IoTやAIを支えるデータ流通基盤

日時:2020年10月13日(火) 10:00~16:50
会場:オンライン開催

近年、IoTとAIの研究開発や社会実装の進展により、データ駆動型社会としてのSociety 5.0への期待が高まっている。IoTはインターネット上のデータ空間と実空間を接続しDigital Twinsを実現し、AIは機械学習や深層学習により、人間の認知限界を超えた新たな問題解決や大量パラメータの同時最適化などを可能にした。このIoTやAIを動かす原動力となる資源がデータである。一方、計算機科学分野の主たる競争領域も、ハードウェアから基本ソフトウェア、応用ソフトウェア、サービスを経て最上位のデータレイヤになってきたと捉えることもできる。本講演会では、様々な分野におけるデータ駆動型の取組を担っている最高峰の講師の皆様にデータ流通及びそれを支えるプラットフォーム(基盤)についてお話いただく。
オープニング[10:00~10:10]

コーディネータ:越塚 登

東京大学大学院情報学環 教授

【略歴】1994年東大院理学系研究科博士課程修了、博士(理学)。東工大院情報理工学研究科・助手、東工大院人文社会系研究科・助教授等を経て、2009年より現職。2019年8月より東京大学大学院情報学環長。専門は計算機科学(Computer Science)。特に、IoTやLinked Open Data、Operating System、Block Chainなどの研究に取り組んでいる。

セッション1[10:10-11:00]

オープンデータとその流通を支える技術

本講演ではオープンデータと何か、そしてオープンデータを支える基盤技術について紹介する。まずオープンデータと何かについて、その発展の系譜を辿りながら、オープンデータの定義とデータ活用での意味について議論する。その上で、オープンデータが活用を支えるための技術・標準を説明する。スキーマ設計などのデータ作成のための技術、公開原則やメタデータ、識別子、リポジトリなど公開のための技術、アクセスのための技術、利用のための技術などを具体的なシステムとともに紹介する。また、オープンデータ活用は分野ごとに特徴があり、科学分野と公共分野を例にとり、実際にどのようにデータが流通しているかを示す。科学分野ではオープンサイエンスの基盤してのオープンデータ、公共分野ではオープンガバメントの基盤としてオープンデータを紹介する。

講師:武田 英明

国立情報学研究所 情報学プリンシプル研究系 教授

【略歴】1991年、東大大学院工学研究科博士課程修了後、ノルウェー工科大学、奈良先端科学技術大学院大学などを経て2003年より国立情報学研究所教授。同研究所学術コンテンツサービス研究開発センター長(2006-2010年)、東京大学人工物工学研究センター寄付講座教授(2005-2010年)、大阪大学サステイナビリティ・サイエンス研究機構 特任教授(2006-2010年)なども務める。専門は人工知能とウェブ情報学、学術コミュニケーション。工学博士。

セッション2[11:10-12:00]

mdx: データ科学・データ活用のための新しい学術情報基盤

データ科学、データ利活用を基軸とした産官学連携のためのプラットフォーム構築計画(データ活用社会創成プラットフォーム)について、狙いと現状を説明する。本計画はNII、 産総研、9大学(北大、東北大、筑波大、東大、東工大、名大、京大、阪大、九大)の共同で推進する。本講演で技術的な特徴(セキュアストレージ、隔離された環境、AI/HPCクラスタとの接続、モバイルデータ収集網)とともに連携推進・コミュニティ作りのための取り組みについて述べる。

講師:田浦 健次朗

東京大学 大学院情報理工学系研究科電子情報学専攻 教授/東京大学 情報基盤センター(兼務) 情報基盤センター長

【略歴】1997年、東大大学院理学系研究科博士課程修了。東京大学情報理工学系研究科電子情報学専攻。2018年より東京大学情報基盤センター長。 専門は並列処理、 高性能計算、プログラミング言語。 理学博士。

セッション3[13:00-13:50]

説明責任が求められるシステムにおけるAI活用とデータ

AIであっても、AIを使用したシステムが流通し使用されるにおいて製造物責任を免れる事はできません。また、AIの説明可能性については国内外の多くの研究者により取り組まれていますが、未だルール、ロジックベースの実装と同様の説明責任を果たせる段階にはありません。他方、AIの説明可能性を学習に用いるデータに求める調査研究が積極的に進められ、AIを用いたシステムの活用における契約の検討など具体的な取り組みがなされています。この仮定において、学習に用いるデータの保証、知的財産に絡むこれまで考慮されてこなかった複雑な問題も多く明らかになっています。AIと学習に用いるデータの関係に関する調査研究と課題について紹介します。

講師:田丸 健三郎

日本マイクロソフト株式会社 業務執行役員NTO/内閣官房政府CIO補佐官/一般社団法人AIデータ活用コンソーシアム 副会長

【略歴】1992年マイクロソフト入社。米国 Microsoft Corporation(WA)にて、主にメッセージングシステム、ディレクトリサービスおよびグローバル分散処理システムの研究開発を担当。機械学習によるルーティングの最適化、コミュニケーションデータ(自然言語)の分析、モデル化に従事。その後、アジア(日本、台湾、韓国、中国)におけるサーバー製品群の研究開発グループ統括責任者を務めた後、2009年10月より業務執行役員 NTO、2019年5月より政府CIO補佐官を兼務。

