第5回:モバイル・クラウド時代のデータプライバシー

日時:2014年11月11日(火)
会場:化学会館7F(本会場) 受付開始時間:9:30~
   大阪大学中之島センター5F 講義室507(遠隔会場) 受付開始時間:9:30~

ビッグデータ利活用の機運が高まるなか、個人情報保護法の改正を間近に控え、データプライバシーの保護技術は重要性がますます高まりつつあります。データプライバシーの保護は、技術のみならず法制度、サービス運用、倫理観や市民感覚等の多様な側面を同時に考慮する必要がある複雑な問題です。本セミナーではプライバシー保護の技術的側面を、セキュリティ・プライバシー保護技術および暗号理論などの方法論からなる縦糸と、クラウド、モバイルなどのコンピューティング環境からなる横糸の二軸から解説し、その上で技術者が抑えておくべき技術と法制度の橋渡しとなる部分について概観します。

佐久間 淳様コーディネータ:佐久間 淳(筑波大学 コンピュータサイエンス専攻 准教授)
【略歴】2003年3月東京工業大学大学院総合理工学研究科博士後期課程修了。博士(工学)。同年4月日本アイ・ビー・エム株式会社入社、東京基礎研究所に配属。2004年7月、東京工業大学総合理工学研究科助手、2007年4月同助教、2009年4月筑波大学大学院システム情報工学研究科准教授、2009年10月から2012年3月、科学技術振興事業団さきがけ研究員兼任、2012年2月、国立情報学研究所客員准教授、現在に至る。機械学習と知識発見、セキュリティとプライバシーの研究に従事。2008年、IEEE CISJ Young researcher award、 2009年度人工知能学会全国大会優秀賞、 2010年度情報論的学習理論と機械学習 (IBISML) 研究会賞、コンピュータセキュリティシンポジウム2012(CSS)優秀論文賞、2012年度日本データベース学会上林奨励賞受賞。

OPENING 10:00~10:10

コーディネータ:佐久間 淳(筑波大学 コンピュータサイエンス専攻 准教授)

セッション1:クラウドコンピューティングにおけるセキュリティ・プライバシー技術の動向

[10:10-11:10]
クラウドコンピューティングが普及していく過程において、セキュリティの問題はクラウド使用者にとっても提供者にとっても主要な課題であり続けている。しかし、セキュリティに関する漠然とした不安が先行した初期の段階から、セキュアなクラウド環境を構築するために提供されている様々な技術やサービスにより、現在では、より具体的な議論が行われるようになってきた。結果としてクラウドコンピューティングがカバーするワークロードの範囲が広がりつつある。本講演では、クラウドコンピューティングにおけるセキュリティ・プライバシーの観点と課題をまとめ、それに対応する技術の動向について概説する。

浦本 直彦様講師:浦本 直彦(日本アイ・ビー・エム株式会社 東京基礎研究所 主席研究員)
【略歴】1990年九州大学卒業。現在、日本IBM東京基礎研究所にてクラウドおよびセキュリティの研究開発に従事。博士(工学)。2013年より情報処理学会理事。著訳書に、『XML and Java - Developing Web Applications』(共著, Addison Wesley,1999)、『クラウド大全』(共著, 日経BP社, 2009)『グーグルクラウドの核心』(監訳, 日経BP社, 2010)などがある。

セッション2:パーソナルデータとプライバシー保護データ解析

[11:25-12:25]
個人のプロファイルや行動履歴など、プライバシーに関わるビッグデータの蓄積は、画期的なサービスを生み出す源泉としての、高度利活用が期待される反面、そのプライバシー保護も重要な問題としてクローズアップされている。特に個人特定を高い確率で可能にする詳細度の高い情報、医療情報、差別を引き起こしかねない機微な情報などは、プライバシー侵害時の影響が大きいため慎重な取り扱いを要する。講演では、代表的なデータプライバシー保護技術である秘密計算と差分プライバシーの技術を導入し、そのプライバシー保護データ解析への応用を紹介する。

佐久間 淳様講師:佐久間 淳(筑波大学 コンピュータサイエンス専攻 准教授)
【略歴】2003年3月東京工業大学大学院総合理工学研究科博士後期課程修了。博士(工学)。同年4月日本アイ・ビー・エム株式会社入社、東京基礎研究所に配属。2004年7月、東京工業大学総合理工学研究科助手、2007年4月同助教、2009年4月筑波大学大学院システム情報工学研究科准教授、2009年10月から2012年3月、科学技術振興事業団さきがけ研究員兼任、2012年2月、国立情報学研究所客員准教授、現在に至る。機械学習と知識発見、セキュリティとプライバシーの研究に従事。2008年、IEEE CISJ Young researcher award、 2009年度人工知能学会全国大会優秀賞、 2010年度情報論的学習理論と機械学習 (IBISML) 研究会賞、コンピュータセキュリティシンポジウム2012(CSS)優秀論文賞、2012年度日本データベース学会上林奨励賞授賞。

