「高等学校学習指導要領案」に関する意見

「高等学校学習指導要領案」に関する意見

2018年3月15日
一般社団法人 情報処理学会
会 長  西尾章治郎

以下のとおり,2018年3月15日付で6件の意見書を提出しましたのでご報告いたします.
(協力:情報処理教育委員会 初等中等教育委員会)

2018年3月15日
文部科学省初等中等教育局教育課程課 御中
一般社団法人情報処理学会
会長 西尾章治郎

件名:「高等学校学習指導要領案について」
氏名: 一般社団法人 情報処理学会
職業: 団体
住所: 〒101-0062 東京都千代田区神田駿河台1-5 化学会館4F
電話番号: 03-3518-8374
意見の分類番号:13

意見:
 共通教科情報科は従来の選択必履修から、「情報I」を共通必履修科目として設けることとなった。そして学習指導要領案を見ると、基本的には「情報I」には、すべての高校生に身に付けてほしいと我々が考える情報分野の素養が的確に制度化されていると判断する。我々は、ここまで進めてこられた御担当・御関係の方々の御見識と御努力を多とし、敬意を払うものである。
 しかしながら、高校のすべてで実際にこの学習指導要領で高く掲げられた内容が適切に教育されるか、はなはだ心もとない。 [1]などで明らかになっているように、多くの高校現場で、このような内容を適切に教えるための十分な素養を持った情報科教員が実際に教壇に立っているとは判断し難い。とりわけ、情報II(3)および(4)に関しては、我々の中でも高等学校共通教科としては高度であるとの意見があるほどで、ことさらにその懸念が大きい。
 生徒数で多くを占める公立学校の教員採用や研修は当該教育委員会の管轄事項であるとはいえ、国は、情報処理学会をはじめとする情報教育関係学協会の意見を十分にふまえ、以下のことが実現されるよう適切な方策を講じるべきである:
  • 共通教科情報科を教える教員は、必ず高等学校情報科についての普通免許を持つ教員でなければならず、そうでないところは早急にそれを是正すること。
  • 公立高等学校を設置する都道府県市は、その学校数と上記の状況に応じた適切な人数の情報科教員を定期的に採用すること。その際、高等学校情報科教員として優秀な者が他教科の教員免許の有無にかかわらず多く教壇に立てるよう、「他の教科の免許をあわせ持つ者に限る」などの条件は付けないこと。
  • 高等学校において共通教科情報科を今後も教える現職教員に対し、十分な研修を実施し、その立場にふさわしい素養を身に付けてもらうこと。
 なおわれわれ情報処理学会は、当該分野の専門家集団として、第3点に関する実務に協力する用意があることは、2017年8月25日付で公表しているとおりである。
 また、新設の「大学入学共通テスト」において、共通教科情報科の試験を必ず実施することも重要だと考えており、これはすでに別途、2018年3月9日付で公表したところである。

[1]中山泰一ほか「高等学校情報科における教科担任の現状」
情報処理学会論文誌 教育とコンピュータ Vol.3, No.2 pp41-51(June 2017)
以上

                           2018情処総第46号
  2018年3月15日
文部科学省初等中等教育局教育課程課 御中
一般社団法人情報処理学会
         会長 西尾章治郎

件名:「高等学校学習指導要領案について」
氏名: 一般社団法人 情報処理学会
職業: 団体
住所: 〒101-0062 東京都千代田区神田駿河台1-5 化学会館4F
電話番号: 03-3518-8374
意見の分類番号:13

意見:
第2章 各学科に共通する各教科
第10節 情報
第2款 各科目
第1 情報I
のうち
1 目標
の中に、「情報通信ネットワーク」に関する記述を含むべきであると考える。その理由は、2 内容 の中に(4)情報通信ネットワークとデータの利用があるので、それをここに反映させるべきだからである。
  以上

                           2018情処総第47号
  2018年3月15日
文部科学省初等中等教育局教育課程課 御中
                       一般社団法人情報処理学会
         会長 西尾章治郎

