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最終更新日:2008年11月7日
   
   
 2008年11月27日(木) 9:30−17:00
 東京電機大学神田キャンパス 7号館1F 丹羽ホール
  インターネットに関する研究・開発は,机上だけでは限界がある.インターネットにおける新たなアーキテクチャの創造やプロトコル開発,アプリケーションの開発・展開では,システムの設計・構築・試験の後に,テストベットネットワークでの運用,実インターネットでの限定的な運用を経て,実際の大規模な配備へと徐々に拡張する手法が一般的である.実際のネットワークに試験的なシステムを導入し試験・評価することで,システムの改善を運用中のネットワーク上で進めるという手法は,インターネット技術の急速な発展に大きく貢献した.一方で,インターネットがインフラとしての地位を確立した今日では,実運用ネットワークに不用意に不安定なシステムを組み込むことが困難となっている.
WIDEプロジェクトでは,その当初から『右手に研究,左手に運用』の標語を掲げ,実ネットワークの運用から多くの成果を得てきた.連続セミナー第5回となる今回は,インターネットオペレーションとその応用に焦点を当てたセッションを行う.本日のセッションでは,研究ネットワークの現状と将来についてのキーノートに続き,オペレーション技術の最新動向,運用の最前線の話題,さらに,ネットワーク計測とその応用やテストベット技術について紹介する.
 
 
 宇多 仁 北陸先端科学技術大学院大学 情報科学センター 助教
略歴 2004年北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士後期課程修了.同年同情報科学センター助手.2006年同助教.これまで、AYAME Project などでMPLS 技術の研究開発を推進.近年は,キャンパスネットワークを始めとする学内情報環境の整備・運用やそれに係わる研究に従事.また、WIDE Project やInterop Tokyo などにおけるネットワーク運用にも参加.博士(情報科学).
 
9:30-9:35
 オープニング

セッション1

9:35

10:50
 日本と世界の研究ネットワーク 〜WIDEの果たす役割〜

   中村 修 (慶應義塾大学 環境情報学部 教授)

講演概要 1988年,東工大と慶應大間が初めてTCP/IPを用いた回線で繋がった.これが日本のインターネットの歴史の始まりである.インターネットの技術開発は机上のみの研究で進むものではなく,運用とともに発展してきた.WIDEプロジェクトで は,日本のインターネット研究の草分け団体として,日本最初のインターネットの当時から運用に積極的に取り組み,運用経験を生かしたさまざまな新しい技術の研究を続けてきた.本セッションでは,WIDEプロジェクトが運用している研究ネットワークや,日本のインターネットエクスチェンジの先駆けとなったNSPIXPプロジェクト,世界各地で整備が進むグローバルな研究ネットワーク,さらには,Interop TokyoにおけるShowNetなどの話題を取り混ぜ,WIDEプロジェクトが果たしてきた役割や運用の世界を紹介する.

略歴 1983年慶應義塾大学工学部卒業.1985年,同理工学研究課数理科学専攻修了,理学修士.1990年同博士課程修了,工学博士.1990年から1993年東京大学大型計算機センター助手.東京大学では,東京大学キャンパスネットワーク構築に携わる.1993年に慶應義塾大学環境情報学部助手となり,2005年より慶應義塾環境情報学部教授.インターネットの創世記からインターネットの技術開発と普及に携わる.最近では,IPTVフォーラムのワーキンググループに参加し,地デジやワンセグとインターネットの技術開発にも携わる.現在,WIDEプロジェクトボードメンバー,電子情報通信学会,ACM.
10:50-11:00
 休憩


セッション2

11:00

12:00

 インターネット運用の最新動向

  永見 健一 ((株)インテック・ネットコア 取締役CTO) 

講演概要 本講演では,インターネットの状況や課題を紹介する.インターネットは複数の組織が相互接続することによって構成されているため,容易に接続することが可能であり,全世界で使われるネットワークになってきた.しかし,インターネットを構成する組織の接続形態には,無秩序ではなく,規則性がある.この規則性によってインターネットが接続されているが,この規則性による課題も存在する.インターネットの運用のためには,このような接続形態のほかにも,経路情報やIPアドレスの現状を把握する必要がある.本講演では,このようなインターネットの現状を説明する.また,IETFのオペレーションエリアで検討されている最新動向も紹介する.

