【セッション概要】人工知能技術の興隆により機械学習・ディープラーニングに注目が集まっています。ビッグデータ活用実務フォーラムでは、若手を中心にオープンソースのPythonやRなどの機械学習・データマイニングツールを中心に勉強会を展開してきました。本セッションではこの勉強会を一橋記念講堂に展開します。ビッグデータ、人工知能、機械学習、IoTなどを活用しているアカデミア、産業界の各分野で活躍されている方々に、その活用内容をご紹介いただき、最近のこれら分野を敷衍し、聴講者の業務展開の参考になるような、午後のメインセッションの導入となるようなセッションを企画します。本セッションは、ニコニコ生放送にてネット中継される予定です。

[09:30-09:40]オープニング:ビッグデータ活用実務フォーラムとマシンラーニングのら猫勉強会の概要と紹介

【講演概要】ビッグデータ活用実務フォーラムは、2013年から機械学習やデータマイニングなどビッグデータ関連のデータ分析に関する情報を共有し、実務への活用に役立てるために活動を開始しました。主に勉強会の開催や学会誌の特集号を企画しました。昨年は、ソフトウェアジャパン2016「ビッグデータ:機械学習とデータマイニングの最前線~500人大集会:そのツールと応用~」を企画し500人近くの入場者を記録しました。本年度は、「マシンラーニングのら猫勉強会( https://machinelearning.doorkeeper.jp/ )」を企画し、若手ITエンジニアを中心にデータ分析の情報交換を行っています。本セッションではこの勉強会を一橋記念講堂とニコニコ生放送に展開します。若手エンジニアを中心とした情報共有の機会を提供すべくその内容をご紹介させていただきます。

石井 一夫様司会:石井 一夫(東京農工大学 農学府農学部 特任教授)
【略歴】専門分野:ゲノム科学、バイオインフォマティクス、データマイニング。経歴:徳島大学大学院医学研究科博士課程修了。東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センターリサーチアソシエート、理化学研究所ゲノム科学総合研究センター研究員、東京農工大学特任教授などを歴任。2015年度情報処理学会優秀教育賞受賞。日本技術士会フェロー、APECエンジニア、IPEA国際エンジニア。新刊:監修「あたらしい人工知能の教科書 プロダクト/サービス開発に必要な基礎知識」(翔泳社、2016)、共訳『科学技術計算のためのPython- 確率・統計・機械学習』(エヌ・ティー・エス、2016)。


[09:40-10:00]講演(1):社会科学研究者からみた機械学習

【講演概要】第3次人工知能ブームは自然科学系研究者だけのものではありません。もとより情報学は学際的な性質をもち、社会科学や人文科学にも十分に応用可能な学問です。講演者はもともと工学領域で人工知能を学び、情報工学に関する研究を進めてきましたが、近年は社会情報学という学問領域において「ユーザとシステムのインタラクションがどうあるべきか」というテーマで研究を進めています。その状況において、社会科学を学ぶ者が機械学習とどう向き合うべきか、大学での状況を交えつつ、紹介します。

飯尾 淳様飯尾 淳(中央大学 文学部 社会情報学専攻 教授)
【略歴】専門分野:感性情報学、ユーザインタフェース、行動分析など。経歴:東京大学大学院工学系研究科計数工学専攻修士課程修了。株式会社三菱総合研究所主席研究員、東京農工大学客員准教授(兼務)などを経て、2013年より中央大学、現在、同大文学部社会情報学専攻教授。HCD-Net認定人間中心設計専門家、技術士(情報工学部門)、博士(工学)。


[10:00-10:20]講演(2):レコメンデーションと機械学習

【講演概要】シルバーエッグ・テクノロジーは多くのウェブサイトにレコメンデーション(自動推薦)システムを提供しています。効率の良いアルゴリズムによって売上やページビューをいかに上げるのかというは大事な問題ですが、一方で、計算時間、運用保守コスト、付加価値など、他にも考えなければいけない因子がたくさんあり、必ずしも予測精度が高いアルゴリズムが最良というわけではありません。コアに機械学習アルゴリズムを持つシステムが、局所最適化に陥らずにシステム全体としてどのようにバランスを保っているかという点をお話します。

加藤 公一様加藤 公一(シルバーエッグ・テクノロジー株式会社 エンジニアリング部 チーフサイエンティスト)
【略歴】東京大学情報理工学系研究科博士課程修了。博士(情報理工学)。大手SI企業にてシステムエンジニア、研究職を経て現職。共著『データサイエンティスト養成読本 機械学習入門編』(技術評論社、2015)、共訳『科学技術計算のためのPython-確率・統計・機械学習』(エヌ・ティー・エス、2016)。


[10:20-10:40]講演(3):理想のAIと現実の機械学習

【講演概要】機械学習分野の技術の進歩により、世はまさに空前のAIブームとなっています。このような状況で、市場や経営層から求められるAIと、現場が取り組む機械学習とのギャップの存在を明らかにし、そのギャップをいかにして埋めるか、そしてこれから取り組むべきAIと機械学習の方向性について、提案します。

谷岡 広樹様谷岡 広樹(徳島大学 情報センター ICTサービス部門 助教)
【略歴】専門分野:情報検索、機械学習、自然言語処理。経歴:千葉大学工学部卒業。信州大学大学院総合工学系研究科博士課程修了。博士(工学)。ICTエンジニアとして、ソフトウェアベンダー、SIベンダー、ERPベンダーを経て、現職。


[10:40-11:00]講演(4):AI(Artificial Intelligence)はAI(Awesome Intelligence)なのか?機械学習・人工知能の新潮流によるビジネスの革新

