2021年度マイクロソフト情報学研究賞

2021年度マイクロソフト情報学研究賞の表彰

 

畑 秀明 君(正会員)

「実証的ソフトウェア工学における研究」

2012年3月大阪大学 大学院情報科学研究科 博士後期課程修了,博士 (情報科学).2011年4月 - 2013年2月日本学術振興会特別研究員.2013年3月 - 2021年2月 奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 助教,2021年3月奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 特任准教授,2021年4月 信州大学 工学部准教授,現在に至る.実証的ソフトウェア工学研究に従事.IEEE 関西支部 Young Professionals 賞 2016 等受賞.

[推薦理由]
候補者は実証的ソフトウェア工学分野において,報奨金や寄付などの経済的観点や,ディスカッションや知識共有などのドキュメンテーションなどの近年重要度の高まるトピックについて,国際的な共同研究から,研究者コミュニティだけでなく実社会にもインパクトのある研究成果を挙げている.データ分析だけでなく,「コミュニティ通貨を用いた乗り捨て可能カーシェアリング」という実証実験を実施し,専門分野にとどまらない多面的な成果を挙げている.

 

矢谷 浩司 君(正会員)

「ユーザの主たるインタラクションに融合するセキュリティインタフェース」

2014年8月より東京大学大学院工学系研究科電気系工学専攻准教授.平成29年度東京大学卓越研究員. 2003年,2005年に東京大学よりそれぞれ学士号(工学),修士号(科学)を取得.2011年にカナダ,トロント大学より博士号(コンピュータ科学)を取得.2011年11月から2014年7月までMicrosoft Research Asia,HCI groupに勤務.ACM UbiComp2015では共同プログラム委員長を務めた後,同会議の運営委員会委員長を務めた(2019-2021).運営委員として情報処理学会UBI研究会(2015-2018),HCI研究会(2020-現在)に携わっている.現在はCHI2022共同プログラム委員長(Papers co-chair),ACM Transactionson Computer-Human Interaction (TOCHI)において編集委員,Japan ACM SIGCHI ChapterにおいてVice chairを務める.

[推薦理由]
矢谷氏は近年セキュリティインタフェースに関する研究を精力的に行っており,顕著な業績を上げている.特に,ユーザが現在行っているインタラクションに融合しつつも,セキュリティ・プライバシー保護に利する行動を促進するインタフェースデザインに関する研究を牽引している.矢谷氏が提案するシステムは,追加の行為や作業をユーザに強いることなく,より安全・安心な情報技術の利用を促進できる共通した利点がある.本研究テーマにおける矢谷氏の特筆すべき成果は,1)若年層SNSユーザに対してリスクの低い行動を促進するナッジの設計,及びその大規模な定量的検証,2)バイオメトリクス認証時にユーザの生体情報を同時に取得するDual-purpose Biometricsの提唱と,その一例として実現されたスマートフォンのアンロックにおける指紋認証と同時に心拍情報を取得するシステムの構築である.矢谷氏はこれらのプロジェクトを主導し,学術論文2件,国際会議論文1件(Honorable Mention Award受賞),さらに情報処理学会の研究会での受賞2件という特筆すべき学術的成果を上げている.矢谷氏の提案するセキュリティインタフェースは,より健全な情報社会の構築に大きく貢献するものであり,今後の社会的な影響も強く期待できる.