お昼休憩 12:25~13:40

セッション3:スマートフォンにおけるプライバシー保護

[13:40-14:40]
スマートフォンでは、位置情報、通信履歴などの利用者情報をアプリから取得できるため利便性の高いサービスを活用できる一方で、十分な説明をしないまま利用者情報を収集するアプリもあり、利用者の不安が増加している。このような状況を受けて、総務省ではSPI(スマートフォン・プライバシー・イニシアティブⅰ、ⅱ)を公表し、利用者情報の適切な取り扱い(透明性の確保と利用者承諾のあり方)について提言している。そこで本講演では、SPI、諸外国のモバイルアプリにおけるプライバシーに関する動向、パーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱、などの状況を整理し、スマートフォンにおけるプライバシー保護についてご説明いたします。また、KDDIの運営するアプリマーケットにおけるアプリのプライバシー審査技術についてご紹介いたします。

川端 秀明様講師:川端 秀明(株式会社KDDI研究所 ネットワークセキュリティグループ 研究員)
【略歴】2010年東海大学大学院工学研究科修士課程了、同年KDDI株式会社入社。現在、株式会社KDDI研究所に勤務。以降、モバイルOSのセキュリティ、ネットワークセキュリティに関する研究開発に従事。2011年CSS優秀論文賞、2012年DICOMO優秀論文賞・優秀プレゼンテーション賞、2013年山下記念研究賞、2014年喜安記念業績賞を各受賞。

セッション4:モバイル・クラウド時代の次世代高機能暗号技術

[14:55-15:55]
現在、クラウドをはじめとする近年のネットワーク社会の著しい充実化に伴い、そのための新たな暗号技術が強く求められている。たとえば、利用者たちは、クラウドストレージ等を介して、どこでも自分のデータを閲覧したり、また、第三者との共有を行ったりすることができる反面、それらのデータを悪意ある攻撃者に奪われ、意図しない形で不当に利用されることもありうる。つまり、利便性と安全性は表裏一体であり、いかに利便性が高度化したとしても、そのような利便性に影響を与えることなく安全性を維持することは容易でなく、そのための機能を備えた新たな暗号を設計することが必要となっている。本講演においては、そのような次世代高機能暗号技術について紹介を行う。

花岡悟一郎様講師:花岡 悟一郎(産業技術総合研究所 セキュアシステム研究部門 研究グループ長)
【略歴】1997年東京大学工学部卒業、2002年同大学院工学系研究科電子情報工学専攻博士課程修了(博士(工学))、以降日本学術振興会特別研究員PDを経て2005年産総研入所。現在、産総研セキュアシステム研究部門次世代暗号研究グループ長。効率的な公開鍵暗号方式の設計・安全性証明をはじめとする暗号・情報セキュリティ技術の研究開発に従事。英国計算機学会The Wilkes Award(2007年)、電子情報通信学会論文賞(2008年)、暗号と情報セキュリティシンポジウム(SCIS)イノベーション論文賞(2012,2014年)、電気通信普及財団賞(2005年)、SCIS20周年賞(2005年)、SCIS論文賞(2006年)、情報理論とその応用シンポジウム(SITA)奨励賞(2000年)等受賞。

セッション5:パーソナルデータの利活用と保護において技術者が知っておくべき法的要件

[16:10-17:10]
政府はパーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱を今夏公表し、来年法改正する。それによってビッグデータの収集・分析による新産業や新サービスの創出をすることで、イノベーション創出に寄与するとしている。それらの創出を具現化するために、モバイルやクラウドといったIT技術の応用は不可欠となる。このときパーソナルデータを保護する要件がどうなっているかを理解した上で、技術開発の方向性を見極めていかないと、結果的にその技術を使ったサービス等が、個人の権利利益やプライバシーの侵害とみなされてしまいかねない。そのような要件については法務担当者が理解し、サービスや技術開発内容を随時レビューすればよいと思うかもしれないが、それよりも技術者自身がある程度の理解もしておく方が、手戻りを少なくすることができる。本セッションでは、技術者が知っておくべき制度改正の背景や内容について概説する。

佐藤 慶浩様講師:佐藤 慶浩(日本ヒューレット・パッカード株式会社 個人情報保護対策室 チーフ・プライバシー・オフィサー)
【略歴】1990年日本ヒューレット・パッカード(株)入社。国内でのコンサルティング事業の他、米国の開発部門及び英国の研究所などで従事した後、2004年からは、日本法人のチーフ・プライバシー・オフィサーを務め、現在はエヴァンジェリストを併任。社外では、内閣官房情報セキュリティセンター参事官補佐、情報セキュリティ指導専門官などを歴任し、現在は省庁や自治体委員会の委員などを務めている。

情報処理学会では、産業界(実務家)の視点から、関心度の高いテーマ、注目のテーマ、技術の先進性に富んだテーマを取り上げて、その最前線で活躍されている方を講師に招き、年数回にわたってセミナーを開催しています。

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