2025年度受賞者詳細

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2025年度コンピュータサイエンス領域奨励賞受賞者詳細

コンピュータサイエンス領域奨励賞は,コンピュータサイエンス領域に所属する研究会および研究会主催シンポジウムにおける研究発表のうちから特に優秀な研究発表を行った若手会員に贈呈されます.本賞の選考は,CS領域奨励賞表彰規程,CS領域奨励賞受賞者選定手続およびCS領域奨励賞受賞者推薦内規に基づき,領域委員会が選定委員会となって行います.本年度は11研究会の主査から推薦された計18編の優れた論文に対し,慎重な審議を行い,決定しました.本年度の受賞者は下記18君で,各研究発表会およびシンポジウムの席上で表彰状,賞金が授与されます.

●アスペクト情報を活用した知識グラフ上のパス推論による説明可能なホテル推薦システム
 [DEIM2025(2025/2/27)](データベースとデータサイエンス研究会)

安田 大輝  君 (正会員)

発表時所属:東京科学大学 工学院 経営工学系 修士課程2年
受賞時所属:日本アイ・ビー・エム株式会社 テクノロジー事業本部 クライアントエンジニアリング事業部
[推薦理由]
本論文では,ホテル予約における意思決定において,ユーザがより理解しやすい推薦理由を提供することで納得感のある選択を支援することを目指し,知識グラフ上のパス推論による説明可能なホテル推薦システムを開発している.具体的には,ホテルのユーザレビューに含まれるアスペクト情報を活用した知識グラフ構築方法を提案し,この知識グラフ上のパス推論により,ユーザとホテル間のパスを決定すると共に推薦理由を提供している.推薦精度による定量評価と,説明文による定性的なケーススタディにより,提案システムの効果を確認しており,学術的にも実用的にも価値がある研究である.以上より,本論文をCS領域奨励賞にふさわしいものとして推薦する.
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●REST API仕様に基づく大規模言語モデルを用いた自動バグ修正手法
  [SES2024(2024/9/19)](ソフトウェア工学研究会)

山岸 克紀  君 (学生会員)

発表時所属:立命館大学院 情報理工学研究科
受賞時所属:立命館大学院 情報理工学研究科
[推薦理由]
本研究は,RESTAPIを利用するクライアントプログラムの開発における誤用検出と自動修正手法を提案しています.従来,API仕様の誤用はレスポンス確認時点でしか判明せず,デバッグ作業に多大な労力を要していました.本研究では,大規模言語モデルを活用し,誤用コード片の検出から修正までを自動化する革新的な手法を提示しています.適用実験により,提案手法はほとんどの誤用事例を正確に検出し,修正性能において従来手法を上回る結果を示しました.この成果は,RESTAPIのクライアント開発における効率化と品質向上に大きく寄与するものであり,情報処理分野における重要な進展として推薦いたします.
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●RAGを利用したREST API誤用に対する自動修正の有効性調査
  [2025-SE-219(2025/3/4)](ソフトウェア工学研究会)

井上 翔瑛  君 (学生会員)

発表時所属:立命館大学 情報理工学部 情報理工学科 学士4年
受賞時所属:立命館大学大学院 情報理工研究科 修士1年
[推薦理由]
本研究は,RESTAPIを利用するクライアントプログラムの誤用自動修正において,大規模言語モデル(LLM)の性能を向上させるためのRAG(Retrieval-Augmented Generation)手法の有効性を検証した重要な研究です.関連する仕様書のテキスト片をプロンプトに含めることで,単純なLLM利用に比べて修正率が著しく向上することを示しました.特に,データベースを拡張したRAG手法では修正率を80.0%にまで高め,RESTAPI誤用修正におけるRAG手法の有効性を実証しました.この成果は,RESTAPIクライアント開発の効率化と品質向上に大きく貢献するものであり,情報処理分野における重要な進展として推薦いたします.
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●変分量子アルゴリズム向け極低温SFQアーキテクチャ
 [2024-ARC-257(2024/6/12)](システム・アーキテクチャ研究会)

上野 洋典 君 (正会員)

