連続セミナー2009「進化する組込みシステム技術」

第3回 組込みハードウェアプラットフォーム

順調に成長を続ける半導体微細化技術の発展を背景に、近年の組込みハードウェアは大きな進化を遂げてきた。例えば、複数プロセッサを搭載したマルチコアの実用化や再構成可能ハードウェア/プロセッサの躍進など、これまでにない新しいハードウェア構成法が登場している。その一方、組込みシステムそのものは大規模化/複雑化の一途を辿っており、新しいハードウェア環境を効率良く活用するためには、ソフトウェア特性をも考慮した従来にない新しいシステム設計開発戦略がより重要となる。このような背景の中、本連続セミナーでは、現在実用化されているハードウェアプラットフォーム技術ならびにハードウェア/ソフトウェア協調設計技術に焦点を当て、その実状を紹介すると共に今後の組込みシステムの方向性を議論する。 

photoスペシャルゲスト講演
Session5 15:40-16:50
「組込ハードウェアの今後と研究ビジョン」
桜井 貴康 (東京大学 生産技術研究所 教授)

 開催日時:2009年9月8日(火) 9:30~17:00

 開催会場:化学会館7Fホール

 コーディネータ:井上 弘士 (九州大学 システム情報科学研究院 情報知能工学部門 准教授)   

photo【略歴】1971年生まれ。平成8年九州工業大学大学院情報工学研究科修士課程修了。同年横河電機(株)入社。平成11年の1年間Halo LSI Design & Device Technology,Inc. にて訪問研究員としてフラッシュ・メモリの開発に従事。平成13年九州大学にて工学博士を取得。同年、福岡大学工学部電子情報工学科助手。平成16年より九州大学大学院システム情報科学研究院助教授。平成19年4月より、同大学准教授。現在に至る。プロセッサ・アーキテクチャに関する研究に従事。情報処理学会創立40周年記念論文賞受賞、平成20年度科学技術分野の文部科学大臣表彰若手科学者賞受賞。

 プログラム

Opening 9:30~9:40

 井上 弘士 (九州大学 システム情報科学研究院 情報知能工学部門 准教授)

Session1 9:40~10:50

「Cell Broadband Engine と SpursEngine - その設計思想とソフトウェア応用」
 林 宏雄 (株式会社東芝 セミコンダクター社半導体研究開発センター デジタルメディアSoC技術開発部 主幹)

【講演概要】Cell Broadband Engine(TM) (Cell/B.E.(TM)) は、ソニー・コンピュータ・エンターテイメント、ソニー、IBM、東芝が共同で開発した、次世代ゲーム機やデジタルハイビジョン時代のAV機器などのデジタルホーム、そしてブロードバンドインターネット時代の分散コンピューティングの中心となる高性能プロセッサである。さらに東芝はCell/B.E.のメディア処理向けプロセッサ SPE(Synergistic
Processor Element) を応用し、大量のHD (High Definition)コンテンツを高いパフォーマンスで処理できるメディアストリーミング処理プロセッサSpursEngine(TM)を開発した。本講演では、Cell/B.E.およびSpursEngineの設計思想について概説し、さらにそのソフトウェア応用を紹介する。

photo【略歴】1988年京都大学大学院工学研究科 電気工学専攻修士課程終了。同年株式会社東芝入社。 以来、並列・分散コンピュータ・アーキテクチャの研究開発、組み込みRISCプロセッサ関連開発業務に従事。2001年からSONYグループ、IBM社、東芝、3社共同開発のCell/B.E. (TM)共同開発プロジェクトに参画。2005年以降は、SpursEngine(TM)などCell/B.E.関連の製品開発業務を担当。現在は半導体研究開発センター デジタルメディアSoC技術開発部において、プロセッサ研究開発業務に従事する。 IEEE会員。

Session2 11:00~12:10

「デジタル家電統合プラットフォーム「UniPhier」の概要とハードウェア・アーキテクチャ」 
 井上 昭彦(パナソニック株式会社 プラットフォーム開発センター 主幹技師)

【講演概要】デジタル家電が急速に普及する中で、開発規模の増大と価格下落への対応は、急務の課題である。こうした環境に対応すべく、パナソニックでは商品横断型の共通プラットフォーム「UniPhier」を提唱している。UniPhierは、携帯電話からデジタルテレビを
始めとしたホームAV機器に幅広く適用されており、パナソニックのデジタル家電事業を支えている。本発表では、UniPhierの狙いや効果を事例と共に紹介し、そのハードウェア・アーキテクチャを概観する。

photo【略歴】2000年九州大学大学院システム情報科学研究科 情報工学専攻博士課程修了。工学博士。同年、松下電器産業株式会社に入社、携帯電話向け動画処理LSIのハードウェア開発に従事。その後、家電統合プラットフォーム「UniPhier」のハードウェア・アーキテクチャの研究開発に従事し、現在に至る。

