第6回:人間中心インタフェース

日時:2015年12月18日(金)
会場:化学会館7F(本会場) 受付開始時間:9:30~
   大阪大学中之島センター7F 講義室702(遠隔会場) 受付開始時間:9:30~

ヒューマンインタフェースという研究領域は、HCI(Human Computer Interaction)とも呼ばれ、コンピュータを利用した対話型機器やシステムとユーザである人間との接点となる場に焦点をあてている。そこからは、実世界指向、拡張現実感、仮想現実感、ウェアラブルコンピューティングなどの技術が生みだされ、生活や業務、エンタテイメントなどに関連した分野で様々な機器が提案されるに至っている。ただし、そこで重要なことは、ユーザである人間の諸特性や多様な利用状況に適合し、さらに彼らの必要性に適合していることである。その点については、ユーザビリティ工学やUX(User Experience)デザインといった立場があるのだが、HCIの新技術とは必ずしも適切な形での連携がなされているとは言えない。本セミナーでは、インタフェース技術開発、人間中心設計、そしてその基礎となる心理学の専門家をお招きして、現状と今後の課題を明らかにしたい。

黒須 正明様 コーディネータ:黒須 正明(放送大学 教養学部情報コース 教授)
【略歴】1978年早稲田大学文学研究科博士課程単位取得満期退学、日立製作所に入社し、中央研究所で日本語入力方式やLISPプログラミング支援環境などの研究開発に従事。1988年同社デザイン研究所に移り、インタラクションデザイン、ユーザビリティ評価の研究に従事する。1996年に静岡大学情報学部情報科学科教授、2001年文部科学省メディア教育開発センター(2005年4月より独立行政法人、2009年4月に放送大学に併合)教授。現在は、放送大学教授。ユーザ工学の立場から人間と人工物の適切な関係のあり方というテーマに取り組んでいる。

OPENING 10:00~10:10

コーディネータ:黒須 正明(放送大学 教養学部情報コース 教授)

セッション1 10:10~11:10

インタラクションデザインの立場から見たテクノロジーと人間

かつてヒューマンインタフェースはGUIの導入によって、最初の実質的な一歩を踏み出した。これは今から25年よりも前のことである。最近、ヒューマンインタフェースはインタラクションデザインへと、すなわちインタフェース2.0へと大きく変貌しつつある。ヒューマンインタフェースの第一人者であるドナルド・ノーマンは『誰のためのデザイン?』(Design of Everyday Things)を25年ぶりに増刷・改訂した本を出している。今、ポストGUIとして、(1)マルチモーダルインタフェース/インクルーシブデザイン、(2)実世界指向/ユビキタスインタフェース、(3)情報アプライアンス/エモーショナルデザインの3つが注目されている。これらの可能性を探りつつ、テクノロジーがヒューマンインタフェースに果たす役割と共に、人間の側のテクノロジーの受け止め方を、インタラクションデザインの立場から明らかにすることとする。イノベーションのために、我々は何をすべきかを一緒に考えていきたい。

安村 通晃様 講師:安村 通晃(安村ラボ 代表/慶應義塾大学 環境情報学部 名誉教授)
【略歴】1971年東京大学理学部物理学科卒業、同大学理学系研究科博士課程(情報科学専攻)満期退学。1978年日立製作所中央研究所。スーパーコンピュータのコンパイラやLisp等の研究開発に従事。1990年慶應義塾大学環境情報学部助教授、1994年同教授。ヒューマンインタフェース、障害者支援、実世界指向、インタラクションデザイン等の研究に従事。2013年定年退職、同大学名誉教授。安村ラボ設立。理学博士。訳書に『誰のためのデザイン?増補・改訂版』(共訳)等がある。

セッション2 11:15~12:15

IoT時代のユーザインタフェース

パソコンやスマホなどの普及によって誰もがいつでもインターネット資源を利用できるようになりつつあるが、現在はキーボードやマウスのような特殊な装置を使って限られた方法で情報にアクセスしているにすぎない。ネットワークに接続された多数のセンサやアクチュエータの活用により、従来とは次元が異なる使い勝手で万人がいつでもどこでもネットワーク資源を活用できる日が近付いている。IoT技術の統合によって可能になる将来のユーザインタフェース技術について解説する。