セッション4[14:00-14:50]

都市の中核を構成する地理空間情報の円滑な流通に向けて

近年では、スマートシティを構成する際に、デジタルオリエンティドなデジタルツインをベースにシミュレーションを行う事なども模索されつつある。そうした時に、都市の実際の物理的なデジタルツインを構築するためには、地理空間情報をフル活用して迅速に進めていく必要がある。本講演ではそうした様々な取組について、紹介を行う。

講師:関本 義秀

東京大学 生産技術研究所(工学系研究科社会基盤学専攻・先端学際工学専攻・空間情報科学研究センター兼任) 准教授

【略歴】1973年5月31日 神奈川県生まれ
1992年3月 鹿児島県私立ラサール学園高等学校卒業
1992年4月 東京大学理科一類入学
1997年3月 東京大学工学部土木工学科卒業
1999年3月 東京大学大学院工学系研究科社会基盤工学専攻修士課程修了
2002年3月 同 博士課程修了
2002年4月 国土交通省国土技術政策総合研究所 高度情報化研究センター情報基盤研究室 研究官(任期付)
2007年4月 東京大学空間情報科学研究センター 産学官連携研究員
2007年9月 同 特任講師
2010年4月 同 特任准教授
2013年4月~ 東京大学生産技術研究所 人間・社会系部門 准教授(工学系研究科社会基盤学専攻兼務)
2013年6月~ (空間情報科学研究センター兼務)
2015年4月~ 放送大学客員准教授
2017年4月~ (工学系研究科先端学際工学専攻兼務)

セッション5[15:00-15:50]

公共交通オープンデータの推進から考えるデータ駆動型社会への道

本講演では、「標準的なバス情報フォーマット」に基づく公共交通オープンデータの推進について紹介しながら、交通分野におけるデータ駆動型社会の実現について検討する。講演者は、地方において路線バスのデータがなく経路検索が出来ないという課題に対して、交通事業者や自治体にオープンデータの実現を呼び掛けることでその解決を目指してきた。データ整備が必須となるMobility as a Service(MaaS)への注目などもあり、3年で300近いデータが公開されその整備が今も広がっている。一方で、地方公共交通そのものの衰退という課題は大きく、ITの専門家であっても、公共交通の制度やあり方に踏み込まなければ、議論を深めることはできなくなっている。講演では、ITと公共交通に関する最新の状況を紹介するとともに、専門家・研究者として境界を乗り越えながら領域を開拓する方法についても議論する。

講師:伊藤 昌毅

国立大学法人 東京大学 生産技術研究所 特任講師

【略歴】東京大学生産技術研究所 特任講師。2002年慶應義塾大学環境情報学部卒業、同大学院にて博士(政策・メディア)取得。鳥取大学助教などを経て現職。専門は交通情報学。産官学を繋ぐカンファレンス「交通ジオメディアサミット」や全国の公共交通のオープンデータ化支援などを実践。国土交通省 バス情報の静的・動的データ利活用検討会 座長、同 都市と地方の新たなモビリティサービス懇談会 委員、沖縄県 沖縄観光2次交通の利便性向上に向けた検討委員会 座長なをどを務める。

セッション6[16:00-16:50]

オープンなデータ流通基盤としてのFIWARE

FIWAREは国際標準準拠のオープンAPIによるコンテキスト情報管理を中心機能としたオープンソースプラットフォームである。近年、産業や社会のデジタル変革にむけて分野横断でのデータ利活用に期待が集っているが、FIWAREはSmart Cityにおいてサービスやシステムの相互運用性を担保するメカニズムとしてその採用が進展しつつあり、今日グローバルに注目を集めている。さらに最近ではSmart Industry、Smart Energy等の分野においてもマルチステークホルダーに対するデータ流通のイネーブラーとしてFIWAREの活用が拡がりつつある。講演では、なぜFIWAREが今の時代にマッチしているのか、また、FIWAREエコシステムの特徴は、なども含めて御紹介し、AI・IoT時代のデータ流通のあり方を議論したい。

講師:望月 康則

日本電気株式会社 NECフェロー

【略歴】現在、NEC フェローとしてスマートシティにかんするデジタル変革とIoTエコシステムに関する活動に注力している。2019年3月までは執行役員としてNECの全社技術戦略の策定を担当。NECにて30年以上にわたり研究者および研究部門長としての職歴を有し、AIを含むコンピュータサイエンス、ICTシステム、半導体集積回路・デバイス、固体物理などの幅広い技術領域に精通している。2017年3月には NECを代表してFIWAWRE Foundationのボードメンバーに就任。COCN「デジタルスマートシティの構築」サブリーダー、世界経済フォーラム第四次産業革命東京センター・スマートシティプロジェクトフェロー。他に、経団連、JEITA、OECDなどでの活動にも参画。東大・電子工学・博士課程修了(1987年)。