2009年度長尾真記念特別賞

2009年度(平成21年度)長尾真記念特別賞の表彰



石原  亨 君(正会員)

「コンピュータシステムの省エネルギー化に関する研究」

1995年九州大学工学部情報工学科卒業.2000年同大学大学院システム情報科学研究科博士後期課程修了.博士(工学).同年より東京大学大規模集積システム設計教育研究センター助手.2003年より米国富士通研究所研究員.2005年より九州大学システムLSI研究センター助教授(2007年より准教授).2009年より同大学大学院統合新領域学府オートモーティブサイエンス専攻担当.組込みシステムとマイクロプロセッサの省エネルギー化と高信頼化の研究に従事.2000年情報処理学会40周年記念論文賞,2002年情報処理学会システムLSI設計技術研究会優秀論文賞,2007年丸文研究奨励賞,2009年科学技術分野の文部科学大臣表彰若手科学者賞受賞.情報処理学会,電子情報通信学会,IEEE,ACM各会員.

[推薦理由]
社会基盤の情報化と低炭素化という二つの世界的ニーズを背景にコンピュータシステムの消費エネルギー削減が重要な課題となっている.石原亨君はコンピュータの心臓部であるマイクロプロセッサとその上で動作するソフトウェアの省エネルギー技術に関して数多くの先駆的研究を行った.特にプロセッサの動作電圧をソフトウェアから制御しコンピュータシステムの消費エネルギーを削減する技術はプロセッサの電圧制御をソフトウェアの制御問題として扱った開拓的業績として世界的に高い評価を得ている.数多くの後続研究を生みだした同君の研究成果は産業界への貢献も大きく,本賞を贈るにふさわしい.

 

佐藤いまり 君(正会員)

「画像理解に基づく実世界モデルの構築と写実的画像生成の研究」

1994年慶應義塾大学総合政策学部卒業,2005年東京大学大学院学際情報学府博士課程修了.学際情報学博士.国立情報学研究所助手を経て,現在同研究所准教授,イメージベースドモデリング&レンダリングに関する研究に従事.1992-93年まで米国カーネギーメロン大学(CMU),自動翻訳研究センター,リサーチアシスタント,1994-96年までCMU,ロボット工学研究所,訪問奨学生.2002-04年まで学術振興会特別研究員,2005-09年まで科学技術振興機構さきがけ研究員.画像の認識・理解シンポジウム論文賞,VR学会論文賞(2000年),電子情報学会論文賞(2006,08年),文部科学大臣表彰若手科学者賞(2009年)等を受賞.

[推薦理由]
コンプピュータグラフィックス(CG)を用いて現実感の高い映像コンテンツを生成するためには,その入力として物体の形状や反射特性およびシーン光源分布に関する精密なモデルを要する.特に光学的なモデルは手作業で与えられることが多く,精度の高いモデルを人手で構築することが難しいという問題が存在した.佐藤いまり君は,コンピュータビジョン技術による画像解析がCGによる画像生成のプロセス(与えられたシーン内の光の伝搬を計算する)の逆問題であることに着目し,これを解くことによって,実在シーンの観測に基づき物体情報(材質・形状)や照明環境モデルを自動で構築する技術を開発した.これらの研究成果は国内外で高く評価されており,本賞を贈るのにふさわしいものである.

津田 宏治 君(正会員)

「構造列挙アルゴリズムと構造カーネル関数手法を統合した構造データ分類方法の研究をはじめとする機械学習・データマイニング研究」

H6年3月京都大学工学部情報工学科卒業. H7年9月京都大学大学院工学研究科情報工学専攻修士課程修了.H10年3月京都大学大学院工学研究科情報工学専攻博士課程修了,博士(工学). H10年4月-H13年3月電子技術総合研究所研究員.H12年4月-H13年3月独GMD FIRST 客員研究員.H13年4月-H21年9月産業技術総合研究所生命情報科学研究センター研究員. H15年4月-H17年3月独Max Planck Institute for Biological Cybernetics 研究員.H18年4月-H21年3月独Max Planck Institute for Biological Cybernetics プロジェクトリーダー.H19年4月-H20年3月京都大学化学研究所付属バイオインフォマティクスセンター客員准教授.H21年10月より産業技術総合研究所生命情報科学研究センター主任研究員.

[推薦理由]
受賞者は,複雑な構造データ中の多頻度部分構造の列挙アルゴリズム研究と, 構造カーネル関数を用いた分類手法とを統合し,複雑な構造データの詳細な分類を可能にする統合的パラダイムを提供した.更に局所的構造を属性とし て自動生成ないし発見,選択する機械学習の根本問題解決にも大きな貢献を行った.これらは何れも機械学習及びデータマイニング研究の核心であり,学術的に多大な貢献を行い世界的に高い評価を得ている.この他にも,高度なカーネル関数やより複雑な基準に基づく構造列挙アルゴリズム研究など, 世界的な研究を続けている.