件名:「高等学校学習指導要領案について」
氏名: 一般社団法人 情報処理学会
職業: 団体
住所: 〒101-0062 東京都千代田区神田駿河台1-5 化学会館4F
電話番号: 03-3518-8374
意見の分類番号:13

意見:
第2章 各学科に共通する各教科
第10節 情報
第2款 各科目
第1 情報I
3 内容の取扱い のうち
(4) 内容の(3)のアの(イ)及びイの(イ)については、関数の定義・使用によりプログラムの構造を整理するとともに…
に関し、「関数の定義・使用」とあるのは基本的にはよいことだが、関数でなくより進んだ概念であるクラスおよびメソッドを用いて「クラスやメソッドの定義・使用」とするのが望ましいと考える。また、これらのいずれを扱うにしても、それらの要素に関する知識より、アルゴリズムを理解することのほうがはるかにだいじであるので、そのことを盛り込むべきだと考える。
以上

                           2018情処総第48号
  2018年3月15日
文部科学省初等中等教育局教育課程課 御中
                       一般社団法人情報処理学会
         会長 西尾章治郎

件名:「高等学校学習指導要領案について」
氏名: 一般社団法人 情報処理学会
職業: 団体
住所: 〒101-0062 東京都千代田区神田駿河台1-5 化学会館4F
電話番号: 03-3518-8374
意見の分類番号:13

意見:
第2章 各学科に共通する各教科
第10節 情報
第2款 各科目
第1 情報I
3 内容の取扱い のうち
(5) 内容の(4)のアの(ア)及びイの(ア)については,小規模なネットワークを設計する活動を取り入れるものとする。
に関し、これは5年ほど前(2013年ごろ)なら意味があったものにすぎず、その後のネットワーク技術の大きな変化により、現在では効果的とはいえない学習方法であると考える。
以上

                           2018情処総第49号
  2018年3月15日
文部科学省初等中等教育局教育課程課 御中
                       一般社団法人情報処理学会
         会長 西尾章治郎

件名:「高等学校学習指導要領案について」
氏名: 一般社団法人 情報処理学会
職業: 団体
住所: 〒101-0062 東京都千代田区神田駿河台1-5 化学会館4F
電話番号: 03-3518-8374
意見の分類番号:13

意見:
第2章 各学科に共通する各教科
第10節 情報
第2款 各科目
第2 情報II
2 内容
(5)情報と情報技術を活用した問題発見・解決の探求
の内容、特に
…新たな価値の創造を目指し,
とあることに懸念を感じる。この表現では人類社会に新たな叡智をもたらすといった、相当に高度な活動を行なうことを要求しているように見える。そのため教育現場においては、そのようなことはとても無理であるため実施できない、と捉えられてしまい、せっかくの発展的な学習がかえって行われなくなることを懸念する。
以上

                           2018情処総第50号
  2018年3月15日
文部科学省初等中等教育局教育課程課 御中
                       一般社団法人情報処理学会
         会長 西尾章治郎
件名:「高等学校学習指導要領案について」
氏名: 一般社団法人 情報処理学会
職業: 団体
住所: 〒101-0062 東京都千代田区神田駿河台1-5 化学会館4F
電話番号: 03-3518-8374
意見の分類番号:15

意見:
第3章 主として専門学科において開設される各教科
第7節 情報
第5 情報セキュリティ において
3 内容の取り扱い
(2)内容の範囲や程度については,次の事項に配慮するものとする
のうち
ウ 〔指導項目〕の(3)の…ウについては,情報を扱う場所への入退出管理などを扱うこと。
について、「入退出管理」は「入退室管理」と用語を置き換えるべきであると考える。そう考える理由は以下のとおりである:
物理的セキュリティ対策における「入退出管理」については,この語よりも「入退室管理」という語句を使用することが多く,この語により「より具体的なセキュリティ管理を行う必要がある「場所としての部屋」への入退室を管理すること」を表すのが一般的であるため。
以上