第3回:次世代ロボット技術の最新動向

日時:2015年9月30日(水)
会場:化学会館7F(本会場) 受付開始時間:9:00~
   大阪大学中之島センター7F 講義室702(遠隔会場) 受付開始時間:9:00~

安倍総理によるロボット革命実現会議の開催にも牽引され、ロボット技術による社会革新の実現が政府の成長戦略の重要分野となっている。期待される応用としては、製造業の効率化、物流の効率化、医療福祉を含むサービス業の高品質化、交通システムの省エネルギー化などが挙げられる。本セミナーでは、次世代ロボットの基盤となる最新技術の研究開発動向について、産学官の最前線で活躍されている講師陣をお招きし、紹介していただく。具体的には、人の注視のセンシング、コミュニケーションロボット、ロボットの自律移動技術、産業用ロボットの最新技術、サービスロボット安全規格についてご講演をお願いした。これらのご講演を通じて、次世代ロボット技術全般についての動向の把握が出来るものと期待される。

比留川 博久様 コーディネータ:比留川 博久(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 ロボットイノベーション研究センター 研究センター長)
【略歴】1987年神戸大学大学院自然科学研究科システム科学専攻博士課程修了(学術博士)。同年通商産業省工業技術院電子技術総合研究所入所。2014年国立研究開発法人産業技術総合研究所ロボットイノベーション研究センター長、現在に至る。NEDO次世代ロボット共通基盤開発プロジェクトリーダ、経済産業省ロボット介護機器開発・導入促進事業 プロジェクトリーダ等を歴任。2007年文部科学大臣表彰科学技術賞受賞(研究部門)。

セッション1 09:30~10:30

人の注視のセンシングと画像の高次理解への応用

人間と情報システムの創造的協働を通じて、人間のさまざまな活動を支援するためには、システム側が、人が何に目を向け、どのような行動をとっているのかを理解できることが重要となります。しかしながら、従来の視線計測技術は事前にキャリブレーションを要するため、限定された状況での利用に制限されていました。本講演では、Pervasiveな視線計測の実現に向けて、キャリブレーションを必要としない視線計測に関して、独自のアプローチに基づく手法のいくつかについて、その概略を紹介します。さらに、人がどのように見るのかを手掛かりに画像の高次理解へとつなげようとする試みについても紹介します。

佐藤 洋一様 講師:佐藤 洋一(東京大学生産技術研究所 教授)
【略歴】1990年東京大学工学部機械工学科卒業。1997年Carnegie Mellon University, Ph.D. Program in Robotics修了。東京大学生産技術研究所研究機関研究員、講師、助教授、同大学大学院情報学環准教授を経て、2010年より同大学生産技術研究所教授。現在、同研究所副所長、同研究所附属ソシオグローバル情報工学研究センター長。コンピュータビジョンに関する研究に従事。2011年日本学術振興会賞、2010年、2008年、2006年電子情報通信学会論文賞、2011年情報処理学会50周年記念論文賞等を受賞。

セッション2 10:45~11:45

コミュニケーションロボットとそのプロトコル

会話機能を持った様々なロボットが開発されている。エンタテインメントなど特定の応用指向のものから、会話での身体利用の価値を探求する基礎指向のものまで目的も様々である。本講演では、まずコミュニケーションロボットの代表例をいくつかとりあげて、その機能を紹介する。ついで、ロボットが会話するにおいて必要となるプロトコルに焦点を当て、筆者が行った一連の研究を紹介する。ロボットの姿勢、顔向き・視線は、コミュニケーション相手を特定する役割を担う。表情、ジェスチャ、相槌は、情報授受の成否を表現する。韻律・視線は、発話の番の制御に関わる。会話を円滑に行うにおいては、これらの情報をあるルールに従って交換することが求められる。会話調整のような特定の役割をロボットに与えるなら、ロボットはさらに複雑なルールに従って行動する必要がある。本講演では、これらプロトコルを整理して示すとともに、その遵守の枠組みを紹介する。

小林 哲則様 講師:小林 哲則(早稲田大学 理工学術院 教授)
【略歴】1985年早稲田大学大学院博士課程修了、工学博士。同年法政大学工学部専任講師。1987年同助教授。1991年早稲田大学助教授。1997年早稲田大学教授、現在に至る。この間、マサチューセッツ工科大学計算機科学研究所、ATR音声言語通信研究所、NHK放送技術研究所の客員研究員を歴任。ロボットを用いた音声会話コミュニケーションの研究に従事。