発表時所属:理化学研究所量子コンピュータ研究センター
受賞時所属:理化学研究所量子コンピュータ研究センター
[推薦理由]
超伝導量子ビットは希釈冷凍機内の極低温環境で動作するため,超伝導量子計算機においては冷凍機内外にまたがる膨大な配線が不可欠であり,配線にかかる熱流入などがシステム全体のスケーラビリティを制限している.これに対し本研究では,誤り訂正機能を持たない超伝導量子計算機において実行される変分量子アルゴリズムを対象として,冷凍機内外の通信を抑制することで配線のボトルネックを解消する極低温アーキテクチャを提案している.評価の結果,特に大規模な量子計算機上で変分量子アルゴリズムを並列実行する場合において,提案アーキテクチャが冷凍機内外の通信を大幅に抑制できることを確認しており,これは特にスケーラビリティの面で超伝導量子計算機の実用性を向上させる有用な成果である.よってCS領域奨励賞にふさわしい候補としてここに推薦する.
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●単一磁束量子回路によるストカスティック演算向け高精度加算器の提案
 [2025-ARC-260(2025/3/19)](システム・アーキテクチャ研究会)

松本 侑紀 君 (学生会員)

発表時所属:九州大学大学院 システム情報科学府 情報理工学専攻
受賞時所属:九州大学大学院 システム情報科学府 情報理工学専攻
[推薦理由]
重み付けのない“0”と“1”からなるビットストリームを確率情報として演算を行うストカスティック演算は,面積効率の良さやソフトエラー耐性などの好ましい特徴を持つ一方,演算に用いるビット列間の相関に起因する演算誤差や演算時間の長さが問題となる.これに対し本研究では,極めて高速な動作を特徴とする回路技術である単一磁束量子(SFQ)回路が持つ,合流回路の特徴を活用することで,既存のストカスティック加算器が抱えていた,入力ビット列に相関がある場合の出力精度を問題を改善しつつ,実装面積の削減を実現しており,ストカスティック演算回路の実用性を大きく向上させるものである.よってCS領域奨励賞にふさわしい候補としてここに推薦する.
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●wanco: ライブマイグレーションをサポートする WebAssembly コンパイラ
  [ComSys2024(2024/12/3)] (システムソフトウェアとオペレーティング・システム研究会)

田村 来希 君 (学生会員)

発表時所属:京都大学 工学部 情報学科 岡部研究室 4学年
受賞時所属:京都大学 情報学研究科 社会情報学コース 修士課程 首藤研究室 1学年
[推薦理由]
本研究では,オペレーティングシステムやCPUアーキテクチャに依存しないアプリケーション実行形式であるWebAssembly (Wasm)を対象として,実行中のアプリケーションをその状態を維持したまま異なる計算機に移行する手法を提案している.Ahead-of-Time (AoT)コンパイル方式は,アプリケーションの高速な実行が可能となる反面,その状態をCPUアーキテクチャに非依存な形で取り扱うことが難しい.そこで,プログラムのコンパイル時に実行中の状態を保存し復元するための命令列を埋め込む手法を開発することで,実行中のプログラムを異なるCPUアーキテクチャ間で移行できることを示した.本研究の成果は,異なるシステムが混在する今日の分散システムにおいて,資源利用の効率化や冗長化に寄与しうるものである.CS領域奨励賞に相応しい論文として推薦する.
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●ECC-uncorrectableメモリエラーへの耐性を有するページテーブル管理機構
  [2024-OS-163(2024/5/30)] (システムソフトウェアとオペレーティング・システム研究会)

武田 一希 君 (学生会員)

発表時所属:東京農工大学大学院 工学府 知能情報システム工学専攻 2学年
受賞時所属:東京農工大学大学院 工学府 知能情報システム工学専攻 2学年
[推薦理由]
本研究では,オペレーティングシステムのカーネル内部のページテーブルと呼ばれるデータについてメモリエラーに耐性を有する管理構造を提案している.一般にメモリモジュールの多くはエラー訂正機能を有しているものの,訂正可能なビット数以上のエラーが生じるとデータが破損してしまう.そこで,ページテーブルの情報を圧縮して別途保持して冗長化し,エラー発生時には破損箇所を特定して復元する機構を開発した.本研究の成果は,大規模言語モデル等のビッグデータ処理を支えるシステムの信頼性を高めることに貢献しうる.CS領域奨励賞に相応しい論文として推薦する.
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●2スピン同時フリップの並列試行により高効率な解探索を行うアニーリングプロセッサ
 [2024-SLDM-207(2024/11/13)] (システムとLSIの設計技術研究会) 

