2023年02月02日版:高橋 尚子(会誌担当理事)

  • 2023年02月02日版

    「継続と改革,双方に対応できるバランス

    高橋 尚子(会誌担当理事)


     名誉なことに2期連続で理事を務めることになり,会誌・出版という本会の根幹をなす事業を担当しました.会誌は,「創刊以来1号も欠かさず毎月発行している」という話を聞き,とんでもない担当を引き受けてしまった!という思いでした.

     会誌・出版事業は,とにかく,参加する委員会が多いこと,ルーティンを淡々とこなしていくこと,そして,新しいことも企画しなくてはいけません.頼もしいのは,事務局の体制が万全で,はじめのうちは,受信メールを見落とさないよう,必死で返信していました.慣れてくると,コツもつかめてくるので,楽しみになります.これがあと数カ月で激減するかと思うと,ちょっぴり寂しい気もします.

     さて,皆さんは,会誌の表紙が1年ごとに変わっていること,気づいてらっしゃいますか? 今年の表紙は公募で選び,64巻という情報系の人しかニヤニヤしない節目の数字を意識したカラフルなものです.最近では,さまざまな理由で休載になっていた連載やコーナーなどを掘り起こし,見直し,コラボさせて復活しています.とくに,IT紀行で研究会を行脚する計画がありますので,皆さんのところにお伺いするかもしれません.冊子だけでなく,先代が始めた新しい媒体noteでのコンテンツを継続し,内容の拡充をはかり続けています.さらに,編集長が交代し,執行部体制が変わったことで,次々と新しいアイディアが出てきました.毎月,編集長の「見どころ」や「先読みモニタ制度」など紙媒体へつなげるWeb発信を強化しています.これからも何が始まるか期待してください.

     出版では,ITTextシリーズには,『深層学習』や『データサイエンスの基礎』などの新刊に加え,内容が古くなったものは更新をしています.教科書として採用されている大学では,質の高い授業が展開されていることを期待します.さらに,『クラウドシステム移行・導入』といった読み物としての専門書を手掛けています.

     また重要な任務として,会誌・出版では,「歴史特別委員会」と,その配下にある「コンピュータ博物館実行小委員会」を担当しています.およそ10年周期で発行する歴史書の発行,コンピュータ博物館のコンテンツ管理,分散コンピュータ博物館の審査と認定,などがあります.「コンピュータ博物館」には,絶えず,資料や写真の利用希望,掲載情報へのコメントなどが世界中から寄せられます.博物館への登録依頼,資料提供もあり,これらに対して,絶え間なくメールでの審議・検討が行われています.過去には,会誌にも,関係の記事がたくさん掲載されていたことに気づきました.昨年(2022),偶然ですが,雑誌ASCIIの初代編集長が運営する「マイコン博物館」・「夢の図書館」から分散コンピュータ博物館へ照会があり,見学に行き思いがけずうれしい再会がありました.

     新しいところでは,「広報広聴戦略委員会」配下の2つの小委員会が,会員の満足度向上,学会の認知度向上,のためにたくさんの施策に挑戦し,非常に活発な活動をしてきました.「ウェビナー」など無料セミナーの継続,「情処ラジオ」という聞き流せる会員トークなどさまざまな形態での発信に挑戦しています.また,今まで全会員に単一で送信していた「IPSJメールニュース」を,いくつかの種類に分けました.たとえば,会員の属性にあった内容をピックアップして送信する「セグメントメール」,新入会員向けには,さまざまなイベントや研究会の参加方法などの入会後のナビゲーションを送信する「ステップメール」があります.長期間,会員を継続されている方には気づかれないかもしれません.

     以上のように,会誌・出版は,メディアにかかわることに幅広く関係していますので,皆さんとはどこかで必ず繋がっています.会誌を手にしたときは,ぜひ思い出してください.

     幸運なことに,かつてASCIIという出版社に勤めていたこと,雑誌の記事を執筆したり,連載やコーナーを持ったり,単行本を30冊以上執筆したことがあり,その経験が役に立ちました.ただ,時代の変化で,紙から電子に,PCからスマホ,さらにWebベースへと媒体は変化し,執筆や制作ツールも便利なものに変わりました.しかし,そこに記載するテキストや図表などのコンテンツ,表現方法,日本語の基本は変わっていません.いかに,読者である皆さんに,分かりやすく,誤解されないよう,簡潔明瞭に伝えるか,その努力は絶えません.

     最後に,教育担当理事のメッセージで「情報教育白書」を作りたい!と宣言しましたが,残念ながらこの2年間で実現できませんでした.この2年間でできたネットワークを使って,「情報と人のかかわり」について何かしらの記録にまとめること,過去のコンテンツを掘り起こし日の目を見るようにすることなど,次々とやりたいことが出てきました.過去や歴史なんて情報にはそぐわないと思っていたはずなのに,それがライフワークになるのでは?と予感しています.

    参考
    ・学会誌「情報処理」https://www.ipsj.or.jp/magazine/magazine.html
    ・学会誌「情報処理」note https://note.com/ipsj
    ・「コンピュータ博物館」https://museum.ipsj.or.jp/index.html