連続セミナー2009「進化する組込みシステム技術」

第2回 組込みソフトウェアプラットフォーム

組込みシステムは、応用・ニーズ、開発するための開発手法、利用する社会環境、構成するハードウェア技術・ソフトウェア技術から大きな
影響を受け、進歩、発展を遂げる。「進化する組込みシステム技術」の第2回では、このような背景の中での、組込みシステムのOS、ミドル
ウェアなどのソフトウェアプラットフォームにおける最近の進展と動向を紹介する。内容は、マルチコア、コンポーネント技術(Session 1)、マイクロカーネル、安全技術(Session 2)、携帯端末ミドルウェア、アンドロイド(Session 3)、ロボット向けミドルウェア(Session 4)である。

 開催日時:2009年7月21日(火) 9:30~17:00

 開催会場:東京電機大学 神田キャンパス7号館1F 丹羽ホール

 コーディネータ:中本 幸一 (兵庫県立大学 大学院応用情報科学研究科 教授)   

photo【略歴】1982年大阪大学大学院基礎工学研究科前期課程修了。同年NEC入社。組込みソフトウェア、モバイルシステムソフトウェア等の研究開発に従事。 1997年大阪大学大学院基礎工学研究科博士課程入学。2000年単位取得退学。博士(工学)。 2004年より現職。2006年より名古屋大学大学院情報科学研究科組込みシステム研究センター特任教授。組込みシステムソフトウェア、ソフトウェア開発環境に興味を持つ。

 プログラム

Session1 9:30~11:00

「TOPPERSプロジェクトにおける次世代RTOS技術への取組み」
 高田 広章 (名古屋大学 大学院情報科学研究科 情報システム学専攻 教授)

【講演概要】本講演では、組込みシステム向けのオープンソースOSを開発するTOPPERSプロジェクトにおける次世代RTOS技術への取組みについて解説する。TOPPERSプロジェクトの概要とこれまでの開発成果等について述べた後、マルチコアプロセッサ向けの第2世代のリアルタイムカーネルであるTOPPERS/FMPカーネルと、組込みシステム向けのコンポーネントシステム技術であるTECS(TOPPERS Embedded Component System)に関して、開発の背景、基本概念、コアとなる技術等について解説する。
また、TOPPERSプロジェクトの今後の方針についても述べる。

【略歴】名古屋大学大学院情報科学研究科情報システム学専攻教授。1988年東京大学大学院理学系研究科情報科学専攻修士課程修了。同専攻助手、豊橋技術科学大学情報工学系助教授等を経て、2003年より現職。2006年より大学院情報科学研究科附属組込みシステム研究センター長を兼務。リアルタイムOS、リアルタイムスケジューリング理論、組込みシステム開発技術等の研究に従事。オープンソースのリアルタイムOS等を開発するTOPPERSプロジェクトを主宰。博士(理学)。

Session2 11:10~12:40

「マイクロカーネルによる安全技術」
 中村 和夫 (株式会社フォー・リンク・システムズ 取締役副社長)

【講演概要】本講演では、マイクロカーネルを利用した組込み機器向け仮想化技術について解説いたします。近年、組込み機器では、機器の統合、安全性の確立など様々な要求がなされております。仮想化技術を使用することによるこれらの要求への解決方法を解説するとともに、基本的構造、特徴について解説いたします。

photo【略歴】キヤノンソフトウェア、ウィンドリバー、マイクロソフトなどで組込みOS開発に従事、現在、フォーリンクシステムズにてハイブリッドOS、特定分野向けソフトウェアプラットフォームの開発を行っている。

お昼休憩 12:40-13:40

Session3 13:40~15:10

「Androidの特徴と、APIの使用方法について」
 平山 順一 (株式会社アプリックス 研究開発本部 係長)

【講演概要】近年、組み込みシステムは様々な技術が組み合わされ新しい機能が、利用者に提供され新たな価値、使用法が生み出され浸透しつつある状況である。その一方で提供者は開発コストの低減、差別化を図るためのリソースの集中のために Eco systemの確立が試みられている。そのような状況の中Open Handset Allianceより提供され、現在組み込み業界にて注目を浴びているAndroidについて説明をする。本講演では、Androidについての概略、特徴、Androidとは何であるか?について説明した後、講演者の考えるAndroidの利点について、様々な立場からの考察、そして具体的なAndroid APIの特徴や使用例について説明を行う。

【略歴】1999年、法政大学工学部電子情報学科卒業。以来通信系ソフトウェアの開発に従事する。 2006年より株式会社アプリックス入社。主にLinuxを活用したソフトウェアの開発に従事し現在に至る。

Session4 15:30~17:00

「RTミドルウエア -TOPPERSによる組込み機器への展開-」
 安藤 慶昭 (独立行政法人産業技術総合研究所 知能システム研究部門 統合知能研究グループ 研究員)

【講演概要】RTミドルウエアは、ロボット技術要素 (RT: Robot Technology) のモジュール化を促進し、開発効率向上とコスト削減による次世代ロボット市場を創出することを目指した、ソフトウエアプラットフォームである。そのインターフェース仕様は、標準化団体OMG (Object Management Group) において国際標準となっている。経済産業省技術ロードマップにおいても標準プラットフォームとして位置づけられるなど、様々なロボット開発プロジェクトにおいて基盤プラットフォームとして用いられている。今後、次世代ロボットの実用化が進むにつれ、組込みデバイスの利用、安全性の確保といった観点から、TOPPERSのような高信頼組み込みOSへの需要が高まることが予想される。こうした要求に対応すべく、これまでのPOSIX、Windows版RTミドルウエアに加えて、TOPPERS版RTミドルウエアを開発したのでこれを紹介する。

【略歴】1997年3月京都大学工学部電子工学科卒業。2002年3月東京大学大学院工学系研究科 電子情報工学専攻博士課程修了・博士(工学)。2002年4月東京大学生産技術研究所学術研究支援員。2003年4月独立行政法人産業技術総合研究所入所。ネットワークロボティクス、テレオペレーションおよび触覚(ハプティクス)の研究。現在は、ロボットのソフトウエアアーキテクチャ、RTミドルウエア、ソフトウエアプラットフォームおよび標準化などに興味を持つ。