【講演概要】計算コストが安価になったことから、機械学習・人工知能の活躍の場が爆発的に広がっており、人間を凌駕し仕事を奪うのではないかなどという議論まで最近では飛び出しています。リクルートライフスタイルでもWebサービスを中心に様々な場面で機械学習を活用していますが、人間を凌駕する部分もある一方で、まだまだ活用が難しい部分も多く存在します。本公演では、リクルートライフスタイルにおける機械学習の取り組みを紹介しつつ、機械学習・人工知能のビジネスの現場とこれからについて考えます。

本橋 智光様本橋 智光(リクルート データエンジニアリンググループ データサイエンティスト)
【略歴】リクルートライフスタイルのデータエンジニアリンググループのデータ分析者兼エンジニアとして勤務。経歴:上智大学機械工学研究科修士課程修了後、SIerの研究員、コンサルを経て、2016年より現職。2009年システム制御情報学会奨励賞受賞。2015年 KDD CUP 2nd prize。


[11:00-11:20]講演(5):生命現象を説明できる数理モデルの構築と有用物質高生産への活用

【講演概要】遺伝子は、主にDNAやmRNAの配列情報を基にその発現する量やタイミングが厳密に制御され、各種の生命現象を形作っている。言い換えると生命現象は4種の塩基(ATGC)のパターンによって主に表現されていると言える。今回は、植物を研究材料に、遺伝子発現制御ステップの一つであるmRNAの翻訳、つまりタンパク質の生産性に焦点を当て、この4塩基の配列パターンからタンパク質の生産効率を説明できる数理モデルの構築、構築した数理モデルと遺伝的アルゴリズムを用いた高いタンパク質生産能力を持つmRNAの設計などの研究成果を紹介する。これらの技術は、将来的に有用タンパク質を植物で大量に作らせる場合に非常に有用なツールとなると考えている。

山崎 将太朗様山崎 将太朗(奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス研究科 博士研究員)
【略歴】神戸大学農学部卒(2011年)、奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科修士・博士課程修了。博士(バイオサイエンス、2016年)。現職にて、次世代シークエンサー等によって得られたデータを用いたデータマイニングを主に、生命現象の数理モデル化やその実用的な展開を目指し研究を行っている。


[11:20-11:40]講演(6):人工知能(AI)、機械学習のビジネス応用の現状

【講演概要】IoTやインダストリー4.0に注目が集まる昨今、人工知能(AI)、特にディープラーニングや機械学習のビジネス応用が急速に進んでいます。本領域の先端技術の研究と実ビジネスでの応用を支援するALBERTが、ヘルスケア、自動運転、スマートファクトリーといった分野における活用状況を、具体的な事例を交えてご紹介します。

上村 崇様上村 崇(株式会社ALBERT 代表取締役社長)
【略歴】早稲田大学卒業後、アクセンチュア株式会社入社。戦略グループにて大手電気メーカー・OA機器メーカーの事業戦略および営業戦略プロジェクトに従事。2004年株式会社インタースコープに転じ、複数の新規事業立ち上げに関わる。2005年7月株式会社ALBERTを設立し、代表取締役社長に就任。2015年東京証券取引所マザーズ市場に上場。分析力をコアとするデータソリューション事業を展開。


[11:40-12:00]講演(7):ノーデータ問題へのファジィ論的アプローチ(ファジィ・ベイズ技術)

【講演概要】ノーデータ問題へのファジィ論的アプローチ(次世代AI技術)ノーデータ問題は、字のごとくデータのない問題、つまり尤度がない問題です。人間の主観が入ったままの生データを尤度で変換することなく、直に意思決定に使う手法が、我々が研究している「ファジィ・ベイズ技術」です。講演では、堤防設定問題に代表される水害対策問題に焦点を当てます。我々は、水理システムがマルコフ過程に従うなら、それの現れのファジィ事象(波)もマルコフ過程であることを証明しています。従って、波と堤防の高さが、ある決定関数に従うと仮定すれば、確率近似法で決定関数の最適値を求めることができますが、どの状態で最適値かわからない、つまり、最適解が求まりません。我々は、決定を代替案として離散的に与えることで、ファジィ・ベイズ意思決定法則が適用できることを示しました。実用化に向け、共同研究先を探しています。これは、目に見える例ですが、自然言語処理ににも同様な手順で対応できます。

堀 芳樹様堀 芳樹(椿岸神社講奈良支部(月泉会)代表)
【略歴】神戸商科大学商経学部管理学科卒、神戸大学大学院工学研究科システム工学専攻修士課程修了、久保田鉄工(株)研究員、奈良工業高等専門学校情報工学科助手、広島大学工学部第2類計数管理工学講座助手、三重大学教育学部情報教育講座助教授、准教授を経て、現在、椿岸神社講奈良支部(月泉会)代表、博士(工学)(広島大学)

松本 幸雄様松本 幸雄(統計数理研究所 リスク解析戦略研究センター 外来研究員)
【略歴】統計数理研究所外来研究員。1968年東京大学理学部物理学科卒業、1970年同修士課程修了、1973年同博士課程単位取得。国立環境研究所研究員、主任研究員、室長を経て2005年退官。統計数理研究所客員教授(2005年~2011年)の後、現在同外来研究員及び国立環境研究所客員研究員。環境モニタリングシステム構成法、環境データ解析、環境リスク解析に関する研究を行っている。


なお、このセッションは以下のシンポジウムも兼ねています。 日本計算機統計学会スタディグループ「ビッグデータ分析と計算機統計学の未開拓領域への挑戦」シンポジウム、公益社団法人日本技術士会登録グループ「データサイエンス研究会」シンポジウム、科研費シンポジウム「基盤研究(C)26330325新規ビッグデータ解析手法による精神神経系診断薬開発法の確立」