竹内 郁雄 君

2012年度功績賞受賞者の紹介

竹内 郁雄 君 (たけうち いくお)

  本会正会員竹内郁雄君は,永年にわたり,プログラミング言語の研究に携わるだけでなく,若手育成に多大な貢献をされてきました.

 1971年日本電信電話公社に入社されて以来,基礎研究部門において,プログラミング言語,なかでも人工知能のための記号処理プログラミング言語とシステムを研究・開発されてきました.その過程で発明されたTakeuchi関数は,Lispコミュニティのみならず,計算論の分野にも大きな反響を呼び起しました.また,基礎研究部門から生まれたLispマシンELIS上のTAOソフトウェアは,本会論文賞(1989年度)を受賞するだけでなく,NTT子会社の設立という新しい研究開発モデルにもなりました.1997年に電気通信大学の教職につかれ,2005年からは東京大学で,エージェントシミュレーションの研究をベースに,IT防災(IT減災)システムの研究開発に携わってこられ,安全安心社会実現のためにICTの実世界応用に展開しています.この間,本会においても,記号処理研究会主査(1990年〜1992年),プログラミング・シンポジウム幹事などを務められ,学会の発展に貢献され,さらに,各種政府委員として,我が国の情報処理分野の発展に貢献されてきました.

 しかし,何と言っても同君の功績は,若手育成にあります.2000年より開始された独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「未踏ソフトウェア創造事業」(現在,「未踏IT人材発掘・育成事業」)のプロジェクトマネージャを務め,日本の若いIT人材の発掘・育成に貢献し,特に,2002年からの主に学生を中心とする若手世代を対象とした未踏ユース事業の骨格を作り,現在,シニアプロジェクトマネージャとして,この事業の全般について助言等をされています.これらの成果により情報化月間情報化促進個人表彰経済産業大臣賞,IPA賞人材育成部門を受賞されています.同君が育てた若手クリエータは150名を超え,国内外で活躍しています.

 以上のように,同君が,国内外の情報処理分野ならびに本会の活動の発展に尽くした功績は,まことに顕著であります.