「単語分散表現による類義語統一と単語N-gramによるフレーズ抽出に基づくセキュリティ要件分類手法」

2022年度論文賞受賞者の紹介

単語分散表現による類義語統一と単語N-gramによるフレーズ抽出に基づくセキュリティ要件分類手法

[情報処理学会論文誌 Vol.63 No.1, pp.94-103]
[論文概要]

 見落とされやすい非機能要件の特定を支援するために,非機能要件分類手法が提案されている.しかしながら,既存手法は,(1)単語の類似性を考慮しておらず,類似単語で構成される要件文を異種類の非機能要件として扱うことがある,(2)単語の順序関係を考慮しておらず,同一単語で構成されるが異種類の非機能要件を同種類の非機能要件として扱うことがある,という問題がある.本研究では,単語の類似性と単語の順序関係を考慮した非機能要件分類手法を提案している.非機能要件の内,セキュリティ要件の分類を対象とした評価実験の結果,提案手法は既存手法よりも分類性能に優れることを確認した.


[受賞理由]

 本研究は,ソフトウェア要件書中で見落とされやすい非機能要件の特定を支援する分類手法を提案している.この手法は,既存研究における課題に対し,単語の類似性と単語の順序関係を考慮することで精度向上を実現しており,新規性・実用性が高いものである.丁寧な評価実験により教師ありアルゴリズムと分類対象のセキュリティ要件によって,精度が最も高い類義語統一処理とフレーズ抽出の組合せが異なることを明らかにし,今後の発展性も期待できる.論文としても了解性が優れ,論文の到達点および完成度が高く,論文賞にふさわしいものと判断してここに推薦する.

宮崎 智己 君

平成29年和歌山大学システム工学部情報通信システム学科卒業.平成31年同大学大学院システム工学研究科博士前期課程修了.ソフトウェア工学,特に,リポジトリマイニングの研究に従事.

東 裕之輔 君

平成27年和歌山大学システム工学部情報通信システム学科卒業.平成29年同大学大学大学院システム工学研究科博士前期課程修了.同年より株式会社日本総合研究所入社.令和5年和歌山大学大学大学院システム工学研究科博士後期課程修了.博士(工学).ソフトウェア工学,特にマイニングソフトウェアリポジトリの研究に従事.

大平 雅雄 君

平成10年京都工芸繊維大学工芸学部電子情報工学科卒業.平成15年奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士後期課程修了.同大学情報科学研究科助教を経て,現在和歌山大学システム工学部教授.博士(工学).ソフトウェア工学,特にマイニングソフトウェアリポジトリの研究に従事.電子情報通信学会,IEEE,ACM各会員.