2020年11月02日版:清水 佳奈(会誌/出版担当理事)

  • 2020年11月02日版

    「会誌改革
    清水 佳奈(会誌/出版担当理事)

     就任以降、会員のエクスペリエンス向上を目指して会誌改革に取り組み、2020年10月15日発行の『情報処理』11月号において以下を実現しました。
     
      1.  オンライン限定記事の新設(記事の即時性向上に寄与)
      2. 新媒体noteの導入(オンライン記事の読みやすさ改善に寄与)

     会誌はこれまで、紙の冊子とPDFの2つの形態により発行しており、双方の誌面は同一でした。1の実施により、オンラインに限定する記事では発行に要する時間の短縮が可能になりました。また、印刷費の抑制効果も大きく、浮いた予算を別の施策に活用できるようになりました。当面は、主として特集をオンライン限定で発行します。著者の皆様には、従来よりも余裕をもったスケジュールで執筆にあたっていただけるようになりました。さらに今後は、緊急記事の一部もオンライン限定で発行することを検討し、ホットな話題をいち早く読者にお届けできればと考えております。先にメリットを述べましたが、デメリットもあります。紙の人気は根強いです。印刷されなくなったことにより、素晴らしい記事に注目が集まらなくなるのではないか。1の実施のみだと、読者目線ではデメリットの方が目立たないか。紙の記事を削るのであれば、新たな価値の提供とセットにしたほうが読者に受け入れてもらいやすいのではないか、と思案しました。そこで、2の実施により、オンライン記事の読みやすさの改善を試みました。PDFの記事はモバイル端末などでは少し閲覧しにくい場合があると思います。記事のダウンロードに必要な情報学広場へのアクセスも少し重たく感じる方もおられるかもしれません。noteの記事はアクセスも軽く、モバイル端末での可読性も高いです。SNSでの記事の引用も見栄えがします。noteで配信した記事には7日間で5,500件以上のアクセスがありました。これは記事自体の魅力に加えて、記事を手軽にお読みいただけるようになった効果の現れではないかと捉えています。

     今回実施した施策を、改善と受け取ってくださる方が多いのか、それとも、総じて改悪と感じられる方が多いのか、本稿の執筆時点(2020年10月22日)ではまったくの未知数です。しかし、会誌の在り方に一石を投じる効果があったのではないかと信じております。

     残りの任期では、1、2の安定運用に必要な環境整備と、コンテンツの拡充に取り組みたいと考えています。情報の表現方法は、まさに、本会が専門とする情報処理技術によって多様化しました。記事の形は、伝えたい情報の性質に合わせてさまざまであってよいはずです。前述のnoteでは記事に動画を埋め込むことができます。今後は文字や画像だけにとどまらない記事をお届けできるのではと期待します。1を実施した背景には、発行ページ数の上限を緩和する意図もありました。では、数多くある話題を片端から記事にすればよいかというと、それは現状の会誌には適さないと考えています。現状の会誌では、厳しく選び抜いた記事のみを扱い、その一つひとつにコストをかけて(たとえばパーマネントリンクを付与して永続性を保証するなど)管理しているためです。そこで、従来通り厳選した記事を中心に据えつつ、もう少し気軽な位置づけの記事があると便利かもしれません。今後は、長期に渡り厳格に管理する記事に加え、その時々で読者に楽しんでいただく記事を扱うことも検討したいです。このような記事の発行には今回導入したnoteが役立つでしょう。もう1つ検討したいのは、会誌を窓口として周辺との結びつきを強化する試みです。たとえば、会誌において関連領域を紹介する機会が増えれば、情報処理中心とした異分野交流のきっかけとなるかもしれません。また、従来の会員層の中心である情報処理のエキスパートでない方々向けの話題を、気軽な位置づけの記事でたくさん扱うと、学生、社会人を問わず、さまざまな層の方々が本会に親しみを覚えてくださるかもしれません。
     
     より効果的で、より早く、より広い読者層に届けるにはどうしたらよいのか。この問いに対して、すぐに最適解が見つかるとは思えません。また、実施した施策を振り返り、適切に修正する必要もあります。ですから、ご意見、ご感想などございましたら、ぜひ、会誌編集委員会までお寄せくださいますと幸いです。皆様の声を頼りに、時代に即した会誌の在り方を追求していければと存じます。
     
     今回の施策は本会事務局の強力な支援のおかげで実現しました。特に、会誌担当の後路さん、守田さん、綿谷さんは、本施策の実現に向けて献身的に働いてくださいました。また、早い段階から会誌改革を後押ししてくださった長期戦略担当の高橋理事や、大きな変化を肯定的にとらえ、さまざまなアドバイスをくださった江村会長、ならびに理事の皆様方、木下局長にも深く感謝申し上げます。note活用のアイディアは江渡委員によるものです。稲見編集長が率いる会誌編集委員会はアイディアに富み、アクティブに活動する優れた委員により構成されています。このような素晴らしい方々とともに活動する機会を与えていただいたことにも心からの感謝を申し上げたいと思います。