連続セミナー2009「進化する組込みシステム技術」

第4回 プラットフォーム時代の組込みアプリケーション開発

企業間競争を優位に進めるには、高機能・高性能・高品質の工業製品たる組込みシステムをいち早く市場に投入が必要であり、企業の重要な課題である。一方、市場/顧客ニーズが多様化・高度化・複雑化しており、従来のように個別製品に特化した開発手法は限界を迎えている。このような状況・課題へのアプローチの1つが「プラットフォーム開発」である。一口に”組込みシステム”といっても、その規模・複雑さ・要求事項は多様であるため組込みシステム先般を対象としたプラットフォーム化は困難であるが、各製品分野に特化したプラットフォーム構築は可能である。本セミナーでは、プロダクトラインの観点でプラットフォームによるアプリケーション開発を鳥瞰し、携帯電話、車載システム、情報家電製品での最新状況を取り上げる。 

 開催日時:2009年10月7日(水) 9:30~17:00

 開催会場:東京電機大学 神田キャンパス7号館1F 丹羽ホール

 コーディネータ:宿口 雅弘 (名古屋大学 大学院情報科学研究科 附属組込みシステム研究センター 研究員)

photo【略歴】1989年三菱電機マイコン機器ソフトウエア株式会社入社。以降組込みリアルタイムOS・ドライバの開発・保守、ソフトウェアテスト推進および技術者教育に従事。2008年奈良工業高等専門学校を経て現職。

 プログラム

Session1 9:30~11:00

「プラットフォーム開発における戦略構築~ソフトウェアプロダクトラインエンジニアリング」
山崎 進 (公立大学法人 北九州市立大学 国際環境工学部 講師)

【講演概要】プラットフォーム開発を行う上で重要なことは、どんなプラットフォームを構築すれば製品群の再利用効率がよくなるかを、事前に計画することである。ソフトウェアプロダクトラインエンジニアリング(以下、プロダクトライン)では、プラットフォームを戦略的に構築するために、マーケティング計画を元に開発対象となる製品群の共通部分と相違部分を分析する、共通性・可変性分析を行う。本講演では、プロダクトラインの概要、プロダクトラインとプラットフォームの関わり、プラットフォーム開発の上流工程となる共通性 ・可変性分析などについて、文献を紹介しながら解説する。

photo【略歴】大学院時代は東京工業大学でプログラミング言語処理系について研究をしていた。2003年に九州大学を中心に行われていた「組込みシステム開発技術の開発」プロジェクトに参加し、プロダクトラインについて研究をスタートした。2007年から北九州のカーエレクトロニクス構想に参加し、現在、北九州市立大学国際環境工学部に所属する。

Session2 11:10~12:40

「Androidによる組込分野とエンタープライズ分野の融合」
江川 崇 (株式会社豆蔵 コンサルタント/日本Androidの会 幹事)

【講演概要】Androidは携帯電話分野への適用からスタートしたが、特に日本では組込系製品の水平統合型プラットフォームとして注目されている。また別の視点として、Androidが提供する高度に抽象化されたフレームワークは、エンタープライズ系のビジネスアプリケーションの開発に従事する、いわゆる非組込系のソフトウェア開発企業に対しても、新たな可能性を示している。Androidの登場は、組込開発の領域とエンタープライズ系システム開発の領域に存在していた壁を取り除き、ビジネスや人材といった様々なレベルでの融合を生んでいる。本講演では、Androidの登場が、これら両分野に対してどのような可能性を示しており、どのような課題を秘めているのか、および両分野の企業やコミュニティに対してどのような影響を与えているのかについて考察する。

photo【略歴】株式会社豆蔵所属。Google API Expert (Android)。日本Androidの会幹事。平成15年より現職にて要件定義やソフトウェア方式設計の支援に従事し、ソフトウェアエンジニアリング技術を各現場の様々な局面で効果的に適用する取り組みを実践している。現在はAndroidをはじめとするモバイルプラットフォームが製品開発の領域とエンタープライズ系システム開発の領域を真の意味で繋げると信じ、その架け橋を築くべくAndroidの普及活動に取り組んでいる。

お昼休憩 12:40-13:40

Session3 13:40~15:10

「進化する車載電子システムと標準化の流れ」
梶尾 和弘 (トヨタ自動車株式会社 BR制御ソフトウェア開発室 主任)

【講演概要】近年の車載電子制御システム開発では、「環境」「安全」「快適」といった各側面からのニーズに応えるべく個々のシステムが急速に複雑化、分野を越えた統合化が進むと共に、それを制御するソフトウェアは大規模化している。一方、車両の電子プラットフォーム開発では個々の車両の「商品性」「品質」「コスト」要求を満足しながらも全体最適が求められる。本講演では、車載電子システム、車載ソフトウェア開発の今の課題と取組みを説明するとともに、今後の技術および標準化の動向を紹介する。

photo【略歴】1998年、名古屋大学大学院工学研究科マイクロシステム工学専攻修了。その後、トヨタ自動車株式会社入社し、制御系システム向けCANの開発、次世代車載LANの開発に従事。2004年、トヨタモーターヨーロッパR&Dに赴任し、車載電子アーキテクチャの標準化団体である「AUTOSAR」にProject Leaderとして参画。2008年より現部署にて次世代ソフトウェアプラットフォームの企画・要素技術開発を行っている。

Session4 15:30~17:00

「家電アプリケーションの今と、それを支えるプラットフォーム」
梶本 一夫 (パナソニック株式会社 システムエンジニアリングセンター 所長)

【講演概要】家電において今後ネットワーク対応が進んでいく。家電統合プラットフォーム「ユニフィエ」におけるネットワーク対応の状況や、家電で動作するアプリケーションの事例について紹介する。また、開発手法や開発プロセスも含め、家電ソフトウェアものづくりの今について述べる。

photo【略歴】1986年、京都大学大学院工学研究科情報工学専攻修了、同年松下電器産業株式会社に入社。OSのマルチメディア拡張開発、規格化に従事。その後、デジタル放送送出設備開発や統合プラットフォーム「UniPhier」のソフトウェアリーダを経て、プロセスや開発手法のソフトウェアものづくり研究に従事。