お昼休憩 12:10-13:00

Session3 13:00~14:10

「動的再構成可能プラットフォーム
 -シーズ・テクノロジーの商品化戦略へのヒント(失敗回避へ向けて)-」 
 佐藤 友美(元アイピーフレックス株式会社 R&Dグループ 取締役CTO)

【講演概要】ハードウェア・プラットホームとしては、柔らかい高性能ハードウェアという矛盾する2つの要求を高度にバランスさせる必要がある。また、商品化という意味では、コスト戦略が大きな問題となる。開発コストと回収モデル、顧客満足度という視点で、実装性能・機能・GAPについて、動的再構成技術(DAPDNA)について紹介する。200年3月に創業以来、テクノロジー・シーズをどう市場要求に適応させてきたのかについて、失敗体験も入れて、その軌跡と今後の課題(期待)、特に、ベンチャー事業としての資金調達や開発マイルストーン設定・エンジニアリングリソースの確保、複数の異なる顧客要求をどうバランスさせるべきかについての分析と課題について説明する。今後、日本で技術系ベンチャー事業のスタートアップを目指す研究者や創業者(新規事業戦略立案者)への考えるヒント(メッセージ)となるような形での講演としたい。

photo【略歴】1983年茨城大学工学部卒。HIDEC(ハイデック)から、パケット交換型と回線交換型光ループネットワーク装置の研究開発プロジェクトに出向。VMTで、386互換チップ開発に参加。GCTで、MPEG1ビデオデコーダ開発プロジェクトを推進。GCLで、MPEG2エンコーダ研究開発に参加。PDIで、カスタマイザブルVUPUを発案しプロトタイプ開発。2000年3月にIPF社を設立し、取締役CTOとして9年間務める。

Session4 14:20~15:30

「仮想プラットフォームを用いた、マルチコアSoCの最適化とソフトウェアの早期開発」
 川原 常盛 (コーウェア株式会社 技術本部 取締役技術本部長)

【講演概要】マルチコア化に伴い、メモリ・サブシステムやインタコネクトといったアーキテクチャ探求、およびソフトウェアの早期デバッグ開始と最適化が重要な課題となっている。これら諸問題の解決策としてESV(Electrical System Virtualization:電子システム仮想化)が注目されている。本講演ではマルチコア化に伴う課題、目的や設計フェーズに応じてESVをどのように構築すべきかといったモデリング上のポイントを紹介した後、弊社の各種製品を用いたESVソリューションを、事例を交えながら説明する。

photo【略歴】1990年東京都立大学大学院電気工学研究課修士課程卒業。同年京セラ株式会社入社し、中央研究所にてテレビ会議システムの開発に従事。その後LSI 設計ツールを提供するEDA 業界に転職。2000 年に米国CoWare 社にFAE(Field Application Engineer)として入社。現在は技術チームのとりまとめを行う傍ら、ESLおよびコーウェア製品の普及に従事。

Session5 15:40~16:50

スペシャルゲスト講演 「組込みハードウェアの今後と研究ビジョン」
 桜井 貴康 (東京大学 生産技術研究所 教授)

【講演概要】老齢化問題、エネルギー問題、環境問題など、実空間の課題がクローズアップされるなか、エレクトロニクスの実空間アプリケーションへの適用に関心が高まってきている。そのようなアプリケーションを下支えするエレクトロニクスにはいくつか、備えるべき特質がある。まず、ハードウェアが巨大な数になりうるので、極低電力でローコストの必要がある。次に、実空間のどこでも使用可能にするために、短距離無線やユビキタスエネルギー源がより重要となる。また、実空間とのインターフェイスが必須となるので、センサやアクチュエータを含んだ、多様性を育む新次元の集積エレクトロニクスが重要になると考えられる。一方、これらの実空間アプリケーションから収集されるデータ量は巨大になるが、それらをより簡便で高速に処理、移動、蓄積するために、仮想空間アプリケーション対応のエレクトロニクスに対しては、益々の高性能化、小型化、軽量化、低電力化などが期待されている。このような描出を踏まえ、三次元集積、極低電力集積回路、大面積集積エレクトロニクスなどの切り口から組込みハードウェアの今後と研究ビジョンについてまとめる。

photo【略歴】1981年、東京大学電子工学専攻博士課程修了。工学博士。(株)東芝にてCMOSメモリ、世界初のシステムLSIであるDRAM混載ASIC、世界初のメディアプロセッサなどを発表。1988年から1990年までU.C.BerkeleyにてLSI CADの研究。1996年より東京大学教授。高速・低消費電力LSI設計、および大面積エレクトロニクスなどの研究に従事。電子情報通信学会業績賞、Sugano賞など受賞。VLSI回路シンポジウム委員長、A-SSCC技術委員長、ISSCC、ESSCIRCなどの国際学会の技術委員。ベンチャーなどの技術コンサルタント。STARCフェロー、IEEEフェロー。

Closing 16:50~17:00

 井上 弘士 (九州大学 システム情報科学研究院 情報知能工学部門 准教授)