兵藤 旭 君 (正会員)

発表時所属:東京科学大学 工学院 情報通信系 修士2年
受賞時所属:アマゾンウェブサービスジャパン合同会社(所属:SupportEngineering)
[推薦理由]
アニーリングプロセッサは,組合せ最適化問題(COP) を汎用的かつ効率的に解く領域特化型計算機として注目されている. 本論文では,ハードウェアと親和性の高い革新的なアニーリングアルゴリズムとそのプロセッサを提案している.PDA はマージ法に合理的な制限を加えることにより,マージ法 をアニーリング計算フロー内へ統合する.PDAアルゴリズムはハードウェア実装に最適化されており,そのプロセッサはニアメモリ型アーキテクチャである既存のアニーリングプロセッサを拡張することにより実装することができる.FPGA実装では性能劣化を防ぐため,任意の範囲の一様乱数を生成できる軽量RNGを新たに提案している.TSPとQKP の実験結果を通して,PDAはプロセッサは制約付きCOP を効率的に解く能力を示し,その実行速度は GPU上に実装されたPSA+マージ法の最大30 倍であることを示している. 以上から提案アルゴリズムとプロセッサは,ハードウェア実装志向の方式において有用な手法と認められ,CS領域奨励賞に相応しい論文として推薦する.
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●改良型 SEILA(ソフトエラー耐性ラッチ)のα線による耐性評価
 [DAS2024(2024/8/29)] (システムとLSIの設計技術研究会)

吉田 圭汰 君 (正会員)

発表時所属:京都工芸繊維大学 工芸科学研究科 電子システム工学専攻 集積システム 小林研究室 修士2年
受賞時所属:ローム株式会社 IT統括本部 ITインフラ部 シミュレーション技術推進課 シミュレーション開発G
[推薦理由]
民生機器,宇宙用途双方の集積回路においてロジック回路のソフトエラー対策は極めて重要になってきている.本研究では,先行研究で提案されているソフトエラー耐性ラッチのソフトエラー耐性評価を行っている.その結果をもとに,改良型ラッチとそれを使用した 2つのフリップフロップを提案している.提案したフリップフロップについてシミュレーションを用いた性能評価と, 65 nm バルクプロセスで設計したチップを用いたα線照射によるソフトエラー耐性評価を行った. 評価結果より,改良型ラッチでは改良前で見られたエラーが 0となることを確認している.提案FFのエラー発生率は一般的な FFである TGFFと比べて1/125, 1/14732 まで減少し,耐性が向上していることを確認している.実際にチップに実装し,照射試験を行って得られた結果は極めて信憑性が高く,価値の高い論文であるため,CS領域奨励賞に相応しい論文として推薦する.
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GPU化済の気象コードにおけるホストCPUコアの有効活用
 [2025-HPC-198(2025/3/19)] (ハイパフォーマンスコンピューティング研究会)

山崎 一哉 君 (正会員)

発表時所属:東京大学情報基盤センター
受賞時所属:東京大学情報基盤センター
[推薦理由]
高性能計算において近年普及が進んでいるGPU搭載機では,CPU-GPU間通信を減らすために極力全ての処理をGPU化することが多い.しかしこの実装では,CPUのコアをほとんど活用できないことが課題であった.そこで本論文では,OpenACCでGPU化済みの気象コードをCPUの空きコアでも並行して動作させ,計算領域の一部をCPUに割り当てることで,GH200上での性能を25%前後向上させた.本成果は,同一コードがCPU・GPU双方で動作するOpenACCの特長を活かし,コンポーネント間通信関連のコード変更のみで実現している.つまり本成果は,多様なアプリケーションに比較的低コストで適用して性能向上をもたらす可能性を有している.これはCS領域奨励賞を受けるに値する成果であるため,本賞に推薦する.
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MPS法における単精度AVX-512 Intrinsicsを用いたループ/SIMD並列処理
  [2025-HPC-198(2025/3/19)] (ハイパフォーマンスコンピューティング研究会)

齊藤 大輔 君 (正会員)

