第2回:
トラスト時代におけるセキュリティ技術

日時:2019年7月30日(火) 10:00~16:45
会場:化学会館7F(東京会場)
   大阪大学中之島センター7F 講義室702(大阪会場)
   東北大学電気通信研究所 本館1階 オープンセミナールーム(東北会場)
受付開始:9:30~

トラスト時代におけるセキュリティとして、安全性はもちろんのこと、ユーザ視点での利便性を兼ね備えた技術が必要とされている。バイオメトリクス個人認証は、安全性と利便性を兼ね備えており、トラスト時代におけるセキュリティ技術として重要な技術であり、産業的にも爆発的な普及期に入りつつある。本講演では、バイオメトリクス個人認証を中心に、顔や静脈といった各モダリティ視点からのセキュリティや、攻撃に対する信頼性、暗号技術との融合、ヒューマニクスの観点からのセキュリティ、社会的な受容性など、多角的な視点からの研究や応用事例を紹介し、次世代セキュリティ技術のあるべき姿を概観する。
オープニング[10:00~10:10]

コーディネータ:今岡 仁

日本電気株式会社 NECフェロー

【略歴】1997年大阪大学大学院工学研究科応用物理学専攻博士課程修了。1997年NEC基礎研究所入社。脳視覚情報処理に関する研究に従事。2002年NECマルチメディア研究所に異動。顔認証技術に関する研究開発に従事。主に顔照合アルゴリズムに関する研究開発を行い、NECの顔認証技術を応用した製品「NeoFace」の事業化に貢献。海外空港出入国管理等に45ヶ国で採用。2010年NECの研究開発チームリーダーとして、顔認証技術に関するNISTベンチマークテストにおけるトップ性能獲得に貢献。以降、現在まで4回連続トップ獲得。現在、NECフェロー。博士(工学)。

セッション1[10:10-11:10]

安全・安心で豊かな社会を支える顔認証技術

近年の犯罪やテロの増加に伴い、顔認証技術に関する必要性は年々高まっている。顔認証技術は、被撮影者が認証動作を必要としない点や、履歴として残された画像から本人特定が容易にできる点で、他の生体認証技術にはない優位性がある。NECでは2009年から、米国国立標準技術研究所(NIST)により実施された評価プログラムに参加し、これまでに4回連続トップを獲得している。本講演では、顔認証アルゴリズムの変遷や、応用事例を紹介する。

講師:今岡 仁

日本電気株式会社 NECフェロー

【略歴】1997年大阪大学大学院工学研究科応用物理学専攻博士課程修了。1997年NEC基礎研究所入社。脳視覚情報処理に関する研究に従事。2002年NECマルチメディア研究所に異動。顔認証技術に関する研究開発に従事。主に顔照合アルゴリズムに関する研究開発を行い、NECの顔認証技術を応用した製品「NeoFace」の事業化に貢献。海外空港出入国管理等に45ヶ国で採用。2010年NECの研究開発チームリーダーとして、顔認証技術に関するNISTベンチマークテストにおけるトップ性能獲得に貢献。以降、現在まで4回連続トップ獲得。現在NECフェロー。博士(工学)。

セッション2[11:20-12:20]

人のトラストとバイオメトリクス

近年、日々の様々なシーンでICTを活用できる環境が整い、様々な業務や商取引に用いられる中、利用者の本人確認を確実かつ簡単に行う手段として生体認証が普及してきている。本講演では、本人確認技術として使われている生体認証技術についての動向を紹介すると共に、その具体的な活用事例について紹介する。さらに、人のトラストとバイオメトリクスの関係について、国際標準、関連の法制度の状況も含めて紹介する。

講師:新崎 卓

株式会社富士通研究所 デジタル革新コア・ユニット プリンシパルエキスパート

【略歴】1988年株式会社富士通研究所に入社、以来、指紋認証や手のひら静脈認証をはじめとするバイオメトリクス技術及びシステムの研究開発に従事。携帯電話への指紋認証搭載やPCへの手のひら静脈認証搭載、これらを活用した生体認証システムの研究開発等を担当。ISO/IEC JTC1 SC37専門委員会委員長、SC27WG5エキスパート、FIDO Alliance WGメンバー、情報処理学会会員。

セッション3[13:25-14:25]

