「敵対的生成ネットワークを用いた3次元点群形状特徴量の教師なし学習」

2019年度論文賞受賞者の紹介

敵対的生成ネットワークを用いた3次元点群形状特徴量の教師なし学習

[情報処理学会論文誌 Vol.60 No.7, pp.1315-1324]
[論文概要]

 従来の3次元形状向け深層ニューラルネットワークの多くは,ラベル付きの3次元形状を用いた教師あり学習を行うことで高精度な形状特徴量を獲得する.しかし,現存する3次元形状データの多くはラベルを持たない.そのため,ラベルなしの3次元形状から教師なし学習により高精度な特徴量を獲得する手法が望まれている.そこで本研究では,教師なし学習の一種である敵対的生成ネットワークを用いた,点群向け3次元形状特徴量を提案する.形状類似検索のシナリオで評価実験を行った結果,提案手法が獲得した形状特徴量は,既存の手作り形状特徴量を上回る精度で3次元形状を比較できることが分かった.

[受賞理由]

 本論文では,3次元形状データを比較,分類,検索するために必要な3次元形状特徴量を学習する方法として点群GANと呼ばれる敵対的生成ネットワークを応用した手法を提案した.
従来の3次元形状処理手法の多くは,ラベル付きの形状データを要求するが,現存のデータの多くはラベルを有しておらず,実問題設定との乖離があった.本堤案手法はGANを用いることでラベルなしのデータに対応できたという点が大きく評価された.
また,近年の機械学習の隆盛により,安価なセンサーから大量に得られるラベルなしの点群データを扱う状況は今後も多くなると考えられることから産業的な応用に寄与できる可能性が高い.
以上の点から、情報処理学会論文賞に相応しい優れた論文であると言える.

上西 和樹 君

2018年山梨大学工学部コンピュータ理工学科卒業.2020年山梨大学大学院医工農学総合教育部修士課程工学専攻コンピュータ理工学コース修了.同年4月より株式会社アイヴィスに在籍.

古屋 貴彦 君

2008年山梨大学工学部コンピュータ・メディア工学科卒業.2010年山梨大学大学院医学工学総合教育部修士課程修了.同年ニスカ株式会社入社.2015年日本学術振興会特別研究員(DC2).同年山梨大学大学院医学工学総合教育部博士課程修了.同年より山梨大学工学部コンピュータ理工学科助教.興味は,3次元形状や2次元画像等のマルチメディア情報検索,機械学習.


大渕 竜太郎 君



1981年上智大学理工学部を卒業,1983年電気通信大学大学院修士課程を修了.同年日本アイ・ビー・エム(株)入社.1994年にUniversity of North CarolinaよりPh.D.取得.同年よりIBM東京基礎研究所に勤務.1999年より山梨大学助教授,2007年より同教授.興味は3次元形状の解析・比較・認識・検索など.