発表時所属:明治大学大学院 先端数理科学研究科 ネットワークデザイン専攻博士 前期課程2年
受賞時所属:-
[推薦理由]
本研究では,流体シミュレーション手法であるMPS 法において,マルチコアによるループ並列処理とAVX-512 によるSIMD並列処理,およびデータレイアウト最適化を用いた高速化を提案している.提案手法では各タイムステップにおいて,バケット帰属粒子の物理量をSIMD演算に効果的なAoSoA形式の配列に動的に再配置することで,近傍粒子探索におけるメモリアクセスの高速化を実現した.さらに,単精度浮動小数点数用AVX-512 Intrinsicsを用いたSIMD演算を行うことで,更なる速度向上を達成した.本成果はCS領域奨励賞を受けるに値する成果であり,本賞に推薦する.
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●プレゼンテーションスライド作成のためのSATySFiノートブック環境
  [PRO-2024-2(2024/8/8)] (プログラミング研究会)

両角 颯 君 (学生会員)

発表時所属:東京大学 情報理工学系研究科 創造情報学専攻 修士課程1年
受賞時所属:東京大学 情報理工学系研究科 創造情報学専攻
[推薦理由]
本研究では,プレゼンテーションスライド作成環境SATySFi Notebookを提案している.このシステムでは,PowerPointやKeynoteのようなWYSIWYGエディタではなく,SATySFiという組版プログラミング言語による記述でスライドを作成する.プログラミング言語によるスライド作成は,LaTeXに基づく物など,いくつか存在しており,記述の再利用や位置の精密な指定などに優れるものの,スライドの対話的な作成が難しかった.そこで本研究では,Jupyter Notebookと組み合わせることで対話的な編集・閲覧を可能としている.提案手法は実用に今すぐつながりうる物で,高く評価できる.発表も提案手法の長所をデモを通して強く印象づける物であった.
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●Incorrectness Separation Logic with Arrays and Pointer Arithmetic
  [PRO-2024-5(2025/3/27)] (プログラミング研究会)

李 淵錫 君 (学生会員)

発表時所属:名古屋大学大学院 情報学研究科 情報システム学専攻 結縁・中澤研究室
受賞時所属:名古屋大学大学院 情報学研究科 情報システム学専攻/株式会社NTTデータ東海
[推薦理由]
本論文ではincorrect separation logicについて論じている.Separation logicはメモリ操作を伴うようなプログラムの正しさの検証に広く使われている.これと相補的な枠組みとして,逆にバグがあることを検証する体系であるincorrect separation logicが近年提案されている.しかし,既存手法は配列やポインタ算術を扱えず,C言語のようなプログラムの検証は難しかった.そこで本研究は,配列とポインタ算術を扱えるよう既存手法を拡張し,その拡張が望ましい性質(soundnessとrelative completeness)を壊さないことを証明した.この成果はincorrect separation logicに基づく実用的なバグ検出器を作る上での大きな一歩であり,高く評価できる.
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●トーラス格子グラフの木幅について
 [2025-AL-201(2025/1/14)] (アルゴリズム研究会)

森元 拓 君 (学生会員)

発表時所属:名古屋大学 情報学部 自然情報学科 4学年
受賞時所属:名古屋大学大学院 情報学研究科 数理情報学専攻 修士1年
[推薦理由]
木幅はグラフの木への近さを測る指標であり,多くの重要な性質が知られている.格子マイナー定理に代表されるように,木幅は格子グラフと密接な関係があり,n 行 n 列のトーラス格子グラフの木幅も複数の論文で取り上げられてきた.しかし,既知の上下界には 1 の差があり,その完全な決定は2016年以来未解決であった.本研究は,n が奇数の場合について下界を 1 上げることにより,この問題を部分的に解決したものである.その証明には先行研究と同じくブランブルと呼ばれる木幅の双対的概念を用いているが,これまで共通してとられていたアプローチとは異なる方法でブランブルを構成し,上界と下界の差を埋めることに成功した.この手法は他のグラフクラスへの適用も期待される.以上の理由より,本研究をCS領域奨励賞候補として推薦する.
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●Exact Algorithm for the Boolean Connectivity of k-Horn Formulas via Deterministic PPZ
 [2025-AL-201(2025/1/15)] (アルゴリズム研究会)

大倉 佑斗 君 (学生会員)

