連続セミナー2009「進化する組込みシステム技術」

第1回組込みシステムの現状

組込みシステムはハードウェアやソフトウェアなど様々な要素技術が組み合わされ新しい価値を次々に生み出している。組込みシステムの実現を支えるこれらの要素技術は昨今の急速な技術開発の中で急速に進化している。連続セミナー2009「進化する組込みシステム技術」の第1回は、こうした背景を受け、組込みシステムを取り巻く現状やその技術の最前線、組込み技術の将来像なども交えながら、連続セミナー全体を俯瞰する内容を第2回目以降のコーディネータの皆さんを交えて紹介していく。
また、初回はスペシャルゲストとして東京大学の坂村健教授をお招きし、組込みシステムおよびそれを支えるエンジニアの皆様への期待などをお話いただく。

photo スペシャルゲスト講演
Session4 14:00-15:30
「次世代インフラとしてのユビキタスと組込技術」
坂村 健 (東京大学 大学院情報学環 教授)

 開催日時:2009年6月8日(月) 10:00~17:40

 開催会場:東京電機大学 神田キャンパス7号館1F 丹羽ホール

 コーディネータ:平山 雅之 (株式会社東芝 ソフトウェア技術センター 参事 )

photo【略歴】1986年 東芝入社。2003年より東海大学電子情報学部非常勤講師。2005年よりIPA/SEC 組込みプロジェクト領域責任者兼務。現在、(株)東芝 ソフトウェアエンジニアリングセンター参事、東海大学専門職大学院客員教授(組込み技術専攻),IPA/SEC領域責任者として組込みソフトウェアに関するエンジニアリング技術の研究と普及に従事。専門はソフトウェア品質・信頼性情報処理学会監事、組込みシステム研究会主査。

 プログラム

Session1 10:00~11:00

「組込みシステムの進化に向けて(全体紹介)」
 平山 雅之 (株式会社東芝 ソフトウェア技術センター 参事)

【講演概要】様々な技術革新によって組込みシステムは進化を続けており、いまや組込みシステムは我々の生活に欠くことのできないものとなっている。本講演では、まず組込みシステムがどのような性質や側面を持っているかを紹介し、組込みシステムの多様性について考える。さらに経済産業省が毎年実施している組込みシステム開発に関する産業実態調査などをもとに最近の組込みシステム開発がどのような状況にあるかを紹介し、その課題などを整理し、全6回の連続セミナーの導入としたい。

photo【略歴】1986年 東芝入社。2003年より東海大学電子情報学部非常勤講師。2005年よりIPA/SEC 組込みプロジェクト領域責任者兼務。現在、(株)東芝 ソフトウェアエンジニアリングセンター参事、東海大学専門職大学院客員教授(組込み技術専攻),IPA/SEC領域責任者として組込みソフトウェアに関するエンジニアリング技術の研究と普及に従事。専門はソフトウェア品質・信頼性情報処理学会監事、組込みシステム研究会主査。

Session2 11:00~12:00

「組込みソフトウェア・プラットフォーム最前線」
 中本 幸一 (兵庫県立大学 大学院応用情報科学研究科 教授)

【講演概要】本講演では、組込みシステムで利用されるプラットフォームの現状、および今後の動向を講演する。より詳細には第2回の講演で行なわれる話題の導入および講演で触れられない話題を補足する。組込みシステムは大きく制御系システム、情報系システムに分類される。前者の例として車載システム、後者の例として携帯端末をとりあげて、各々の領域での典型なソフトウェアプラットフォーム技術とプログラム構築技法を紹介する。前者は欧州の車載ソフトウェアの標準仕様であるAUTOSAR、後者はLinuxをベースに講演する。また、サーバ系で利用されている最新技術である仮想マシンやマイクロカーネル技術にも触れ、その組込みシステムでの適用可能性を考察する。カバーする技術項目は以下のとおり。リアルタイムOS、組込み・リアルタイムLinux、資源管理、仮想マシンやマイクロカーネル技術の組込みシステム適用である。。

photo【略歴】1982年大阪大学大学院基礎工学研究科前期課程修了。同年NEC入社。組込みソフトウェア、モバイルシステムソフトウェア等の研究開発に従事。 1997年大阪大学大学院基礎工学研究科博士課程入学。2000年単位取得退学。博士(工学)。 2004年より現職。2006年より名古屋大学大学院情報科学研究科組込みシステム研究センター特任教授。組込みシステムソフトウェア、ソフトウェア開発環境に興味を持つ。

お昼休憩 12:00-13:00

Session3 13:00~14:00

「組込みハードウェア・プラットフォーム最前線」
 井上 弘士 (九州大学 システム情報科学研究院 情報知能工学部門 准教授)