増井 俊之様 講師:増井 俊之(慶應義塾大学 環境情報学部 教授)
【略歴】1984年東京大学大学院工学系研究科電子工学専門課程修士課程修了。シャープ、ソニーコンピュータサイエンス研究所、産業技術総合研究所、Apple Inc.などに勤務後、2009年4月より慶應義塾大学環境情報学部教授。情報検索、テキスト入力、情報視覚化、実世界指向インタフェース、予測インタフェース、認証技術など、ユーザインタフェースに関連する幅広い研究開発を行なっている。携帯電話やスマートフォンで広く利用されている予測入力システムやフリック入力システムの開発者。Gyazo、QuickML、本棚.orgなど各種のWebサービスを運用中。

お昼休憩 12:15~13:25

セッション3 13:25~14:25

ユーザー・エクスペリエンスとインタフェース

多くの企業にとって、従来にないイノベーションを生み出すことが経営の課題になってきています。ユーザーエクスペリエンスは、イノベーションの要素であり、イノベーションを生み出すためのリフレーミングに役立ちます。また、ユーザーインタフェースを設計する上でユーザー体験という視点を考慮して、設計することが必要とされています。ここでは、どのようにユーザーエクスペリエンスという視点でインタフェースを生み出すのか具体的なアプローチを解説します。

山崎 和彦様 講師:山崎 和彦(千葉工業大学 工学部 教授)
【略歴】京都工芸繊維大学卒業後、クリナップにて商品企画およびデザインを担当、日本IBMにてデザインを担当、ThinkPadブランドの育成に貢献、2003年日本IBM(株)ユーザーエクスペリエンスデザインセンター長(技術理事)。博士(芸術工学)、東京大学大学院博士課程満期退学、人間中心設計機構副理事長、日本デザイン学会評議員。現在は大学教育と人間中心設計やデザインに関わるコンサルティングに従事。

セッション4 14:35~15:35

人間中心設計と先進技術の接点が作るイノベーション

人間中心設計やデザイン思考は、ユーザの生活や業務スタイルを理解し、潜在的な課題やニーズをとらえて、新しいアイデアを創出するために有効な手法です。人間中心の考え方や手法から導かれたアイデアは、それを実現する先進的な技術と組み合わせることで、新しいソリューションを生み出し、お客様に価値をもたらすイノベーションを創出できます。本講演では、人間中心設計やデザイン思考の説明と、それらの考え方と先進技術が接点をもつための方法と事例を紹介します。ニーズ探索やアイデア開発、コンセプト作成からユーザインタフェース開発において、人間中心のインタフェースを生み出す方法について紹介します。

河野 泉様 講師:河野 泉(日本電気株式会社 ものづくり統括本部デザイン戦略グループ マネージャー)
【略歴】大阪大学大学院基礎工学研究科修士課程修了。1991年NEC入社。研究開発部門にて、ヒューマンインタフェースの研究に従事。2009年よりユニバーサルデザイン、人間中心設計のNEC全社の推進活動に従事。人材育成や人間中心設計を適用した製品開発プロセス整備などを行い、製品/サービスのユーザーエクスペリエンス向上を実践している。HCD-Net認定人間中心設計専門家。人間中心設計推進機構理事、情報処理学会、日本デザイン学会各会員。工学博士。

セッション5 15:45~16:45

つながる/つながらないインタフェース:人間科学から考える

この講演では、コミュニティ間の境界についての心理学からの研究を導きの糸としながら、従来のインタフェース概念を拡張していくことを試みたい。例えば、岡部(2008)は、交際相手には自分が週刊少年ジャンプを読んでいることを知らせないという腐女子の発言を紹介している。ふつう、インタフェースというのは、人間と道具をつなげるために存在すると捉えられてきた。だが、実際に人と道具のつながりについて観察するとき、この腐女子の例が示すように「つながらない」ことにも意味があることに気づく。あるいは、人間と道具という二者関係でインタフェースを考えていては、こうした複雑なやりとりを捉えることはできないと言ってもいいだろう。この講演では、こうした問題意識に立ってインタフェースという概念を拡張していくための視点について考えてみたい。

青山 征彦様 講師:青山 征彦(駿河台大学 心理学部 准教授)
【略歴】1998年筑波大学大学院博士課程心理学研究科満期退学。筑波大学文部技官、駿河台大学現代文化学部講師、助教授を経て、現在、駿河台大学心理学部准教授。専門は認知心理学、認知工学。状況論の立場から、道具が社会的な関係の中でどのように用いられるかを研究している。日本心理学会、日本教育心理学会、日本質的心理学会、日本認知心理学会、日本認知科学会、日本読書学会各会員。2011年度より日本認知科学会教育環境のデザイン分科会(SIG DEE)の主査を務める。

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