2025年度マイクロソフト情報学研究賞

2025年度マイクロソフト情報学研究賞の表彰

 中村 優吾 君
 

中村 優吾 君(正会員)

「AIoTを活⽤した習慣リデザインの研究」

2020年奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科修了。博士(工学)。日本学術振興会特別研究員(DC1)、科学技術振興機構 ACT-I「情報と未来」および、さきがけ「ICT基盤強化」個人研究者を務める。2021年より九州大学大学院システム情報科学研究院助教。AIoTを用いた習慣的行動変容支援に関する研究に従事。ACM UbiComp 2016 Best Demo Award、IEEE PerCom 2021 Best Demo Award、第22回船井研究奨励賞、第37回安藤博記念学術奨励賞などを受賞。

[推薦理由]
中村優吾氏は、AI と IoT を融合した「AIoTを活用した習慣リデザイン」という国際的にも先駆的な研究領域を切り拓いている。従来の行動変容技術が通知や警告といった言語的介入に依存し、負担感や反発を招きやすかったのに対し、同氏は色彩、嗅覚、質感、時間感覚といった非言語・非意識チャネルを体系的に活用し、人の自然な行動フローを穏やかに調整する新たなアプローチを確立した。食行動を検知してアート作品へ変換するIoT 箸「eat2pic」、嗅覚を通じて低糖飲料の満足度を高める「Kaolid」など、異分野を掛け合わせた独創的な AIoTシステムを数多く創出し、約 8万人規模の実世界実験ではスマートフォン画面の無彩色化などの微細なデザイン操作が利用行動を大きく変化させることを世界で初めて実証した。これらの成果は、ユビキタス分野の最難関誌ACM IMWUT や IEEE Pervasive Computingに採択され、主要国際会議では複数の受賞を獲得している。さらに同氏は、AIoTを「人のより良い習慣を倫理的に共創するパートナー」へと再定義し、健康行動の保全基盤としての「AIoT-Driven Health Behavioral Security」と、人と AIが協働して望ましい習慣を育む「HabiComp」という二つの概念枠組みを提唱することで、情報ウェルビーイング技術および次世代社会の行動基盤設計における新たな学術的潮流を形成している。

 渡辺 拓貴 君
 

渡邉 拓貴 君(正会員)

「ヒアラブルデバイスにおける音響インタラクションに関する研究」

2017年3月神戸大学大学院 工学研究科 博士後期課程修了。博士(工学)。2017年4月-2024年3月 北海道大学大学院 情報科学研究院 助教。2021年10月-2025年3月 JSTさきがけ研究者を兼任。2024年4月より、はこだて未来大学 システム情報科学部 准教授。ウェアラブルコンピューティング、特に耳に装着するイヤホン型デバイス(ヒアラブルデバイス)を対象とした入力・出力・セキュリティの3領域を横断する新たなインタラクション基盤に関する研究に従事。UIST2024 Best Paper Award、本学会論文賞(2022年)、山下記念研究賞(2015年、2022年)、インタラクション2020論文賞など多数受賞。

[推薦理由]
渡邉拓貴氏は、ヒアラブルデバイスにおける音響インタラクション研究を牽引し、操作・情報提示・セキュリティを横断する包括的基盤を世界に先駆けて確立した。外耳道形状の微小変化に基づくハンズフリー操作や音漏れを活用した空中ジェスチャ認識、聴力自在化技術の体系化、さらに超音波脆弱性とその認知処理への影響の可能性発見、音漏れ信号を用いた音響認証技術の創出など、独創的成果をIMWUT、CHI、ISWC、UIST、IEEE TMCなどの国際トップ会議・論文誌で数多く発表してきた。市販機の既存機能のみで実現する高い実用性と学術的新規性を兼ね備え、ヒアラブル社会の安全性と利便性を両立する研究を国際的に主導する若手研究者として、今後の活躍に大いに期待する。