【講演概要】順調に成長を続ける半導体微細化技術の発展を背景に、近年の組込みハードウェアは大きな進化を遂げてきた。例えば、複数プロセッサを搭載したマルチコアの実用化や再構成可能ハードウェア/プロセッサの躍進など、これまでにない新しいハードウェア構成法が登場している。その一方、組込みシステムそのものは大規模化/複雑化の一途を辿っており、新しいハードウェア環境を効率良く活用するためには、ソフトウェア特性をも考慮した従来にない新しいシステム設計開発戦略がより重要となる。このような背景の中、本連続セミナーの第3回は「組込みハードウェアプラットフォーム最前線」と題し、現在実用化されているハードウェアプラットフォーム技術ならびにハードウェア/ソフトウェア協調設計技術に焦点を当て、その実状を紹介すると共に今後の組込みシステムの方向性を議論する。本講演では、このような組込みハードウェアの現状とその課題を整理すると共に、第3回セミナーのダイジェストを紹介する。

photo【略歴】1971年生まれ。平成8年九州工業大学大学院情報工学研究科修士課程修了。同年横河電機(株)入社。平成11年の1年間Halo LSI Design & Device Technology,Inc. にて訪問研究員としてフラッシュ・メモリの開発に従事。平成13年九州大学にて工学博士を取得。同年、福岡大学工学部電子情報工学科助手。平成16年より九州大学大学院システム情報科学研究院助教授。平成19年4月より、同大学准教授。現在に至る。プロセッサ・アーキテクチャに関する研究に従事。情報処理学会創立40周年記念論文賞受賞、平成20年度科学技術分野の文部科学大臣表彰若手科学者賞受賞。

Session4 14:00~15:30

スペシャルゲスト講演 「次世代インフラとしてのユビキタスと組込み技術」
 坂村 健 (東京大学 大学院情報学環 教授)

【講演概要】これからの社会インフラを担うユビキタス・コンピューティング環境の構築のための組込技術に関して、TRONプロジェクトの成果、リアルタイムOSやオープンアーキテクチャの最新動向、将来展望などをお話する。

photo【略歴】1951年東京生まれ。東京大学大学院情報学環教授。工学博士。1984年からオープンなコンピュータアーキテクチャTRONを構築。現在、TRONはユビキタス環境を実現する重要な組込OSとして世界で多数使われている。2002年1月よりYRPユビキタス・ネットワーキング研究所長を兼任。『ユビキタスとは何か』、『変われる国、日本へ』など著書多数。IEEEフェロー、ゴールデンコアメンバー。2003年紫綬褒章。2006年日本学士院賞。

Session5 15:40~16:40

「プラットフォーム時代の組込みアプリケーション開発最前線」
 宿口 雅弘 (名古屋大学 大学院情報科学研究科 附属組込みシステム研究センター 研究員)

【講演概要】これまでの組込みシステムの開発手法は、メーカー内外を問わず同じ製品分野であっても性能や資源制約のため当該製品に特化することが多い。これは、コンピュータシステムを1から構築することに等しく、共通的部位をも再構築することも少なく無い。小規模なシステムの場合は比較的有効であったものの、近年の爆発的に膨張する組込みシステムへの機能面・品質面への要求に対応することは困難である。このような状況をうけ、特に大規模システム開発おいては、組込みシステムのプラットフォーム化が進んでいる。捕らえどころの無い組込みシステム全体を包含することは不可能であるが、各製品分野に特化したプラットフォームを構築することで、開発効率向上・品質確保を目指すものである。本講演では、10月開催セミナーの紹介として、どのような観点が必要であるか?などのプラットフォーム開発の紹介および具体事例2件を取り上げて紹介する。

photo【略歴】1989年三菱電機マイコン機器ソフトウエア株式会社入社。以降組込みリアルタイムOS・ドライバの開発・保守、ソフトウェアテスト推進および技術者教育に従事。2008年奈良工業高等専門学校を経て現職。


Session6 16:40~17:40

「組込みシステム高信頼化最前線」
 沢田 篤史 (南山大学 情報理工学部ソフトウェア工学科 教授)

【講演概要】社会基盤の隅々にまでコンピュータが浸透するにつれ、組込みシステム、特に組込みソフトウェアの信頼性に対する期待が高まってきている。本講演では、組込みシステムの信頼性をソフトウェアの面から高めるための技術について概観する。本講演ではまず、ソフトウェアの品質と信頼性の概念について説明した後、ソフトウェア正しさを保証するテストや形式手法など、検証技術について概観する。さらに、品質管理や要求工学技術と検証技術との関係について説明する。

photo【略歴】1995年京都大学大学院工学研究科情報工学専攻博士後期課程研究指導認定退学、同年奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科助手、その後、京都大学大学院工学研究科助手、同大学大型計算機センター助教授、同大学学術情報メディアセンター助教授、南山大学数理情報学部教授を経て、2009年より現職。博士(工学)。ソフトウェア工学、組込みシステム工学の研究に従事。