略歴 1992年 東京工業大学理工学研究科修士課程終了.同年 株式会社東芝入社.IETF MPLS WGで標準化活動を行い, CSRおよびMPLSに関するRFCを提出.2002年 株式会社インテック・ネットコア入社.現在,同社でMPLSおよび次世代ネットワーク研究に従事.博士(工学).
12:00-13:00
 お昼休み

セッション3

13:00

14:10
 運用における最新技術とこれからの普及の展望

  関谷 勇司 (東京大学 情報基盤センター 講師) 

講演概要 現在インターネットの構築,運用に用いられている技術や,これから導入されようとしている最新技術,ならびに普及を目指して標準化が進められている技術を紹介する.概念的な観点ならびに技術的な観点からの紹介を行う.この技術紹介を通じて,今後インターネットで用いられる,もしくは必要とされる技術の動向をつかみ,今後のインターネットオペレーションの動向を探る.

略歴 1997年 京都大学総合人間学部卒.1999年 慶応義塾大学政策・メディア研究科修了.同年 10月から 2000年 3月まで USC/ISI 訪問研究員として DNS の研究に従事.2005年 慶応義塾大学政策・メディア研究科後期博士課程修了.博士(政策・メディア).2002年より東京大学情報基盤センター助手に就任.2007年同センター助教.次世代ネットワークプロトコルの研究開発と DNS の信頼性向上に関する研究に従事.
14:10-14:20
 休憩

セッション4

14:20

15:30
 インターネットトラフィックの変遷

  福田 健介 (国立情報学研究所 アーキテクチャ科学研究系 准教授)

講演概要 近年のブロードバンドインターネットの普及発展で,一般の人々が家庭で広帯域のネットワークを利用することがあたりまえになった.そしてその結果,現在の推定国内インターネットトラフィック総量は813Gbps,年率1.4倍のペースで増加している.インターネットを流れるデータの統計的な振る舞いは,インターネットを利用する私たちの生活パターン,アプリケーションの違い等多くの要因で決まる.このセッションでは,最近7年間の各種トラフィックデータを振り返って,トラフィックの時空間的な特性のうち何が変わって,何が変わらないのかを紹介していく.

略歴 1999年慶應義塾大学大学院理工学研究科計算機科学専攻後期博士課程修了.博士(工学).1999年-2005年NTT未来ねっと研究所.その間2002年ボストン大学訪問研究員.2006年より現職(国立情報学研究所アーキテクチャ科学研究系准教授).
15:30-15:40
 休憩

セッション5

15:40

16:50
 インターネットの再現

  宮地 利幸 ((独)情報通信研究機構 連携研究部門 産学連携グループ
                           北陸リサーチセンター 専攻研究員)
 

講演概要 インターネットはすでに人々の生活に浸透しており,同時にその信頼性の確保が重要な課題となっている.インターネット全体の信頼性の確保のために,模倣環境において,インターネット自体と一つ一つの技術についての挙動を把握すると言ったことが行われている.これにはネットワークシミュレータのように論理的に網を構築する方法,そして実際にインターネットで利用されている機器を多数用意し,インターネット上で利用されている実装そのものを利用する実践的な方法が存在する.これらは双方とも重要な技術であり,検証の目的によって使い分けられる.本講演では,特に実践的な方法に着目し,インターネットを実験用の環境に再現する手法やこれまでの取り組みについて述べる.ネットワーク技術検証の重要性や,その利用手法の可能性について考える場となれば幸いである.

略歴 2007年北陸先端科学技術大学院大学博士後期課程修了.同年情報通信研究機構北陸リサーチセンター専攻研究員.ネットワーク技術の検証,特にStarBEDを用いた実証環境の構築,ネットワーク実験のモデリングに関する研究に従事.博士(情報科学).
16:50-17:00
 クロージング