会長挨拶

 西尾章治郎
西尾章治郎
情報処理学会会長/大阪大学

<目次>

会長就任にあたって

社会と共に未来をデザインする学会を目指して

—会長就任にあたって—


西尾章治郎
情報処理学会会長/大阪大学

 

(「情報処理」Vol.58, No.7, pp.560-561(2017)より) 

 このたび,第29代会長を拝命しました.歴代の会長,歴代・現在の役員,学生会員を含む会員の皆様,そして事務局の皆様の力強いバックアップをいただきながら,情報処理学会の会長を務めさせていただく喜びと重責を身にしみて感じております.今後,以下に述べることを大きな実行の柱として,皆様とともに本会をさらに発展させていく所存です.
 

追い風の中での責任の重さ

 昨年開始された我が国の第5期科学技術基本計画では,IoT(Internet of Things),人工知能(AI)技術,ビッグデータ解析など情報処理技術を駆使した「超スマート社会(Society 5.0)」の実現を目指しています.まさに,本会の活動が社会全体にとってきわめて重要になり,その潜在力を活かす絶好機が到来しています.本会はこの好機を捉え,真価を発揮して社会変革(イノベーション)を正しい方向にリードして,新たな社会を実現する責務があると考えます. 

  逆に言えば,この機において,社会の要請に十分に応えることができないようであれば,我々の分野全体への信用を失墜しかねないほどの重要な時期に差しかかっていると言えます.そのことを肝に銘じて学会活動を展開していきます.

社会と共に歩む,そのためにも会員数の確保

 我々を取り巻く諸問題が,複雑化・高度化すると同時に,情報処理技術の急速な進展が先導役となって,産業構造も「垂直統合」から「水平統合」へと大きく変遷しています.その状況の中,学会自体も変革の時期にきており,新たな役割を果たすことが社会から求められています.特に,その実現のためには,「問題をいかに解決するのか」ということ以前に,根源的な課題である「いったい何をすればよいのか」,「なぜそれをするのか」,ということを学会内のみならず,社会のさまざまなステークホルダーと共にオープンに創造する,つまり,「共創(Co-creation)」する学会へと変革を遂げる必要があります.

  そこで本会では,産・官・学・民が一体となり課題の議論やアイディアの発表を行う「共創」の場を活性化し,情報処理に関する多様な分野に携わる本会員の「協奏(Orchestration)」を強化します.その強化策を通じて,「共創に向けた新しい協奏のかたち」を本会のビジョンとして国内外に発信し,「未来をデザインする場」としてのグローバルな活動基盤を確立していきます.

  そのような活動を多様なステークホルダーの方々と展開し,社会に影響力を及ぼす観点からも,学会としての大きな存在感を示すことは重要であり,そのために会員数の確保が必要不可欠です.現在,会員数は,2万人を切る状態にまで減少しています.私は,古川元会長,喜連川元会長のもとで副会長を務めた折,特に学生会員を中心とした会員増加を図り,何とか減少を食い止めることができました.そのときの経験をもとに,会員数の維持,増加を目指していきます. 

魅力あるイベント・企画の強化

 本会では,研究会,全国大会,ソフトウエアジャパン,FIT(情報科学技術フォーラム)などを軸として,さまざまなイベントや企画を推進しており,それらは時代の変遷に伴って,より魅力的なものへと進化しています.たとえば,AI技術やビッグデータ解析技術については,近年のソフトウエアジャパンにおけるメインテーマであり,企業を中心とする多くの研究者・技術者に参加いただいています.また,先の全国大会の若手研究者のトークイベントIPSJ-ONEの会場には中・高校生や大学生など多くの若者が集まり,各研究会から推薦された若手研究者の最先端の研究成果に耳を傾けてくれ,ニコニコ生放送での中継もされました.

  このような従来の魅力的なイベントを発展・強化させつつ,若い世代が本会の魅力をさらに感じられるよう,新しい企画を積極的に導入していきます.
 

国際的に活躍するトップレベルの研究者・技術者の育成

  最近,情報技術分野における我が国のプレゼンスは,多くの研究領域において衰退しつつあるようです.世界トップクラスの論文誌や国際会議の企画・運営に,我が国の研究者・技術者が中心的に参画している研究領域は少なくなってきており,残念なことですが,国際的な活動からは影の薄い存在になりつつあります.

  このような現状を打開し,国際的にトップレベルで活躍する研究者・技術者を育成することは,学会の重要な存在意義の1つであり,我が国の研究力・技術力を維持し向上する上で必須です.そのためには,本会においてもシニア・中堅の会員がより強力に国際的に活躍し,若手に経験やノウハウを伝授する必要があり,さらにその流れを継続していかなければなりません.このようなサイクルを実現・支援する場として,本会が機能することが望ましいと考えます.

  今後は,国際的にトップクラスで活躍する「とんがった」研究者・技術者を育成するための,教育システムや企画について検討したいと思います.さらに,中国・韓国などのアジア諸国との連携を一層深めつつ,欧米との連携にも力を入れ,本会員が国際活動に積極的に参画できるような場を提供したいと思います.

次代を担う世代へのアプローチのさらなる強化

  大学教育・入試改革の動きの中で,高大接続が重要視されています.私は,2017年3月20日に大阪で開催されました文部科学省大学入学者選抜改革推進受託事業「2025年高校教科「情報」入試を考える」シンポジウムに参加し,主催者を代表して挨拶をしました.このシンポジウムは,開催会場が満席になるほどの多数の参加者を得まして,盛況裡に終了することができました.特に,高等学校の教諭の方々に多く参加いただき,大変熱心な討議をしていただきました.本会はこの受託事業の連携機関であり,そのことをはじめとして,今後,「情報」入試,さらには高校教科「情報」に関して,本会がますます大きな役割を果たすことが期待されており,そのための活動を強化していきます.

  このような活動を契機に,情報処理分野の「未来」を担う小・中・高校生を含めた次世代が本会の斬新で魅力ある企画や活動成果に触れて「ときめき」を感じることができるように努めます.


  これまで述べてきましたように,これから本会は,社会的な重責を果たしつつ,若い世代が魅力を感じる活動を推進しなければなりません.そのために,会員の皆様と一丸となって未来志向の「活気溢れるコミュニティ」の構築に邁進していきます.

 

(2017年4月27日)


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