情報産業のグローバル化に対応した上級資格制度

情報産業のグローバル化に対応した上級資格制度
—— 制度案の公表と試行の開始 ——

                                                                                                       2013年6月3日
一般社団法人情報処理学会

 
一般社団法人情報処理学会(会長:古川一夫)は、情報技術者を対象とする上級資格制度の創設を検討して参りましたが、このほど制度案がまとまりましたので、公表いたします。

情報システムは現代社会の基本的なインフラとなっており、それを支える情報技術者は高度の能力を有するプロフェッショナルであることが望まれます。ところが、我が国においては情報技術者のプロフェッションが確立しておらず、プロフェッショナルとしての能力を可視化する適当な手段もないのが実情です。そこで、本学会では「認定情報技術者制度」を創設することにいたしました。この制度は、高度の専門知識と豊富な業務実績を有する情報技術者に資格を付与することにより、その能力を可視化するとともに、資格を有する情報技術者からなるプロフェッショナルコミュニティを構築していくことを目的としています。

本学会では、世界50余ヶ国の情報処理関連団体が加盟するIFIP(情報処理国際連合)の推進する資格制度との連携も視野に入れて制度設計を行っており、我が国の情報産業におけるグローバル人材の育成という緊近の課題にも応えたものとなっています。

制度の実施に先立ち、制度案を公表して広くご意見を伺うとともに、小規模な試行を実施し、本格実施に向けた準備を進めていきたいと考えております。 

資格制度の概要

 「認定情報技術者制度」は、日本企業の間に広く普及しているITスキル標準を参照モデルとした制度です。ITスキル標準では情報技術者のレベルを7段階に分けて定義していますが、本制度はレベル4以上の上級技術者を対象としています。ITスキル標準で定められたスキル評価方法に基づき、所定のレベルに相当する能力を有すると判定された技術者に対して、情報処理学会が認定書を発行します。 

情報技術の分野は発展のスピードが特に速いため、情報技術者はつねに新しい知識やスキルを習得する努力を求められています。最近の国際標準でもCPD(継続研鑽)を前提とした資格の更新制が必須とされるようになってきています。本資格は有効期間を3年としており、更新に際しては所定のCPD実績が条件となります。

資格制度の意義

企業や政府・自治体等は、情報技術者の採用の際に、技術者の能力の評価指標としてこの資格を参考にすることができます。情報システムベンダーは、自社の人材の能力を客観的に証明する手段としてこの資格を活用できると同時に、社内で人材育成を進める際の指標として利用することができます。そして、より重要なことは、情報技術者自身がプロとしての自覚のもとに能力の維持向上に努めることによって、産業界や社会に対して一層の貢献が可能になることです。これを支援するために、情報系プロフェッショナルコミュニティを構築し、技術者同士の交流を通じて自律的な質の向上を図ることや、プロフェッショナル貢献活動を計画しています。

国際標準の採用

 IFIPはIP3という資格認証のスキームを制定しています。「認定情報技術者制度」はこのスキームに準拠する制度設計としました。IP3は資格に有効期間を設ける等、関連の国際規格(注)に沿ったスキームです。情報処理学会はIP3のボードメンバーとして、スキーム自体の検討にも参画しています。

(注)ISO/IEC 17024(適合性評価-要員の認証を実施する機関に対する一般的要求事項)
および ISO/IEC 24773(ソフトウェア技術者認証)

社内資格制度の認定

多くの企業でITスキル標準をベースとした社内資格制度を運用しています。制度が適正に実施され、社内資格の水準が「認定情報技術者」と同等であると判断される場合には、情報処理学会がその社内資格制度を認定し、社内資格を有する技術者に「認定情報技術者」の認定書を発行します。   

「認定情報技術者制度」では、個々の技術者の資格審査を情報処理学会が直接行う方式(直接方式)と、上記のように企業の社内資格制度を認定する方式(間接方式)とを併用する予定です。

情報処理技術者試験との関係

 「認定情報技術者制度」は情報処理技術者試験を補完する制度です。本制度では、情報処理技術者試験で確認された知識や技能を、実際に業務や社会活動で活用する能力の評価を行います。    ITスキル標準のレベル1~3にはそれぞれ対応する情報処理技術者試験があり、試験に合格することによって、そのレベルに相当する能力があるとみなすことができます。レベル4においては、情報処理技術者試験(高度試験)に加え、業務実績の評価が必要です。レベル5以上については、対応する情報処理技術者試験は設定されておらず、専ら業務実績で評価することが必要です。

「認定情報技術者制度」では、レベル4以上のスキルを業務で発揮した実績、および、技術の継承や後進の育成などの社会貢献の実績を評価します。

今後の予定

来年度以降、制度の本番運用を順次開始する予定ですが、それに先立ち、一部企業の協力を得て試行を実施します。現在のところ、株式会社東芝、株式会社日立製作所、富士通株式会社、三菱電機株式会社、日本電気株式会社、日本電信電話株式会社(またはこれらのグループ企業)が直接方式の試行に協力を予定しています。  
今後の主なスケジュールは次の通りです。
2013年度 直接方式の試行(テクニカルスペシャリスト分野のレベル4の技術者が対象)
2014年度 直接方式の本番運用をレベル4より順次開始、間接方式の試行
2015年度 間接方式の本番運用を開始

制度案の詳細

詳細については、高度IT人材資格『認定情報技術者』制度(案)(PDF)を参照してください。
 備考
IFIP:International Federation for Information Processing 
IP3:International Professional Practice Partnership
CPD:Continuing Professional Development
 本件に関するお問い合わせ
ご質問やご意見は下記までお知らせください。 
一般社団法人情報処理学会 研究部門
TEL:03-3518-8372 Email:sig<AT>ipsj.or.jp