バイオメトリクス・セキュリティ─Adversarial ExamplesとWolf攻撃─

バイオメトリクスの安全性は,バイオトリック情報データベースや通信路等の情報システムの一般的な機密情報保護の意味での安全性に加えて,センサーに人工生体が提示された際に自然生体との誤認を避ける偽造困難性(Presentation Attack耐性)の意味での安全性と,生体特徴を機械学習で識別するアルゴリズムの学習理論的な脆弱性(Wolf攻撃/Adversarial Examples)とその対策技術の耐性を含めて議論する必要がある。本講演では、後者の学習理論的な脆弱性に焦点を絞り,これまでの研究と最近の研究を比較する。特に,Adversarial Examplesは自然特徴(本人特徴)の近傍で任意クラス(他人)の識別領域に入るサンプルを,適切な損失関数と深層学習の手法を用いて自動的に求められることから,バイオメトリクスの新たな脅威になっている。これらの比較を通じてバイオメトリクスの安全性研究の今後を考える。

講師:大塚 玲

情報セキュリティ大学院大学 情報セキュリティ研究科数理科学コース 教授

【略歴】1991年大阪大学工学研究科博士前期課程修了。2002年東京大学大学院工学系研究科電子情報工学専攻博士課程修了。博士(工学)。産業技術総合研究所などを経て2017年4月より情報セキュリティ大学院大学教授。2006-2010産業技術総合研究所情報セキュリティ研究センター・セキュリティ基盤技術研究チーム長。2007-2014中央大学研究開発機構教授。電子情報通信学会バイオメトリクス研究専門委員会委員長。

セッション4[14:35-15:35]

デジタル・トラスト時代の認証基盤~Public Biometrics Infrastructure (PBI) と関連技術~

IoTやビッグデータの利活用が進む中、人、モノ、データ、プロセスなどを含むシステム全体に対してトラストが求められており、その信頼の起点として「認証」の重要性がますます高まっている。本講演では、人に対する認証技術と、モノやデータに対する認証技術について、デジタル・トラスト時代における期待と課題を明らかにする。また課題の解決に向けた一つの方向性として、生体認証と暗号学的認証を融合したPublic Biometrics Infrastructure (PBI) の概念と実現技術、実用化例を紹介する。さらにPBIと公開鍵認証基盤(PKI)、ブロックチェーン技術、FIDO規格などとの連携についても議論する。

講師:高橋 健太

株式会社日立製作所 研究開発グループ ユニットリーダ主任研究員

【略歴】2000年東京大学大学院修士課程了。2012年同大学院情報理工学系研究科博士課程了。博士 (Computer Science)。2000年株式会社日立製作所入社。以来、バイオメトリクス、暗号技術および情報セキュリティの研究開発に従事し、現在ユニットリーダ主任研究員。2015年より東京大学大学院客員准教授。2008年情報処理学会論文賞、2011年SISAP Best paper、2012年 IEEE BTAS Best reviewed paper、2015年情報処理学会長尾真記念特別賞、2016年ドコモ・モバイル・サイエンス賞、関東地方発明表彰発明奨励賞など受賞。

セッション5[15:45-16:45]

ヒューマニクスセキュリティの観点からのバイオメトリクス

生体認証技術が隆盛を迎えるに従い、人に寄りそう形での技術進化がより一層求められることになる。本講演では、人(ヒューマニクス)の観点から生体認証技術の次世代像を議論する。1つは、人が安心して利用することができる次世代生体認証技術である。生体認証には、「生体情報は生涯不変であり、任意に更新できない」という物理的性質に起因する、なりすましとプライバシの問題が存在する。これに対し、皮膚や爪の微細生体部位を利用することによって、生体情報に対する「忘れられる権利」を満たすマイクロ生体認証技術に関する研究動向を紹介する。もう1つは、人とAIの識別問題(CAPTCHA)を取り扱う次世代ソフトバイオメトリクス技術である。コモンセンス(常識)やゲーミフィケーションに基づくCAPTCHA技術の研究動向を紹介する。

講師:西垣 正勝

静岡大学 創造科学技術大学院 教授

【略歴】1990年静岡大学・工学部・光電機械工学科卒。1995年同大学大学院博士課程了。日本学術振興会特別研究員(PD)を経て、1996年静岡大学情報学部助手。同講師、助教授の後、2010年より同創造科学技術大学院教授。博士(工学)。情報セキュリティ全般,特にヒューマニクスセキュリティ、メディアセキュリティ、ネットワークセキュリティ等に関する研究に従事。2013~2014年情報処理学会コンピュータセキュリティ研究会主査。2015~2016年電子情報通信学会バイオメトリクス研究専門委員会委員長。2016年より日本セキュリティマネジメント学会常任理事。本会フェロー。