お昼休憩 11:45~13:15

セッション3 13:15~14:15

ロボットの自律移動技術

近年、部屋の中を自動で掃除する家庭用掃除ロボットが個人の生活の中に入り込み、さらに世界中の自動車メーカ等が自動運転カーの普及に向けて精力的に研究開発を実施しており、自律移動技術がますます身近なものになってきている。また、自律移動機能はロボットに要求される機能の中でも重要な機能に位置付けられ、生活支援ロボット等が各種サービスを提供するためには、必須となる機能の1つである。本講演では、まず各応用分野で使われている現状の自律移動技術について概説する。次に、例として講演者らが開発中の、市街地等の屋外環境や施設内をシームレスに自律走行する車いすロボット、オフィス内を自動で動きサービスを提供する自律移動ロボットを取り上げ、それらのロボットで使われている自律移動技術に関して詳説する。さらに、今後の自律移動技術開発の方向性について、将来展望も含めて述べる。

松本 治様 講師:松本 治(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 ロボットイノベーション研究センター 総括研究主幹 (兼務)スマートモビリティ研究チーム長)
【略歴】1989年、早稲田大学大学院理工学研究科機械工学専攻修士課程修了、同年通商産業省工業技術院機械技術研究所入所、2001年独立行政法人産業技術総合研究所に組織改編、2015年4月から国立研究開発法人産業技術総合研究所ロボットイノベーション研究センター総括研究主幹、博士(工学)。倒立振子型移動ロボット、電動車いす型パーソナルモビリティ等の車輪型移動システムの動的制御技術、自律移動技術、安全技術などに関する研究開発に従事。経産省、NEDO等の国家プロジェクトへの参画、つくばモビリティロボット実験特区での実証実験の推進など、生活支援ロボットの普及や産業創出のための活動を行っている。

セッション4 14:30~15:30

ファナックにおける産業用ロボットの最新技術とその適用

産業用ロボットは、自動車、機械、電気・電子など従来からロボットが使われていた分野では、生産効率や自動化率のより一層の向上が求められています。また、食品製造など従来、ロボットが使われていなかった分野でも導入が増えつつあります。産業用ロボットの最新機種や視覚センサなどの、ファナックにおける産業用ロボット最新技術の特徴と、それらの技術が、実際の自動化システムでどのように適用されているかという点を、事例を含めて紹介します。

滝澤 克俊様 講師:滝澤 克俊(ファナック株式会社 ロボット事業本部 ロボット研究所 技師長)
【略歴】1987年東京大学工学部産業機械工学科卒業。同年ファナック株式会社入社。基礎技術研究所およびロボット研究所で、視覚センサや知能ロボット等の開発に従事。2013年10月より現職。

セッション5 15:45~16:45

サービスロボット安全規格ISO13482の概要と課題

社会の高齢化が進む日本では、介護・福祉だけでなく、生産現場での作業者支援など様々な場面でロボットの利用が望まれている。このような人に直接サービスするロボットはサービスロボットと呼ばれ、日本では2035年に産業用ロボットの数倍の市場がサービスロボットでは期待されている。人との共存を前提とするサービスロボットの産業化では安全性が最も大きな課題であり、関連する国際安全規格ISO 13482が2014年2月に発行された。本講演では、まず同規格の背景として、国際安全規格の求める規格・認証・保険によるリスクマネジメント社会の構造を説明し、同規格のサービスロボット開発における位置づけを明らかにする。次いで同規格の概要を説明し、サービスロボット開発への同規格を利用する上での課題をリスクアセスメントを中心に説明する。また、鉄道分野で用いられているダイナミック信号処理をサービスロボットに適用した事例の紹介も行う。

木村 哲也様 講師:木村 哲也(長岡技術科学大学 システム安全系 准教授)
【略歴】1995年4月1日 東京工業大学大学院総合理工学研究科システム科学 専攻助手。1995年7月1日 神戸大学大学院自然科学研究科システム科学専攻 助手へ転任。1998年6月1日 大阪府立大学工学部機械システム工学科助手へ転任。2001年3月1日 長岡技術科学大学機械系助教授。2003年8月20日~2004年3月31日 文部科学省在外研究員(ダルムシュタット工科大学、職業保険組合労働安全研究所(BGIA))、2006年4月1日 長岡技術科学大学システム安全系准教授(現在に至る)

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