発表時所属:北海道大学大学院 情報科学院 情報科学専攻 修士1年
受賞時所属:北海道大学大学院 情報科学院 情報科学専攻 修士2年
[推薦理由]
充足解の連結性判定問題は,与えられた論理式に対し,ハミング距離 1 の充足解の遷移系列により任意の充足解から全ての充足解に到達可能かを判定する問題である.この問題は Horn 式という特別な論理式に限っても,coNP 完全という計算困難な計算量クラスに属している.本研究では,Horn 式の局所最小解と充足解の連結性の関係に着目し,k-CNF の充足解の存在性を判定する PPZ アルゴリズムが局所最小解を効率良く列挙できることを示すことで,解グラフを構築せずに Horn 式の充足解の連結性を判定するアルゴリズムを与えた.これは,充足解の存在性判定と連結性判定の関係性に新たな知見を与える重要な結果である.以上の理由により,本研究をCS領域奨励賞候補として推薦する.
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高密度環境におけるマルチエージェント経路計画問題
 [2024-MPS-148(2024/6/21)] (数理モデル化と問題解決研究会)

牧野 寛也 君 (正会員)

発表時所属:株式会社豊田中央研究所
受賞時所属:株式会社豊田中央研究所
[推薦理由]
推薦者は,高密度環境におけるマルチエージェント経路計画問題 (Multi-Agent Path Finding in High-Density Environments,MAPF-H)において,現実的な時間内での解導出を実現するため,ヒューリスティック手法により段階的にエージェントを再配置することにより数秒~数十秒程度の計算時間で MAPF-H を解くアプローチを提案し,数値実験によりその有用性を示した.発表内容の有用性の高さに加え,プレゼンテーションの完成度の高さ,質疑応答を通じての問題への深い理解から研究会として推薦するものである.
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●Exploring Approaches to Improve Accuracy in SplitFed Learning on Non-IID Data
 [APRIS2024(2024/11/5)] (組込みシステム研究会)

富森 陽 君 (正会員)

発表時所属:埼玉大学大学院 理工学研究科
受賞時所属:NECソリューションイノベータ株式会社 新木場本社
[推薦理由]
本論文は,Split Learning(SL)とFederated Learning(FL)の利点を組み合わせたSplitFed Learning(SFL)に着目し,実世界で頻繁に直面するNon-IID状況におけるDeep Learning(DL)のモデル精度の低下に対処するための新たなアプローチを提案・検証している.FLにおけるNon-IID問題の対処に使用される対照学習や知識蒸留をSFLに適用し,Non-IID状況下でも高いモデル精度を維持可能であることを実証した点に新規性がある.特に,モデル対照学習を適用したケースで精度向上が顕著であり,SFLの実世界に対する有用性を高めるとともに,IoT環境のような大規模かつリソース制約のある環境での実装可能性を拡大する有望な手法としての可能性を示した.以上より,本論文をCS領域奨励賞にふさわしい論文として推薦する.
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●量子コンピュータ上で非線形時間発展方程式を解く発散しないアルゴリズムの提案
 [2025-QS-14(2025/3/17)] (量子ソフトウェア研究会)

遠藤 克浩 君 (正会員)

発表時所属:産業技術総合研究所 機能材料コンピュテーショナルデザイン研究センター ソフトマテリアルシミュレーションチーム(兼務:量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター 量子アプリケーションチーム)
受賞時所属:産業技術総合研究所 マテリアルDX研究センター 分子シミュレーション研究チーム(兼務:量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター 量子アプリケーションチーム)
[推薦理由]
本研究発表は,気象からニューラルネットワークまで様々な現象を記述する非線形時間発展方程式の量子加速解法に着目し,ゲート型量子コンピュータ上で長時間スケールの非線形ダイナミクスを安定に計算する量子アルゴリズムを提案している.先行研究では,量子計算により対古典での飛躍的な計算加速が見込まれることが明らかになっていたが,非線形性が強い場合に計算が途中で発散し,発散は理論的にも避けられないとされていた.しかしながら,本発表はピボット状態の切り替えという新たな発想による量子シミュレーションアルゴリズムを提案し,発散を回避して長時間のシミュレーションに成功している.学術界および産業界の発展に広く貢献すると考えられるため,本賞に推薦する次第である.
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