AI技術の産業応用: 現在と未来

日時:2020年11月11日(水) 10:00~17:00
会場:オンライン開催

人工知能 (AI) 技術は、様々な産業での応用が進みつつある。しかし、AI技術が真の意味で社会基盤を支える技術となり、各産業分野でのビジネス価値をどのように創出するかについて、今一度考える時期に来ているのではないか。本セミナーでは、医療、物流、モビリティ、製造業といった日本の根幹を支える産業におけるAI技術の取り組みの実際と今後の展望について、技術開発と実際の応用の両面からの観点を踏まえて議論する。
オープニング[10:00~10:10]

コーディネータ:浦本 直彦

株式会社三菱ケミカルホールディングス

セッション1[10:10-11:10]

実社会ビッグデータからの確率モデリング技術と社会実装への取り組み

生活や産業構造の変革が必須となり、デジタル化、サイバーとフィジカルを高度に融合することによりリスクとコストを低減し、生活価値を高める課題解決のための社会、Society 5.0の実現が問われています。フィジカル空間の膨大な情報をサイバー空間に集積し、サイバー空間では、この実社会ビッグデータを活用してAIを応用したシステムによって、人や社会、産業に様々な形でフィードバックするサービスや支援技術を実現します。現在、産総研がNEDOプロジェクトとして進めている、不確実な実社会で人と協調して動作し、人に気づきを与えるような可視化やシミュレーションを実現するための確率モデリング技術と活用事例を解説します。また実社会ビッグデータを活用するために技術開発と社会実装を併行して進めることが必要で、そのための産総研人工知能技術コンソーシアムによる共創的なオープンイノベーションの取り組みなどについても紹介します。

講師:本村 陽一

国立研究開発法人 産業技技術総合研究所 人工知能研究センター 首席研究員 / 産総研人工知能技術コンソーシアム会長

【略歴】2011年 産総研サービス工学研究センター副研究センター長、2015年 産総研人工知能研究センター副研究センター長、2016年より産総研人工知能研究センター首席研究員、確率モデリング研究チーム長、現在、東工大特定教授、神戸大客員教授、産総研人工知能技術コンソーシアム会長も兼務。1993年通産省工技院電子技術総合研究所入所以来、27年間、機械学習、確率モデルの基礎、応用、社会実装の研究に従事。AI, Society5.0に関する200件以上の共同研究、NEDOプロジェクトなどを推進。

セッション2[11:20-12:20]

医療とAI

AIの医療応用の歴史はエキスパートシステムに遡り、比較的古い。しかし、深層学習による画像診断の精度の著しい向上によって、医療の側からのAIに対する興味はこれまでにないほど高まっており、米国のFDAもAIを使った医療機器の認可を積極的に進めている。この講演では、医学系の主要な雑誌で報告されたレビューを中心に、どのようなAI技術が医療の現場で使われ始めているのかについて述べ、医療の側の意識およびFDAの取り組みについて概観する。

講師:津本 周作

島根大学 医療情報講座 教授/人工知能学会 副会長

【略歴】1989年大阪大学医学部卒業、1991年千葉大学医学部附属病院医員(医療情報部)を経て、2000年島根大学医療情報学講座教授。現在に至る。博士(工学)。2007年度大川出版賞「データマイニングの基礎」、2012年6月 人工知能学会功労賞、2018年7月-2020年6月 人工知能学会副会長、人工知能、特にデータマイニングの医療応用を中心に研究を進め、現在は、病院情報システムへのAI応用についての研究に従事している。

セッション3[13:30-14:30]

深層学習による製造業のスマート化と産業応用の将来展望

深層学習をはじめとする人工知能技術の製造業への適用はますます進んでおり、すでに多くの応用において商用化されている。本講演では深層学習の製造業応用例についてPreferred Networksにおける事例を含めて紹介したあと、その基礎となる深層学習技術の進展と最新動向について述べる。また、後半では製造業を超えてさらに多くの業界で産業応用が広がる可能性について展望を示す。
比戸将平様

講師:比戸 将平

株式会社Preferred Networks 執行役員 CDO

【略歴】2006年京都大学大学院情報学研究科修士修了、同年日本IBM東京基礎研究所に入社、データ解析技術の研究開発に従事。2012年4月にPreferred Infrastructureに入社。2015年1月Preferred Networks米国子会社へ転籍、2018年1月に本社へ帰任。同年12月に執行役員 研究開発担当 VP に就任、現職。

セッション4[14:40-15:40]

データドリブン経営を目指す企業に必要なもの
~戦略、ビジネスへの実装、組織、人材育成など実践からの学び~

ヤマトホールディングスは2020年1月に経営構造改革プラン「YAMATO NEXT100」を策定しその基本戦略の1つとしてデータドリブン経営を掲げ、デジタルトランスフォーメーション(DX)による物流オペレーションの効率化、標準化に加え、データ分析に基づく業務量予測、経営資源の適正配置、プライシングを上位レイヤーで迅速に意思決定することを目指して改革を進めています。本講演ではこれからデジタルトランスフォーメーションやデータドリブン経営に取り組む企業が必要となる要素を戦略、ビジネスへの実装、組織、人材育成など実践の中から得られた学びや知見などを解説し、特にAI技術を事業の中で応用するためのさまざまなヒントを示します。

講師:中林 紀彦

ヤマトホールディングス株式会社 執行役員 データ戦略担当

【略歴】2002年、日本アイ・ビー・エム入社。データサイエンティストとして数々の企業のデータ活用を支援。その後、オプトホールディング データサイエンスラボの副所長、SOMPOホールディングス チーフ・データサイエンティストを経て2019年8月、ヤマトホールディングス入社。また、筑波大学大学院の客員准教授としてビッグデータ分析の教鞭も取る。

セッション5[15:50-16:50]

化学産業におけるデータ科学とマテリアルズ・インフォマティクス

データ駆動型経済に代表されるデジタルトランスフォーメーションの波は、まさに全産業に及ぶ勢いである。化学産業もその例外ではなく、内外で様々な取り組みが行われている。本講演では化学企業におけるデータ利用のあり方を紹介するとともに、その中でもっとも特徴的な取り組みであるマテリアルズ・インフォマティクスについて、ルーツであるケモインフォマティクスから遡って議論したい。

講師:磯村 哲

株式会社三菱ケミカルホールディングス 先端技術・事業開発室 デジタルトランスフォーメーショングループ チーフコンサルタント/データサイエンティスト

【略歴】1999年東京大学大学院工学系研究科化学生命工学専攻修士課程修了。同年、三菱化学株式会社入社。2002年ゾイジーン株式会社、2007年株式会社モレキュエンス、2012年株式会社地球快適化インスティテュート、2017年株式会社三菱ケミカルホールディングスに所属、ヘルスケアから素材産業まで、データサイエンスを軸としたデジタルビジネス変革に従事している。

クロージング[16:50-17:00]

コーディネータ:那須川 哲哉

日本アイ・ビー・エム株式会社 東京基礎研究所 主席研究員

【略歴】1989年日本アイ・ビー・エム(株)入社、東京基礎研究所配属。T.J.ワトソン研究所やコンサルティング部門などを経験しつつ、一貫して自然言語処理の研究に従事。テキストマイニング技術の開発により2012年文部科学大臣表彰。慶應義塾大学大学院理工学研究科特別研究教授、静岡大学情報学部客員教授、人工知能学会理事、電子情報通信学会言語理解とコミュニケーション研究会委員長、情報処理学会理事などを歴任。