第4回:Deep Learningと人工知能

日時:2015年10月13日(火)
会場:化学会館7F(本会場) 受付開始時間:9:00~
   大阪大学中之島センター7F 講義室702(遠隔会場) 受付開始時間:9:00~

近年人工知能が再びブームになっています。技術的には機械学習の手法の一つであるDeep Learningの著しい進歩がブームの基盤になっています。個別の知能ではなく汎用の知能の実現を目指す研究も本格的になってきました。本セミナーでは機械学習によってプロ棋士に勝つまでになったコンピュータ将棋、Deep Learningの基本、そのDeep Learningが人工知能に何をもたらすか、汎用の人工知能を目指す試み、および人工知能実用の代表例としてのWatsonについてその第一人者にわかりやすく話をしていただきます。

松原 仁様 コーディネータ:松原 仁(公立はこだて未来大学 システム情報科学部複雑系知能学科 教授)
【略歴】1986年東大大学院工学系研究科情報工学専攻博士課程修了。工学博士。同年通産省工技院電子技術総合研究所(現産業技術総合研究所)入所。2000年公立はこだて未来大学教授。人工知能、ゲーム情報学、認知科学などに興味を持つ。著編書に「コンピュータ将棋の進歩」、「鉄腕アトムは実現できるか」等。本会理事。人工知能学会会長。

セッション1 09:30~10:30

コンピュータ将棋で活躍する人工知能技術:ヒューリスティック探索と評価関数の機械学習

コンピュータに知能を実現させることは、情報系学問の大きな目標の一つである。しかし、知能には様々な側面があるということを考えると、この目標は曖昧なものとなる。そこで、しばしばゲームが引き合いに出される。なぜならば、パズルやチェスなどの思考能力を競うゲームは、知能実現への挑戦として分かりやすい目標を与えるからである。たとえば、人間の知的判断能力と同程度、もしくはそれを超える能力を持つコンピュータの設計及び実演である。実際、計算機技術の黎明期にチューリングやシャノンも、コンピュータにチェスをプレイさせることに挑戦した。現在、五目並べ、チェッカー、オセロ、チェスにおいてコンピュータは人知を超えている。将棋においては、コンピュータの強さが人間に追いつき、追い越そうとしている。本講演では、このコンピュータ将棋の強さの原動力となった探索の技術と評価関数の機械学習法を紹介する。

保木 邦仁様 講師:保木 邦仁(電気通信大学 大学院情報理工学研究科 准教授)
【略歴】2003年東北大学理学研究科博士後期課程修了。2003年からトロント大学博士研究員。2006年には東北大学大学院理学研究科研究支援者。2007年から同研究科助手。2009年には東北大学高等教育開発推進センターへ異動。2010年には電気通信大学先端領域教育研究センター特任助教。2015年から現所属。

セッション2 10:45~11:45

Deep Learningと人工知能

本講演では、最近注目を集めているディープラーニングと人工知能の関わりについて述べる。まず、人工知能の歴史を紐解きながら、これまで人工知能の分野で難問とされてきたフレーム問題やシンボルグラウンディング問題、素性エンジニアリングの問題等について述べる。そしてこれらが、表現を学習する問題に帰着できること、それを解くためのアプローチのひとつがディープラーニングであることを述べる。さらに、表現を学習するとはどういうことか、今後の研究の方向性についても述べる。最後に、今後、社会や産業が表現学習をベースとする技術によって、どう変化していくかについても述べる。人工知能学会倫理委員会の取り組みについても紹介する。

松尾 豊様 講師:松尾 豊(東京大学 大学院工学系研究科 准教授)
【略歴】1997年、東京大学工学部電子情報工学科卒業。2002年、同大学院博士課程修了。博士(工学)。産業技術総合研究所研究員、スタンフォード大学客員研究員を経て、2007年10月より、東京大学大学院工学系研究科 技術経営戦略学専攻 准教授に。2002年、人工知能学会論文賞、2007年、情報処理学会 長尾真記念特別賞受賞。人工知能学会編集委員長を経て、現在、倫理委員長。Webマイニング、ディープラーニング、人工知能を専門とする。

