて説得力に富んだ発表であった.音声合成研究の更なる発展に多大な寄与があり,よって山下賞に推薦するものである.
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●頑健なパラメタ推定のためのAggregated EM法の提案と評価
[2007-SLP-69(H19.12.21)](音声言語情報処理研究会)
  

篠崎 隆宏 君 (正会員)

1999年 東京工業大学工学部情報工学科卒業 2001年 東京工業大学大学院情報理工学研究科修士課程修了 2004年 東京工業大学大学院情報理工学研究科博士課程修了.博士(学術) 2004年 米ワシントン大学工学部電気工学科研究員 2006年 京都大学学術情報メディアセンター特任助教 2007年より、東京工業大学大学院情報理工学研究科計算工学専攻特別研究員 音声認識の研究に従事 情報処理学会,日本音響学会,IEEE,ISCA各会員
[推薦理由]
混合ガウス分布やHMMなどの推定に一般に用いられるEMアルゴリズムでは、学習データにオーバーフィットする過学習の問題が内在する。本研究では、この解決法として、バギングと同様に学習データの部分集合から複数のモデルを推定し、それらを統合する方法を提案し、音声認識などのタスクで評価を行っている。発表者が以前に提案していたクロスバリデーションEM法と同様の枠組みであるが、両手法とも統計的パターン認識の古典的な問題を実用的に解決するものとして、独創性・有効性ともに高く評価できる。
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●情報量に基づく探索制御手法-チェスにおけるSingular Extensionへの応用-
[ゲームプログラミングワークショップ2007(H19.11.10)](ゲーム情報学研究会)

竹内 聖悟 君 (学生会員)

2005年東京大学教養学部卒業. 2007年東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了 現在,東京大学大学院総合文化研究科博士課程 人工知能,特に思考ゲームに興味
[推薦理由]
ゲームプログラミングでは、探索を効率的に行うための様々な手法が存在するが、それらを実際に活用するためには種々のパラメータを適切に設定することが必要である。本推薦論文は、これらのパラメータの意味を評価値が与える情報量を手がかりにとらえ直すことで新たなパラメータのとり方を提案したもので、実際にfutility pruningとsingular extensionという二つの手法における実験で良い結果を残している。以上より、この研究は、他の様々な探索手法への応用も含めて大きな可能性を開くものであると判断し、本研究会は上記の研究発表を山下記念研究賞に推薦する。
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●コンテンツ再利用可能なイベント駆動型ナビゲーションシステムの開発と実運用
[2007-EC-7(H19.5.10)](エンタテインメントコンピューティング研究会)
 

寺田 努 君 (正会員)

1997年大阪大学工学部情報システム工学科卒業 1999年同大学院工学研究科博士前期課程修了 2000年同大学院工学研究科博士後期課程退学 同年より大阪大学サイバーメディアセンター助手 2005年より同講師 2007年神戸大学大学院工学研究科准教授 現在に至る. 2004年より特定非営利活動法人ウェアラブルコンピュータ研究開発機構理事,2005年には同機構事務局長を兼務 2004年には英国ランカスター大学客員研究員を兼務.博士(工学) アクティブデータベース,ウェアラブルコンピューティンユビキタスコンピューティングの研究に従事
[推薦理由]
本発表は、ウェアラブル・コンピューティングのためのコンテンツ開発を容易にすることを目的としたもので、その成果をオープンソースで広く公開し、単なるプロトタイプの実装に留まらない取り組みとなっている。また、実装したコンテンツについても一般の人を対象に大規模な実証実験を実施し、好まれたコンテンツの傾向などを明らかにしている。広域ウェアラブル・コンピューティングでのコンテンツ開発において価値の高い研究である。
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●Fast and Accurate Algorithms for Protein Hinge Detection
[2007-BIO-10(H19.9.13)](バイオ情報学研究会)
 

渋谷 哲朗 君 (正会員)

平成7年 東京大学理学部情報科学科卒業 平成9年 同大学大学院理学系研究科情報科学専攻修士課程修了 平成9年 日本アイ・ビー・エム(株)、東京基礎研究所、研究員 平成14年 東京大学大学院理学系研究科より博士(理学)授与、 平成16年 東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター、講師
[推薦理由]
本論文は、タンパク質のヒンジ構造検出のためのアルゴリズムを理論的解析に基づき設計し、かつ、実際に実装し、その有効性を確かめたものである。提案されたアルゴリズムは、従来手法と比べて遜色のない正確な検出が可能であるにもかかわらず、従来手法よりも遥かに高速な線形時間での計算が可能である。また本論文がヒンジ構造であるかどうかの判定に明確な数値的な指標を導入したことで、経験的な評価しかされなかった従来手法と異なり、結果の良し悪しの判定もきわめて容易となった。
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