[プレスリリース]学会講演における音声認識を用いた情報保障(字幕付与)の試験運用開始


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学会講演における音声認識を用いた情報保障(字幕付与)の試験運用開始

2015年8月20日
一般社団法人 情報処理学会 会長 富田 達夫
京都大学 学長 山極 壽一

[概要]一般社団法人情報処理学会と京都大学は、情報処理学会アクセシビリティ研究グループ(SIG-AAC)の発足に際して、聴覚障害者を対象として、京都大学で研究開発されてきた音声認識システムを用いた字幕付与(情報保障)の試験運用を開始する。8月22日に開催されるSIG-AACの第1回研究会において実施する予定。講演者の音声を高い精度で文字化する音声認識システムの学会における継続的な運用は前例がなく、複数の熟練者による連係タイプ入力と比べて、大幅に低いコストで情報保障の提供が期待される。

2016年度(平成28年度)から施行される障害者差別解消法では、障害者に「合理的配慮」を行うことが義務づけられている。大学等に在籍する障害学生数は年々増加しており、講義や学会等の講演会において情報保障を提供することが要請されている。聴覚障害者に対しては、要約筆記・字幕付与を行うことがこれに該当するが、専門性の高い講演・講義の内容をリアルタイムに文字化できる人員(パソコン要約筆記者)は限られており、各大学等ではその養成が課題となっている。

京都大学の河原達也教授(大学院情報学研究科/学術情報メディアセンター)及び秋田祐哉講師(大学院経済学研究科/学術情報メディアセンター)らは、自然な話し言葉を対象とした音声認識の研究を行っており、講演・講義に字幕付与を行うシステムを開発した。河原教授らの音声認識技術は、2011年度(平成23年度)から衆議院の会議録システムにも導入されているが、聴覚障害者の字幕付与技術に関しても、本学の障害学生支援ルームと連携しながら、公開のシンポジウムを毎年開催し、障害者や速記者・要約筆記者などと意見交換、及びシステムの実演を行ってきた。

情報処理学会では、障害者の高等教育や生活環境の向上をめざし、情報処理技術(IT)を活用したシステムの研究を促進するためにアクセシビリティ研究グループ(SIG-AAC)を今年度発足させた。本研究会では、障害者の参加を想定しており、情報保障の実施が当然求められているが、パソコン要約筆記者の手配は人員的にも予算的にも容易でない。そこで、本研究グループの発足にも関わった河原教授らのシステムを試験運用することとした。講演者には、事前に予稿を提出してもらい、音声認識システムをその話題や語彙に特化させることで精度を高める。音声認識は完全でなく、誤りを修正する人員が必要となるが、精度が高い場合には学生アルバイト1名でもできる。特に、東京近郊以外の地方において平日にパソコン要約筆記者を確保するのは至難であるが、経費もおおむね1/10以下で済むと期待される。

講演者には、事前に予稿を提出してもらう、丁寧にゆっくり発声してもらう、質疑では質問を復唱してもらうなどの協力をしてもらう必要があるが、本システムを継続的に運用することで、精度を高め、運用のノウハウも蓄積していく予定である。本システムが、他の学会等におけるモデルケースとなることを目指す。なお、講演はニコニコ動画に開設している情報処理学会チャンネルよりインターネット中継され、字幕もあわせて配信される予定である。これらは、ITの活用によりアクセシビリティの改善を図るという本研究会のめざす方向性と合致するものである。

8月22日(土)に東京の国立情報学研究所で開催されるSIG-AACの第1回研究会において、最後のセッションの4講演に対して本システムを用いて字幕付与を行う予定である。

システムの概念図
システムの実演の様子
システムの実演の様子

(参考)

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