お昼休憩 11:45~13:15

セッション3 13:15~14:15

Deep Learningとその実装

Deep Learningが人工知能研究のブレークスルーとして研究者の注目を集め始めてから久しく、Goole、Facebook、Baiduなどが積極的に研究開発に参加、DeepMindなどの強烈なインパクトを持った研究が行われるなど、発展著しい研究領域となった。これに伴い、ここ数年でTorch7、Caffe、Pylearn2/Theanoなどの活発に開発され、これらのライブラリを利用した研究も盛んに行われるなど、実装として出そろってきた感がある。本講演では、Deep Learningの実装について俯瞰すると共に、Pylearn2とTorchを主軸に、Deep Learningの実装面について解説する。また、講演者らが開発しているライブラリ「GeSdA」についても解説する。

中山 浩太郎様 講師:中山 浩太郎(東京大学 大学院工学系研究科 技術経営戦略学専攻 特任講師)
【略歴】2000年10月 (株)関西総合情報研究所 代表取締役社長 就任
2002年 4月 同志社女子大学 非常勤講師 就任
2007年 3月 大阪大学大学院情報科学研究科 博士号取得
2007年 4月 大阪大学大学院情報科学研究科 特任研究員 就任
2008年 4月 東京大学 知の構造化センター特任助教 就任
2012年 4月 東京大学 知の構造化センター特任講師 就任
2014年12月 東京大学 工学系研究科 技術経営戦略学専攻 特任講師 就任

セッション4 14:30~15:30

汎用人工知能を実現するための全脳アーキテクチャという道のり

汎用人工知能の研究では、経験を得ることで多様な問題に対処できる人間並みに柔軟な知能を目指している。これは人工知能分野が形成された当初からの目標ではありつつも、計算リソースと電子データの増大、さらには機械学習技術の進歩により、今ようやく現実的な研究となりつつある。この技術の延長上において包括的に人の知能を凌駕することで、経済的な生産性への飛躍的向上や、新たな科学技術の発見や発明への貢献が期待される。しかしそれ以前に、汎用人工知能が一般目的技術という性質により、次第に多く事業分野における諸課題の解決において優位性が現れるだろう。全脳アーキテクチャという研究アプローチでは、人間をはじめとする脳全体の情報処理アーキテクチャを参考とすることでこうした汎用人工知能を構築しようとしている。本講演ではまず汎用人工知能について概観し、次に全脳アーキテクチャによって人間レベルの汎用人工知能の実現に到達するまでの数十年に渡る長い道のりついて述べる。

山川 宏様 講師:山川 宏(株式会社ドワンゴ ドワンゴ人工知能研究所 所長)
【略歴】1992年東京大学大学院工学系研究科電子工学専攻博士課程を修了。工学博士。同年(株)富士通研究所入社。1994年から2000年までリアル・ワールド・コンピューティング・プロジェクに従事。現在、(株)ドワンゴ人工知能研究所所長。人工知能学会の理事および副編集委員長。専門は人工知能、特に、認知アーキテクチャ、概念獲得、ニューロコンピューティング、意見集約技術など。全脳アーキテクチャ勉強会および汎用人工知能研究会の発起人の一人。

セッション5 15:45~16:45

IBM Watson質問応答システムとコグニティブ・コンピューティング

IBM基礎研究所が開発した質問応答システムWatsonが、2011年2月に米国クイズ番組Jeopardy!に登場し、人間のチャンピオン2名との対戦に勝利してから4年以上が経過した。本講演では、このようなシステム構築の背景となった質問応答というタスクやWatsonが実現した質問応答手法についての技術的な解説を行い、大規模情報コンテンツと、自然言語処理や機械学習などその要素技術の果たした役割について説明する。最後に質問応答技術の医療分野やコンタクトセンターへの応用など、特徴的な事業分野と事業化の最新状況についても紹介する。

武田 浩一様 講師:武田 浩一(日本アイ・ビー・エム株式会社 東京基礎研究所 技術理事)
【略歴】1983年日本アイ・ビー・エム(株)入社。以後、東京基礎研究所にて、自然言語処理、機械翻訳、情報の可視化、テキストマイニングに関するプロジェクトに従事。2007年12月より、質問応答技術を利用し、クイズ番組で人間の解答者に挑戦するWatsonシステムを開発するグランド・チャレンジ・プロジェクトに参画。2011年より技術理事および国立情報学研究所客員教授。博士(情報学)。本会フェロー。

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